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高岡ミズミさんの、『君の瞳を奪いたい』を読みました。メジャーリーグを舞台にした‘君シリーズ’の、第三弾です…日系三世のメジャーリーガー:グレッグは、チームメイトのドミニカ出身のルーキー:ミゲルに懐かれてしまって、調教師状態。直情型で寡黙で、他のチームメイトには無愛想なルーキーに手を焼きつつも、グレッグはミゲルを可愛がっていました。ある日、グレッグはチームのオーナーと話しているところを、ミゲルに見られてしまい…大のMLBファンでいらっしゃる高岡さんの、ベースボールもの。とはいえ、試合シーンもほどほど…と、私は思うんだけど、野球に興味のない人にはどう感じるんだろ…で、高岡さんが仰る通り、和モノでは味わえない‘暑苦しいくらいに熱い攻’を愉しむシリーズです。何しろ第一弾も第二弾も攻がヤンキーだったから、口説き文句のストレートな事…これ、日本人がやったら鼻白むばかりで、それこそ「Honey」だの「My Sweet」だの言われた日には、良くてお笑い、そーでなけりゃ蹴っ飛ばされるところ(笑)。そんな第三弾はドミニカ出身の年下攻という事で、どんだけ熱っぽくて狂おしくてご陽気なラテン系なんだろ?と、ちょっと戦々恐々としてたんですが…これが、寡黙で無愛想で直情的な、でも懐いてる相手にはとことん純情で、「待て」もある程度は出来る(?)大型犬タイプ。西崎祥さんのイラストも相まって、ちょっと無骨な感じもだんだん可愛く思えてきます…主人公のグレッグは、幼い頃両親が離婚して、空手道場を営む祖父との二人暮らし。空手家で気骨ある頑固爺さんと、才能と努力で目標を達成したメジャーリーガーの孫の関係は清々しくて、ウェット過多にならない男同士の良い雰囲気があります。グレッグの母親の事が物語に波風を立たせるものの、頑なになってしまうグレッグの気持ちが、祖父の心情を思いやる事で最良の解決に向かうのも、読んでいて気持ち良かったです。母親絡みの件が発端となってミゲルの暴走となるのですが、力技に流されたようでいて後処理のクールさには、年上の情が感じられます。とにかくその最初から、グレッグは大型犬が可愛くてならないのです…でっかい図体をして、シッポぶんぶん振って迫ってくるミゲルに、今更ビビりつつ「ホームランのご褒美」を約束してしまうのは、ま、お約束♪忠犬は、そりゃぁ頑張っちゃいます。ところが、ご褒美が嬉しくて、スーパー・スラッガー目指しまっしぐら~なルーキーは、野球一直線で野球しか知らない晩生なボウヤではありませんでした。さすが、ラテン系!(←偏見)根は純朴で、その上テクもある忠犬に熱っぽく迫られて、調教師が陥落するのにそう時間がかかるワケはないのです…主人公たちのチームメイトに、シリーズ第一弾のメイン・キャラだったMBLのスーパースターが居て、良い存在感を示しています。恋人の前ではただただ熱くて甘やかなダーリンですが、MBLに君臨する存在に相応しい厳しさをチラリと垣間見させてくれます。巻末に収録された短編では、恋人との仲睦まじい様子が描かれ、そして第二弾のメイン・キャラだったライバル球団のオーナーも登場して、惚れたモン負けのジタバタ振りも見せてくれて、シリーズのファンにとって嬉しく楽しい事でした…この‘君シリーズ’、まだまだこれからも続いて欲しいなぁと思うのです。今までの3作は、何れも攻が外国人で受が日本人(日系人)だったので、次は日本人攻で是非!たとえば、日本のスラッガーがMBL入りして、散々翻弄されたピッチャーに…とか、日本の豪腕ピッチャーがMBLにスカウトされて、テクニシャンなヒッターに闘争心を煽られ…とか、それこそ日米スラッガー対決とか日米ピッチャー対決とか…♪や、もう、熱血でますます鬱陶しいくらい暑っ苦しい攻守戦、大歓迎です… 『君の瞳を奪いたい』 2008年11月 ルチル文庫 高岡 ミズミ * 西崎 祥