大雪の所為で店を閉める羽目になったラリーは、ウォルマートで買った食料品を冷蔵庫に入れると、ステーキをフライパンの上で焼き始めた。
今夜は特別な客が来るから、ディナーには奮発して高い肉を買った。
ラリーは焼いたステーキを皿に載せ、ディナーセッティングしたテーブルの上に置いた。
もうそろそろ客が来る頃なので、クローゼットから黒いドレスを取り出してそれに着替えた。
数分後、裏口のベルが鳴ったのでラリーは客を迎え入れた。
「いらっしゃい、待ってたよ。」
ラリーはそう言って客に微笑んだ。
「ねぇ、今日はどうしたの?いつもはしゃべるのに、今日に限って口数は少ないね。」
「まぁな。色々としないといけないから。」
「へぇ・・」
「それよりもお前、ハノーヴァー家の娘に色々とよからぬことを吹き込んでいるようだな。」
「何のこと?」
「とぼけても無駄だぞ。」
男はそう言って立ち上がると、ラリーの背後に回りこんだ。
「どうしたの?」
「お前に良いプレゼントをやろう。」
「ふぅん、楽しみだな。」
「目を閉じていろ。」
ラリーは男の言われたとおりに目を閉じた。
まさか、それが命取りになるだなんて思いもせずに。
「やめて、ジャック!この子には手を出さないで!」
「うるさい、メグ!お前がぐずぐずしているからいけないんだ!」
鷲鼻の男・ジャックはそう言うとメグを邪険に突き飛ばした。
「ママ!」
「行くぞ!」
「やめて、離してよ!」
タンバレイン家に突如現れたハノーヴァー家当主・ジャックはアレックスの手を掴んで無理やりリビングに出て行こうとしたが、ルナにそれを阻まれた。
主人の危機を察した彼女は、思い切りジャックの腕に爪を立てた。
「何をする!」
「こいつには手を出すな!」
ルナを払いのけようとするジャックを、ウォルフは突き飛ばした。
「メグ、俺達と三人だけで話をしたい。」
「ええ、いいわ・・ジャック、お願いだから20分待って。」
「5分だ。」
「いいえ、20分よ。さぁ行きましょう。」
メグはジャックに背を向けると、ウォルフたちとともに二階へと上がっていった。
「アレックス、今まで連絡も取らないでごめんなさいね!」
部屋に入るなり、メグはそう言ってワッと泣き出した。
「ママ、一体何があったの?おじいちゃんの養女だというのは本当?」
「誰からそれを?」
「ラリーから。」
「そう、ラリーから・・」
メグは少し考え込んだ後、溜息を吐いた。
「アレックス、こうなったらあなたに全てを話すわ。わたしのことや、あなたの本当のお祖父様について。」
「わかった・・」
メグはそっとアレックスの手を握ると、近くのソファに腰を下ろした。
「何か飲む?」
「いえ、いいわ。」
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