東京今昔物語 （写真の世界 http://wakowphoto.world.coocan.jp/ より）

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  靑山通り　ハイセンスの街並みと学園通り（表参道交差点から渋谷まで） （東京の街並み観察　７１）

  表参道交差点から渋谷に向けての靑山通りは、三宅坂から始まる靑山通りの中でも最もハイセンスの街並みです。表参道の交差点の両側に、クレジット会社のJBC本社とみずほ銀行支店とがあり、堅い感じの街並みで始まりますが、JBC本社の入居している靑山ライズスクエア（平成１５年2003年竣工）の一階には最新トレンドのインテリア商品を販売しているZARA HOMEがあり、その隣のスマートな賃貸ビル２棟置いて文化が生きるビル、９階建てのスパイラルがあります。（写真１）スパイラルのファサードは複雑な造形を施した個性的なビルで（昭和６０年1985年竣工）、地上か奥に螺旋状のスパイラル・ガーデンという広間があるところから、その名が付けられた複合文化施設です。このビルにはオフィスも入居していますが、多目的ホール、展示場、演奏会場、講演会場、生活用手工芸品、国際色豊かなアート製品など展示販売場があり、レストランやカフェもあり、種々な機能が混然とした文化の雑居ぶりが、スパイラルの魅力となっています。（写真２、３）スパイラルの斜め向かい側に、一際高く聳える異形のビルがAOビル（平成２１年2009年竣工）です。AOビルは、外観が水色で同じデザインの高層と低層の二つのビルで構成されており、四角い高層のビルは斜めに捻れるように建っています。AOビルは、高層階はオフィスビルですが、４階までは高級感のあるファッション・ブランド店が入居しており、東京では珍しいオーストリアやハンガリーの料理店も入居していて、外観も内容も垢抜けしています。以前ここにあった高級スーパーの紀伊國屋は地下に入っています。（写真４）骨董通りが靑山通りに突き当たるところは、靑山五丁目交差点です。ここから渋谷方向に行くと左手に青山学院大学（昭和２４年1949年設置）があり、その向かい側に国際連合大学（平成４年1992年竣工）があり、その隣にこどもの城（昭和６０年1985年竣工）（児童育成のための政府の施設で最近廃止された。）があり、靑山通りは一変して学園通りの観を呈します。（写真５、６、７）ここで人目を惹くのは国際連合大学の隣に建つ青山オーバルビル（昭和６３年1988年竣工）です。１６階建ての賃貸オフィスビルですが、楕円形の流麗な姿は、左隣にある格調ある国際連合大学とは対称的です。更に、国際連合大学の左隣のこどもの城の青山円形劇場も円筒のように屹立しています。直線美のビルを二つの円形美のビルが挟んで建つ都市景観美は靑山通りの自慢です。（写真７、８）青山オーバルビルの設計者は、３年前に建てられたこどもの城の楕円形ビルを意識していたと思いますし、その後、二つの丸みのあるビルの間に直線的なデザインの国際連合大学を割り込ませた建築家、丹下健三もまた靑山通りの街路景観美を意識したと思います。なお、青山オーバルビルの前にオーバル・プラザという広場があり、広場の周りにカフェがあり、広場から青山オーバルビルの地下に入ると大衆向けのレストランが沢山あり、周囲の大学の学生たちやサラリーマンで賑わっています。（写真９）靑山通りは、宮益坂上で斜めに左折して宮益坂をバイパスして六本木通りと合流して明治通りと交差して終わります。（余談ですが、こどもの城の跡地利用に広尾病院の移転計画がありましたが中止になり、現状のまま東京オリンピックで使用した後、都民のための学習・スポーツ用複合施設にリノベーションするそうですが、その際には是非この都市景観美を保持して欲しいものです。）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　靑山ライズスクエア写真２　スパイラル・ガーデンという広間写真３　スパイラル複合文化施設写真４　AOビル写真５　青山学院大学写真６　国連大学と靑山オーバルビル写真７　こどもの城写真８　靑山オーバルビル写真９　オーバル・プラザという広場

  2019.05.11

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  靑山通り　オフィス街からファッション街へ（靑山一丁目から表参道交差点まで）（東京の街並み観察　７０）

  靑山通りは、靑山一丁目交差点から明治通りと交差する渋谷駅までの区間、街路の両側には中高層ビルが隙間無くびっしり建ち並んでいます。その街並みは歩くにつれて様相が様々に変わっていきます。街路の両側に建つビルの形態はまちまちですし、並ぶ店舗の種類も多いです。靑山通りは、山の手の目抜き通りですが、何種類もの顔を持つ不思議な魅力ある街道です。先ず、靑山一丁目交差点角には、オフィスビルの靑山ツインタワービルがあり、靑山ビルがあり、本田技研工業の本社ビルがあり、その並びに帝国データバンク本社ビルがあります。少し離れて明治神宮外苑の銀杏並木通りの出入口には伊藤忠商事の東京本社ビルがあり、更に外苑西通りと交差する靑山三丁目近くには音楽事業のエイベックス本社ビルがあります。この区間は靑山通りのオフィス街と言ったところです。（写真１、２、３）大手町や丸ノ内というオフィス街中心地ではない、また山手線の真ん中という、やや不便なこの地に大手企業が本社を置くのは不思議に思いますが、ここには三本の地下鉄（銀座線、有楽町線、大江戸線）の駅があることと、都心と山の手を結ぶ靑山通りという目抜き通りがあるからです。靑山通りを更に渋谷方向に進むと、道は下りながらやや右に曲がり、そこには明治神宮外苑の野球場やラグビー場から出て来る道が合流してきて三叉路状になっています。この付近には、南青山という高級住宅地があるので地域住民達の日用品を売るピーコックや成城石井というスーパーがあり、靑山通りのこの辺りは、それまでのオフィス街とは違う生活感のある街並みに変わります。（写真４、５）しかし、更に少し先に行くと、靑山通りが外苑西通りと交差する南青山三丁目交差点に至ります。ここから靑山通りの街並みはファッション・ストリートに変わるのです。南青山三丁目交差点角で対峙する婦人服ファッションの靑山ベルコモンズ（複合ビルに改築中）とインテリアショプのフランフランが、それを象徴する建物です。南青山三丁目交差点で交差する外苑西通りは、北上すればブティックやファッション・ギャラリーで有名なキラー通りがあり、南下すると洒落たブティック店が並んでいる、隠れたファッション・ストリートなのです。（写真６、７）南青山三丁目交差点を過ぎると、間もなく靑山通りは表参道交差点に達します。この交差点は、ファッション通りで有名な表参道が靑山通りに突き当たり突き抜けて、みゆき通りに伸びる、山の手ファッション街での銀座四丁目のような場所です。表参道にも残れず、みゆき通りにも行けなかったファッション店は靑山通りに溢れ出して左右に展開しています。（写真８、９）表参道交差点から靑山通りに広がる商店街の中に、間口の狭い低層階の店舗が並ぶ一郭がありますが、この街並みは、嘗て二階建ての小規模の商店街が数多並んでいた所です。靑山通りの拡幅に伴って街路の多くはコンクリート建ての高層ビルが並ぶ冷たい街並みになりましたが、このような戸建ての店舗がバランスよく並ぶこの一郭は、靑山通りの中でも、嘗ての暖かさと親しみのある風景として残っています。（写真１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　靑山ツインタワー写真２　本田技研工業本社ビル写真３　伊藤忠本社ビル写真４　外苑前交差点付近　道路は三叉路状になる。写真５　外苑前交差点付近　靑山通りは曲がる。写真６　靑山三丁目交差点のフランフラン写真７　靑山三丁目交差点の靑山ニューコモンズ（既に取り壊された建物）写真８　表参道交差点　表参道入り口写真９　表参道交差点近くの靑山通り写真１０　靑山通りで低層階の戸建て商店が並ぶ街並み

  2019.03.23

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  靑山通り 政治街とホテル街と緑苑と（三宅坂から靑山一丁目まで）（東京の街並み観察　６９）

