カテゴリ:文学
7歳年上の兄がいる。
兄と私。高校までは全く同じ学校を出ている。しかしそこから後が大きく異なる。 兄は地元の国立の工学部に進んだ。卒業後は空調設備会社と化学系メーカーに勤務しずっと技術畑の仕事をしていた。4人の子供がいる。今では実家の土地で農業などしながらゆったりと暮らしているようだ。 私は都内の私立学校の文学部に入った。卒業後は輸送機器メーカーと内装デザイン・工事会社に勤務し営業畑の仕事しかしたことがない。子供なし。都内に何となく住み着いて今では小さい飲食店を営んでいる。 兄を誘って大手拓次の詩碑を見に行った。 兄に電話をかけて頼んだ。「磯部に大手拓次の碑がある。前の職場の近くじゃないか?連れて行ってくれ。」兄は快く引き受けてくれた。ただし大手拓次のことは知らなかった。 磯部周辺を兄は熟知している。詩碑の場所も少々調べただけですぐにわかったらしい。 130717水曜日。兄の運転する自動車に乗り実家を出発する。地元での生活が長いこともありスムーズな運行である。 磯部に着く。無料で駐車できる場所から「大手拓次の碑のことを友達と集まる場で聞いてみたら意外にみんな知っていた。」などと話しながら歩く。目的としていた詩碑はすぐに見つかる。鉄製のモビールのようなモニュメントも置かれ異彩を放っている。 「このあたりは良く来た。」と言う兄に随行して磯部の温泉街を散策する。直射日光の強い平日の昼下がり。人通りは少ない。温泉場独特の古びれた雰囲気に拍車がかかるようだ。しかしそれが心地良い。 歩を進めるうちに墓地が見えてくる。「もしかしたらここに大手拓次の墓があるかもしれない。」と私は兄に言う。どこかで読んだことがあるのだ。詩碑からそう遠くない場所に墓があるらしいと。 豪華な墓標が並ぶ中に2人で足を踏み入れる。磯部には大手姓が多いようだ。「これも大手さん。」「また大手さんだ。」と言いながら進む。 兄が「あった。」と言う。赤みがかった御影石。「大手拓次の墓」とある。兄に先に見付けられたことが少しくやしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.07.20 19:48:20
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