アルディン帝国皇帝・シェーラ=アルディン在位50周年記念パーティーが、華やかに開かれた。
「偉大な我らの父、シェーラ=アルディン皇帝陛下の輝かしい御世に乾杯!」
王宮の大広間では、着飾った貴族達が笑いさざめき合っていた。
その中心には、このパーティーの主催者であるシンとエリスがいた。
「この度は在位50周年おめでとうございます、陛下。」
「ありがとう、ユリノ。こんな素敵なパーティーを聞いてくれて。」
シェーラはそう言って孫の嫁に微笑んだ。
「お礼ならエリスに言ってくださいな。彼女の助けなしではパーティーの準備は出来ませんでしたわ。」
シンはエリスに微笑みながら、彼女の肩を叩いた。
「エリス、ありがとう。」
「いいえ、わたしはユリノ様のお手伝いをしただけですから。」
初めて会う皇帝に感謝の言葉を述べられ、エリスは恐縮しながらもそう言って俯いた。
「ここでは自分の手柄を自慢気に話す輩が多いというのに、お前のような謙虚な者は見たことがない。」
「お褒めにあずかり光栄です。」
シェーラが上機嫌で取り巻き達と去っていくのを見送った後、エリスはほっと溜息を吐いた。
「緊張した?」
「ええ、とても。」
「大丈夫、さっきの様子だとあなたの事をお祖父様は気に入られたみたい。」
「そうですか。」
「そのネックレス、とても似合っていてよ。」
シンはエリスの胸元を美しく彩っている蹄鉄型のネックレスを見た。
「これは、姉の形見なんです。真珠の首飾りをつけようかと思ったんですが、いけませんでしたか?」
「いいえ。それよりもあなたにお姉様がいらっしゃるなんて、初耳だわ。」
「わたしも姉のことを神官長様から聞いたのは数日前です。どんな人だったのか、全く記憶がなくて。」
「そう。わたくしには弟がいるのだけれど、7年間も会っていないわ。今どうしているのかわからない・・」
シンがそう言って周りを見渡していると、1人の女が自分とはさほど遠くない所に立っていた。
じっと女を見つめていると、彼女と視線がぶつかった。
(レイ、どうしてこんなところに!?)
7年もの間生き別れていた弟と、まさかこのような場所で再会するなんて。
「ちょっと失礼。」
シンはそう言ってエリスから離れると、女の元へと向かった。
女はじっと自分を見つめると、シンの手をそっと握った。
「少しあちらでお話ししません?」
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