激しい剣戟の音が、冬の森にこだまする。
ステファニーはレパードに致命傷を与えようとしたものの、レパードはまるで遊んでいるかのようにステファニーの攻撃をかわしてゆく。
「ふん、つまらないな・・」
「うるさい!」
ステファニーがそう叫んで刃を彼に向かって振り翳すと、レパードは煙のように掻き消えた。
(一体あいつは何処に?)
“ハンガリーで戦うのは俺ではない、あいつらだ。”
突然森の中からレパードの声が聞こえたかと思うと、森の奥からパリで見たゾンビが現れた。
彼らは鋭い牙を剥き出しにしながら、ステファニーに襲いかかって来た。
「これで全部、倒したか・・」
一方、城の地下室に囚われていたエドガーは監視の目を盗んで監禁されていた部屋から脱出し、壁に掛けてあった長剣でゾンビの首を刎ねた。
出口へと向かおうとした彼は、途中で動物の唸り声を聞いて立ち止まった。
(何だ?)
エドガーが唸り声の聞こえる方へと向かうと、そこにはゴリラやチンパンジー、ベンガルドラや狼など、様々な動物が狭い檻の中に閉じ込められていた。
パリのバロワ伯爵邸の温室を彷彿とさせる実験場のドーム型の天井を見上げながら、エドガーは何故こんな所に動物達が集められているのかがわからなかった。
だが、今すぐここから出た方が良さそうだ。
エドガーが実験場から出ようとした時、檻に閉じ込められていたマウンテンゴリラが鉄製の柵を突き破り、胸を叩きながら彼の方へと迫って来た。
エドガーはマウンテンゴリラが自分に向かって拳を振り上げるのを見て、その隙を狙いゴリラの胸に長剣を突き立てた。
ゴリラは悲しげに吼えると、そのまま地面に倒れて動かなくなった。
「貴重なサンプルに何てことをしてくれたんですか?」
「ここは一体何だ?」
「わたしの実験場ですよ。」
ラスプーチンは、そう言うと地面に倒れたゴリラの脇腹を蹴った。
ゴリラが完全に息絶えているのを確認した彼は、ゆっくりとエドガーの方へと近づいた。
「ああ、あなたに紹介したい人が居るのですよ。」
「誰だ、そいつは?」
「アリエル。」
ラスプーチンが奥に隠れていたアリエルを呼ぶと、彼女はすっとエドガーの前に姿を現した。
「この男を殺しなさい。」
「はい、ご主人様。」
アリエルは生気のない目でエドガーを睨むと、二本の短剣を構えた。
「貴様、彼女に何をした?」
「これから死ぬあなたには知る必要がないでしょう?」
ラスプーチンはそう言うと、実験場から出て行った。
彼は実験場のドアに鍵を掛け、その場から離れた。
いずれ動物達が新鮮な餌に襲い掛かることだろう。
その瞬間を見られないのが残念でならないが、ラスプーチンにはまだやり残した仕事がある。
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Last updated
2013.09.17 13:11:53
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