「エリス、待って!」
シンは大広間から出ていったエリスの後を慌てて追いかけていった。
だがエリスはシンの声を聞いても振り向きもせず、ただひたすら彼女は走っていた。
「エリス!」
シンがやっとエリスに追いついたのは、園遊会でユリシスに呪いをかけられた、あの忌まわしいコテージの前だった。
「どうしたの? 一体何があったの?」
「そんな・・どうして彼が・・」
エリスはぶつぶつと言いながら、ネックレスを指先で何度も弄っていた。
「エリス、あいつが言っていたことは嘘よ。」
シンがそう言ってエリスの肩に手を置いた時、ゆっくりとエリスは俯いていた顔をあげた。
「エリス?」
シンはエリスに起こった異変に、漸く気づいた。
エリスの美しかった肌に、鱗のようなものがついていた。
「エリス、じっとして。取ってあげるから。」
シンはそっと、エリスの右頬に張りついている鱗のようなものを素早く取った。
「ユリノ様、わたしどうしてここに?」
狂気で濁っていたエリスの瞳が、徐々に本来の美しい色を取り戻し始めた。
「覚えていないの、エリス? あいつに何か言われて、急に大広間から出ていったのよ。」
「いいえ、全く覚えてません。」
エリスはそう言って眉間を押さえた。
「行きましょう、ここはなんだか空気が悪いわ。」
「ええ、そうですね。」
コテージから離れようとしたシンの手首を、エリスはそう言うなり強く捻り上げた。
「痛い、エリス、何するの!」
シンが悲鳴を上げてエリスを見ると、エリスは瞳を禍々しく光らせながら、彼を睨みつけていた。
「油断大敵だね。」
涼やかな笑い声とともに、ユリシスが闇の中から姿を現した。
「エリスに一体何をした!」
「さっき彼女の魂の一部を、少し操ったのさ。この指輪でね。」
ユリシスは指輪をシンに見せながら嬉しそうに言うと、再び笑った。
「エリスを元に戻せ!」
「そうするつもりだ。君がリンの首飾りを渡してくれるならね。」
シンはユリシスを睨みつけた。
「この卑怯者!」
「何とでも言えばいい。わたしは君の大切な友人が死んでも、何とも思わない男だからね。」
「ユリシス、そいつ誰?」
シンとユリシスが互いに睨み合っていると、突然コテージのドアが開いて銀髪金眼の青年が出てきた。
「お前が、リンの生まれ変わり?」
青年はそう言って、シンをじろりと睨んだ。
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