『妹を迎えに来た。彼女は何処に居る?』
そう言ったアンドレイの翡翠の瞳は、冷たく光っていた。
『あいつはまだ学校だ。言っておくけどな、俺はお前らになんか千尋を渡さねぇよ。』
土方がアンドレイを睨むと、彼は口端を歪めて笑った。
『お前が何を言おうが、チヒロは僕がロシアに連れて帰る。彼女にはしかるべき家柄の男と結婚させるつもりだ。』
『お生憎様だが、そうはいかねぇよ。俺ぁあいつを妻に迎えるつもりだ。』
『なんだと・・』
アンドレイの美しい眦が吊り上がり、白皙の美貌が怒りで赤く染まった。
『ふざけるな、農民上がりの商人が、貴族の娘を・・僕の妹を妻に迎えるなど、そんな事は父上も僕も決して許しはしない!』
アンドレイの言葉は、土方の逆鱗に触れた。
「斎藤、刀を持って来い。」
「旦那様、どうか落ち着いてください。」
「煩せぇ、さっさと刀を持って来い! こいつを殺してやる!」
怒りに滾った黒い瞳で土方がアンドレイを睨み付けると、先ほどまで威勢が良かった彼の顔が蒼褪め始めた。
「旦那様・・」
斎藤はあの時のように―菱田を殺そうとした時のように、土方が全身に殺気を纏っていることに気づいた。
自らの汗と努力の結晶である今の地位を、“農民上がりの商人”と称され、気位の高い土方は傷つくと同時に、激しい怒りをアンドレイに抱いている。
今ここで刀を渡したら、間違いなくアンドレイは刀の餌食となってしまうだろう。
邸で流血沙汰は何としても斎藤は避けたかったが、かといって土方を止める術が見つからなかった。
「斎藤、俺の言った事が聞こえねぇのか!?」
「では旦那様、失礼致します。」
部屋を出た斎藤は、これからどう土方を止めようかと考えながら廊下を歩いていた時、千尋がこちらへと向かって来ていることに気づいた。
「斎藤さん、どうなさったんですか?」
「千尋君、落ち着いて聞いて欲しい。実は君のお兄様が・・」
斎藤がそう言った時、部屋から銃声が聞こえた。
「旦那様!」
千尋と斎藤が部屋へと入ると、そこには右手を押さえて呻く土方と、呆然とそれを見つめるアンドレイの姿があった。
「畜生・・暴発しやがって。死のうと思ったのによ。」
土方は乾いた笑みを浮かべながら、千尋を見た。
「旦那様?」
何処か彼の様子がおかしいと気づいた時には、もう遅かった。
「俺はお前のもんだ、千尋。」
狂気に満ちた目で土方が千尋を見ると、彼は乱暴に彼女の着物を肌蹴させ、乳房を露わにすると、桜色の乳首に噛みついた。
「旦那様、おやめください!」
慌てて斎藤が土方を止めようとしたが、彼は千尋の袴を脱がすと、まだ乾いている彼女の蜜口へと己の猛ったものを宛がった。
「やめて、やめてください・・」
「煩せぇ、黙ってろ。」
土方から懸命に逃れようとした千尋だったが、逞しい腕に腰を固定され、身動きが取れぬまま彼に貫かれてしまった。
「痛い、痛い!」
「お前は俺のもんだ、千尋!」
「いい加減にしてください、旦那様!」
斎藤が千尋を土方から救い出すと、彼女の白い内腿が鮮血で濡れていた。
「千尋君、部屋へ行ってなさい。」
「はい・・」
千尋は斎藤の部屋から出て行くと、土方に犯された痛みと恐怖に震え、激しい吐き気に襲われた。
指の間から吐瀉物が伝って床に落ちるのを眺めながら、千尋は意識を闇に堕とした。
土方さんが壊れてしまいました。
今まで必死にこらえていたものが一気に崩壊したような感じですね。
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