Duet Chick & Hiromi
初めてこの新譜情報を見たときはどっきっとしました。チック・コリアと上原ひろみのブルーノート東京でのライブ録音が登場しました。良く知られてるように、チックとひろみの出会いは上原ひろみが17歳の時に、チックのコンサートで共演したのが初めてでした。それ以来一昨年の東京ジャズでのデュオを経て、昨年のブルーノート東京での共演と続くわけです。 一般的にデュオというと両者が火花を散らすか、お互いが寄り添って高めあうかどちらかになるわけです。今回は、その両者の良いところをあわせたような演奏ではないかと思います。 年齢から行くと親と子もしかしたら親と孫と言っても良い関係です。このような関係の場合ともすれば若い方が年長者に敬意を表した演奏になりがちです。 ここでの演奏は勿論そういう場面の方が多いかもしれません。火花を散らしているという場面はなく、ボケと突っ込みではないですが、両者のお互いの演奏に対する反応が鋭敏で、スリル満点です。それはチックはもちろんのこと、上原ひろみの懐が深いことも大きく影響していると思います。 時には、チックのバックで気の利いたフレーズでバッキングする、時にはチックをさしおいてぐいぐいスイングする等々とても30歳前の女性とは思えません。また、技巧的にもかなり高度な事をやっていますし、聞いていて興味は尽きませんん。 このCDはとても録音がよく、食器のぶつかる音や観客の拍手や歓声がなければスタジオ録音と言っても良い完成度だと思います。 曲は二人のオリジナルと、ジャズマンのオリジナル、そしてボサノヴァ、ビートルズを含むスタンダードから構成されています。モンクの「Bolvar Blues」の様に即興風なナンバーも含まれています。 オリジナルでは作曲者が主導権を握っていますが、スタンダードではどちらかというとチックが主、上原が従という関係のように思われます。しかし、そのバランスは限りなくイーブンに近いもので、上原がチックを引き立てている部分も見受けられます。 DVDを見ると、舞台下手(左側)がチック、右側が上原です。音で聞く限り、両者の違いはあまりなく、殆ど同じようなイディオムで演奏しているように感じます。上原のインタビューによると「自分以上のものが引き出されていて、こんなこと弾いたことがないという演奏があって、後で弾こう思っても弾けなかった」と語っています。チックが、彼女自身が知らなかった部分を引き出したということだと思います。 個人的には、エヴァンスの「Very Early」、ジョビンの「How Insesitive」、チックの「Windows」がとても楽しめました。因みに、この「WIndows」と「Hunpty Dumpty」は彼女のリクエストだそうです。 上原の「Old Castle, by the river, in middle of forest」では二人のテクニカルなフレーズの応酬に息詰まるような快感を覚えます。 DVDは「Fool On The Hill」と「スペイン」が収録されています。これを見ると、いかにも楽しそうに演奏している二人の姿を見ることが出来ます。この映像をみるとお互いに共演できる喜びを感じながら演奏していることがよく分かります。 ということで、近来まれにみるデュオの傑作がここに完成したことを喜びたいと思います。チックとバートンのデュオの様にこれからも続けて欲しいユニットだと思います。 ところで、このCDは国内先行発売ですが、アマゾンでは3500円のところ2975円でDVD付きの盤が購入できます。初回限定版ですので、ご興味のある方は、アマゾンに急げ! Duet:Chick & Hiromi1.Bill Evans:Very Early2.Antonio Carlos Jobim:How Insensitive3.Hiromi Uehara:Deja Vu4.John Lennon & Paul McCartney:Fool on the Hill5.Chick Corea:Humpty Dumpty6.Thelonious Monk:Bolivar Blues7.Chick Corea:Windows8.Hiromi Uehara:Old Castle, by the river, in middle of forest9.George Garshwin:Summertime10.Hiromi Uehara:Place To Be11.Chick Corea:Do Mo12.Chick Corea/Joaquin Vidre Rodrigo:Concierto de Aranjuez Spain