加虐表現が含まれます、苦手な方は閲覧なさらないでください。
鹿鳴館の夜会から戻った土方を待っていたのは、不審者が邸に侵入したという斎藤からの報告だった。
「それで、奴は何処に居る?」
「わたしの部屋に閉じ込めておきました。」
「案内しろ。」
斎藤の部屋へと向かうと、中からスペイン語で会話する男女の声が聞こえた。
男の声には聞き覚えがないが、女の声は千尋のものだった。
英国留学時代にフランス語やドイツ語、イタリア語などを習得していたが、スペイン語は全く解らなかったので、千尋が男と何を話しているのかが把握できなかった。
「煩せぇな、一体ぇ何の騒ぎだ?」
「だ、旦那様・・」
ドアを開けると、椅子に手足を縛りつけられた青年と千尋が抱き合っていた。
「千尋、主の出迎えもせずに男とイチャついてるたぁ、随分と余裕だな?」
土方がそう言って口端をあげて笑うと、千尋は顔を赤く染め、青年から離れた。
「違います旦那様、彼は孤児院で一緒だったんです!」
「そうか。で、そいつと何を話してたんだ? スペイン語じゃなく、ちゃんと日本語で話しやがれ。」
『何だこいつ、偉そうな態度だな。』
『ロゼ、黙って!』
千尋はそう言うと、ロゼの口を塞いだ。
「彼は今までわたしを探していたそうで・・彼は、あの雪の夜に旦那様に連れられて車に乗るわたくしを見たそうです。」
「ふぅん・・妹会いたさに人ん家に忍び込むたぁ、大したタマだなぁ? 上手い嘘を吐きやがる。」
土方は青年を睨みつけると、土方に向かって唾を吐きかけた。
「生意気な餓鬼だ。斎藤、暖炉から火掻き棒と焼印を持って来い。」
「かしこまりました。」
斎藤はそう言うと、部屋から出て行った。
「さぁて・・夜は長ぇからお前ぇがこの家に忍び込んだ目的を聞くまで楽しめそうだな。」
「俺を、拷問するってのか? 面白ぇ、やれるもんならやってみろよ!」
そう土方に言い放ったロゼだったが、翡翠の双眸は恐怖に怯えていた。
「旦那様、失礼いたします。」
部屋に戻ってきた斎藤は、熱せられて赤くなった火掻き棒を土方に渡した。
それを握ったまま、土方はゆっくりと腰を屈めてロゼの眼前に翳した。
「斎藤、シャツを脱がせろ。」
斎藤はロゼに近づくと、乱暴に彼が着ていたシャツを引き裂き、肌を露わにした。
「やめろ、やめてくれ!」
「煩ぇヤツだな。次はその舌を引き抜いてやろうか?」
土方は嗜虐的な光を黒い瞳に宿しながら、ロゼの胸に火掻き棒を押し付けた。
肉が焼ける嫌な臭いと、手負いの獣のような叫び声を上げながら、ロゼが白目を剥いて暴れた。
凄惨な光景を目撃した千尋は激しい吐き気を堪える為に両手で口元を押さえて俯いた。
「これで終わりだと思うなよ? 次は地下で徹底的に痛めつけてやる。」
「おやめください、旦那様! ロゼはわたくしを訪ねに来ただけなのです!どうか、これ以上は・・」
「駄目だ。邪魔立てするなら千尋、お前ぇも容赦しねぇぜ。」
土方は静かな口調でそう言って千尋を見た。
あの雪の夜に女衒に向けた、獰猛な狼の目が自分を仕留めようとしていた。
『チヒロ、そいつは本気だ!』
千尋はちらりとロゼの、焼け爛れた胸の火傷を見た。
『大丈夫、わたしに任せて。』
彼女はそう言うと、夜着を脱いで一糸纏わぬ姿となった。
「何の真似だ?」
「お願いです、旦那様。彼の代わりにわたくしに焼印を押してください。」
「・・そんなに、こいつのことを・・」
土方の美しい顔が嫉妬と苦悶が綯い交ぜとなって歪み始めた。
「斎藤、焼印を持って来い。」
「旦那様、本気ですか!?」
斎藤の端正な美貌が引き攣り、声が若干裏返った。
「早く持って来い!」
土方に怒鳴られ、斎藤は慌てて部屋から出て行った。
「お前、本気なのか?」
「はい・・」
本当は怖くてその場から逃げ出したかったが、ロゼを守る為に千尋は彼の代わりに拷問を受ける決意をした。
「千尋、歯ぁ食い縛れ。」
土方はそう言って千尋の顎を掴んだ。
「はい・・」
「旦那様、本気で焼印を押すつもりですか? どうか、おやめになってください。」
「斎藤、お前の主は誰だ?」
「それは・・」
「俺に逆らうな。」
そう言って斎藤の手から真っ赤に燃えた焼印を奪い、それを千尋の胸の前に翳すと、彼女の鎖骨の下にそれを押し付けた。
白い千尋の柔肌から白い煙が上がり、肉が焼ける臭いが部屋に充満した。
声を上げないように唇を噛み締めていると、鉄錆の味が口内に広がった。
全身が熱い。
まるで生きながら炎に焼かれているようだ。
土方がそっと焼印を千尋の胸から離した後、彼女は糸が切れた操り人形のように床に倒れ、気絶した。
「この野郎、殺してやる!」
怒りで顔を歪ませ、ロゼは土方に向かって怒鳴った。
だが彼はそっと千尋を抱き上げると、斎藤の部屋から出ていった。
「ったく、肝が据わった小娘だ・・」
自分の寝台に千尋を横たわらせると、土方はそっとその上にシーツを掛け、寝室から出て行った。
「あなた、抱いてくださいな。」
総美の寝室へ行くと、彼女はそう言って土方に抱きついてきた。
「・・この淫乱が。」
土方は総美を寝台の上に押し倒すと、彼女の身体を貪った。
土方さんの嗜虐的な性格が垣間見えました。
そして、ロゼに嫉妬する土方さんの姿も。
少しずつ千尋に惹かれているのでしょうか。
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