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カテゴリ:個別銘柄
マキ製作所は果物・野菜の選別包装システムを主要な製品とする企業です。 9月27日に民事再生手続きを申請し、10月末日付でJASDAQを上場廃止となりました。 今回はこのマキ製作所の過去の財務情報を通じて、民事再生手続きを申請しなければならないほどの状況がどの程度予見可能だったかを検証していきたいと思います。 いつものフル分析ではなくて、とりあえずEDINETから5年分の財務諸表をコピペしてみてざっくりと分析してみました。が、それだけでも十分な兆候を見出すことができました。 1.P/L 最初に四季報でこのP/Lを見たとき、04~06年のあまりの低空飛行ぶり(ぎりぎり純利益がプラス)に、「利益を作っているのではないか」という疑問が湧きました。 3年連続で純利益率が1%未満というのは狙ってもなかなかできるものではありません。 この時点では断言はできませんが、利益を作るために高い確率で棚卸資産を増やすとかの方策をとっているのではないかと推測しました。 (民事再生法銘柄だと最初から分かっていたのでバイアスがかかっていたのかもしれませんが。) また毎年、営業利益-経常利益の値が大きく、有利子負債が大きく負担となっているのではないかと推測されます。 以上の推測はB/Sを見れば確認できるはずです。 2.B/S まず目につくのが有利子負債の多さ(真っ赤)、売上債権・棚卸資産の多さです。 しかも有利子負債は短期の比率が非常に高く、苦しい状態だったのではないかと推測されます。 棚卸資産は06.3月期と07.3月期にかなり増えています(もともと多かったのですが)。製品を必要以上に生産して会計上の原価を圧縮し、利益を捻出したのではないでしょうか。 B/Sに計上される「製品」の原価はP/Lでは認識されませんから、固定費の一部をB/Sの「製品」に肩代わりさせていることになります。 ここで注意したいのは、このようなB/Sにも関わらず流動比率は100%を超えているということです。流動比率が安全性を評価する上でいかに使えない指標かということを示す好例だと思います。 なお、株主資本比率は直近で26.8%。確かに低いですけどこれだけでは危機的というほどでもないですね。 3.C/F 以上のつけはやはりCFに現れてきました。07年3月期の営業CFが大幅にマイナスになったのです。 (単位:百万円) 主なマイナスの要因はやはり棚卸資産の増加(約9億円)でした。結果、新たな短期借入金(14.5億円)に頼らざるを得ず、財務CFが大きくプラスになりました。 4.運転資金構造分析 次にSF日数を計算してみたところ、すごい結果になりました。 SF日数が381日です(ToT)。製品を作っても1年以上はお金が入ってこないことを意味します。売上債権も棚卸資産も大きすぎです。棚卸資産は、ここ2年で元々多かったのがさらに多くなってしまっています。8か月分も在庫を抱える必要はまったくなく、やはり会計上の利益を出すための策だったのではないでしょうか。 売上債権も水準が高すぎます。有報を見ると、売掛金の大半は農協が相手先です。 農協さん、もうちょっと早く払ってやってください。
他にも見るべきところはたくさんあると思うのですが(有報の注記とか)、とりあえず簡単な財務諸表の分析だけでもこれだけのことがわかりました。 印象としては確かに良くない財務諸表だけど、倒産はちょっと唐突な気がします。債務超過なわけではないし、営業CFが毎年マイナスだったわけでもないし。 ただ、SF日数を見るとやはり資金繰りがよほど苦しかったんだと見えます。会計上の利益にこだわらなければ(こだわったかというのは推測に過ぎませんので悪しからず)あるいは生き延びれたかもしれないと考えると少し残念な気がします。 以上です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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