  それでは、靑山通りの三宅坂から靑山一丁目までを観察しましょう。靑山通りは、内堀通りの三宅坂交差点から始まります。三宅坂交差点に立って靑山通りを見通すと右手に石造りの最高裁判所が見えます。少し坂を上ると左手に全国町村会館があり、平河町交差点に達し、ここを左折して南に向かうと国会議事堂があり、国政の舞台となり、この一帯を永田町と言います。（写真１）靑山通りは、平河町から赤坂見附の交差点まで下り坂となり、眺めると右手には都道府県会館、東京ガーデンテラス紀尾井町（ホテル）があり、その先にはホテルニューオータニ新館（昭和４９年1974年竣工）が聳え立っています。左手には参議院議長公舎、衆議院議長公舎が並び、その下に赤坂エクセルホテル東急（昭和４４年1969年竣工）と続きます。進むにつれて街の外観は、永田町の政治の街から、赤坂見附のホテルの街へと変わります。（写真２、３）赤坂見附交差点で右手（北側）に進み、古風な欄干のある弁慶橋を渡ると緑に囲まれた豪華な高級ホテル街区に入ります。巨大なホテルの東京ガーデンテラス紀尾井町（平成２８年2016年竣工）の場所には、嘗て幾何学的ラインの美しさを誇った赤坂プリンスホテルがありました。その前方には流線型の美を誇るホテルニューオータニ新館があり、都内でも珍しい対称的な建築景観美を楽しめたところでした。（写真４、５）自動車は直進して外濠通りを赤坂見附の陸橋で渡って靑山一丁目方面に向かいます。赤坂見附の歓楽街（夜の街）は、外濠通りを右に曲がった裏通りにあります。靑山通りは赤坂見附交差点から緩やかな上り坂になりますが、街路の右側（北側）には鹿島建設本社ビル（平成１９年2007年竣工）の他に高層のオフィスビルが数棟建ち並び、赤坂地区はオフィス街でもあります。（写真６、７）赤坂見附一帯は大きな溜池があったところで、その溜池は江戸時代には弁慶濠に続く外濠としての役目を果たしていました。明治時代に埋め立てられ、山の手の中の商業地、飲食街として賑わったところで、政治、行政の中心地の永田町にも近かったこともあって、ホテル、料亭、バー、キャバレーなどの歓楽街として賑わう場所となりました。赤坂見附は交通の便のよいところで、昭和以降、山手線の内側では早くから二本の地下鉄（銀座線、丸ノ内線）の駅があり、山手線のターミナル駅である渋谷と池袋に行くにも、都心の丸ノ内、上野、浅草に行くにも便利でした。また道路事情も外堀通りと靑山通りが交差するので都心と郊外を繋ぐ交通の要衝でもあり、山手線の内側の街としては、立地条件が優れていました。靑山通りは、しかし赤坂見附交差点からの坂を上り終わる辺りで周囲の風景が一変します。靑山通りの右手（北側）に豊川稲荷の赤いい提灯の列が鮮やかな色彩で目を惹きます。そこから先は靑山一丁目まで赤坂御用地の緑が続きます。（写真８）赤坂御用地内は宮家の屋敷ですから緑の静寂が続き、その向かい側の街並みも呼応するかのように高橋是清翁記念公園があり、その並びには活け花の草月会館、伝統工芸品を展示販売する靑山スクェアなど、衣装を凝らした建物が並びます。ここは、靑山通りの中でも最も高貴な雰囲気のあるところです。（写真９、１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　最高裁判所写真２　東京ガーデンテラス紀尾井町（赤坂プリンスの跡地に建ったホテル・オフィスビル）写真３　赤坂エクセルホテル東急写真４　取り壊された赤坂プリンスホテル写真５　ホテルニューオータニ新館写真６　外堀通りを跨ぐ赤坂見附の陸橋写真７　左側は鹿島建設本社ビル写真８　豊川稲荷写真９　宮家の屋敷がある赤坂御用地写真１０　赤坂御用地の向かい側のビル

  2019.02.22

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  靑山通り　山の手の街を貫く目抜き通り（三宅坂から渋谷まで）（東京の街並み観察　６８）

  昭和の東京オリンピク大会が開催（昭和３９年1964）されたとき、首都高速道路網が完成して東京の道路事情は大幅に改善されたのですが、その道路工事のため江戸城のお濠が土砂で埋めらたり高速道路で覆われたりして、あちこちで東京の伝統的都市景観はかなり壊されました。しかし、今回取りあげる靑山通りだけは、東京オリンピックのお陰で改善された珍しいケースです。それはオリンピック競技場の主要連絡通路として道幅が倍近くに拡幅されたからで、今では立派な街路に生まれ変わりました。靑山通りは、桜田濠端の三宅坂交差点に始まり渋谷で終わる、国道２４６号線の別称です。この靑山通りは、赤坂見附では外濠通りと交差し、靑山一丁目では外苑東通りと交差し、靑山三丁目では外苑西通りと交差します。更に、表参道交差点では表参道に繋ながり、南青山五丁目では骨董通りに繋ながります。最後に宮益坂上で、厚木街道旧道の宮益坂を下らずに左に曲がって渋谷駅東口交差点で明治通りと交差します。（写真１、２、３、４、５、６）このように、靑山通りは港区の赤坂、靑山という山の手の街の真ん中を通り抜けると同時に、渋谷に達するまでに、これまた山の手地区で賑わう複数の道路と交差したり接続するという、東京の山の手の街の賑わいを結びつける役目を担う道路ですので、謂わば山の手の街の目抜き通りと言えます。前回の東京オリンピックの時に拡幅されたときは、廣い道幅の割りに寂しかった両側のビル街は、半世紀余りの間に高層ビル化が進み、都内でも有数の豪華な街並みに成長しました。来る東京オリンピックの競技会場の多くは、湾岸地域に集中していますから、靑山通りは明治神宮に新築されるメイン会場の国立競技場と湾岸競技場の連絡道路として、再び東京オリンピックのメインストリートとして脚光を浴びます。（写真７、８、９）江戸時代、靑山通りは厚木街道と言う東海地方に向かう長い街道の一部でした。そして東海道（国道１号線）と並行して東に進み、箱根の山の北側を迂回して沼津で東海道に合流する東海道の脇街道でした。しかし、箱根の難所を避けることが出来るので、便利な街道として利用され、現代でも東名高速道路は、箱根越えを避けて国道２４６号線のルートを採っています。靑山通りは東名高速道路の都心の付け根にも当たるのです。なお、国道２４６号線は、走る場所で「青山通り」「玉川通り」「厚木街道」と呼称が変わりますが、「青山通り」だけは山手線の内側にあり、都市型の街路となっています。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　桜田濠沿いを走る内堀通りの三宅坂写真２　靑山通りが外濠通りと交差する赤坂見附交差点は立体交差になっている。写真３　靑山通りが表参道と接続するところは賑やか写真４　靑山通りが骨董通りと接続するところは賑やか写真５　靑山通りは宮益坂上で宮益坂と分かれて明治通りに向かう。　写真６　靑山通りが明治通りに突き当たる交差点（玉川通りの方から見る）　写真７　神宮外苑前付近の街並み写真８　靑山五丁目交差点から表参道方向を見た街並み写真９　宮増坂上歩道橋より南青山五丁目方向の街並み

  2019.01.24

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  六本木の裏通り　静かな通りと賑やかな通り　（東京の街並み観察　６７）

  六本木の裏通りには、静かな戦前の住宅だった時代の佇まいを残す通りと、表通りの繁華街が溢れて裏通りに流れ込んで賑わう通りと、二種類があります。戦前の六本木の風情が残る裏通りは鳥居坂通りです。鳥居坂通りは、外苑東通りの六本木五丁目から鳥居坂下に至る細い通りです。沿道には東洋英和女学院があり、二つの外国大使館があり、旧岩崎庭園の跡地に建てられた国際文化会館があり、スヌーピーミュージアム（最近､町田市へ引っ越しました）があり、昔の六本木の屋敷町の雰囲気を残しています。鳥居坂通りは、六本木から麻布十番に通じる道なのですが、道路の最後に急勾配の鳥居坂があり、往来には難儀するので昔のままの六本木の静けさを保っているのでしょう。（写真１、２、３）賑やかな裏通りは芋洗坂通りです。六本木交差点の角にあるアーマンド喫茶店の横を入る坂道で、坂を下って行くとテレビ朝日本社ビルの下に達する細く長い道です。芋洗坂通りの入り口は六本木交差点に近く、坂道も緩やかなので、六本木交差点の賑やさが、そのまま裏通りに流れ込みました。因みに、六本木での待ち合わせ場所として有名なアーマンド喫茶店は、その外観がピンクの縞模様で目立った存在でしたが､今はシンプルな赤に変わってしまいました。（写真４、５、６）その他にも、六本木の表通りの一筋裏には、飲食店､喫茶店の並ぶ通りが何本かあって、表通りの喧噪を避けて一息入れたい人々で賑わっています。先ず、外苑東通りの南側の裏通りには派手な外観のアメリカ料理店や和洋飲食店が並ぶ通りがあります。（写真７、８）次に、嘗てのディスコブームの舞台だったスクエアビル跡の辺りは、裏通りと言うより隠れ家的な夜のスポットでして、しゃぶしゃぶの瀬理奈やニューハーフ・バーなどがあります。また、六本木通りの明治屋の裏通りには、粋な和食屋が何軒かあります。（写真９、１０）近年、六本木の裏通りに洒落た飲食店が増えていますが、六本木ヒルズや東京ミッドタウンが誕生して、そのオフィスビルで働くサラリーマンたちも裏通りの飲食店を利用するからでしょう。六本木の街が嘗てディスコブームのメッカだった頃の大人の風俗街から、落ち着いた雰囲気の街並みに変化したようです。今までに六本木については、このブログ「東京今昔物語」で次のように取りあげています。一部重複するところがありますが、ご参考にして下さい。「2013.12.24 六本木の変貌　兵隊の町から若者の町へ」「2014.01.05 性格を異にする六本木の二つの都市再生」「2014.01.11 都市機能の創造に成功した六本木ヒルズ」「2014.01.18 平凡な都市再生に終わった東京ミッドタウン」（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　東洋英和女学院写真２　国際文化会館写真３　鳥居坂写真４　芋洗坂入口写真５　昔のアーマンド喫茶店写真６　現在のアーマンド喫茶店写真７　裏通りのアメリカ料理店写真８　裏通りの飲食店写真９　しゃぶしゃぶの瀬理奈写真１０　裏通りの日本料理屋

