坂本野原 これがもし癌だとしてもすぐに死ぬわけじゃないよと妻を慰む
坂本野原朝四時に洗浄剤を飲みはじめ腸内はらわたぬちを蛻もぬけにしつつ大腸の手術に向かうわたくしを妻は昴スバルで送ってくれた南下して奥州道の松並木見つつひた行くJ大病院長年の暴飲暴食祟りたり今さらちょっと反省してる爺ちゃんと同じ病に爺ちゃんの遺伝子DNAを抱きしめている緊張しているんですよと血圧の異常な高さ言いわけしたり手術中エンヤの曲が流れいて三人の医師穏やかなりきモニターに映るわが身の腸内の生ハム色を朦朧と見る風船のごとく膨れたわが腸はおなら出そうにぱんぱんだった内視鏡の先のワイヤでざっくりと切って引きずる感覚ありき大腸の韓国語読みテッチャンはこてっちゃんでもおなじみであるポリープは珊瑚の個体せめてもの綺麗な名前つけたものだねこれがもし癌だとしてもすぐに死ぬわけじゃないよと妻を慰む優秀な娘らわれを慰めてこの世に思い残すことなしヨーグルト馬鹿にしないで食べようね小学生になったつもりで辛いものしょっぱいものや焦げたものすべて胃腸によくないらしい平らかな気持ちにおよそほど遠く短歌どころじゃないんだけどね