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カテゴリ:日中関係
「終戦」記念日の今日、靖国神社を初めて訪れた。
都営地下鉄の九段下の駅のホームには一目で参拝に向かうと分かるお年寄りの姿が目立った。駅のエスカレーターの前では、「英霊に敬意を表し、東京裁判の真相を問う」と書かれた封筒を渡された。3万円もする本の広告だった(「英霊に敬意を表して」通常4万5000円のところを特別価格だそうだ)。 右翼の街宣車もあったが、午後3時頃という時間帯のためか、想像していたほど騒がしくはなかった。境内に入ると、目立つのは遺族と思われるお年寄りの姿。それに混じって若者の姿も少なくなかった。デジカメを手にしている者も多い。歩きながら耳に入ってくる会話を聞いていると、いわゆる参拝ではなく、「どんなものか自分の目で見てみよう」という私と同じ考えの人が多かったようだ。 拝殿の手前にはNHKがカメラ1台を据え付けて、数人の記者が待機していた。 私は、参拝は遠慮して、遊就館(ゆうしゅうかん)という記念館へ。入場料800円(学生500円)。 無料で配られているパンフレットには、「靖国神社の神さまのことを永く世に伝えるために、明治15年に創立された日本初の軍事博物館です」とある。玄関を抜けるとすぐに目に入る大きなゼロ戦がこの博物館の立場を象徴しているように感じた。 この博物館の目的は、「一つは殉国の英霊を慰霊顕彰すること」とある。そして、もう一つの目的は、「近代史の真実を明らかにすること」だそうだ。 「わが国の自存自衛のための戦い」を主張する多くの展示が並べられており、思わず「戦争ってカッコいいな」と思わされてしまう「英霊」の立場から見た歴史がそこにはあった。 しかし、空襲や食糧難、家族を失った庶民の苦労や悲しみはここにはない。ましてや、中国・韓国をはじめとした被害者への思いやりは微塵も感じ取れない。 博物館内で上映されていた「ドキュメント映画」「私たちは忘れないー感謝と祈りと誇りをー」(企画・制作:「日本会議・英霊にこたえる会」、後援:靖国神社)を見ていて、私は何ともいえない気持ちになった。 映画のメッセージは「国難に殉じた英霊たちへの感謝と祈り」である。これは私も理解出来る。 だが、「英霊にこたえる」ことは、彼らの行為を無条件に正当化するなのだろうか? 彼らが守ろうとした国内外の一般庶民の気持ちにはどうこたえるのか?彼らに思いやりを寄せることこそが彼らの気持ちにこたえることになるのではなかろうか? これだけ豊かになり、民主主義国家を誇り、中国の言論統制を批判する日本の「靖国」で、ここまでの一方的な主張をしていることの悲しさ、情けなさ。 私はここ数週間で、北京の盧溝橋、南京の虐殺記念館、そして靖国神社を立て続けに回ってきた。中国の展示は、中国から見た視点である。そこには日本人として同意できないものもある。だがどちらの記念館も、未来の友好と平和がメッセージとして強調されている。一方、靖国のほうは、願わくばアジアの解放戦争を捲土重来といった勢いである。ここに空しさと悲しさを感じずにはいられない。 お互いがお互いを理解して分かり合うことは何と難しいことか? 新しい未来を作っていくために、日本と中国・韓国などが共同で歴史記念館を作ることは出来ないだろうか? 日本が目指そうとしている未来は、靖国のいう未来なのだろうか? 私は今日、靖国のあまりに庶民観を無視した展示を見て、ここに政府関係者が公に参拝することについて、恐怖を感じた。 ---- 朝、フジテレビの政治討論番組『報道-2001-』で、石原都知事と桜井よしこ氏が、中国の反日問題と日本の歴史教育について語っていた。 曰く、中国は江沢民の歴史教育の成果によって、若者の間には、反日による愛国心が根付いた。 曰く、日本の歴史教育は戦後50年以上、東京裁判史観によって歪められたことで、愛国教育がなされてこなかった。 私の理解が間違っているのかもしれないが、彼らは、要するに、中国のような愛国教育を日本ですべきという主張をしているように聞こえた。 竹村健一氏曰く、「こういう番組がこれまで日本には少なすぎた」「桜井さんはテレビ向きだ。繰り返しこういうことをテレビを通じて教育すべきだ」。 ---- 靖国の博物館の最後に置かれていた感想ノート。 「感動した!」系コメントに混じって、偏った展示に対する辛辣な批判、皮肉も目立った。そうしたコメントには「そんなこと言うなら、ここに来るな」という書き込みがあったが、そうではないはずだ。両者の対話が何より大切なのだ。お互いの主張を一方的にぶつけ合う「ケンカ」ではなしに、未来を見つめた対話。その重要性を改めて思う。 ---- 昼は新宿で北京で知り合った方々とランチ。ご馳走になってしまいました。ご馳走様でした! 夜は、学生時代からの友人たちとの飲み会。楽しかったー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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