「ん・・」
美津が目を覚ますと、そこは四郎の実家だった。
「姫様、気がつかれましたか?」
そう言って四郎の母・りつが美津の額に水で濡らした布を当てた。
「四郎は・・?」
「四郎なら、大丈夫です。薬師が来て手当てをして・・姫様の隣で寝ていますよ。」
「そう・・」
そう言って美津は起き上がろうとしたが、背中に激痛が走った。
「うっ・・」
「いけません、姫様、今動いては!」
りつはそう言って美津に水を差し出した。
「喉が渇きましたでしょう?これを飲んで、お休みになられてください。」
「ありがとう、りつさん。」
美津は水を飲むとすぐに、眠りについた。
四郎は目を開け、布団から起き上がろうとしたが、全身に激痛が走り、思わず呻いた。
ふと隣を見ると、美津が安らかな寝息を立てて眠っている。
彼女の顔にはところどころ返り血がついている。
それを見た瞬間、あの林での光景を思い出した。
澪が刺客の中にいたことや、自分の首筋を刺したことも。
だがそれからのことは、全く覚えていない。
だからどうして、美津がここにいるのかがわからない。
衣紋掛けには、林の中で着ていた美津の着物がある。
もともと薄紅色だったそれは、血を吸って緋色へと色を変えている。
(一体あの林の中で何があったんだ!?)
四郎はいつの間にか着物を裂くほど握り締めていた。
「四郎・・?」
背後から声がして振り向くと、美津が布団から起き上がって心配そうな表情を浮かべて自分を見ていた。
「姫様、お体の方は・・」
「大丈夫、それよりも、お前は?」
「薬師の治療で大事には至りませんでした。姫様、この着物ですが・・」
「ああ、これね。」
美津はそう言って着物を撫でた。
「この着物に付いている血ね、わたしが殺した人達の血なの。」
美津はフッと笑って四郎を見た。
「昨夜四郎が澪に刺されたとき・・わたしキレちゃって・・気が付いたらわたし、みんなを殺してた・・」
そう言って笑う美津の頬は、涙で濡れていた。
「わたし、噂どおりの鬼姫なのね・・」
「姫様・・」
四郎は美津を抱きしめた。
「申し訳ございません、姫様・・わたしのせいで、姫様が・・」
「何を謝るの?わたしが悪いのに・・」
「姫様、わたしは姫様を悲しませるようなことはいたしません。」
四郎はそう呟いて美津の涙を拭った。
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Last updated
2012.03.07 15:52:00
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