4月に観た映画B
後半の4作品です。 「わたしは、ダニエル・ブレイク/(原題)I,DANEL BLAKE」 80歳のケン•ローチ監督が引退宣言を撤回して取り組んだ。その作品は、決して不屈の闘志を持った男の物語ではない。歴史上大きな出来事じゃない。けれどもとても大切なことだった。 「私は、ダニエル・ブレイクだ。人間だ。犬じゃない。‥」 「保護なめんなジャンパー」が作られた小田原市。今回検証委員会が作られた。雨宮処凛さんも元受給者も参加している誠実な委員会らしい。そのことはいいのだが、あのジャンパーが作られるのは(あの事以外にも)其れなりの土壌があったということがその委員会で指摘されている。例えば、最初に申請者に渡す「説明パンフ」。役所言葉で埋め尽くされているらしい。「こういう義務がある」「こういう場合は打ち切られる」等々の申請を諦めさす記述が続いているともいう。これでも問題発覚後の修正すみのパンフらしい。役人たちが何を考えて仕事しているのか、よくわかるエピソードではある。 この一つだけとっても、対岸の火事じゃない。 一人でも多くの人に見て欲しい作品。 (解説) ケン・ローチ監督が二度目のカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた社会派ドラマ。ダニエルは心臓疾患により医師から仕事を止められるが、複雑な制度に翻弄され支援を受けられない。手助けしたシングルマザーの家族と交流を深め、貧しくとも支え合うが……。一貫して社会問題に目を向けてきたケン・ローチ監督は「ジミー、野を駆ける伝説」を最後に劇映画からの引退を表明していたものの、拡がる格差や貧困を鑑み、引退を撤回し本作を制作した。 (ストーリー) イングランド北東部にある町ニューカッスルに住む大工のダニエル・ブレイク。59歳の彼は心臓に病が見つかり、医師からは仕事を止められてしまう。しかも複雑な制度に翻弄され、国の援助を受けられない。そんな中、二人の子供を抱えるシングルマザーのケイティを助けるダニエル。それをきっかけに彼女たちと交流し、貧しくとも助け合い絆を深めていくが、厳しい現実を前に次第に追い詰められていく。 2017年4月16日 シネマ・クレール ★★★★☆ 「トレインポスティング2」 実はこれを観る前日に、「T1」を初めて観た。私はこの作品は、ヤク中の若者を通じて、閉塞感あふれる社会を風刺しているものだとばかり思っていた。ところが「T1」も「T2」も、どちらも閉塞感なんてない。風俗は思いっきりある。20年経って、風俗は思いっきり変わったのに、彼らは全く変わらない。いや、少しだけ落としどころと知恵がついて、体力がなくなって、直ぐに息切れがするところが変わったところか。 前作は名作だという。今作は、前作をなぞるだけだった。名作のコピーは佳作になるかもしれないが、私には名作ではなかったので、佳作にもならない。 ■ あらすじ かつてレントン(ユアン・マクレガー)は、麻薬の売買でつかんだ大金を仲間たちと山分けせずに逃亡した。彼が20年ぶりに故郷スコットランドのエディンバラの実家に戻ってみるとすでに母親は亡くなっており、父親だけが暮らしていた。そして悪友たちのその後が気になったレントンが、ジャンキーのスパッド(ユエン・ブレムナー)のアパートを訪ねると……。 ■ 解説 『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーを手にしたダニー・ボイル監督作『トレインスポッティング』の続編。前作から20年後を舞台に、それぞれワケありの主人公たちの再会から始まる物語を描く。脚本のジョン・ホッジをはじめ、『ムーラン・ルージュ』などのユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライルらおなじみのメンバーが再集結。一筋縄ではいかない男たちの迷走が見どころ。 ■ キャスト ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤコバ、アーヴィン・ウェルシュ ■ スタッフ 監督: ダニー・ボイル 撮影監督: アンソニー・ドッド・マントル 脚本: ジョン・ホッジ 2017年4月22日 Movix倉敷 ★★★ 「ゴースト・イン・ザ・シェル」 草薙素子誕生秘話を、実写で描く。どこまで機械か、どこまで人間か、わからなくなった世界で、「お前は誰か」とずっと問い続ける話。 人間である条件を、少佐は最後に語る。「なにをするか」が基準になるのだと。その点に絞って、私は観た人と語りたい。 物分りの良い荒巻課長とか、まだ機械目がない頃のバトーとか、まさかの素子の母親の話とか、原作ファンには、やり過ぎだろという声が出るかもしれないが、原作ファンではない私には、わかりやすかった。それでも、一切原作に接していない者にはよくわからない設定があったに違いないとも思う。 ヨハンソンははまり役だと思う。都会の描写も、CGっぽいところが受け付けない人はいるかもしれないが、まあ良かった。美術は美しかった。アクションはかっこよかった。ところが、あまり熱くなれない。あまりにもメインをわかりやすい敵にして、わかりやすい落としどころにしたので、なんだなかあ、と思ったのである。 そして、これは実写の効果なのだが、アニメの時には気にならなかった、この世界の政治体制、世界の歴史的段階、一般市民の意識等が気になって仕方ない。要は、「攻殻機動隊」世界は20数年かけて積み木のように作って来た世界であって、アニメから一歩世界を出るとまるきりわからなくなるのだ。そういうファンタジーは、私は不十分なファンタジーだと思う。 ■ あらすじ 近未来。少佐(スカーレット・ヨハンソン)は、かつて凄惨(せいさん)な事故に遭い、脳以外は全て義体となって、死のふちからよみがえった。その存在は際立っており、サイバーテロ阻止に欠かせない最強の戦士となる。少佐が指揮するエリート捜査組織公安9課は、サイバーテロ集団に果敢に立ち向かう。 ■ 解説 『スノーホワイト』などのルパート・サンダーズが監督を務め、士郎正宗のSF漫画「攻殻機動隊」を、スカーレット・ヨハンソンやビートたけしらを迎えて実写映画化。近未来を舞台に、脳以外は全身義体の少佐が指揮する捜査組織公安9課の活躍を描く。『イングリッシュ・ペイシェント』などのジュリエット・ビノシュや『シルク』などのマイケル・ピットらが共演。敵と対峙(たいじ)する公安9課を、どのように描くのかに注目。 ■ キャスト スカーレット・ヨハンソン、ピルー・アスベック、ビートたけし、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、チン・ハン、ダヌーシャ・サマル、ラザラス・ラトゥーリー、泉原豊、タワンダ・マニーモ、(日本語吹き替え)、田中敦子、大塚明夫、山寺宏一 ■ スタッフ 原作: 士郎正宗 監督: ルパート・サンダーズ 製作: アヴィ・アラッド 製作: アリ・アラッド 製作: スティーヴン・ポール 製作: マイケル・コスティガン 製作総指揮: ジェフリー・シルヴァー 製作総指揮: 藤村哲哉 製作総指揮: 野間省伸 製作総指揮: 石川光久 脚本: ジェイミー・モス 脚本: ウィリアム・ウィーラー 脚本: アーレン・クルーガー 撮影監督: ジェス・ホール 衣装デザイン: カート・アンド・バート 視覚効果プロデューサー: フィオナ・キャンベル・ウェストゲイト 視覚効果スーパーバイザー: ギヨーム・ロシェロン 2017年4月27日 Movix倉敷 ★★★★ 「クーリン街少年殺人事件」 傑作の噂高い本作を初めて観る。約4時間。会員価格で1800円。正直、今年のマイベストに残る作品ではない。しかし、かなりの力作である事は確か。しかも、かなり誠実だ。 出てくるのは、ほとんど外省人のような気がする。