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2013年06月02日
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カテゴリ:シリーズ京歩き

室町期というのは、政情が不安定な状況が長く続いた時代で、
特に、応仁の乱以降は、下剋上と呼ばれる社会秩序の大変動が起こり、
戦国時代を現出させることになりました。

室町幕府とは言っても、足利将軍が絶対的な権力を持っていたというわけでは決してなく、
政治は管領を中心とした有力大名の合議制により運営され、
中には、足利将軍を上回る権力を持った大名まで現れてくるようになりました。


こうした室町幕府を創始したのが、足利尊氏。

尊氏は、後醍醐天皇とともに鎌倉幕府を倒した中心人物でありましたが、
その後、後醍醐天皇に対して反旗を翻し、それにより南北朝の争乱が起こることになりました。

尊氏と云えば、天皇に弓を引いた逆賊であり、
悪人であるかのような評価をされていた時代もありましたが、
実際の尊氏というのは、後醍醐天皇を弔うために天龍寺を建てるなど、
敵に対しても非常に寛容で、恩情に厚い人だったのだといいます。

尊氏は、とても気前が良かったという話も有名で、
部下に対して恩賞を惜しまず、それ故に、人は尊氏についてきたのだとも言われています。

戦いにおいては勇猛、カリスマ性もありましたが、
ただ、人柄の良さだけで、部下を統率してきたという面があり、
逆の言い方をすれば、人の良いお坊ちゃん。
組織の長としては、少し資質に欠けるところがあり、
そのことが室町幕府のあり方の素地を作っていたような感じがします。


そんな尊氏が建立した寺のひとつが、等持院。

室町期を通して足利将軍家の菩提寺であったお寺で、
歴代足利将軍の木像が祀られているということでも知られています。



等持院方丈.jpg



尊氏から義昭まで、
堂内に15人の将軍の像が並んでいます。

尊氏・義満・義政・義昭など、有名な足利将軍たちは、
こんな顔をしていたのか、ということも見ることが出来て、なかなかに興味深いです。

義満などは、この木像では、少し小太りのおじさんのようになっていました。

あまり、馴染みのない将軍たち。

足利15代のうち、暗殺された将軍が2名、都を追われて流浪のうちに亡くなった将軍も4名いたといいますから、室町幕府というのが、いかに弱体で、混乱の中にあったのかということが、よくわかります。

こうして木像を見ていると、これら将軍たちの多くが、過酷な生涯を送ったであろうことが、偲ばれます。



等持院山門.jpg



さて、今の等持院の佇まいについて見てみましょう。

等持院の中心となっているのが、方丈の建物と、その前に広がっている池泉式の庭園。

この庭は、夢窓疎石の作と伝えられているもので、
しっとりとした、趣のある良い庭になっています。



庭と清漣亭.jpg



築山の上に建てられているのが、茶室・清漣亭。

足利義政好みと呼ばれる様式のもので、
上座のある二畳間が、茶室につながっているということが特徴的です。

ここからは、庭の全貌が見渡せるように作られています。



清漣亭.jpg



庭におりて、池のぐるりを歩いてみました。

この池の周囲には、椿、楓、サツキなど、色々な種類の樹木が植えられていて、
たっぷりと自然を満喫することが出来ます。



池泉庭園.jpg



池をめぐる散策路には、足利尊氏の墓もありました。

庭の中で、ひっそりと佇む石塔。

こうして庭を歩いていると、やはり、ここは尊氏の寺であるんだなぁという感じがしてきます。



尊氏の墓.jpg



また、この等持院、足利将軍家以外にも、
この地にゆかりのある人が、何人かいます。

その一人が、日本で初めての映画監督となった牧野省三。

牧野は、日本映画の草創期において、時代劇の芝居を映画として撮影するということを始めた人で、その元で阪東妻三郎・片岡千恵蔵など、多くの映画スターが生まれてきました。


彼の映画撮影所というのが、かつて、この等持院の境内の中にあったということから、
等持院には、牧野省三の銅像が建てられています。



牧野省三像.jpg



大正~昭和にかけて活躍した、日本画家の小野竹喬。

岡山県笠岡市から京都に出て、竹内栖鳳門下に入り、
西洋画の要素を取り入れた独特の画風により、日本画壇の中心にあった人です。

この竹喬が晩年を過ごしたのが、等持院のすぐ近くにあるアトリエ。

竹喬は毎日のように等持院を訪ねていて、
等持院の木々は、竹喬の絵の素材になっていたのだといいます。



竹喬の木々.jpg



等持院、なかなかに見どころの多いお寺なのですが、
観光コースから、はずれているためか、
訪ねてくる人は、あまり多くありません。

でも、それだけに、静かに、ゆったりと見てまわれるお寺でもあります。

楓色づく秋の頃は、また良いのでしょうね。
もう一度、訪ねてみたい、そう思える寺院のひとつです。






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最終更新日  2013年10月28日 22時51分34秒
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Re:尊氏の寺(06/02)   picchuko さん
gundayuuさん、こんばんは。
そういえば、学生時代に歴史嫌い(というより、数学以外全部嫌いだったのです。笑)だった私は、平安時代末期くらいから日本史の記憶が薄らいでしまってます。^^;
なので、すごく新鮮というか、なるほどと興味深く読ませて戴きました。
3つの幕府の中で一番地味だなくらいの印象だった室町時代ですが、暗殺された将軍が2名、都を追われた将軍が4名とは驚きました。平安末期くらいから江戸幕府が安定するまで、落ち着かない世の中が続いていたのですね。

