[列島紀行　　島]の記事一覧 | 　地球が見たい！　　　　　―　it's my life　―

歴史と文化の豊饒・佐渡島

　　[　佐渡島紀行　vol. 2　]　　　　　この国のすべての県を、バイクで巡ったことがある。　　　　　北海道の稚内市から、沖縄の糸満市まで。　　　　　それでももちろん、まだ見ぬ日本の姿があるだろう。　　　　　あなたは、この国にいったいいくつの島があるかご存知だろうか？　　　　　北海道・本州・四国・九州・沖縄本島、そして離島から、この国は成る。　　　　　そのうち、人が住んでいる島は、260　　　　　無人島を含む島の数は、なんと、6852 に及ぶ。　　　　　この国は、すべて島で構成される島国である。　　　　　あたりまえだが、それは重要な事実。　　　　　そう、ここはユーラシアの東にある、島々連なる列島なのだ。　　　　　　　　　　まだ見ぬ日本を見てみたいという俺の思いは、　　　　　このところ、離島と高峰の世界へ向かいつつある。　　　　　　　　　　それぞれの島が持つ独自の世界。　　　　　そこにあるまだ俺の知らないこの列島の、この惑星の表情。　　　　　もっとあちこちの島を訪れたい。　　　　　　　佐渡島を訪れた。　　　　　日本海に浮かぶ孤島。　　　　　まずは島内を一周する。　　　　　島の規模やリズムを体感する。　　　　　島特有の風景というものがある。　　　　　昨夏訪れた屋久島では、千年杉生える森の中で、　　　　　人類のいない時代からの、悠久の自然の営みを感じていた。　　　　　だが佐渡島は、人間が織り成す歴史と文化を通してこそ、　　　　　島の姿をよく理解できるのではないかと思う。　　　　　島の位置が、独特の歴史を醸成する。　　　　　佐渡島を巡りながら、この島に流れた多くの時間をずっと考えていた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　江戸時代、千石船による廻船業で発展した佐渡・宿根木地区。　　　　　日本海側の海運の要港だった。　　　　　狭い入り江に密集する家屋は、国の伝統的建造物群保存地区に指定されている。　　　　　佐渡の方言は関西弁系らしいし、　　　　　「佐渡おけさ」は九州の民謡から派生したらしい。　　　　　それもこれもみな、船に乗る人々が運んだということ。　　　　　　　　ハイテクロボットが演じる薪能　「大政寺」　　　　　佐渡島は、平安時代より、罪人の流刑地であった。　　　　　多くの貴族・高官も配流され、都の文化が流入してくる。　　　　　室町時代に島流しにされた世阿弥は、ここで能楽を広めた。　　　　　多くの能舞台が建てられ盛んに演じられるようになり、島は芸能の里となってゆく。　　　　　　　　　　岩礁の多い佐渡の海でサザエやアワビを獲るために、　　　　　明治時代に入ってから、小回りの利くたらい舟での漁が始まった。　　　　　たらい舟は、直径4メートルもある。　　　　　　　　　　佐渡島に来るまで、ナガモというものの存在自体、俺は知らなかった。　　　　　佐渡特産の海藻だそうだ。　昼食にナガモ丼を食べてみる。　　　　　　　　　　真野地区、国府川。　　　　　およそ30年前、この橋のすぐ近くで、曽我ひとみさんは拉致された。　　　　　そしてこの川を通り沖に運ばれ、北朝鮮に連れ去られた。　　　　　国際情勢に巻き込まれてゆく人々。　　　　　その、或るひとつの人生を想う。　　　　　このあと訪れた佐渡伝説資料館では、　　　　　従業員として土産物販売するジェンキンスさんに会った。　　　　　　　　　　　　朱鷺（トキ）の森公園　　　　　日本のトキは、2003年、佐渡島を最後に、絶滅した。　　　　　ちなみに、「鶴の恩返し」という有名な民話は、佐渡島のものだ。　　　　　　　ドンデン山からの眺め　　　　　「エ」の字に似た佐渡島の、ちょうどくびれた部分・国中平野が一望できる。　　　　　左端が両津湾、右端が真野湾。　　　　　年配の女性に話しかけられた。　　　　　現在は新潟市に住んでいるらしいが、生まれ育った故郷・佐渡島へ、　　　　　いまは東京で暮らすお嬢さんとともに遊びに来られたそうだ。　　　　　昨日はドンデン山の山荘に泊まられたらしい。　　　　　この旅は、きっと大切な思い出の時間となるのだろう。　　　　　俺が関西から来たことを知ると、　　　　　あそこは行った？ここは行った？と矢継ぎ早に尋ねて、　　　　　どこはいいよ、ここはいいよ、といろいろ教えてもいただいた。　　　　　この人もまた、島を誇りに思っている。　　　　　故郷はいいものだ。　　　　　20年以上も異国に囚われた曽我ひとみさんや、　　　　　都に戻りたかった世阿弥や日蓮などの配流人が、ふと頭に浮かんだ。　　　　　　　　　　　　（注）　掲載したすべての写真および文章の著作権は、　　　　　　　　　　　　　　私chikyuujinにあり、一切の転用を禁止します。