小公園グループと271グループの対立は、大人社会の反映であるとは思うのだが、詳しい事はわからない。説明を省いてギリギリの台詞で作っているし、時々「ものすごい映像」があるのはわかるのだが、あまりにも視点が、小四だったり、ハニーだったり、明小だったり、小四の両親だったり、複雑でわからない。もう一度みたらわかるのかもしれないが、観る気力がない。 日本人家屋に遺された日本刀や小刀、上がり台のある玄関、アメリカンポップスの流行る街隅のバー、台湾人との微妙な関係、現在まで続く台湾の闇と光を描いて、すごい作品だったと思う。 (解説 ) 男子中学生によるガールフレンド殺害という実際に起きた事件の再現を通して、1960年代当時の台湾の社会的・精神的背景をも描いていく青春映画。「海辺の一日」「恐怖分子」など台湾ニューウェイヴ映画界の旗手として知られる楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の長編第4作目であり、日本における彼の初の劇場公開作。製作はユー・ウェイエン、エグゼクティヴ・プロデューサーはジャン・ホンジー、脚本は楊徳昌、ヤン・ホンヤー、ヤン・シュンチン、ライ・ミンタン、撮影はチャン・ホイゴンが担当。91年東京国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門審査員特別賞、国際批評家連盟賞受賞。1992年4月25日より188分版(配給:ヒーロー)が、1992年6月5日より完全版が公開されている。2017年3月11日より完全版の4Kレストア・デジタルリマスター版を上映(配給:ビターズ・エンド)。 (あらすじ ) 1949年、中国大陸での国共内戦に敗れた国民党政府は台湾に渡り、それに伴って約200万人も台湾へと移住した。1960年、そのように移住した張家の次男スー(張震)は、中学の夜間部に通っており、小公園と呼ばれる不良少年グループに属するモー(王啓讃)、飛行機(柯宇綸)、ズルらと同級生だった。スーは少女ミン(楊静恰)と知り合う。彼女は小公園グループのボス、ハニー(林鴻銘)の彼女という噂だ。ハニーは対立する軍人村グループのボスとミンを奪い合い、相手を殺して台南へ逃げたという。ある時スーはミンと一緒にいたと軍人村グループに因縁をつけられるが、最近スーのクラスに転校してきた軍の指令官の息子マー(譚至剛)がひとりで助けてくれた。スーはミンへのほのかな愛情や、マーとの友情を育んで日々を過ごしていく。スーの兄(張翰)は優等生だが、たちの悪い友人イエズと一緒に軍人村グループのたまり場のビリヤード店に出入りするようになっていた。イエズはコンサートを開いて一儲けしようと企んでいたが、ビリヤードで負けがこみ軍人村グループの現ボス、シャンドンに脅され、彼をズルに引き合わせることになる。シャンドンは歌に夢中になっているハニーの弟アルテヤオを出し抜きズルに小公園グループをまとめさせ、さらに自分がそれを牛耳ろうという腹づもりでいた。そんな頃、ハニーが帰ってくる。50年代のアメリカン・ポップスに沸き立つコンサート当日の会場に彼はやって来てシャンドンと和解しようとするが、シャンドンは走り来るトラックの前にハニーを突き飛ばして殺してしまう。ミンはショックで寝込み、スーは台湾人ヤクザとともにハニーの仕返しに行く。シャンドンは殺された。その晩帰宅すると、スーの父(張國柱)は共産党との関係を問われ秘密警察に呼び出されていた。ある日、スーはミンとのつきあいを注意されてかっとなって反抗し、退学になる。彼は昼間部への編入試験を目指して勉強するが、ズルからミンとマーの仲を告げられる。ミンは失業中の母をお手伝いに雇ってもらい、マーの家に住み込んでいた。下校時のマーを脅そうとしてスーは学校へ行くが、ミンに会い、話しているうちに自分でも分からぬままミンを刺し殺してしまう。 2017年4月30日 シネマ・クレール ★★★★