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テーマ:戦争反対(1185)
カテゴリ:読書感想
私:戦争とはいえ、何故、日本兵はよく虐殺し、戦争が終わると何故、急に鬼畜米英から民主主義の教師として迎えられたのか。
このミスティリーをこの本は説いてくれているようだね。 この本は名著「敗北を抱きしめて」の著者のジョン・ダワーがこの本の前に書いたもので、本来はこの本を読んでから、「敗北を抱きしめて」を読むのが順序なんだが、逆になってしまった。 A氏:サブタイトルが太平戦争における人種差別とあるね。 私:太平洋戦争は人種差別の面があることを明快にふれている。 白人と黄色人との対立、同じ黄色人でありながら、日本のアジア人に対する差別などをあげている。 A氏:米英にとってはドイツ人だって敵ではないの? 私:日本人は黄色い小さなサル・ジャップと蔑視して呼ぶ。 しかし、ドイツ人はナチスと言って非難する。 良いドイツ人もいるという発想だ。 しかし、日本人はインディアン同様、「死んだ日本人が良い日本人だ」となる。 人種差別が明確だね。 太平戦争の初期の日本軍のすさまじい進撃を信ぜられず、イギリスのチャーチルは文明の劣った黄色いジャップにできるはずはないから、その背後にドイツ将校の援助があったと思っていたという。 A氏:そういえば、日系アメリカ人はすぐ監禁、隔離されたが、イタリア系、ドイツ系はなかった。 私:例の大西洋横断で有名なリンドバーグがニューギニアの米軍基地で過ごす日記があるが、米軍が日本兵に対して動物に対するような軽蔑の念をもって嬉々として殺すのを目のあたりにして苦悩する。 彼は騎士道的伝統派だったのだね。 日記では東洋人の残虐のほうがわれわれのよりたちが悪いと信じていたが、その区別は、だんだんあいまになっていったとあるという。 A氏:アメリカ軍の戦いぶりは日本兵を動物狩するという発想なんだね。 私:その後の彼の日記では、日本兵の死体から金歯が取られ、残った死体はゴミ穴に投げ捨てられ、洞窟には降伏しようとしたのにかかわらず、「もどって最後まで戦え」と突き返された日本兵の死体が山と積まれているのを目撃する。 頭蓋骨や鼻も集めて記念品となった。 リンドバークが帰るとき、税関検査で荷物に骨が入っているかを聞かれた。 それは税関では決まりきった質問だったのだね。 A氏:耳を切り取って集めるのもそうだね。 ある米軍兵士がルーズベルト大統領に日本兵の死体からとった骨から作ったペーパーナイフを贈った事件(大統領は断わった)があったね。 これは戦時中、日本でもアメリカ人の残酷性を示すという宣伝に使われたね。 要するに、相手の悪い点を徹底的に攻め、同じ悪い点が自分たちにもあるということを忘れるんだね。 最近では、中国の反日教育に似ているね。 今、朝日新聞で多くの虐殺者を出した中国の文革についてふれているが、未だに中国内ではタブーらしいね。 私:ちょっと違うね。 中国は、今、日本とは戦争していないし、日本はそれに負けないで、中国の内戦や文革のときの残虐を徹底的に宣伝してはいないよ。 この宣伝はちょっと異常だね。 A氏:ヨーロッパ戦線は、白人同士の戦いだろう。 私:そうだね。 ヨーロッパ戦線を取材していたジャーナリストが、太平洋戦線に取材にきたが、戦いの残虐性が違うと感じたそうだね。 しかし、この本は日本軍の残虐性、特にアジア人に対する残虐性にもバランスよくふれているね。 A氏:しかし、日本兵は何故、同じ黄色人種のアジア人に対して残酷だったのかね。 私:当時の軍国主義の神道では日本民族、厳密には大和民族は天照大神の子孫で神が治める民であるというわけだ。 だから、他のアジア人は格が下で動物並みとなりやすい。 日本の伝統には珍しい一神教の登場だね。 一神教は、人を残虐行為に走らせやすい。 そして、軍隊内のマゾがサドにはけ口を求める。 だから、万世一系の天皇を戴く神の国の民族だというのは、こういう人種差別の原因になるので気をつけないといけないね。 A氏:そういえば、われわれが小学生の頃、ジャップみたいに、中国や韓国の人民に対しては蔑視した言葉を使っていたものね。 私:これが、ヨーロッパ戦争でも西部戦線とスラブ族などのソ連やその周辺国との東部戦線とは違うのだね。 死者の多さは全く違う。 ドイツ軍は550万人のソ連人を捕虜としたが、350万人死亡しているという。 これに対して英米人捕虜は約23万、死亡は1万人足らずの4%だという。 日本の英米人捕虜は約13万人、死亡は約3万人で27%。 この差が日本人の残虐性で問題になるんだね。 A氏:話しは変わるが、占領され鬼畜米英が宣伝されていた事実と異なると対米感情はコロッと変わるね。 宣伝が極端だと、その反動も大きいんだね。 北朝鮮だって、将軍様が一挙に変わるかも知れないね。 私:それはアメリカ側も同じで、「卑劣で残虐な」サルのジャップが、「かわいい」サルのジャップになる。 そして民主主義の教師になる。 A氏:1960年頃までのアメリカは日本人が学ぼうとするとおおらかだったね。 私:それが1980年代になると、自動車貿易摩擦で「あのちっぽけな黄色い連中、ご存じのホンダ」という人種差別的な言葉が復活する。 この本は1986年に発行されているから、その問題も扱っている。 まさか、戦争に負けてアメリカが親切に教えてやった日本がアメリカを負かすとは考えられなかったのだろうね。 A氏:しかし、その後、アメリカは朝鮮、ベトナムでアジア人と戦い、9.11テロ以降は、アフガン、イラクと戦っているね。 いずれも人種的な残虐性を指摘されているようだね。 私:ベトナム戦争のドキュメンタリー番組を以前、見たことがあるが、アメリカのインテリ紳士が「ベトナム人は喜怒哀楽のない人種だ」と軽蔑的に言うシーンがあり、すぐに父親を戦争で失い、その墓を抱いて大声を上げて泣く、幼いベトナム人の子供のシーンが続いたのを見たね。 A氏:皮肉な編集だね。 私:日露戦争は、帝政ロシアと戦った戦争だが、そのロシアを倒し、ソ連を作ったスターリンが、太平洋戦争で日本が降伏したとき、これで日露戦争の仇が討てたといったという。 モンゴルもソ連圏内にあったときは、チンギスハンのためにいじめられたそうだね。 民族の恨みは怖いね。 いずれにせよ、大義はどうであろうと戦争で人を理性を失い、狂気になり、残酷となるね。 殺されるほうも殺すほうも悲惨だね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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