  2018.12.17

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  変身しながら発展する六本木の街並み　外苑東通り　（東京の街並み観察　６６）

  六本木ヒルズの誕生（平成１５年2003)で六本木通りが三回目の変身をしてから少し遅れて、外苑東通りにも大きな変化が訪れます。駐留米軍が去った跡地に防衛庁が入り､六本木は再び兵隊の街に戻りますが、その後、防衛庁も市ヶ谷に去り、その跡地に大規模な再開発が行われて、平成１９年(2007)に東京ミッドタウンが誕生したからです。外苑東通りは､靑山通りの靑山一丁目から櫻田通の飯倉まで通じる都心西部を南北に走るやや大きな通りですが、東京ミッドタウンが誕生する前は、六本木交差点辺りが賑わうだけの静かな通りでした。目立つものとしては、青山寄りに乃木神社があり、飯倉寄りにはロシア大使館、外務省公館、郵政省別館があるだけでした。戦後、六本木に米軍が駐留し、その後六本木にディスコブームが訪れた頃、六本木交差点の少し南に大きな１３階建ての六本木ロアビル（昭和４８年1973年竣工）が建ち、ディスコ・ダンスホールやバニーガールのいるバー等が入居して、夜の街のビルとして六本木繁華街の一拠点になりましたが、ディスコブームが去ると、更なる街並みの発展には繋がりませんでした。（写真１）外苑東通りは本格的に変身するのは、東京ミッドタウンが建設されてからです。六本木交差点から乃木神社の方面にかけて街路の両側に中高層のビルが建ち並ぶようになり、街並みが整備されてきました。東京ミッドタウンの出現が、あまり冴えなかった外苑東通りを、ややモダンに見えるように変えたのです。（写真２）東京ミッドタウンは、その建設敷地が街路に直接接しており、かつ、その前の広場が街路に開かれているので、外苑東通りの街並み造りに大きく貢献しています。この点は、同じ大規模再開発の六本木ヒルズが六本木通りに平面で開かれていないのと比べると優れています。それに呼応するかのように東京ミッドタウンの向かい側の高層ビルもモダンになりました（写真３、４、５、６、７）しかし、六本木交差点から南の飯倉片町にかけては、まだ従来の小規模の店舗が残っていて、街路造りは現在進行中です。外苑東通りで繁華街造りの先陣をきったロアビルが、耐震性に問題があり、解体再建が始まりましたし、その先ではオフィスビルやホテルなどの高層ビルの建設が始まっています。六本木交差点から飯倉片町方向を通して見ると、ビルの外郭ラインが乱れているのはその所為です。（写真８、９）更に、外苑東通りを飯倉片町方面に進むと、嘗てそこにはピットイン、クレージーホースなどのライブハウスやサパー・クラブなどがあったところですが、今は商業施設やオフィスビルに変わっています。六本木の街は、今なお更に発展を続けており、繁華街だけの街から複合的な機能の街に変化しているのです。外苑東通りは、首都高速道路に覆われた六本木通りより明るく、両側の街並みが左右に分断されないので、将来の成長が楽しみです。なお、外苑東通りからやや離れますが、乃木坂寄りに国立新美術館（平成１９年2007）が開設されて、東京ミッドタウン内のサントリー美術館、六本木ヒルズ内の森美術館と共に、六本木に三つも美術館が揃いました。六本木は何時の間にかアートの街にもなっていたのです。（写真１０）（以上）​​人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへjavascript:void(0);​​写真１　ロアビル（現在、閉鎖して取り壊し中）写真２　中高層ビルが整然と並ぶ街並み写真３　外苑東通りから見た東京ミッドタウンの全景写真４　外苑東通りに面して店舗がある東京ミッドタウン写真５　東京ミッドタウン前の広場　外苑東通りに開かれている。写真６　外苑東通りにも表参道のようなブティック店が現れた。写真７　東京ミッドタウンの向かい側の街並み写真８　建設中の高層ビル写真９　乱れているビルの外郭ライン写真１０　国立新美術館

  2018.11.13

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  変化の激しい六本木の街並み　六本木通り　（東京の街並み観察　６５）

  ​これまで観察してきた街並みは、銀座、日本橋のような広域型商店街の場合でも、神田古書街、合羽橋道具街のような専門店街の場合でも、街並みが誕生してから成長、発展する途中で、店舗の入れ替えはありますが街並みの性格まで変わることはありませんでした。ところが今回取り上げる六本木の街並みは、発展の過程で何回か街並みの性格を変えて発展した珍しい街並みです。それは、この六本木の地に、外部から異質の大規模な施設や組織が何回か入ってきたからです。六本木のメインストリートは、溜池方面から渋谷に向かう六本木通りと、靑山一丁目から飯倉へ通じる外苑東通りの二本の通りの街並みです。そして、この二本の通りが交差する六本木交差点が常に六本木発展の中心地でした。（写真１）六本木は麻布台地の上にあり、江戸時代は大名の中屋敷のあったところで、明治になって政府要人や財界人の住宅地になりましたが、昭和のはじめ六本木の龍土町、桧町辺りに陸軍歩兵連隊の兵舎が建ちました。お屋敷町に兵舎では街が賑わうわけはありません。戦前の六本木交差点は、木造二階建ての店舗の並ぶ寂れた平凡な四つ角でした。しかし、戦後になって歩兵連隊の跡地にアメリカ占領軍が駐留してから、付近に米軍用の飲食店や商店が増えて、急に夜の街が賑やかになるのです。昭和４０(1965)年代になるとパブ、クラブなどの社交場が増えます。近くには俳優座劇場（昭和２９年1954）やテレビ朝日も進出していたので米軍関係者のみならず、若者や芸能関係者たちも集まりました。そして六本木は在日、訪日外国人を呼び込む国際色豊かな夜の街に変身しました。次の変身は、昭和５０年代のバブル時代の初期（1980年代前半）に六本木がディスコブームのメッカになったときです。その中心地は、六本木通りと外苑東通りに挟まれた六本木交差点近くの狭い三角形のエリアで、スクエアビル、日拓ビルがディスコの舞台となりました。ビルの周辺にはディスコ客相手のバー、飲食点も多数存在し、六本木の一郭が若者達の歓楽街として深夜まで賑わいました。現在は、当時のビルは解体されて往時の賑わいを伝える建物はありませんが、六本木表通りの雑居ビルの看板に多くのクラブやバーの看板を見るのは、その名残りです。（写真２）平成１５年(2003)に六本木通りに超高層ビルの六本木ヒルズが建設されると、六本木通りの街並みは三度目の変身を始めます。六本木ヒルズにはインターネット関連のソフト開発企業、国際的な金融機関など、今まで六本木の地に縁の薄かった企業が多数入居しました。また美術館、ファッション店などアートに関係する施設・店舗も加わりました。しかし残念ながら六本木ヒルズは、街路の歩道と平面で直接接していないので、街並み形成には今ひとつです。街並みは、そこを訪問する人々が変われば自ずと変わります。特に六本木交差点から六本木ヒルズへ至る六本木通りの街並みは、喫茶店アマンドから始まり、六本木ヒルズ・ノースタワー前にあるオープンカフェに至るまで、ラピロス六本木、ホテルアルカトーレ六本木、三井住友ビル、六本木電気ビルと高層ビルが並びすっかり垢抜けした通りになりました。ただ、折角の洒落たオープンカフェの手前に麻布警察署があるのは街並みの賑わいを切断するので残念です。（写真５、６、７）六本木通りの北側には少し前まで高級洋菓子を売るクローバーと言うカフェがありましたが、今は消えてしまい、目立つ店舗は明治屋だけです。北側は街並みの賑わいでは南側より劣りますが、六本木六丁目にライブハウスのEX THEATERが進出（平成２５年2013年）し、六本木交差点近くの俳優座劇場と共に六本木の演芸に貢献しています。六本木通りは、交差点から溜池へ行く通りよりも西麻布に行く通りが賑わいがあります。その理由は、六本木ヒルズの存在が大きいこともありますが、六本木通りが外苑西通りと交差する西麻布交差点の周辺に料亭、レストランや隠れ家的な高級クラブが多数存在し、芸能人達の遊び場になっているからです。（写真８、９）ただし､六本木通りの街並みとしての欠点は、首都高速道路で上空を塞がれていることです。街路を南北に二分しますし、何よりも街並みを暗くします。（写真１０）最後に指摘したいのは、このような六本木の急速な繁栄に貢献したのは三本の地下鉄の開通です。日比谷線（昭和３９年1964年）、大江戸線（平成１２年2000年）、南北線（平成１２年2000年）の開通は、六本木を都心の陸の孤島から軌道で一気に郊外に繋がる都会にしたからです。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　六本木交叉点の夜景写真２　六本木表通りの雑居ビル写真３　六本木ヒルズ　入り口階段写真４　六本木ヒルズ　メトロハット写真５　六本木アーマンド写真６　六本木表通りのオープンカフェ写真７　六本木表通りの垢抜けした街並み写真８　西麻布交叉点交差点近くの料亭写真９　西麻布交差点近くの隠れ家的な高級クラブ写真１０　首都高速道路で上空を塞ぐ。​

