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意外な戦史を語る~  カモメとウツボのメクルメク戦史対談

意外な戦史を語る~ カモメとウツボのメクルメク戦史対談

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2008.11.28
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カテゴリ:サイパン島の玉砕
(カモメ)南洋興発の社員・中島文彦氏は、戦後、ある慰霊の席で、「サイパン肉弾戦」(光人社NF文庫)の著者である平櫛氏に高木中将の最期について意外な情報を話しました。

(ウツボ)そうだね。しかも、それは高木中将の遺族から直接聞いたものということだ。それは次のようなものだった。読んでみよう。「サイパン最期の日、高木中将は軍令部に連絡のため東京にいた。暇をみつけて、留守宅に帰って久しぶりに孫を抱いて庭先で涼をとっていた」

(カモメ)続けて読みます。「軍令部からサイパンの悲報が入ったとき、今までの温顔は急に変貌し、抱いていた孫も投げ捨てるようにして、第一種軍装に着替え、家族の話かけにも応じず、『サイパンに行ってくる』と飛び出した」

(ウツボ)以上のような記述が残されている訳だ。だが、その後の高木中将のはっきりした最期は現在まで分かっていないそうだ。

(カモメ)う~ん。ありえないような話ですが、遺族からの話というのが、真実味がありますね。

(ウツボ)だけど、サイパンに行ってくると言って飛び出してからの消息が、分かっていないというのも、どうなんだろう。当時、サイパンが陥落したのなら、とてもサイパンには近づけないだろうからね。

(カモメ)そうですね。そもそも陥落したのなら、行くことも出来ないでしょう。米軍が占領しているのですから。

(ウツボ)遺族の話というだけに、不思議な話だね。

(カモメ)一方、「悲劇の南雲中将」(徳間書店)によると、サイパン島の陸海軍首脳の最期について、述べています。

(ウツボ)そうだね。昭和19年7月6日黎明、各地の戦闘は開始されず、米軍への攻撃をかけなかった。

(カモメ)第四十三師団長・斉藤義次中将は南雲忠一長官に「長官、この時を逃さず、自決しますか」と言いました。すると南雲長官は「そうですね、すぐ私も後を追いかけます」と言いました。

(ウツボ)すでに、暗号書や重要書類の処分は終わっていて、無電班は主要戦闘詳報を大本営に送っていたのだね。

(カモメ)さらに、海軍幕僚は、中部太平洋方面艦隊より、連合艦隊司令部と大本営に向かって「我ら玉砕もって太平洋の防波堤たらん」との別辞を発送していました。

(ウツボ)白布の上に端座した斉藤中将が、参謀長井桁少将の介錯で自刃したのに続いて、南雲長官も矢野少将の介錯で自刃し、第六艦隊司令長官の高木中将も自刃したと記してある。

(カモメ)参謀たちは二二一高地の谷間に、この三人の将星の遺体を埋葬しました。やがて米軍はこの異様な空気に感づいて攻撃をしかけてきた。その敵の鉾先が及ばぬうちに、各軍参謀長以下は自刃して斃れ伏しました。その上に敵の猛火が乱れ散った。この本では、以上のように記されています。

(ウツボ)この本によると、高木中将はこの時、自決したということになる訳だ。

(カモメ)ところが、「サイパン肉弾戦」(光人社NF文庫)によると、サイパン島首脳の自決について、別の記述がある訳です。

(ウツボ)そうだね。著者の平櫛参謀は南雲海軍中将、斉藤陸軍中将、井桁陸軍少将の自決に立ち会ったと記している。そこには高木中将の記述はない。

(カモメ)三人の自決の場所と定められた洞窟の一段と高いところが入念に掃き清められた。三人は肌着を着替えた。斉藤中将のやせた五十三歳の裸身を見たとき、平櫛参謀は泣いた。

(ウツボ)厳粛な儀式は軍の高級副官鈴木二郎中佐と、三人の専属副官によって行なわれた。

(カモメ)斉藤中将は平櫛少佐を呼びました。「一足先に行くぞ。今日まで君にはずいぶん世話になったな。今度生まれたときには、勝ち戦で師団長と参謀で奉公しようね」と言って銀製のシガレットケースを形見としてくれました。

(ウツボ)斉藤中将を真ん中に、右に南雲中将、左に井桁少将が、遥か祖国に面して正座した。それぞれの台の上には各自の軍刀が鞘を払って置かれてあった。

(カモメ)三人の専属副官が拳銃の試射を終わって、それぞれの後ろに立った。「よろしゅうございますか」と鈴木高級副官の声。「どうぞ」南雲中将の声。

(ウツボ)三人は軍刀を逆手に持ち、日本の古式に従って自らの腹部に当てた。そのとき拳銃の鈍い銃声が三発。三人の将官は、後頭部を撃ち抜かれ、肉体が、どうと前にうつぶせた。

(カモメ)以上が平櫛参謀の見た三人の指揮官の最期の真実ですね。著者である本人が参謀として立ち会ったのだから、真実でしょう。

(ウツボ)高木中将はいなかったことは間違いないね。

(カモメ)少なくとも、その場にはいなかったということですね。

(ウツボ)サイパン島の組織的な戦いは終焉した。平櫛参謀は部下を率いて最後の突撃を行い、敵の砲弾にやられて、意識を失い、気が付いたら、アメリカ軍の病院船に寝かされていた。

(カモメ)田中中尉は、部下を率いて、長期間、山中に立てこもりましたが、やがて、部下と一緒にアメリカ軍に投降しました。なお、田中氏の最終階級は陸軍大尉となっていますね。

(ウツボ)7月18日、サイパン敗戦の責任をとって、東條内閣は総辞職した。海軍の岡田啓介らが策動して辞職に追い込んだ。

(カモメ)太平洋戦争を指導してきた東條政権の終焉は、結局、サイパン島の陥落によって、もたらされたのですね。

(ウツボ)東條首相が、最後に望みを託した「絶対国防圏」が崩壊したということだね。

(「サイパン島の玉砕」は今回で終わりです。次回からは「ルンガ沖夜戦」が始まります)






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最終更新日  2015.08.28 14:05:35


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