ミヨー:独奏楽器と管弦楽のための作品集
ポール・メイエのクラリネットと指揮、それに彼の友人達との協奏曲というミヨー作品集です。 普段あまり聞かない作曲家ですが、続けて聞くとミヨーという作曲家の落ち着きのなさが鼻につきました。 演奏は達者な独奏者たちとリエージュ国立フィルというベルギーの多少ローカル色の残ったオケとの演奏で、フランスのローカルムードが堪能できると思います。 最初は、サックスとオーケストラのための「スカラムーシュ」(空威張りする臆病者)。3曲の短い曲からなります。ここではアルト・サックスをフィーチャーしたバージョンが演奏されます。パリ市立ベルリオーズ音楽院の教授であるファブリス・モレッティのアルト・サックスの嫌みのない音色が心地よいです。ただ欲を言えばもう少し透明感のある音色だったらさらにすばらしかったと思います。 ■気の利いた打楽器と小管弦楽のための協奏曲 2曲目は「打楽器と小管弦楽のための協奏曲」 。これははじめてお耳にかかる曲だったと思いますが、なかなか気の利いた曲です。これは2曲の短い曲からなります。コンチェルトというよりも、ティンパにを中心としたパーカッションをフィーチャーした曲という印象です。 それほど華々しい曲ではありません。2曲目の「Modere, Vif...」の不気味な暗さがなかなかいい雰囲気ですが、最後に1曲目の主題が戻ってきてムードをぶち壊してしまいます。ゲルト・ヴェルシュレーゲンのソロは余計な修飾は加えないで、作品の姿をありのままに伝えていたと思います。 ■暑苦しくないクラリネット協奏曲 続いてはメイエの指揮とクラリネットによるクラリネット協奏曲。これもおそらくはじめて聞く曲でしたが、クラリネットの難しいテクニックも織り交ぜて楽しませてもらいました。 バックもいろいろな楽器が出たり入ったりで、なかなか賑やかです。第2楽章の推進力のある楽章が痛快です。 個人的にはミヨーというとフランスの作曲家にしては暑苦しいと感じることが多いですが、この曲は熱気だけではなく軽やかさもあり気に入りました。何かの映画のシーンが目の前に浮かんでくるような気分になります。 第3楽章「レント」のほの暗くねっとりとしたムードはなかなかいいい感じです。 終楽章のすこしシニカルなテイストを含んだラプソディックな楽想もなかなか楽しいです。 メイエのバックと一体になった独奏は素晴らしいものですが、技術上の問題でフレーズがぎこちなくなる部分(2楽章)があり惜しいです。終楽章の難しいフレーズはよくこなしていると思います。 ■多彩な引き出し 「エクスの謝肉祭」 続くピアノとオーケストラのための幻想曲という副題のついた「エクスの謝肉祭」。バレエ音楽「サラダ」(Salade)をピアノと管弦楽に編曲した作品。これはダイナミックで小気味よい作品です。 ミヨーの多彩な才能が満ち溢れていますし、ピアノとバックの息もぴったりで、南仏ののどかな風景を連想させます。 しかし、1曲1曲が極端に短く、集中力がそがれるためか、どうにも居心地がよくありません。 その中では、第3曲に「イザベル」、「ロゼッタ」という女性の名前がつけらた曲は短いながらもゆったりとした気分を味わえます。 ブックレットではストラビンスキーの「ペトル-シュカ」やイタリアの「コメディア・デラルテ」との関連性について指摘しています。 なるほど「プルチネルラ」という曲もありますし、確かにその通りだと思います。そうなると、バレエを見なければこの曲の真価はわからないのかもしれません。■騒がしく落ち着きがない作品たち 全体的に騒がしくせわしない中で、最後のヴァイオリン、クラリネット、ピアノのための「組曲」で少しは落ち着くかと思ったのですが、落ち着きません。2曲目と3曲目はヴァイオリンとクラリネットのデュオです。 フィナーレの中間部が少しだけその雰囲気が感じられますが、じっくりと歌いこむというところが少なく、いらいらしてきそうです。 このCDだけをみると、ミヨーという作曲家は前菜にはなりえても、メインディッシュにはなれない作曲家であることが理解できます。器用貧乏でしょうか、有り余る才能のためでしょうか。 以前から車で何回か聞いていました。今回このレビューを書くためにも通して一回、あと部分的につまみ聞きをしましたが、もうお腹一杯となってしまいました。ミヨーはしばらくは沢山という気分です。Scaramouche:Concertos de Darius Milhaud(RCA 88697 178602)1.Scaramouche, suite pour saxophone et orchestre, op. 165c(1939) I. Vif II. Modere III. Brazileira2.Concerto pour batterie et petit orchestre, op. 109(1929-1930) Rude et dramatique Modere, Vif...3.Concerto pour Clarinette et orchestre, Op. 230(1941) I.Anime II.Tres decide III.Len IV.FINAL, anime4.Le Carnaval d'Aix, pour piano et orchestre, Op. 83b(1924) I.Le Corso II.Tartaglia III.Isabelle IV.Rosetta V.Le bon et le mauvais tueur VI.Coviello VII.Le Capitaine Cartuccia VIII.Polichinelle IX.Polka X.Cinzio XI.Souvenir de Rio (tango) XII.Final 5.Suite Pour Violon, Clarinette et Piano(1936) Ouverture DivertissementJeu Introduction et Final Orchestre Philharmonique de Liege Wallonie-BruxellesPaul Meyer(direction,cl)Eric Le sage(p9Fabrice Moretti(as)Geer Verschraegen(perc)Tedi Papavrami(vn)