  2018.10.30

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  次々と専門を変える専門商店街　秋葉原電気街（東京の街並み観察　６３）

  専門商店街の最後に取りあげる秋葉原電気街は、時代と共に専門商品を大胆に変えて発展した、変わり種の専門商店街です。１０年前に秋葉原電気街を取りあげましたとき「秋葉原　変わるもの変わらないもの 2008.09.16」と題しましたが、今回は「次々と専門を変える専門商店街」としましたのは、電気街の名前が相応しくない程に変貌した様子をご覧に入れたいと思うからです。終戦後の物資不足の時代に、総武線の秋葉原駅高架下でラジオ組立用の電気部品類を販売する商店主が集まって開店したのが、秋葉原電気街の始まりです。今でもその痕跡は残っています。秋葉原駅の鉄道高架下にある秋葉原電波会館が彼等の共同ビルであり、少し離れた万世橋の袂には今でも一戸建ての商店が営業しています。（写真１、２）完成した消費財を買うのではなく、ラジオという情報機器の部材を買い、自らが製作するという客が秋葉原電気街を誕生させたことは、その後のこの専門店街の発展の方向を予想させるものがありました。バブル景気時期に特定の趣味に深くコミットするオタク族が増えて、アニメ、フィギュア、模型、コンピュータゲーム、パソコンソフトなどを購入して、遊戯と映像を楽しむ若者が秋葉原電気街のお客になりました。彼等はラジオ・オタクの後輩達です。ラジオ組み立てで情報を得る時代から、感性を働かし知的に遊ぶ時代になったのです。商品はソフト化し多様化しました。その結果、秋葉原電気街は、電気街という名前が相応しくない程に街並みは変貌を遂げました。銀座商店街は長年風格のある街並みを維持していますが、それは何故かと老舗の店主に尋ねたら、銀座商店街にはある種のフィルターがあって、銀座の風格に合わない店が開店してもフィルターに阻まれて長続きしないと言いました。そして、そのフィルターとは銀座を訪れる客層だと云いました。秋葉原電気街のフィルターとは、能動的で知的好奇心の強い客層のことであり、誕生の時から今日まで、その変わりないフィルターは働き続けているのです。それでは秋葉原電気街の中央通りの変化した店舗を具体的に見てみましょう。嘗ては主要商品だった白物家電の店舗は発見することすら困難です。ゲーム用パソコン、フィギュアー、家庭用ゲーム、アニメソフト製品など知的好奇心をそそる商品を売る店舗で街並みは満ちています。（写真３、４、５、６、７）更に驚くべき街並みの変化は、中高層ビルの店舗ビルのファサードの凄まじい相貌の変化です。秋葉原電気街の中央通りの両側は、ほぼ中高層ビルが建ち並ぶ通りになりましたが、それらのビル全面に巨大な看板を掲げる店舗が多いことです。秋葉原電気街の中央通りを歩いていると、巨大なスクリーンに囲まれているように感じます。（写真８、９）最後に、秋葉原電気街の変貌と発展に貢献した外部環境の改善も見逃せません。先ず、秋葉原駅と筑波学園都市を結ぶ首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスが平成１７年（2005年）開通し、僅か４５分で先端科学技術研究都市と秋葉原を繋ぐことになりました。さらに、ほぼ時を同じくして、秋葉原駅中央改札口の前にあった秋葉原の青物市場が閉鎖され、その跡地にIT産業の世界的拠点にするとの掛声で「秋葉原クロスフィールド」が建設されたことです。そこには秋葉原UDXビル（平成１８年）と秋葉原ダイビル（平成１７年）とが誕生しました。（写真１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。​人気ブログランキングへ​写真１　秋葉原電波会館　秋葉原電気街発祥の地写真２　秋葉原電波会館内の店舗では昔のように部品、工具類を販売している。写真３　白物家電の店舗を探すのは難しい。写真４　ゲーム用パソコンは高価だが人気あり写真５　フィギュア・ホビーの専門店に若者が多い。写真６　家庭用ゲーム、アプリなどの店舗は人だかり写真７　アニメソフトなどを売る店舗　ビルの全面に広告看板写真８　秋葉原電気街の中央通りの両側は隙間無く中高層ビルが林立している。写真９　ビル全面の巨大看板に灯がつくと、巨大スクリーンのように見える。写真１０　秋葉原クロスフィールドのUDXビル<b

  2018.10.08

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  馬喰横山町の衣料品問屋街　（東京の街並み観察　６３）

  専門店街として外せないのは日本橋横山町･馬喰町問屋街です。と言いますのは、問屋街としての歴史の古さからも、また繊維製品のみならず小物、雑貨など品目の多さからも、そして現金安売卸売問屋として価格の低廉さからも、全国的に知られた存在だからです。大正大震災と東京大空襲に遭遇しながら復活を遂げた生命力のある専門問屋街だからです。日本橋横山町･馬喰町問屋街に関しては、この東京今昔物語で既に「東日本橋というところ 2012.01.06」 「 東神田は繊維問屋街発祥の地 2014.03.17」「現在の繊維問屋街は馬喰横山町が中心である 2014.03.27」と三回取りあげておりますので、今回は、日本橋横山町･馬喰町問屋街を形成する、三つの街路、江戸通り、馬喰横山新道問屋街、横山町大通りに展開する衣料品問屋街の現状を写真でご紹介します。馬喰横山町の衣料品問屋街がある場所は、江戸通りと清洲橋通りが交差する馬喰町交差点の東側の東日本橋街区にあります。先ず江戸通りの衣料品問屋街です。現在の江戸通りは水戸街道に通じる幹線道路なので道路の両側は殆ど中層階のビルで埋まっています。大手の衣料品問屋は、その中層階のビルに入居して､ビルに立看板を掲げて営業していますが、車で車道を通り過ぎるだけですと、ここが衣料品問屋街には見えません。（写真１）しかし歩道を歩いてみますと、所々に戸建て店舗のように地上階で通行人相手の営業をしている店があり、歩道にまで衣料品を展示して販売しているので、外見はオフィスビル街ですが、この通りが東日本橋地区で最初に衣料品問屋街が生まれたところと分かります。（写真２、３）次に、江戸通りから一筋裏側に並行して走る馬喰横山新道問屋街は、道幅が狭い道路に戸建て店舗が軒を連ねて営業しているので、衣料品問屋街らしい街並みです。この街並みは店舗数が多く、取り扱う商品の種類も多種多様なので、小売り客が沢山訪れて最も賑わうところです。ところが中には小売りお断りの卸専門店もあり、やはり問屋街なのだと知りました。（写真４、５、６、７）この馬喰横山新道問屋街と並行して更に裏側にあるのが横山町大通りです。ここは規模の大きな卸問屋が並んでいて、街路の歩道には仕入れか積み出しのためか、時々沢山のダンボール箱が並べてあり、いかにも卸問屋街らしい街路ですが、そうかと思うとモダンなファッションの卸問屋があったり、小売りもしている粋な店もあります。（写真８、９、１０）戦後は都営地下鉄浅草線の東日本橋駅（昭和３７年1962）と都営地下鉄新宿線の馬喰横山駅（昭和５３年1978）とが誕生して馬喰横山町の衣料品問屋街へ行くには交通の便は大変良くなりました。しかし最近、馬喰横山町の衣料品問屋街への訪問客は少なくなっているようです。ネット通販の隆盛に押されて実店舗の商売が振るわない現象は、馬喰横山町の衣料品問屋街にも及んでいるのです。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。​​人気ブログランキングへ​​写真１　江戸通り両側は中層階のビルが連なる。写真２　歩道の通行人相手に営業する江戸通り商店写真３　歩道の通行人相手に営業する江戸通り商店写真４　馬喰横山新道問屋街の入り口写真５　馬喰横山新道問屋街の小物屋　衣料品のほかにも装飾品など多彩写真６　若いカップルも訪れる馬喰横山新道問屋街写真７　着物姿のご婦人も訪れる馬喰横山新道問屋街写真８　街路の歩道で仕入れ・積み出しの作業する横山町大通り問屋街写真９　モダンなファッションの卸問屋写真１０　小売りもする紳士服のサカゼン​​

  2018.09.16

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  合羽橋道具街　調理器具の専門店街 （東京の街並み観察　６２）