計算された庭

　　[　佐渡島紀行　vol. 1　]　　　　佐渡島に行こうと、北陸自動車道で新潟へと向かう。　　　　直江津から佐渡に渡るフェリーに乗るにはまだまだ時間の余裕があったので、　　　　北陸でどこかに行こうかなぁと考えた。　　　　そこで日本三名園のひとつ、金沢の「兼六園」に立ち寄ることにした。　　　　兼六園に強い憧れがあるわけではない。　　　　日常のなかで気分転換や憩いの時間を過ごそうというのならともかく、　　　　遠くからわざわざ訪れるほどの関心が庭園にあったわけではない。　　　　だが、それほど有名な日本庭園というものが、　　　　文化的にもいったいどんなものなのだろうかという思いもあって、　　　　これはちょうどいい機会だと、訪ねることにした。　　　　　　　　　兼六園とは、六つの相反する景観を兼ね備えている、という意味で名づけられている。　　　　これは、この庭園を理解する上で非常に重要な視点ではないかと思う。　　　　このことを考えながら兼六園を歩くと、　　　　あらゆるものが意図を持って配されているのがひしひしと感じられる。　　　　宋の時代の「洛陽名園記」にこう書かれていることが由来だそうだ。　　　　　　　　　庭園では六つのすぐれた景観を兼ね備えることはできない、　　　　　　　　　広々とした様子を表そうとすれば、静寂と奥深さが少なくなってしまう。　　　　　　　　　人の手が加わった所には、古びた趣が乏しくなってしまう。　　　　　　　　　滝や池などを多くすれば、遠くを眺めることができなくなってしまう。　　　　つまり兼六園とは、この六つの対照の美を兼ね備えた名園だというわけである。　　　　　　　　　俺の普段暮らしている京都の寺社庭園、特に禅刹などと比べてしまうが、　　　　もちろんお互い、造られた目的も違うし様式も違う。　　　　建物から眺める庭ではなく、兼六園は、散策しながら回遊するための庭である。　　　　土地に随分と高低さがあり、高いところにある池の水圧を利用して、　　　　低いところに噴水が出るよう作ってある。　　　　頭上まで覆うように茂る木々とかすかな木漏れ日が、幽玄な感じを醸し出す。　　　　そのあいだのほっそりとした道を登って抜けてゆくと、　　　　園外の山並みを借景した展望が、ぱあっと開ける。　　　　曲水が引かれ、ゆるゆると水が流れては大きな池に注ぎ込む。　　　　そして、ところどころに配された茶亭。　　　　なるほど、よく考えられている。　　　　紅葉する秋や、白銀の冬、そして桜咲く春には、　　　　よりドラマティックな景観を見せるのだろうと思う。　　　　洗練された庭だなと思う一方で、　　　　ふうん、なるほどね、というのが、周ってみての正直な感想である。　　　　広大な敷地を使って、　　　　いろんなものを楽しめるように詰め込んだという気がしないでもない。　　　　なかには庭萌えする人もいて、くらくらしていることだろう。　　　　だが俺にあるのは、感動というのではない。　　　　いやむしろこの違和感はなんだろう。　　　　すべてを計算しつくして配された、人工的な自然という矛盾に対するむなしさだろうか。　　　　動物園に行っても、囚われの動物たちに哀しく複雑な心境になってしまうのと、　　　　なんだか似ているかもしれない。　　　　　　　　　ふうん、なるほどねとただ思いながら、金沢を後にした。　　　　北陸自動車道に戻り富山に入ると、　　　　右手に、冠雪を残し険しくそびえ立つ山並みが見えてくる。　　　　北アルプスの威容。　兼六園とは違いその姿は、　　　　高速道路を走りながらちらりと眺めただけでも、俺にはなんだか泣けてくる。　　　　とくに、糸魚川周辺から見える北アルプスの風景が俺はとても好きだ。　　　　穏やかな山ではない。　澄んだ空気を感じさせる、凛とした姿。　　　　何度ここを通っても、惚れ惚れとした気持ちで見てしまう。　　　　左手には、日本海がずっと見えている。　　　　山麓を通った雪融け水がこの川となり、ここに流れてきてその大海へと注ぐ。　　　　やがてそれは雲となり、再びあの高峰に雪を降らす。　　　　ここは地球という惑星であり、　　　　ここでいったいなにが起こっているのかを一瞬にして感じる。　　　　そんな大げさな！と思われるかもしれないが、　　　　大自然の光景を見ると俺は、そういうことを連想してしまう。　　　　洗練された庭に萌える人間もいれば、　　　　手付かずの自然にこそ躍動を感じる人間もいる。　　　　俺は、地球が宇宙の片隅に浮かぶただの惑星であるということに　　　　こころ大きく揺さぶられながら、今日もここに生きている。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（注）　掲載したすべての写真および文章の著作権は、　　　　　　　　　　　　　　私chikyuujinにあり、一切の転用を禁止します。

