|
カテゴリ:保護者問題(親問題)
ケース【4】 前回のエントリーは、「学校に対する不信」を募らせている親が、たまたま子どもの「不満」を聞いたことをきっかけに事情も良く確かめもせずに学校に猛抗議をしにきたという典型的なパターンです。 今回は、もうワンランクアップのケースです。 カズキ先生は、4年生の担任で、少し頼りのない面はあるものの、粘り強い仕事振りは周りからも評価されています。 3年の終わりに、昼休みの時間に筆箱がなくなった子供・ミツオ君がいて、誰かがとったのか、ミツオ君が失くしたのか、事件はわからないままに引き渡されることになってしまいました。カズキ先生は、その時は隣のクラスの担任だったため、それほど事情は飲み込めていませんでした。 前の担任の元で、起こった事件であり、前の担任は非常勤講師で転勤、クラス替えもしていることもあって、家庭訪問では母親に、「私のクラスでは前年度のようなことが起こらないように、しっかりとクラスを作っていきます」と、あいさつをし、母親も、「お願いします」と、深く頭を下げてくださったそうです。 ところが、翌日、ミツオ君の父から電話がかかってきました。 「どうして事件をうやむやにするのだ」「事件が解決するまで明日からミツオを休ませる」 とのこと。クラス替えをしているため、元3年3組は、4クラスに分散しています。 そこから毎日、父親との話し合いが続きます。 「俺は役所の大物だ」「役所って言うのは、こういうところだ」「俺は役人を叩き直しているんだ」「俺は教師にも恨みがある」「その気になればお前の首など飛ばせる」「刺し違えてもお前をやっつける」「お前は運が悪いな。常勤の教師なら誰でも良かったんだ。」「お前を起点にして、この市の教育に天誅を下してやる」 とかなんとか、延々と一方的な話が続きます。生徒指導担当も管理職も完全に逃げ腰、挙句の果てにはカズキ先生に対して陰口をたたき出し、保護者対応のできない「力不足教師」よばわりを始めます。 カズキ先生は、延々とミツオ君の父親の話しに付き合い、学校が、自分がどういう立場でどういう考えであるのか、去年のクラスがどういう状態で、今年はどうしていきたいのか、今どきの子どもたちがどういう状況であり、ミツオ君がその中でどんな様子なのか・・・粘り強く説明をしながら、なんとか父親を説得して、5日後、なんとかミツオ君は学校に来れるようになりました。 父親は、 「アンタいい先生だ。これからもガンバレヨ。」 と、言い残して帰ったそうです。粘り強いカズキ先生は、 「父親の意見にも一理あり、いい勉強になった」 と言っていましたが、さすがにその顔は憔悴しきっていました。 対処 個々の教師では、どうしようもないケースがあります。 教師の本来の仕事は児童生徒への指導であって、保護者対応に時間を取られすぎると、指導にさしさわりが出てきます。説明責任は大切な仕事であっても、公教育のあり方を説明・議論しきるには、とてつもない時間が必要になるし、万人が納得する説明などできるわけがありません。 学校は、不完全さを含んだバランスの中で成り立っています。子供も不完全さの中で学習できることもあるでしょう。今回の筆箱の紛失は酷いことですが、そこにあまりにもこだわりすぎては、前に進むことができなくなります。 それでも、噛み付きたいとおっしゃる方は、学校をよく観察して、噛み付く相手をしっかりと見定めてからにしてください(苦笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[保護者問題(親問題)] カテゴリの最新記事
壮絶なお話ですね。カズキ先生は、素晴らしいなぁと思います。
確か大阪の小野田正利教授がイチャモン研究の中で、イチャモンをつけてくる保護者の中には、イチャモンの内容ではなく、心の奥底に誰かに聞いてほしいことがあるというようなことを著書で書かれていたと思います。 私が勝手に考えたのは、今回の父親もよっぽど学校に対して、教育に対して言いたいことがあったんだろうと思います。 そういったことに耳を傾け、うまく解決することによって後に強い味方になってくれる方もいるようです。 ただ、いちいち相手にしていたら、本業ができなくなってしまい、大変ですよね。本当にどうしたらいいんでしょう? (Aug 6, 2007 11:43:24 PM)
ユウさん、コメントありがとうございます。
>壮絶なお話ですね。カズキ先生は、素晴らしいなぁと思います。 悪夢の5日間をダイジェストにしてここに書いています。全部書くと超長編になります。後日談も長く、カズキ先生はこの件がきっかけとなり、相当精神的に傷ついて体調を崩されました。 (Aug 6, 2007 11:54:54 PM)
