ミンコフスキ-:「カルメン」「アルルの女」
以前、車の中で耳にした、ミンコフスキの「アルルの女」。通常の組曲ではなく、劇付随音楽でした。その生まれたてのような瑞々しい音楽に強く惹かれました。録音して欲しいなと思っていたら、以外にも最近リリースされていることをHMVで知りました。 このブログを書くに当たって、調べてみたら、昨年7月29日に行われたプロムスでの演奏で、抜粋となっていました。 45分かかるもので、メゾ・ソプラノのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターも出演しています。このときの演奏は、語りも入った立派なものでした。 CDでは全曲ではなく、それに「カルメン」組曲を追加しています。 今回は語りと独唱は省かれています。第1組曲と第2組曲の間に、劇付随音楽が8曲が挿入されているという構成です。 FMで聞いた時ほどの衝撃はありませんでしたが、新鮮なことは間違いありません。相対的に音価が短く、流麗さとは反対のきっぱりとした表情が貫かられているところに潔ささえ感じられます。しかし、それが勢いだけになっているきらいがありもう少し陰影を付けた演奏にして欲しかったと思います。 手兵のルーブル宮音楽隊の力量がいまいちで、これがもっと上手い楽団ならばと思わずに入られません。アルトサックスも少し癖があり、音も大きく他の楽器とのバランスに問題があるように思いました。 まあ、南仏のローカル色は十分に感じ取れることは確かですが。。。 願わくば、第1組曲の「アレグレット」の夏の日のけだるさを感じさせる音楽などはもう少し重層的な表現が欲しかったと思います。 その中では、フルートがなかなか良かったと思います。「メヌエット」や「カルメン」」の第3幕の間奏曲でのソロはなかなか聴かせる演奏であったと思います。 第2、第3幕の付随音楽が第1組曲のあとに続きます。しかし、どれも短く、それに第1,第2組曲のお馴染みの旋律を使った物ばかりなのであまり新鮮みがありません。 オーケストレーションが色々と変えてあるだけで、新鮮みはあまり感じられません。ただ弦だけで演奏される第10曲や第12曲のメロドラマは1分にもみたいない長さながらなかなか味わいがあります。 合唱が入る曲は生命力や躍動感を感じさせ、新鮮な驚きを感じました。特にファランドールの熱狂は合唱が加わることにより、スケールアップしたと思います。 リヨン歌劇場合唱団の合唱はとてもいい感じです。ただ、合唱は独自の動きをしているわけではなく、第1組曲での楽器を合唱に割り当てたというようなオーケストレーションで、合唱の持ち味を生かし切れていなかったと思います。 第3幕の付随音楽での無伴奏で「王の行進」の旋律が合唱によって歌われる部分は、曲のエキスが提示されたようで、なかなか新鮮な驚きを与えてくれます。 通常、作曲されて版が変わるごとに荒々しさが失われてしまうのが常です。この作品の場合、第1組曲と第2幕の付随音楽は作曲者自身の音楽で、第2組曲は他人の手になるものです。 荒々しさを感じるのは付随音楽ですが、第1組曲には感じられません。その理由が余りよく分からないのですが、殆ど耳にする機会がない音楽のためでしょうか。どうもそれだけではないように思いますが、理由は分かりません。 録音は奥行きが不足していて、演奏する側にとってはなかなか辛いものがあると思います。また、テュッティで響きが混濁気味なのは少々残念です。 「カルメン」組曲も演奏の傾向は全く同じです。楽譜はペータースの改訂新版を使用しているようです。今まで聞いてきたスコアとは響きが若干違うようにも思いますが、気のせいかもしれません。普段聞き慣れないフレーズが聞こえたりすることがあります。しかし、響きの整理が不十分で、うるささばかりが感じられるところがあり、いささか問題があるように思います。 色々と、文句を並べ立てますが、この手垢にまみれた曲をこのように新鮮な解釈で提供してくれたミンコフスキーに感謝をすることはやぶさかでありません。また、ビゼーのメロディー・メーカーとしての才能も再確認させて頂きました。 このCDはプラケースではなく、110頁もの豪華なブックレットにCDが収まっているという凝った作りです。通常ボックスもののようなある程度お金を書けてもいいようなCD集の場合にはこの作りを見かけます。しかし、一枚物でこのような作りのものはあまりお目に掛かりません。ブックレットにはゴッホ、ゴーギャン、フランシス・ベーコンらの絵が載っていて、目も楽しませてくれます。 このCDはミンコフスキーの「Naive」(ナイーブ)移籍第1弾です。このレーベルを私は初めて購入しましたが、このCDだけに限って言えば値段が高いですが、内容的には十分満足できるというか、制作費を考えると、赤字に近い価格設定ででしょうか。 このレーベルは売れないものは2年ぐらいですぐ廃盤になってしまうようです。この豪華ブクレット付きののCDも限定版ですので、お買いになる場合はお早めにお求めになられては如何でしょうか。Bizet:L'arlesienne Carmen suites(naive) Bizet: Carmen: Prelude2.Interlude act 13.Interlude act 24.Interlude act 3 5.L’Arlesienne: Suite No. 1: I. Allegro deciso6.II. Minuet. Allegro giocoso (minuetto)7.III. Adagietto8.IV. Carillon. Allegro moderato9.L’Arlesienne: Ch?ur et melodrame ≪Grand soleil de la Provence≫, act I10.Melodrame et ch?ur ≪ Grand soleil de la Provence ≫, act I11.Pastorale, act II12.Choeur, act II13.Melodrame et ch?ur, act II14.Farandole ≪ Le flutet se marie ≫, act III15.Entr’acte et ch?ur ≪ De bon matin ≫, act III16.Choeur ≪ Sur un char dore ≫, act III17.L’Arlesienne: Suite No. 2: I. Pastorale18.II. Intermezzo19.III. Menuet20.IV. FarandoleLes Musisciens du Louvre GrenobleChoeur de L'0pera national de LyonMarc MinkowskiRecorded in October 2007 at MC2,Grenoble,France