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カテゴリ:読書感想
私:鈴木孝夫氏は1926年生まれだが、俺が最初に氏の本を読んだのが岩波新書の「ことばと文化」で、これが1973年だ。 それから氏のファンになったのだが、それ以後、氏の発言は次第に過激になってきたような気がするね。 日本語の乱れと並行しているのかね。 この新書は、小渕内閣時代に委嘱された「21世紀日本の構想」懇談会の報告書に「英語の第二の実用語の地位を与えるべきだ」という主張についての反論だね。 2001年1月の発行だね。 A氏:その話は消えたようだが、今、小学校からの英語教育が問題になっていて、また、英語問題は再燃したようだね。 明治維新以来の日本の国語コンプレックスはなかなか消えないね。 私:この本は「国家の品格」と似たように「言葉は文化」であるとしているね。 日本には、公用語という感覚がない。 日本人には日本語空気のように当り前となっているから、あまり自国言語としての重要性の自覚がないんだね。 公用語というのは、他の国をみても必要に迫られてきめているという。 A氏:要するに、日本語を話している人々と、英語を話している人々が現実に日本国土に一緒に住んでいるという実態がないんだね。 そんな実態はない。 私:40年位前に、仕事でシンガポールにいったことがあるが、公用語は英語と北京語だったと思ったね。 マレー語もあったかもしれない。 当時から、国の政策でビジネス、政治、教育の場は英語を中心にしようという方針だったね。 ところが、英語の力が強くなるとその反動として各民族語が衰退し、中国人が中国語を読めない、書けない、祖先もお墓も大切にしない、中国人の大事な系譜の影も薄くなってきたというね。 A氏:東南アジアには、英語の強い国が多いね。 私:著者は 「庶民が、日常的に外国語ができるような国は、その国が国際的に弱者の立場にある証拠である。 一般的に外国では貴族は外国語ができない。 金持ちもできない。 それは外国語をできる人を雇えばいいからだ。 そして最強の国家であるアメリカの庶民はほとんど全く外国語ができない」 という。 A氏:日本の英語コンプレックスは、欧米コンプレックスと裏腹なんだね。 私:そうだね。 これは「国家の品格」がいうように、日本文化のよさを自覚しているかの問題だね。 A氏:では、著者は英語不要というのかね。 私:いや、本当に英語を使う人は、国際的な交渉では必要だというんだね。 そういう必要な政治家、文化人などに英語のうまい人が少ないのが問題で、それを国民一般の英語力の問題にしてしまっていることが問題だとしているね。 著者が反対しているのは特にこれと言った目的もなく英語で苦労して勉強することが、今の一般の日本人にとっていかに無意味で損なことだと言っているね。 ましてや、そんなことを国が支援することはね。 個人の趣味で結構だということだね。 TOEFLの英語の点数で他のアジア諸国が日本より高い点をとっているのは、彼らには生活がかかっているという目的が明確なんだろうね。 A氏:俺は、数年前にアメリカで英語原稿の棒読みだけれど、英語で発表する機会があったんだ。 張り切ってその準備をしていたら、なんだか、テレビの英語のニュースや洋画の英語が大分分かるようになった。 ところが、例の9.11のテロがあったのでアメリカ行きをやめた。 目標を失った途端にヒアリング能力が落ちてきたね。 私:大体、英語もどんどん、変わっているしね。 日常語で使っている英米人と対等に使えるはずはないね。 A氏:「バカの壁」の養老孟司氏も専門の論文を書くとき、日本人は英語の論文を書くが、その時間がバカにならない。 その時間を研究にまわしたほうがよいとして英語の論文は書かなくなったという。 私:昔、大学の教授で有名はドイツ語の大家がいたが、その人すら、ドイツの一般のインテリより読書は4倍の時間がかかると言っていたね。 A氏:英語の国際化で英語と言ってもいろいろな英語があるね。 私:シンガポールに行ったとき、「あなたは工場を歩くのか」と聞かれて面食らったことがあった。 Workの発音がワークでなくてウオークと聞こえたんで、「歩くwalk」とこっちは思ったんだ。 向こうは「工場経験があるか」ということを聞きたかったのだね。 後で気がついたよ。 後で英語の専門家に日本人の場合「ウェイク」と言ったほうが、英米人にworkと聞こえると教わったことがあるね。 A氏:キングスイングリッシュだね。 水曜日はWednesdayウエンズディではなく、スペリング通りのウエッドネスディなんだね。 私:当時、出向していた日本人の工場長が現地で英語を勉強していたが、「これではアメリカで使えるかな」と言っていた。 シンガポール英語をシングリッシュと言っていたね。 後に、アメリカの工場に視察に行ったとき、案内したアメリカ人が同じ英語でもイギリス人の英語はほとんど理解できないと言っていたね。 A氏:以前、田舎のカラオケスナックに行ったら、フィリピンから来た女性がいて日本人と結婚していたが、昼は日本人に英語を教えているのだと言っていたね。 私:だから、国際語の英語として、著者は人工英語のEnglicを提唱している。 例えば 1.英語の不規則な動詞などの変化を無視する 2.イデオム(慣用句)は使わない 3.やさしい動詞と前置詞の組合せは使わない 4.早口は禁止する 5.yes、noの使い方を間違えないように質問は配慮する などだね。 そして、討議するときに英米人でもそれなりの負担をしてもらう。 彼らはそれでもこのような英語は理解できるからだ。 A氏:確かに、返事するとき、yes、noを間違えると大変な誤解になるね。 私:2000年の春にイギリスに仕事でいったことがあるが、そのとき、通訳がいたんだが、こっちも少し英語が分かるから、ついyes、noと返事をしてしまうことがある。 そうすると、通訳から「逆ですよ」とすぐに注意されたことが多かったね。 そういう答えになる質問を日本人にするなということだね。 とんでもない誤解招くから、中途半端な英語は危険だね。 A氏:まぁ、本当に英語で飯を食うくらいなら、アジア人以上にしっかりやれ。 そうでないなら、中途半端な英語でなく、日本語を徹底的にやれということか。 私:そして、もっと日本語を世界に広めよといっているね。 それから、学生がすぐに町で外国人を見かけると英語で話しかけるのをやめてくれと言っているね。 それにしても日本人の英語コンプレックス(裏には国語コンプレックス)に乗じてうまく商売するのが一番しっかりしているのかもしれないな。 国の将来は別にして。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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