  仏壇通りのある浅草通りの中程に菊屋橋交差点がありますが、今回観察する調理器具専門の合羽橋道具街は、この菊屋橋交差点から始まります。その出発点の角のビルの屋上に、大きなコックさんの像が載っているので、すぐ分かります。（写真１）合羽橋道具街は、菊屋橋交差点から北上して、言問通りに達して終わる、大変長い街並みです。しかも、仏壇通りでは店舗が道路の片側にだけに並んでいましたが、合羽橋道具街は両側に隙間無く建ち並んでいるので、店舗数は１７０以上もあるという、恐らく日本で最大の専門商店街です。（写真２）この合羽橋道具街のある通りは、蔵前と三ノ輪を直線で結ぶ新堀通りと云う幅広い道路です。新堀通りは元々は道路ではなく、江戸幕府が造った新堀川という人工の水路でした。昭和時代になって新堀川を地下に埋めて下水道化し、その上を道路にしたのが新堀通りなのです。ですから現在の合羽橋道具街が誕生したのは、戦前の昭和時代であり、比較的新しいのです。しかし、合羽橋界隈には、もっと昔から台所道具の市が立っていたそうですが、その場所は、現在の合羽橋本通りだったのでしょう。と言いますのは、当時の合羽橋本通りは、浅草寺と上野の寛永寺を結ぶ幹線道路で、人通りが多いところであり、新堀川に架かっていた合羽橋は、合羽橋本通りの橋でしたから、合羽橋の袂あたりで鍋釜などを持ち寄って店を出したのが合羽橋道具街の始まりなのでしょう。（写真３）いずれにしても、昭和時代から今日までの比較的短い間に、現在のような大規模な合羽橋道具街に発展したのは、近くに浅草という大繁華街があったお陰えすが、新設されたばかりの新堀通には自由に店舗を開設できたから出店が容易だったのでしょう。連棟式の低層階ビルを建設し、一挙に多数の調理道具店が出店したケースもありました。（写真４）合羽橋道具街を歩いて感じるのは、調理機器具は商品の種類が多く、夫々の商品毎に専門化した店舗が並んでいるので、買い物の予定がなくても羽橋道具街の散策は楽しいものです。一口に調理道具と言いましても、食材を裁断する刃物、包丁、煮炊きする鍋、釜、鉄板、焼網、料理を盛る皿、茶碗、どんぶり、厨房の大きな設備、料理店の装飾備品、食品見本の模造品など、更に和食、洋食、中華の調理道具なども、食事･食品に関わるあらゆる商品を取り揃えているのです。これらが合羽橋道具街の規模を大きくすると同時に、街並みの店舗景観を多様にしているのです。（写真５、６、７、８）また、合羽橋道具街は卸問屋街としてスタートしましたから、最初の顧客は料理屋やレストランの店主や料理人でしたが、やがて素人客も訪れるようになり、今では大抵の店では卸、小売り区別はしていません。玄人が使うのと同じ調理道具が買えると云うので素人も集まってきますし、最近では世界的な和食ブームの所為で、調理道具に興味を持つ外国人観光客も街中によく見かけます。（写真９）最後に、年に一度、合羽橋道具街祭りが開催され、新堀通りでは地元中高生による吹奏楽隊の行進が行われ賑やかですし、歩行者天国となった新堀通りは、見物客と特別セールスの買い物客でごった返します。（写真１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　合羽橋道具街の入り口にあるコック像写真２　菊屋橋交差点から合羽橋道具街を見通した景観写真３　合羽橋本通との交叉点　嘗て合羽橋がここに架かっていた。写真４　連棟式の低層階ビル　下は商店、上層階は住居の下駄履きビル写真５　瀬戸物屋写真６　釜、庖丁、南部鉄器などを販売している。写真７　食品見本の模造品　玩具、飾りなどにも人気商品写真８　和食、洋食、中華、菓子の万屋もある。写真９　日本料理の包丁類に興味を持つ外国人たち写真１０　合羽橋道具街祭りの歩行者天国

  2018.08.22

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  上野・浅草の仏壇通り　（東京の街並み観察　６１）

  台東区の浅草通りに、神具や仏具を売る店が並ぶ神仏具専門店の街並みがあります。通称「仏壇通り」と呼ばれる長い街並みで、浅草通りの下を走る地下鉄銀座線の一区間分（稲荷町駅から田原町駅まで）以上の長さがあります。（写真１）神具と仏具いう限られた商品を専門的に売る店だけが、このように一ヶ所に集中して立地しているのは、この地域の周辺に多くの寺社が存在しているからです。寺社に参拝する人達が仏壇通りの主な顧客なのです。学生街の近くに古書店街や楽器店街が繁盛したのと同じ現象です。仏壇通りを西に行けば上野駅に突き当たりますが、その裏側は上野の山であり、そこには寛永寺があります。仏壇通りを東に行けば駒形橋に達しますが、駒形橋から浅草寺の雷門が見えます。更に、仏壇通りのほぼ中央の北正面には東本願寺（本山）があります。寛永寺、浅草寺、東本願寺は全国的に知られた関東屈指の名刹で、周辺に沢山の小寺を抱えています。ということは仏壇通りの四方は寺町に囲まれていると云うことです。（写真２、３、４）この界隈の寺社の総数は１５０以上にものぼりますが、その殆どの寺社は、東側の国際通りと西側の清洲橋通りに挟まれ、北側の合羽橋本通りと南側の春日通りに囲まれた四角の街区に収まっています。仏壇通りで売られている仏神具は、仏壇・仏具や神棚とその関連品目ですが、仏壇が普及した背景には、江戸時代に幕府はキリシタンではないことを寺に証明させる寺請制度を設けたので、仏教徒は菩提寺の檀家になり、各戸ごとに仏壇を設けるよう奨励したからと云われています。しかし江戸幕府が寺請制度を設ける前から、お盆には先祖の霊を家に迎える習慣がありましたから、そのための祭壇（魂棚）が仏壇になった場合も多くあったでしょう。また、神棚は、産土神や鎮守神を祀る神社から戴いた神札を収めて拝むところで、札宮とも云いますが、日本神道は仏教伝来以前から存在していた日本人固有の信仰ですから、神棚を家に設ける習慣は古くから広く普及していました。戦後は核家族化や住宅事情の悪化で、仏壇や神棚を自宅の設けるケースは減りましたが、それでも外国と比べると、日本では自宅で神仏を拝み祈る習慣は根強いものがあったので、世界でも珍しい「仏壇通り」が存在するのです。（写真５）因みに、キリスト教国では教会で祈りを捧げますし、仏教国のタイでも寺院で祈りを捧げるだけで、各家庭には仏壇はありません。寺院の場合は、本堂内は仏像、燈明など賑やかに飾られて装飾的ですが、神社の場合は、本殿内にあるのは鏡と注連縄（しめなわ）位で極めて簡素です。檀家は寺院に倣い仏壇を豪華にしますし、氏子は神社に倣い神棚を簡素にします。ですから仏壇通りでは、神具店は僅かしかありませんで、仏具店が殆どです。また、仏具店の店の構えも立派です。（写真６．７）また、仏壇通りは歴史のある街並みですから、古風な店構えの店舗も残っていますが、仏具店の中には店舗の看板を現代風に改造したり、或いは奇抜な和装スタイルのファサードで高級感を出したりしています。そのため仏壇通りの街並みは、古さと新しさが入り交じった不思議な街並みとなっています。（写真８．９、１０）なお、この仏壇通りの殆どの神仏具店は、神保町の古書店街と同じように、道路の南側にだけ立地していますが、神仏具も古書と同じく太陽光を避けたからでしょう。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　仏壇通りは低層階、中層階のビル街となる。写真２　寛永寺本堂　谷中霊園の近くにある。写真３　浅草寺本堂　　写真４　東本願寺　浅草通りから正門を入る。写真５　仏壇通り　広い歩道の車道側に自転車専用道を設置してあり安全写真６　立派な仏像まで売る仏具店写真７　数少ない神具店写真８　看板はカタカナ文字で現代風の仏具店写真９　和装スタイルのファサードで高級感を出す仏具店写真１０　昔ながらの古風な店構えの仏具店

  2018.08.05

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  お茶の水楽器店街と小川町スポーツ用品店街　神田学生街と共に　（東京の街並み観察　６０）