竹喬さんの話も出て来て、ちょっと嬉しい。
この方の美術館が笠岡にあるのですが、竹喬さんの絵画ってまさに笠岡の風景が土台にあるような感じなんです。
絵を見た後、あらためて笠岡を歩くとそれがよく分かります。
あの温かい絵を描く方が、晩年に選んだ土地、きっと素晴らしいのでしょうね。^^
(2013年06月02日 22時16分49秒)

Re:尊氏の寺(06/02)   灰色ウサギ0646 さん
等持院行きました。でも実はやっぱり覚えてないんですあまり。学生時代はいっぱい勉強しながら行ったのでいろいろ面白かったのですが、外国人案内しながら行くとただ見て回りますからつまらないですね。
自分のペースで廻れるように行きたいと思います。
鎌倉を歩いていると時々北条執権の滅亡の場所などの歴史に行きあたります。新田義貞等、鎌倉から室町幕府に移動していく時期の遺跡も有り興味深いです。
その後の足利尊氏の時代はやっぱり鎌倉より優雅ですね。 (2013年06月03日 08時39分47秒)

Re:尊氏の寺(06/02)   ほほえみ塾 さん
gunndayuuさんへ

こんにちわあ~~~

梅雨の合間のあじじいい~~な日にウンザリしています。
こういう日は外に出るのも億劫になります。
でもって、、
早朝ウオーキングは4時台に行くことにしました。
我が家が近づく頃に太陽がオレンジ色の光を輝かせながら
私を照らしたら手を合わせて祈ります。

特に何ということを祈るではなく、、
ただ太陽のまばゆさに感謝の念が湧いてきます。
生かされているんだ!!

ということを実感しますね。

徳川幕府のように盤石の礎を築くには
徳川家康の人質時代の苦労があったればこそ、
どうすれば徳川政権が長く続くのかということも
長い忍従の生活の中で培われたと思います。
室町と言う時代はまだまだそういう礎を築くには時期早尚だったのでしょうね。
それにしても暗殺2名都を追われた将軍4名というのは
世の中が落ち着いてないのですから仕方ないとしても
それで15代もよくよく続いたと感心します。
歴史を振り返ると、
それぞれの時代の積み重ねの上に今という時代があるんだと
思いますね。
先人から学ぶことは多いと思います。

私も今世、体験したことは歴史の上から見れば
塵芥の如きですが、それでも何か残せるものは残したいと
切に思います。

gunndayuuさんのブログは、様々な歴史があることを教えて下さる貴重な存在です。
いつもありがとうございます<(_ _)>
日中夜間の寒暖の差が激しい日が続いています。
お体ご自愛くださいませ。 (2013年06月04日 17時06分45秒)

Re:尊氏の寺(06/02)   KAZNY さん
紹介ありがとうございます。
足利将軍家の菩提寺、見逃していました。15人の将軍の木造はぜひ見てみたいです。 (2013年06月07日 05時29分24秒)

Re[1]:尊氏の寺(06/02)   gundayuu さん
picchukoさん
こんばんわ~

>そういえば、学生時代に歴史嫌い(というより、数学以外全部嫌いだったのです。笑)だった私は、平安時代末期くらいから日本史の記憶が薄らいでしまってます。^^;
>なので、すごく新鮮というか、なるほどと興味深く読ませて戴きました。
>3つの幕府の中で一番地味だなくらいの印象だった室町時代ですが、暗殺された将軍が2名、都を追われた将軍が4名とは驚きました。平安末期くらいから江戸幕府が安定するまで、落ち着かない世の中が続いていたのですね。

鎌倉~室町の時代って、確かに地味だし、一般的になじみも薄いような感じがしますね
これといったヒーローがいないというのが、その一因なのかも知れません。
室町時代の後半は戦国時代ということになりますが、その途端、多くの英雄が出てくるというのも不思議なものです。
行きつくところまで、追い詰められ、そこで、パァッと花開いたという感じなのかも知れませんね。


>竹喬さんの話も出て来て、ちょっと嬉しい。
>この方の美術館が笠岡にあるのですが、竹喬さんの絵画ってまさに笠岡の風景が土台にあるような感じなんです。
>絵を見た後、あらためて笠岡を歩くとそれがよく分かります。
>あの温かい絵を描く方が、晩年に選んだ土地、きっと素晴らしいのでしょうね。^^

