動物達が興奮して吼える声が満ちた実験場で、エドガーとアリエルは刃を交えていた。
彼女の攻撃には全く隙がなく、エドガーは苦戦していた。
「目を覚ませ!」
「女とは戦いたくないってこと?馬鹿にするのもいい加減にして!」
アリエルはそう叫ぶと、エドガーの鳩尾に強烈な蹴りを入れた。
エドガーが激しく咳き込むと、間髪入れずにアリエルがエドガーの喉元に短剣を突き付けた。
「大人しく降参しなさい。」
「君はどうして戦うんだ?」
「わたしはこうするしか、生きられないの。」
「そんな・・」
「あなたのような人にはわからないでしょうね、本当の貧しさがどんなものか。差別っていうのが、どんなに理不尽なものか!」
アリエルはそう叫ぶと、涙を流した。
「わたしは、ジプシーに生まれたというだけで社会から爪弾きにされ、罪人の濡れ衣を着せられた!貴族のあなたには、決してわからないでしょうね、わたしの苦しみは!」
「済まない・・」
「謝って欲しくなんかないわ!」
エドガーはアリエルの肩に手を伸ばそうとした時、檻の中に居た動物達が一斉に騒ぎだした。
「なに・・」
「早くそこから離れろ!」
エドガーはアリエルに警告を発したが、遅かった。
檻から出たベンガルドラは、鋭い牙と爪で彼女の頸動脈を切り裂いた。
大量の血を流しながら、アリエルは地面に倒れた。
「おい、しっかりしろ!」
「ご主人様・・」
アリエルは痙攣したかと思うと、そのまま死んだ。
一体ここで何が起きているのか―エドガーが周りの状況を観察しようとした時、アリエルを襲ったベンガルトラが舌なめずりをしながら新たな獲物に狙いを定めていた。
エドガーはトラを睨み付けると、彼の鋭い牙と爪の餌食となる前に、剣でその首を刎ねた。
彼はアリエルの遺体を運ぼうとしたが、既に彼女の遺体には他の動物達が群がり始めていた。
エドガーは、ステファニーの身を案じた。
彼女が危ない。
一方、森の中でゾンビと応戦するステファニーは、三人目のゾンビの首を勢いよく刎ねた。
ドレスはゾンビ達の返り血を浴びて真っ赤に染まり、ステファニーは体力を激しく消耗させながら“報復の刃”を構え直した。
だが倒しても、次々とゾンビが森の奥からやってきてキリがない。
(どうすれば・・)
ステファニーが焦りを感じていた時、ふっと誰かが自分の近くに立った気配がした。
「ステファニー・・」
「マサト、どうしてこんな所に?」
数ヶ月振りに会った友人の目は焦点が定まらず、何処か挙動不審な様子だった。
「ステファニー、僕から離れてくれ・・」
「え?」
ステファニーがそう言ってマサトの方を向き直ると、彼は突然白目を剥いて叫びだした。
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Last updated
2013.09.17 13:13:31
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