  ​音楽とスポーツは学生達の憧れの世界です。多情多感の若者は音楽を愛し、スポーツを好みます。お茶の水楽器店街と小川町スポーツ用品店街の発展は、隣接する神田学生街区の存在と切り離せません。お茶の水は駿河台地の上にあり、小川町は駿河台地の下にあります。駿河台地区には中央大学をはじめとして明治大学、日本大学の校舎があります。神田神保町の古書店街を育てた駿河台の学生街区は楽器店街とスポーツ用品店街をも育てました。JRお茶の水駅のお茶の水橋改札口を出て、駿河台下交差点に向かって歩き出すと、道路の両側に楽器店が軒を連ねて並んでいます。（写真１、２）更に歩いて、明治大学の巨大な校舎と日本大学大学院の重厚な校舎の前を過ぎると、駿河台下交差点に達します。交差点を左に曲がると靖国通りに入りますが、そこには数多くのスポーツ用品店が並んでいます。（写真３、４）お茶の水楽器店街で販売している楽器は殆ど洋楽器です。明治時代になって（旧制）東京音楽学校が創設（明治２０年1887年）され西洋音楽の輸入が始まります。戦前の昭和には日本人演奏家で構成された交響楽団、新交響楽団（昭和元年1926）（後のNHK交響楽団）、及び東京交響楽団（昭和１６年1941）（後の東京フィルハーモニー管弦楽団）が誕生して西洋音楽（交響楽）が演奏されるようになりました。戦前の昭和時代にはヴァイオリン、フルート、クラリネットなどクラシック音楽の楽器を販売する楽器店がお茶の水付近で営業し始めたと言いますから、楽器の街、お茶の水の歴史は古いのです。戦後は進駐軍が持ち込んだ軽音楽、ジャズ音楽が盛んとなり、その後は学生達のロックバンドや音楽サークルの活動が盛んになっていきます。その結果、お茶の水楽器街で販売される楽器は、クラシック楽器に加えて、エレキギター、トランペット、サクソフォーン、キーボード、ドラムなど多様になっていきます。（写真５、６）小川町のスポーツ用品商店街は、靖国通りの駿河台下交差点から小川町交差点の間にあります。この靖国通りは、神田古書店街から、須田町や岩本町に通じる交通量の多い幅広い道路で、その両側には中高層のビルが建ち並び、多くのスポーツ用品店は、それらのビルの中で営業しています。（写真７、８）国民的人気の野球は人気や季節に影響されませんが、オリンピク競技のスポーツなどは日本人選手の活躍があると人気が高まり、スポーツ用品の売り上げも上がるそうです。また、スキーなどウインタースポーツは、当然季節的に売り上げは変動します。またスポーツウエアはファッション製品ですから変動が激しいでしょう。そのため、スポーツ用品商店街は、販売する商品に変化があり、何時の間にか街並みの表情が変わります。（写真９、１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　お茶の水駅近くの楽器店通り写真２　お茶の水駅近くの楽器店通り写真３　小川町のスポーツ用品商店街写真４　小川町のスポーツ用品商店街　季節の変わり目に買うのがお得写真５　お茶の水駅近くの楽器店通り　店先にはキーボード写真６　お茶の水駅近くの楽器店通り　店内はエレキギター写真７　小川町のスポーツ用品商店街　中層階の立派なビルで営業するスポーツ店写真８　小川町のスポーツ用品商店街　中層階の立派なビルで営業するスポーツ店写真９　小川町のスポーツ用品商店街　店先に商品を並べる店も????写真１０　スポーツ用品大手のミズノ東京店​

  2018.07.19

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  江戸の昔から読書人が支えた神田古書店街　（東京の街並み観察　５９）

  神田古書店街については、既に２回（「神田古書店街も進化する」2008.10.25、「神田古書店街はリサイクルの元祖」2009.10.02）で取りあげていますが、今回は、それらを纏めて書き直し、新しい写真を加えました。神田古書店街は、靖国通りの専修大前交差点から駿河台下交差点まで続く長い街並みです。それも古書店の殆どの店は靖国通りの南側に並び、北側には見当たりません。太陽の光が直接書物に当たると日焼けするのを嫌うからです。（写真１、２）前回、明治以降に多数の学生達が神田に集まり、神田の古書店街を発展させたと書きましたが、司馬遼太郎は「古本の街のいまむかし」というエッセーで次のように書いています。「東京の神田の古本の街は江戸時代からのものだが、その後、いよいよ充実した。・・・要するに神田に集中していた塾とともに興り、栄えた。明治後、神田に法律学校がたくさんできて、それが、明治大学などのもとになったことはいうまでもない。」大阪は商人たちの街でしたが江戸は武士たちの街でした。しかし江戸時代は平和でしたから武士たちは戦さの代わりに学問に励みました。幕府は新しい儒教の朱子学を正学として採用し、神田の湯島に昌平坂学問所を設けて朱子学を奨励しましたので、神田周辺には武士だけでなく町人も通う学習塾が沢山存在したそうです。当然、その学習塾で使う漢文の教科書（漢籍）を取り扱う書店が周辺に出現し、その大半は古書店でした。漢籍は中国から輸入した書物ですが、日本人は漢文の文体をそのままにして日本流に読み下しました。「漢文訓読」という手法で、外国文を日本文として読んだのです。外国の文章を翻訳せずにそのまま日本語として読むのは、世界史上でも珍しい離れ業でした。即ち当時から漢籍は日本書籍になっていたのです。ですから、明治時代に多くの愛国的な中国青年が日露戦争に勝った日本に近代化を学ぼうと来日したとき、神田の古書店街で、自国では既に失われた中国の古典（漢籍）が沢山あるのに驚いたと記しています。明治以降、日本は西欧文明を摂り入れるため沢山の洋書を輸入しましたが、同時に、西欧の書籍を熱心に日本語に翻訳しました。日本語は漢字と仮名文字を併用した文体でしたが、中国から借用した漢字だけでは西欧文明を翻訳するには不足でしたので、明治の日本人は、日本製の漢字（熟語）を数多く考案して、巧みに西欧文明を日本語に翻訳したのです。その和製漢字は戦後の中国でも西欧文明の導入に便利なので使われています。（例えば「中華人民共和国」のうち人民と共和国は和製漢語です）近代になって西欧文明を受け入れた多くのアジアの国々では、自国語で西欧文明の成果を学んだり発表することが出来ず、高度の学校教育では西欧の言葉（例えば英語）で行なっています。韓国の学生が日本の大学で日本語で高度の自然科学や人文科学を教えていると知って驚いていたそうです。大抵の途上国では高等教育では欧米語のテキストを使っているからです。日本人は、古くは高度の古代中国文明を漢籍のまま日本文（自国語）として読み、近世以降は高度の欧米文明を原語ではなく日本文に翻訳して学びました。そのため、日本は、文明国の中では自国語（日本語）の書物を最も多く所有している国でしょう。経済地理では集積が集積を呼び、土地の履歴は持続すると云いますから、本好きの日本人が居る限り、神田の古書店街は発展し続けるでしょう。街並には書物を探索する人の姿は絶えません。（写真３、４、５）そう思って、改めて最近の街並を観察してみますと、戦後になって街並の長さは余り変わりませんが、二階建ての書店が大きなビルになって、街並の背丈が高くなり、書店の容積は増大しているのです。しかし、モダンなモルタル造りの戸建ての書店や洒落たファサードの店舗は僅かに数軒を残すのみで、昔の古書店街の風情が失われたと寂しい思いがします。（写真６、７、８、９、１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　駿河台下交差点から見た古書店街写真２　靖国通りの専修大前交差点から見た古書店街写真３　書物を探索する人々写真４　書物を探索する人々写真５　書物を探索する人々写真６　中層階の独立ビルの神田古書店街写真７　低層階の連棟ビルの神田古書店街写真８　低層階の連棟ビルの神田古書店街写真９　モダンなモルタル造りの戸建ての書店写真１０　しゃれたファサードの店舗（老朽化で近く立て替えの予定）

  2018.07.05

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  神田の三つの専門商店街を創った大学キャンパス街区　（東京の街並み観察　５８）