小野竹喬の絵は、独特の温かみがあっていいですね。私も好きです。
竹喬さんの美術館は、何度か行かれているんですよね。
ブログで書いておられたのは覚えています。
等持院の近くには、今も、竹喬さんの子孫の方が暮らしておられるのだそうです。
(2013年06月09日 22時10分10秒)

Re[1]:尊氏の寺(06/02)   gundayuu さん
灰色ウサギ0646さん
こんばんわ~

>等持院行きました。でも実はやっぱり覚えてないんですあまり。学生時代はいっぱい勉強しながら行ったのでいろいろ面白かったのですが、外国人案内しながら行くとただ見て回りますからつまらないですね。
>自分のペースで廻れるように行きたいと思います。

自分のペースで見て回れないと、確かに集中して楽しめないですよね。
でも、案内は、それはそれで、人との触れ合いという、別の楽しみがあるんでしょうけど。
日本文化の良さを、海外の人に伝えることって、大切なことですよね。


>鎌倉を歩いていると時々北条執権の滅亡の場所などの歴史に行きあたります。新田義貞等、鎌倉から室町幕府に移動していく時期の遺跡も有り興味深いです。
>その後の足利尊氏の時代はやっぱり鎌倉より優雅ですね。

鎌倉は、一度きりしか行ってないですが、若い学生の頃でしたから、あまり吸収できていなかったと思います。
今行けば、また、違った見方も出来るだろうし、一度、鎌倉には行ってみたいと思っています。
(2013年06月09日 22時17分05秒)

Re[1]:尊氏の寺(06/02)   gundayuu さん
ほほえみ塾さん
こんばんわ~

>梅雨の合間のあじじいい~~な日にウンザリしています。
>こういう日は外に出るのも億劫になります。
>でもって、、早朝ウオーキングは4時台に行くことにしました。
>我が家が近づく頃に太陽がオレンジ色の光を輝かせながら
>私を照らしたら手を合わせて祈ります。
>特に何ということを祈るではなく、、
>ただ太陽のまばゆさに感謝の念が湧いてきます。
>生かされているんだ!!
>ということを実感しますね。

生かされていると感じること、大切ですよね。
どうしても、愚痴やら不満やらばかり、思ってしまう。
有難いと思えるようになりたいものですね。

>徳川幕府のように盤石の礎を築くには、徳川家康の人質時代の苦労があったればこそ、どうすれば徳川政権が長く続くのかということも、長い忍従の生活の中で培われたと思います。
>室町と言う時代はまだまだそういう礎を築くには時期早尚だったのでしょうね。

家康も幼少期には色々な苦労をしてきていますから、それが、後年、色々なところで役に立っているのだと思いますね。
室町では時機早尚、確かにそれは言えると思います。

>それにしても暗殺2名都を追われた将軍4名というのは、世の中が落ち着いてないのですから仕方ないとしても、それで15代もよくよく続いたと感心します。

そこが日本の歴史の独特なところ。
権威を利用して、自らの基盤の根拠にしようとする。
権威を利用しているものだから、それを倒すわけにはいかなかったのだと思いますね。

>歴史を振り返ると、それぞれの時代の積み重ねの上に今という時代があるんだと思いますね。先人から学ぶことは多いと思います。
>私も今世、体験したことは歴史の上から見れば
>塵芥の如きですが、それでも何か残せるものは残したいと切に思います。
>gunndayuuさんのブログは、様々な歴史があることを教えて下さる貴重な存在です。
>いつもありがとうございます&lt;(_ _)&gt;
>日中夜間の寒暖の差が激しい日が続いています。
>お体ご自愛くださいませ。

いえいえ、こちらこそ、いつも色々なことを気付かせてもらっています。
有難うございます。
ほほえみ塾さんも、健康に留意してお過ごしください。
(2013年06月09日 22時26分54秒)

Re:尊氏の寺(06/02)   gundayuu さん
KAZNYさん
こんばんわ~

>紹介ありがとうございます。
>足利将軍家の菩提寺、見逃していました。15人の将軍の木造はぜひ見てみたいです。


足利将軍の木像は、それぞれに個性が出ていて、なかなか良かったです。
徳川15代の像というのはないですから、足利将軍というのも、意外と地味に崇敬されていたということなのかも知れないですね。
(2013年06月09日 22時29分11秒)

Re:尊氏の寺(06/02)   等持院執事 さん
初めまして、等持院の執事でございます。
足利歴代将軍木像の安置場所の霊光殿は撮影禁止になっております。
入り口に1ヶ所、中に看板2ヶ所、正面に1ヶ所撮影禁止の注意書きが必ず目に入るようになっておりますので霊光殿内の写真を削除して頂けませんでしょうか?
(2013年10月28日 09時38分52秒)

Re[1]:尊氏の寺(06/02)   gundayuu さん
等持院執事さんへ

入口から雰囲気だけでもというつもりだったのですが、申し訳ございません。別の写真に差し替えさせて頂きました。

(2013年10月28日 22時54分26秒)

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