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カテゴリ:演劇、観劇
清々しい想いをした作品です。
文学座の『女の一生』、杉村春子が1945年に初演して生涯演じ続けたその作品が、今回は演出もキャストも一新して上演されています。 杉村春子が947回演じた布引けいは、1996年平淑恵に引き継がれ、その公演回数は269回に及びました。 そして2010年の今、布引けいは文学座準座員の荘田由紀が演じています。(プログラムの資料を参照) 遥か昔に杉村春子主演で観た時には、その名前の大きさから芸を見るのに必死でした。 話の筋はそっちのけで、彼女の姿ばかり追いかけていたような気がします。 その時以来の観劇となった『女の一生』は、舞台の上で必死に役になろうとする若手の出演者に導かれ、いつしか物語の世界にとっぷりとつかっていました。 堤家という家の下、それぞれが身の丈に合った生き方を受け入れて、時代に流されているようにも見えます。 ただ一人、布引けいを除いては。 壮年、老齢の彼女を見て、女の、と言うよりも、企業人としての彼女の決心に共感を覚えたのは、今の日本の社会に生きる一会社人の憧れなのでしょうか。 終盤に登場するハツラツとした従業員の姿を見るにつけ、布引けいが自身の人生を犠牲にして継いだ会社に注いだ全てが豊かに実ったことを知るのでした。 布引けいが少女時代、自ら突然飛び込んでいった堤の家。 彼女が愛情を注ぐべき対象は、その時に定められてしまったのです。 彼女の一生を振り返り、今を生きる自分の一生と照らし合わせて考えることしきり、です。 これから上演回数と年数を重ねた先が、また楽しみな作品となりました。 作・森本薫、補綴・戌井市郎、演出・江守徹、 装置・石井強司、照明・古川幸夫、音楽・上田亨、音響効果・望月勲、衣裳・中村洋一 ※公演詳細は文学座のサイトで。 ※夜公演のみ、都内在住者及び都内勤務者が対象の都民割引があります。 (来場の際にその事を証明できる物の持参が必要です) 写真は、期間限定で会場で配布されたポスターとカレンダー。 (俳優座劇場にて) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.03.07 23:48:05
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