  神田神保町に古書商店街があり、更にそれに続いて神田小川町にスポーツ用品店街があり、神田駿河台坂上にはお茶の水楽器店街があります。神田にこれら三つの専門店街が誕生し発展したのには共通の背景があります。それは、神田の駿河台から神保町を経て九段下に至る地域に、多くの私立大学のキャンパスが存在していることです。そこで、神田の街の表通りの専門店街を観察する前に、先ず神田の学園街区の大学の校舎（キャンパス）を観察しましょう。江戸時代に、神田の湯島聖堂の近くには幕府の教育機関である昌平坂学問所がありました。明治維新以後神田一帯に学問を教える学校が数多く誕生することになったのは、昌平坂学問所の存在と無関係でないと思います。いま昌平坂学問所の跡地の近くに、東京医科歯科大学（昭和３年1928年）と順天堂大学（昭和２１年1946年）がありますが、JRのお茶の水橋改札口から駿河台下へ下る坂道（明大通りともいう）の両側には、明治大学と日本大学の立派な校舎が聳えています。更に、西に向かって九段坂下までの間の、靖国通りの北側には、日本大学があり、九段坂下の近くには専修大学があり、夫々立派な校舎（キャンパス）を持っています。（写真１）JRのお茶の水橋改札口を出て明大通りを少し進むと、右手に高級オフィスビルとも見える明治大学のアカデミーコモンと言う校舎があります。社会開放型の生涯教育を行う校舎です。その南隣には明治大学の本校舎（リバティタワーと言う）が聳えていて、四隅を円筒形で支えた城塔のように見えます。いずれも従来の大学キャンパスのイメージからかけ離れた豪華な建物です。（写真２、３）明大通りの坂を少し下った反対側には日本大学大学院の校舎があります。道路に面した低層階の二棟の建物のファサードは、古風で重厚な装飾が施されていて学問の府としての貫禄があります。最近建つ大学の校舎は機能優先で無表情なものが多いので、学園街区の真ん中に時代の伝統を記す校舎が残っていることは良いことです。（写真４、５）明治政府は国の近代化のために法整備が必要と考えて、人材育成のため法律学校の設立を促しました。その結果、神田駿河台周辺には、法政大学（明治１３年1880年）、専修大学（明治１３年1880年）、明治大学（明治１４年1881年）、中央大学（明治１８年1885年）、日本大学（明治２２年1889年）等の前身となる私立の法律学校が次々と設立されたのです。通称「神田四学」とは明治大学、中央大学、日本大学、専修大学を云うそうですが、今は法政大学は靖国神社の北側に移転（平成１２年2000年）しており、中央大学は多摩キャンパスに大半の学部が移転（昭和５２年1977年）して駿河台には記念館しかありませんから、現在、この学園街区に校舎を持っているのは明治大学、日本大学、専修大学の三大学だけです。尤も、最近は郊外に移転した校舎を都心部に回帰させる動きが出ていますので、この学園街区にも変化が出るかもしれません。（写真６、７）靖国通りの北側には私立の法律学校でしたが、南側には明治政府が国立大学を創設しました。先ず神田一橋に（旧）東京外国語学校を創設（明治６年1873年）し、神田錦町に東京大学を創設（明治１０年IR77年）し、その後、神田一橋に東京商科大学を創設（大正９年1920年創設）（（旧）東京外国語学校は東京商科大学に吸収合併）しました。しかし、東京大学は学部の充実に伴い明治１８年（1885年）までに本郷に移転し、その跡地に学士会館があります。東京商科大学は関東大震災で校舎を焼失して国立（くにたち）に移転し、その跡地に如水会館があります。現在、靖国通りの南側にある大学は戦後に設立した共立女子大学だけです。（写真８、９、１０）明治時代以降、当初は法律専門の単科大学（college）として設立された各私立大学は、その後、政治・経済から理工系まで学部を増設して、総合大学（university）に発展しましたので、学園街区で通学する学生数は増加を続け、それと共に神田の街並は発展しました。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　東京医科歯科大学写真２　明治大学アカデミーコモン写真３　明治大学リバティタワー写真４　日本大学法学科大学院写真５　明大通り（JRお茶の水橋改札口から駿河台下交叉点の間）写真６　中央大学駿河台記念館写真７　専修大学写真８　学士会館写真９　如水会館写真１０　共立女子大学　校舎と講堂（青い屋根）

  2018.06.20

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  日比谷仲通り　復活する映画と演劇の街　（東京の街並み観察　５７）

  ​先に観察した大手町仲通りと丸ノ内仲通りは、南に延びて晴海通りに突き当たり、そこで行き止まりですが、晴海通りをよぎると、尚もその先にやや細い街路があります。この通りは、平成３０年に入って「日比谷仲通り」と名付けられました。その結果、仲通りと称する街路は、大手町から日比谷まで一本で繋がったのです（一部未通ですが）。日比谷仲通りに入って先に進むと、右手に東京ミッドタウン日比谷と言う巨大なビルが聳えているのが見えます。日比谷仲通りに立ち止まって右手を見ると大きな円形の広場があり、左手には小さな合歓の広場（現在は日比谷ゴジラスクエアと云う）があります。二つの広場は日比谷仲通りを挟んで一体化していて、新しく生まれた巨大な超高層ビルの足下に広い空間を造っています。（写真１、２、３）日比谷仲通りは、日比谷公園に面する有楽町一丁目の街区の中央を南北に貫く街路で、その左右には昔から東宝系の映画館が数多く集まっていた場所でしたが、西銀座の日劇跡地に有楽町マリオン・ビルが建設され（昭和５９年1984年竣工）、そこに大型の映画館が複数館進出して、日本最多の座席数を誇るマリオン映画街となりますと、日比谷仲通りは映画の街の首位の座を奪われます。しかし、その後、日比谷仲通りには、ミニシアターの元祖のTOHOシネマズシャンテ（昭和６２年1987年竣工）が開場して映画ファンを惹きつけ、少し遅れて東京宝塚ビル（平成１２年2000年竣工）が再建されて、ここを本拠地にする東京宝塚劇場が常時開演されることになり、賑わいを取り戻します。そして、そのビルの地下階には映画ファンに親しまれたスカラ座、みゆき座も踏みとどまりました（但し、名前は消えてスクリーン１２、１３と呼ばれているのが寂しいですが）。（写真３、４）更に、今年東京ミッドタウン日比谷（平成３０年2018年竣工）が完成すると、その超高層ビルの５、６階に都内最大級のシネマ コンプレックス「TOHOシネマズ日比谷」が開場しました。「TOHOシネマズ日比谷」には最新で最高の映像・音響設備を誇る大小１１の映画館が開設され、映画の街は復活しました。（写真５）東京ミッドタウン日比谷ビルは３５階建てのオフィスビルですが、７階までは商店、飲食店および映画館の「TOHOシネマズ日比谷」が入居する複合型ビルです。６階には 日比谷公園を一望できる屋上庭園が設置されていて、そこから日比谷公園の緑を見下ろせます。映画を鑑賞した感動の余韻を楽しむのに格好の屋上庭園です。（写真６）東京ミッドタウン日比谷ビルは、四方の角を丸く膨らませた優雅な曲線の外観を持ち、内装も嘗てこの地にあった三信ビルのアールデコ調を取り入れるなど、大手町や丸ノ内の超高層ビルが整然としているが冷たい外観であるのとは違って、暖かい美しさがあります。（写真１、７）日比谷仲通りを挟んで東京ミッドタウン日比谷と向き合って建っているのは、東宝日比谷ビルです。低層階に「日比谷シャンテ」と云うショッピングモールがあり、映画、演劇愛好者にお洒落なアイテムを販売していますが、流麗な曲線で縁取られたビルの外観は、隣の東京ミッドタウン日比谷の外観と調和して、上品で優雅な都市景観を演出しています。。（写真８）東京ミッドタウン日比谷と東京宝塚ビルとの二つのビルに包まれた角地には、半世紀も前からオペラやミュージカルを上演している日生劇場（昭和３８年1963年竣工）があります。日生劇場は舞台芸術の振興のため日本生命保険会社が建設したものですが、ビルの外観のデザインは重厚で風格があります。窓の面積を少なくし、花崗岩で覆われた広い壁面を強調した建物は、嘗て日生劇場の隣に建っていた旧帝国ホテル（フランク・ロイド・ライトが設計した）が大谷石積みの重厚な外観だったのを意識して設計したのでしょう。優雅で重厚な建築物が並ぶ都市空間を造ろうとしたのです。（写真９）それにしても、日比谷仲通りが帝国ホテルに突き当たる一郭には個性的な劇場が集まっています。日生劇場が輸入品のオペラを上演し、隣の東京宝塚劇場が国産のオペラを上演し、芸術座の跡地に再建されたシアタークリエ劇場（平成１９年2007年竣工）ではヴェテランの演劇人が出演する個性派の演劇、ミュージカルを上演しています。（写真１０）（以上） 人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。 人気ブログランキングへ写真１　東京ミッドタウン日比谷写真２　東京ミッドタウン日比谷ビル前に作られた大きな円形広場写真３　合歓の広場　中央の台地に新ゴジラ像が載っている。正面奥のビルはTOHOシネマズシャンテ写真４　東京宝塚劇場が入っている東京宝塚ビル写真５　東京ミッドタウン日比谷ビル内のシネマ コンプレックス「TOHOシネマズ日比谷」写真６　東京ミッドタウン日比谷ビルの６階にある屋上庭園写真７　在りし日の三信ビル写真８　東宝日比谷ビル写真９　日生劇場写真１０　シアタークリエ、東京宝塚劇場、日生劇場が並ぶ通り  

  2018.05.26

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  ビルの超高層化は新宿西口周辺に拡散する　（東京の街並み観察　５６）

