カテゴリ:虫歯の電気化学説
30代女性、右下5、白くしたいというご希望でメタルクラウンを除去しました。
近遠心および頬側のセメントはダツリしていましたが、 歯牙には大きなダメージはありませんでした。 もちろんまったく2次カリエスがない、というわけではありません。 修復物は10年も経つと、セメントは崩壊してすき間ができますが、 かならず酷い虫歯になるかというとそうでもありません。 なぜそうなのか? 「虫歯の電気化学説」の立場から解説してみたいと思います。 まず、冠を除去したときに、適合性は良いという印象でした。 どういうことかというと、すき間が少なかったということです。 冠の内面、歯牙のところ何処には黒色物質が付着していますが、 これはFeS(硫化鉄)で、 偏性嫌気性細菌の硫酸塩還元菌が代謝したものです。 簡単にいうと、 アミノ酸やヘモグロビンを利用してエネルギーを取り出して生きている細菌の 代謝産物でドブの底の黒い色と同じです。 口の中とドブは繋がっています。 すき間が少ないということは酸素が少ないということなので、 嫌気性の細菌には住みやすい環境です。 金属腐食の一つに微生物腐食というのがありますが、 歯も金属と同じ様に取り扱うことができるということが判っていますので、 虫歯も金属腐食のカテゴリーに含まれます。 以下のサイトをご参照ください。 http://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/201111300003/ http://www.nite.go.jp/nbrc/industry/mic2009/knowledge/knowledge_2.html 歯の表面でも陰極になる部分が溶けますが(虫歯になる)、 FeSが生成されると分極され、 電気の流れが阻害され虫歯は進行し難くなります。 上記のサイトでもHCO3-(重曹)があるとさらに分極が進むとありますので、 すき間のある冠でも虫歯の進行を抑制する働きが期待できます。 歯は金属と同じように腐食する(錆びる)のですが、 それを虫歯と呼んでいるのです。 この腐食(虫歯)が進むには条件が2つあり、 一つは何らかの電位差を産み出す機序があるということです。 上記のサイトにも書いてありますが、 酸素濃度勾配(修復物と歯との間のすき間など)、 イオン化傾向の差(歯と金属の間には大きな自然電位の差がある)、 もちろん生化学的なH+や電子のやり取りのシステム(上記細菌の存在)などです。 二つ目はH+(水素イオン、プロトン)の生成機構、あるいは存在環境です。 要するに酸性環境ということですが、 これは歯は電子ではなく、H+の導電体だからです。 この症例の場合、すき間が狭く、酸素濃度が低い為に嫌気性菌が優勢となり、 酸産生菌に多い好気性あるいは通性嫌気性菌が少ないので、 H+濃度が低かったのだと考えられます。 もう少しすき間が大きくなり酸産生菌が優勢になると、 急速に虫歯が進んでしまいます。 しかし、よく言われているように、 酸(H+)で歯が溶けるのではなく、 酸性溶液中だと歯牙が陰極となり、起電力が増し、腐食が進み易くなるのです。 ・・で、2次カリエス周囲を削除し、ショルダー形成して型取りし、 仮封材で覆いました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015/11/27 08:53:29 AM
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