特攻　～死を目前にして～

　　［　屋久島探訪バイク旅　vol. 5　］　　　　　　　　屋久島から鹿児島市に戻った後、　　　　　　　　薩摩半島を南に走って知覧市まで足を伸ばし、　　　　　　　　かつての特攻基地の跡にある　知覧特攻平和会館　を訪れました。　　　　　　　　太平洋戦争時、知覧には日本で最も南の特攻基地があり、　　　　　　　　ここから多くの特攻隊が出撃してゆきました。　　　　　　　　特攻とは、沖縄へと迫ってきたアメリカ軍に対し、　　　　　　　　爆弾を搭載した戦闘機もろとも敵艦に激突していって、　　　　　　　　一機一艦撃沈させようという作戦です。　　　　　　　　その非人間的ともいえる作戦の是非はともかく、　　　　　　　　ただ私は、特攻出撃を控えたその隊員たちの、　　　　　　　　死を前にして、必死に生と向き合う姿に触れてみたいと思ったのです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　特攻平和会館には、　　　　　　　　知覧基地から特攻出撃し散っていった1036人の写真とともに、　　　　　　　　出撃を前にして特攻隊員が書いた多くの手紙や、　　　　　　　　遺品、出征を励ます寄せ書きなどが展示されています。　　　　　　　　　　　　　　　　　●　「父上母上、靖国に会いに来て下さい」　　　　　　　　　　　　日本のために命を捧げ、靖国神社で会おう！　　　　　　　　　　　　それが、やがて出征兵士たちの合言葉となっていったそうです。　　　　　　　　　　　　靖国神社は、日本神道の象徴であり、　　　　　　　　　　　　維新以降の国に殉じた者のみが英霊として祀られています。　　　　　　　　　　　　国に命を捧げた者にとっての靖国神社の意味、　　　　　　　　　　　　またその遺族にとっての靖国神社の意味を、初めて知りました。　　　　　●　「大君の御盾となって散り征く　　神州は不滅なり」　　　　　　　　　　　　捨て駒のように散ってゆかなければならない死の意味を、　　　　　　　　　　　　なんとか大義に見出そうとしているようにも思えてしまいます。　　　　　　　　　　　　ここにいると俺は、なんだか天皇制というものにうんざりしてきます。　　　　　　　　　　　　血縁相続によってある一族を奉り、その名のもとに兵士が死んでゆく　　　　　　　　　　　　それは、どうしても蟻や蜂を連想させるし、　　　　　　　　　　　　生物学上の分類だけでなく、人間は動物だなぁとつくづく思います。　　　　　●　「今やらなければ、日本が、本土が大変なことになります」　　　　　　　　　　　　故郷を守るため、家族を守るため、敵艦を発見し殲滅してやる　　　　　　　　　　　　そんな思いも手紙に書かれています。　　　　　　　　　　　　家族愛、郷土愛、愛国心、・・・・　　　　　　　　　　　　ある者はそんなものをこころに描きながら、　　　　　　　　　　　　敵艦に突っ込んでいったのでしょう。　　　　　●　「妻よ、つらくばかりお前にあたってすまなかった。　私は幸せであった。　　　　　　　　　子供のこと、よろしく頼む。　　達者にせいよ。　　　　　　　　　苦しかったが、また楽しかったな。　　さようなら　」　　　　　　　　　　　　出撃を控えて残す愛する者への言葉たち、　　　　　　　　　　　　それは、もう二度と帰ってくることはないと思って書かれたもの。　　　　　　　　　　　　敵艦を前にした操縦席で思うその心のうちを想像すると、　　　　　　　　　　　　どれも読んでいて胸がアツくなります。　　　　　●　「今度生まれて来るときは、あの自由な鳥になりたい」　　　　　　　　　　　　ある日記に書かれていた言葉。　　　　　　　　　　　　それが、抗いようなく社会の渦に巻き込まれていった者たちの、　　　　　　　　　　　　本音ではないでしょうか。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彼らは、その最期に、何を思っていたのだろうか　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　屋久島の森でカメラが壊れたため、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旅後半の写真がまったくありません＾＾；　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　画像参照　［　薩摩の小京都　ちらん　］より　　□■□■□■□■□□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【　ホタル　】　　　　　　　　　　【男たちの大和／YAMATO 】

