「お爺ちゃん!」
「アレックス、来たのか。」
アレックスが祖父が入院している病室に入ると、彼はもう帰り支度を済ませているところだった。
「もう怪我は大丈夫なの?」
「ああ。お前の誕生日祝い、途中で台無しになったから、これからやり直そうと思ってたんだよ。お前さえよければ、いいんだが・・」
「うん、いいよ!お爺ちゃん大好き!」
アレックスはマックスを抱き締めると、彼は少しむせた。
その後、二人は病院を出てバスで大型家電量販店へと向かった。
「さてと、どれがいい?お前が好きなのを選んでいいぞ。」
「そうだなぁ、このラップトップがいいな。」
「そうか。」
誕生日に念願のラップトップを買って貰ったアレックスは、昨夜のパーティーのことなど忘れてしまった。
「ねぇお爺ちゃん、昨日『ジャーヘッド』に行ったんだけど・・」
「あそこに行ったのか、アレックス?」
夕食の席でアレックスが祖父に『ジャーヘッド』に行ったことを言うと、彼は渋い顔をした。
「うん。それで、お爺ちゃんがママを探してるって聞いて・・」
「あそこにはジャネットが働いているからな。そうでなかったら滅多に行かん場所だ。」
「そうだろうね。」
まだ本調子ではない祖父を刺激してはいけないとアレックスは思いながら、スイートティーを飲んだ。
「メグが居なくなってもう3ヶ月だ。あいつが一体何処で何をしているのか、知りたいんだよ。」
「それは俺だってそうだよ。突然黙っていなくなったんだもん。あぁ、そういえばあの女が来たよ。」
「あの女?」
「俺の家族の平穏を壊した赤毛の悪魔だよ。」
「キャサリンが?」
「何でも、俺が心配だからって勝手にこの家に上がりこんでそこのキッチンでパンケーキを焼いてたよ。」
「面の皮が厚い女め、地獄に堕ちろ!」
マックスはそう言うと、小声でキャサリンへの悪態を吐いた。
「ママとあの女、高校時代は親友だったんでしょう?それなのにどうしてこんなことになったわけ?」
「ジャネットとメグは小さい頃から互いの家を行き来するほど仲が良かった。だがあの女はジャネットとは反りが合わなかった。まぁ、その理由は当人達でしかわからんが。」
全ての父親が、女子高生であった娘達の生活を把握している訳がない。
「ジャネットにも会ったよ。相変わらず元気そうだった。」
「そうか。今度家に呼んで夕食でも食べよう。あいつは離婚して一人暮らしだからな。たまには話し相手も必要だろう。」
「そうだね。今度誘ってみるよ。」
夕食の後、アレックスは真新しいラップトップの設定を終え、それを起動した。
インターネットに接続すると、彼はすぐさま失踪者サイトで母の名を探し始めたが、ヒットしなかった。
一体母は、何処に居るのだろう。
アレックスが母の手かがりを少しでも掴もうとグーグルで検索していると、メール着信を告げるアラームが鳴った。
メーラーを起動させたアレックスは、スマートフォンに来ていたものと同じメールがあった。
“気をつけろ、アレックス、お前はもうすぐ死ぬ。”
一体誰の悪戯なのかわからないが、このラップトップのメールアドレスは設定したばかりだった。
メールアドレスを知っているのは設定したアレックス本人だけだ。
質の悪いチェーンメールだろうか―彼はすぐさまメールを削除した。
「アレックス、どうしたんだ?」
「さっき変なメールが来たんだよ。気味が悪いったらないよ。」
「そうか。最近はラブレターを装ったウィルスメールがあるからな。」
「お爺ちゃん、詳しいんだね。」
「わしを馬鹿にするな。」
マックスはそう言うと大声で笑った。
「お休み、お爺ちゃん。」
「お休み、アレックス。」
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