>悪夢の5日間をダイジェストにしてここに書いています。全部書くと超長編になります。後日談も長く、カズキ先生はこの件がきっかけとなり、相当精神的に傷ついて体調を崩されました。
そうだったんですか。後日談はさらに壮絶なのでしょう。 各地で進められている専門家チームによる対応という政策が、ベターなのかなぁと感じています。ただ、根本的な解決にはならないので、これからも考えていきたいと思います。 (Aug 7, 2007 12:01:20 AM)
ユウさん、コメントありがとうございます。
>各地で進められている専門家チームによる対応という政策が、ベターなのかなぁと感じています。ただ、根本的な解決にはならないので、これからも考えていきたいと思います。 親の世代を考えると、さらにこれからこういうケースが増えてくると思われます。根本的な解決とまではいかなくても、せめて快方に向かうシステムを作っていく必要があると思います。 (Aug 7, 2007 09:40:51 PM)
こんにちは。
保護者問題<2~4>のモンスターペアレントを 読ませていただきました。 (少し論点がずれるかもしれませんが) 私、一保護者としての感想です.. モンスターペアレントの攻撃先って 以前は対学校、対先生でしたが、最近は 対子ども、すなわち自分の子どもの同級生を 直接、攻撃するケースが増えてるような気がします。 先日も知り合いのお子さん(小学校中学年)のクラスに 授業中にも関わらず、乗り込まれた保護者が 特定のお子さん達を吊るし上げて... (直にとめなかった担任の先生の対応も?ですが) しかしその後は、 自分のお子さんがクラスの皆から 避けられることになってしまいました。 小学生でもこのように判断しますので、 学年が上がれば、もっともっと同級生の誰からも 我が子は相手にされなくなります。 怒鳴り込んでも、後で回り回って、 自分のところにツケがくることを、 親も冷静に判断していればよかったのにと 残念に思うケースがこのところ、多くあります。 それだけ親も冷静さを失ってるのでしょうか... (ところで、redu06さんが <Jul 18, 2008モンスターペアレント (TVドラマ)> で書かれていた、保護者が病気の場合の対応についてですが... 先生方はここまで関わらなければならない現状に 驚いてます。でも、本人に病気の自覚がないような場合は 先生が我慢してつき合うしかないですよね。) (Jul 22, 2008 01:40:20 AM)
牛乳キャップさん、コメントありがとうございます。
>以前は対学校、対先生でしたが、最近は >対子ども、すなわち自分の子どもの同級生を >直接、攻撃するケースが増えてるような気がします。 増えているかどうかはわかりませんが、確かに、そのケースも体験しました。 >怒鳴り込んでも、後で回り回って、 >自分のところにツケがくることを、 >親も冷静に判断していればよかったのにと >残念に思うケースがこのところ、多くあります。 直接的に自分にツケが回ってくるのは勿論だし、それでクラスや学校や社会全体が壊れていけば、間接的に面白くない目にあうのは自分の子供や孫だということを考えていかないといけませんね・・・。 >で書かれていた、保護者が病気の場合の対応についてですが... >先生方はここまで関わらなければならない現状に >驚いてます。 親の躁や鬱に対応するのは、かなり苦しいです。 救うことができる場合もありますので、精一杯がんばりますが、こちらがかなり消耗してしまうことが多いです。 (Jul 22, 2008 09:14:24 PM)
はじめまして、香菜子といいます。私も無力な教育者の一人です。
昔から子は親を映す鏡という言葉があるけれど、教育者として数多くの子供たちの教育に携わってきた人間として言えることはその言葉は真実だということ。 我儘で自分勝手、自己中心的で自己顕示欲ばかり強い生徒はどこにも必ずいるけれど、それは生育環境によるもの。 そういった子の親や保護者も決まって我儘で自分勝手、自己中心的で自己顕示欲ばかり強いことが多い。 結局は解決策は見つからないことが多くて、教育者としての無力さを実感させられた経験ばかりです。 (Jun 16, 2018 02:12:04 PM)
香菜子先生モンスターペアレンツにはもううんざりさんへ
遅ればせながら、お返事です。 香菜子先生、お疲れ様です。 本当に、授業以外の場面で疲弊してしまうのは不条理に思えます。ガチモンスターも、プチモンスターも、勘弁してほしいですね。 ガチモンスターに対しては制度の整備を進めて教員以外が対処するような形をとって欲しいです。 (Dec 22, 2018 09:17:28 PM) |
|