屋久島を巡る

　　[　屋久島探訪バイク旅　vol. 4　]　　　　　　　　バイクで屋久島を一周する　　　　　　　　標高の高い島中央部の山岳地とは違い、　　　　　　　　島周辺部には、ガジュマルなどの亜熱帯植物が生息していた　　　　　　　　ここはやはり、東シナ海の孤島であった　　　　　　　　　　屋久島最大の街　宮之浦　周辺　　　　　　　　　　　　　　　　直径およそ30ｋｍの島に、　　　　　　　　阿蘇山よりも高い九州最高峰・宮之浦岳1936ｍがそびえ立つ　　　　　　　　山が洋上に突き出すように立っている島の姿から、　　　　　　　　この島は「洋上アルプス」と呼ばれる　　　　　　　　東シナ海にありながら、冬には頂上部が冠雪もする　　　　　　　　亜熱帯から寒冷帯まで日本の植物種の70％以上が、　　　　　　　　島のその高低さのなかに、垂直分布する　　　　　　　　　　　　　　　　落差88ｍ　大川の滝　　　　　　　　屋久島は黒潮の暖流のなかに位置し、　　　　　　　　洋上アルプスにぶつかる暖かく湿った空気が雲を発生させるため、　　　　　　　　日本最多クラスの降水量がある　　　　　　　　その水が、豊かな自然を支えている　　　　　　　　　　西部林道　　照葉樹の森を抜けてゆく　　　　　　　　　　屋久サル　のんびりした午後　　　　　　　　この島に生まれ、この島に暮らし、　　　　　　　　大海の向こうの世界も知らずに、この島で死んでゆく　　　　　　　　それはまるで、この惑星に生まれた私たちのように思えた　　　　　　　　　　永田岬　屋久島灯台　　　　　　　　　　　　　　　　沖に見える口永良部島

太古の森へ

　　［　屋久島探訪バイク旅　vol. 3　］　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　太古の森を歩こう　　　　　　　　ヤクスギランド　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヤクスギランド内の主な屋久杉　　　　　　　　　　　　　　　　　名称　　　　胸高周囲　　樹高　　　推定樹齢　　　　　　　　　　　　　　　　　紀元杉　　　　8.1m 　　　19.5m 　　　3000年　　　　　　　　　　　　　　　　　母子杉（母）　9.0m 　　　31.1m 　　　2600年　　　　　　　　　　　　　　　　　母子杉（子）　6.3m 　　　29.5m 　　　2600年　　　　　　　　　　　　　　　　　小田杉　　　　8.2m 　　　28.6m 　　　2500年　　　　　　　　　　　　　　　　　仏陀杉　　　　8.0m 　　　21.5m 　　　1800年　　　　　　　　　　　　　　　　　天柱杉　　　　8.2m 　　　33.8m 　　　1500年　　　　　　　　　　　　　　　　　三根杉　　　　9.3m 　　　26.1m 　　　1100年　　　　　　　　白谷雲水峡　　　　　　　　　　　　　渓流、苔、巨樹、ヤクシカ、・・・・・　　　　　　　　　　　　　そこは水と緑が織り成す生命の森　　　　　　　　　　　　　ちなみに、宮崎駿監督作品　「もののけ姫」の舞台でもある　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　気がつくと森の中を、ヤクシカがゆっくりと歩いている　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　清流と苔むす岩が織り成す渓谷　　　　　　　　　　　　　　森全体が、静謐な緑の空間を醸し出している　　　　　　　　　　　　　　人類の現れるずっと以前から、　　　　　　　　　　　　　　誰に知られることはなくとも世界は存在している　　　　　　　　　　　　　　俺の訪問など、いや俺の存在さえもが、　　　　　　　　　　　　　　ほんの一瞬のできごとでしかない　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　変化する自然環境を生き抜くため地球の生命は、　　　　　　　　　　種を多様化させ適者生存によって生き残るという戦略を採った　　　　　　　　　　やがてそれは、樹齢数千年という植物種を生み出した　　　　　　　　　　これもまた、この惑星のたどったドラマである　　　　　　　　　　　　　　　　1000年以上たたずんできた杉が倒れ、その上にまた新しい命が芽を出す　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな時のサイクルがここにある　　　　　　　　　　　　木漏れ日が森の奥に射すと、苔むした緑がまるで輝いているように見えた　　

旅のかたち

　　［　屋久島探訪バイク旅　vol. 2　］　　　　原始の森に分け入る以外にも、屋久島をあちこち周ろうとバイクで出かける　　　　地図・カメラ・携帯音楽プレイヤー、そして着替えを持ち、　　　　気が向けばいつでもキャンプができるよう一応テントも載せてゆく　　　　いつもながらのバイク旅である　　　　飛行機を使わずすべてバイクで走るような、そんな線を繋げてゆく旅は、　　　　位置や距離などいろんなものが体感的に刻まれてゆく　　　　たとえば、屋久島がどこにあるのかどれくらい離れているのかを　　　　日本列島というサイズのなかで体感的に認識する。島を一周することでまた、　　　　屋久島がどれくらいの大きさでどんなところなのかを体感的に認識する　　　　それは、飛行機でひょいっといきなり森の前に立つのとは少し違うところがある　　　　そんなことを積み重ねて俺は、日本列島のサイズも北米大陸のサイズも、　　　　そのなかで気候や風土の分布する様も、体感的に知っている　　　　地球という言葉は、抽象的な概念ではなくなりつつある　　　　　　　　屋久島へは鹿児島港よりフェリーで渡る　　　　九州南端よりさらに 4時間南に行った洋上に、屋久島はある　　　　鹿児島港に来るのは、これで 3度目だ　　　　日本一周旅で沖縄へ渡った時と、九州一周旅で桜島へ渡った時　　　　荷物満載で走った見覚えのあるこの街並みには、　　　　最果て感だけでなく、路地を曲がる度に甦る懐かしい思い出を含んだ、　　　　なんとも言えぬ感情が湧いてくる　　　　屋久島への出航は 1日1便しかない　　　　夏のフェリー乗り場ではどの航路でもよく見かける光景だが、　　　　この日も出航時刻を待って、　　　　バイクや自転車に荷物を満載した15人ほどの旅人が集まっていた　　　　フェリーツーリングには、独特の旅情というものがある　　　　自動車の乗客などとは話すことがめったにないけれど、　　　　自転車旅やバイク旅の人とは、　　　　どちらまで行かれるんですか？などと言葉を交わすことも多い　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　屋久島最大の町　・　宮之浦　　　　「縄文杉が見たいねん」　　　　フェリー内で話した神戸からのライダーは、そうつぶやいた　　　　彼も 5日の予定でやって来たようだ　　　　大阪ナンバーの 2台の原付バイク、これで屋久島に向おうというカップルもいた　　　　大阪から鹿児島まではフェリーで来て、乗り換えだそうだ　　　　原付には、寝袋がくくりつけてあった　　　　高松から来たという４人組の大学生チャリダー　　　　彼女たちとはその後、偶然にも島のあちこちで顔を合わせることになった　　　　標高800ｍの白谷雲水峡近くで会ったが、　　　　港からあそこまで自転車で登って来るのは大変だったらしい　　　　自転車で旅する者は、大地の高低さを伴って旅を記憶しているのかもしれない　　　　彼女たちには彼女たちの、バイク旅とはまた違う手ごたえというものがあるだろう　　　　旅には、いろんなかたちがある　　　　それぞれの思いを胸に抱える、自分のための旅 ―　　　　きっと今日も、日本中・世界中で、　　　　まだ見ぬ光景に憧れながら、ペダルを漕ぎ、アクセルを開けて旅する者がいる

世界自然遺産　「屋久島」

　　［　屋久島探訪バイク旅　vol. 1　］　　　　　　　　　　　　　久しぶりに、　　　　　　　　　　　　　ちょっとした旅に出てきました。　　　　　　　 5日間で向かったのは、　　　　　　　　　　　　南シナ海に浮かぶ世界自然遺産　　「　屋久島　」　　　　　　　　樹齢1000年を越える巨樹・屋久杉が生える原始の森に分け入り、　　　　　　　　　　その息吹を感じながら、悠久の生命の連鎖に思いを馳せよう！　　　　　　　　　　　　そう！　　今回も、地球の多彩な表情に触れる旅！！