  新宿西口超高層ビル群の出現で、ビルの高層化が進んだのは西新宿六丁目地区だけではありません。新宿駅西口の周辺は、それまでバス・ロータリーを囲んで、京王デパート、小田急デパート、小田急ハルク、明治安田生命ビルなどの中層階ビルだけでしたが、ここにも変化が起きました。新宿西口超高層ビル群とJR新宿駅西口とに挟まれたこの地域でも、超高層ビルが次々と起ち上がったのです。平成になって新宿西口バス・ロータリーの隅にオフィスビルの新宿エルタワー（平成元年1989年竣工）が建ち、超高層の工学院大学が建ち（昭和６４年1989年竣工）、工学院大学の敷地内にオフィスビルのエステック情報ビル（平成４年1992年竣工）が建ち、新宿センタービルの東側には３つの専門学校が入居するモード学園コクーンタワー（平成２０年2008年竣工）が建ちました。この街区は、新宿ターミナル駅に最も近いので通勤、通学に便利です。少し離れますが甲州街道沿いには文化学園大学と同短期大学がありますから、新宿西口は意外と文化や技術の高等教育機関が多い地域なのです。（写真１、２）モード学園コクーンタワーは、ビルの名前の通り蚕の繭（コクーン）をイメージした形態をしています。紡錘形の躯体に包帯を巻き付けたような独特の姿形で人目を惹きます。背の高い本館ビルと、その足元に身を丸めた繭玉形の低層棟の対比も絶妙です。（写真１、３）次に、淀橋浄水場跡地の超高層ビル群の南側ですが、甲州街道寄りに建つ国際電信電話（KDDI）の本社ビル（昭和４９年1974年竣工）は、淀橋浄水場跡地の新宿住友ビルや新宿三井ビルと同じ年に竣工した、新宿西口で最も古い超高層ビルの一つです。その後おくれて、KDDIの西側に新宿NSビル（昭和５７年1982年竣工）が建ち、北側に新宿モノリスビル（平成２年1990年竣工）が建ち、三つの超高層ビルでこの街区を形成しています。（写真４、５）超高層ビル群の南側では、更に超高層ビルの新宿パークタワー（平成６年1994年竣工）が建ちました。巨大な都庁ビルに負けないくらい大きなビルで、甲州街道に面して建っています。東京ガスが所有するオフィスビルですが、このビルの北側は新宿中央公園に面しているので、その眺望を生かした超高級ホテルのパーク・ハイアット東京がこのビル上層階に入居しています。（写真６）新宿パークタワーは、屋上に三つの三角形の屋根が段差をつけて並んでいて、近くにある東京都庁の第二庁舎の三段の寄木細工風の構造に似ています（これら二つの超高層ビルは丹下健三の設計によるもの）。隣接する建造物は互いに相手を意識して調和すると言うケースは、既に銀座四丁目交差点と東京駅丸ノ内広場で見てきましたが、ここではスカイラインの類似性という雄大な景観となっています。（写真７）新宿パークタワーから少し離れますが、同じ甲州街道沿いで山手通りと交差する場所に東京オペラシティビルと NTT新宿本社ビルの二つの超高層ビルが対峙して建っています。 （写真８）東京オペラシティビル（平成８年1996年竣工）には、オフィスのほか音楽演奏会場などの文化施設が二つあり、最上階と低層階と地階には高級レストラン、飲食店、店舗がテナントとして入っていて、ビルが一つの「シティ」となっています。更に東隣りに新国立劇場（平成９年1997年）が建設されて、両者の間にはガレリアと呼ばれる吹き抜け風の長い廊下で繋がっています。（写真９）渋谷駅西側には東急文化村があり、池袋駅西側には東京芸術劇場がありますが、これまで新宿駅の西側にはオフィスビルとマンションだけでした。東京オペラシティビルと新国立劇場の誕生によって、新宿西側にも文化の香りが満ちてきました。なお、新宿西口の超高層化の波が、その周辺地域に容易に広がったのは、新宿西口地域が道路整備に特別有利な条件があったからです。それは、淀橋浄水場貯水池の地盤を走る低い道路と地表を走る高い道路が二層の道路として整備できて、立体交差が可能になったからです。しかも貯水池跡の低い地盤を走る道路は、新宿駅の地下出口に直結していて、駅ロータリーも二層になっています。都内で大規模のビル超高層化を進めるのにネックになるのは、道路の混雑と鉄道との接続ですが、新宿西口ではそれを解決する条件が整っていたのです。（写真１０） 人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　新宿エルタワー（右のねずみ色のビル）　左後ろにコクーンタワーが見える。写真２　工学院大学（右）とエステック情報ビル（左）写真３　コクーンタワー　背の高い本館ビルと、その足元に身を丸めた繭玉形の低層棟写真４　国際電信電話（KDDI）の本社ビル写真５　左が新宿NSビル、右KDDIビル、中央がモノリスビル写真６　巨大な都庁舎に比べても引けをとらない新宿パークタワー写真７　新宿パークタワーと第二都庁舎のスカイラインの類似性　写真８　東京オペラシティビル（左）と NTT新宿本社ビル（扇状の丸いビル））写真９　東京オペラシティビルと新国立劇場写真１０　新宿駅西口の自動車ロータリーは地上・地下の二層になっている。

  2018.05.13

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  淀橋浄水場跡地開発に続いた西新宿六丁目地区の超高層化　（東京の街並み観察　５５）

  ​欧米やアジア諸国の高層ビルに比べて日本のビルは太めです。それは地震の多い日本では耐震力を強めるため太い柱、厚い壁が必要だからです。日本のビルの高層化には外国と比べてハンディキャップがあるのです。それでも、新宿西口で超高層ビルの建設が成功すると、そして容積率の緩和が進むと、都心部でもビルの高層化が盛んになりました。都内の各地で、低・中層階のビルは高層階ビルに、高層階ビルは超高層階ビルへと建て替えられていきました。新宿では、淀橋浄水所跡地開発に続いて、多くの超高層化ビルが建設されたのは西北に位置する西新宿六丁目地区でした。そこは東西を十二社通りと新宿中央公園通りとに挟まれ、南北を方南通りと青梅街道とに挟まれた街区です。嘗て新宿中央公園の西北には十二社池（じゅうにそういけ）があり、この街区はそれに続く低地帯ですが、近くに複数の地下鉄の駅（丸の内線の西新宿駅、大江戸線の都庁前駅と西新宿五丁目駅）が誕生して交通の便がよくなったので、オフィスにもマンションにも便利な場所となり、街は急速に高層化しました。先ず、方南通り沿いに見ていきますと、躯体をくねらせた独特のスタイルのヒルトン東京（昭和59年1984年竣工）、端正な外観で緑色の新宿グリーンタワー（昭和61年1986年竣工）、ビルの一角を鋭角に尖らせて濃紺色に輝くラ・トゥール新宿（平成22年2010年竣工）が並んでいます。（写真１、２、９）ヒルトン東京と新宿グリーンタワーの間を走る新宿中央公園通りが青梅街道に突き当たる右側には、これまた濃紺色に輝く大きな超高層の新宿オークタワー（平成15年2003年竣工）が建っており、更に青梅街道を青梅方向に進むと荘重なデザインの西新宿三井ビル（平成11年1999年竣工）があります。（写真３、４）更に、青梅街道を下り成子坂下で左折すると十二社通りに入ります。十二社通りを南下して進むと、ビルの上層階だけ角を丸めた超高層マンション、N.Y.T.アトラスタワー西新宿（平成19年2007年竣工）があり、その隣に濃紺色の超高層ビル、新宿スクエアタワー（平成6年1994年竣工）があります。（写真５、６）十二社通りを挟んで新宿スクエアタワーの斜め向かい側には空高く聳える６０階建ての超高層マンションのザ・パークハウス西新宿タワー６０（平成29年2017年竣工）があります。更に十二社通りを南下して熊野神社前交差点の近づくと黒川紀章が設計したという超高層マンション、コンシェリア西新宿（平成20年2008年竣工）があります。この二つの超高層マンションは、オフィスビルと違って階層幅が狭いベランダが数多く重なっているので、外観からマンションだと直ぐ分かります。（写真７、８）淀橋浄水場跡地の超高層ビル群は、殆どが昭和の時代（1970年代）に建設されているのに対して、この西新宿六丁目地区の超高層ビル群は、殆どが平成時代（20世紀末から現在まで）に建設されています。西新宿六丁目地区にある超高層ビルは、形態が個性的（ヒルトン、ラ・トゥールなど）で、ビルの色彩も装飾も重厚な造り（西新宿三井ビル、新宿オークタワーなど）であり、個々の建物は夫々豪華で立派なのですが、街区総体として見ると雑然としています。それは、この地域には全体の開発計画がなく、地権者との調整を経て、この２０数年の間に逐次建設されたため、高層階ビルと中層階ビルが不規則に併存してためです。（写真９）更にオフィスビルとマンションビルが混在しているのも西新宿六丁目地区の特徴です。超高層マンションはタワーマンションと言われれて人気があり、現在、湾岸地区で建設が盛んですが、タワーマンションの建設では、西新宿六丁目地区は都内では先行していました。方南通りの熊野神社前交差点からは三つのタワーマンションが見えます。（写真９）ただ、この街区の南端は新宿中央公園に接しているので環境に恵まれています。新宿グリーンタワー前から熊野神社前交差点まで方南通りの坂道の両側には、大きなケヤキ並木が茂っています。（写真１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　ヒルトン東京写真２　新宿グリーンタワーとラ・トゥール新宿写真３　新宿オークタワー写真４　西新宿三井ビル写真５　N.Y.T.アトラスタワー西新宿写真６　新宿スクエアタワー写真７　ザ・パークハウス西新宿タワー６０写真８　コンシェリア西新宿写真９　熊野神社前交差点から見える三つのタワーマンション（右端は事務所、住居併存）写真１０　熊野神社前交差点からケヤキ並木の方南通りをみる。​

  2018.04.25

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  新宿西口の超高層ビルは多様で個性的　（東京の街並み観察　５４）

  主な超高層ビルを個別に観察しましょう。先ず、この街区の中で最も背の高くて一番目立つ存在は東京都庁の庁舎です。街区の西端に細長い新宿中央公園が南北に延びていますが、その公園に沿って、第一本庁舎と第二本庁舎が南北に並んで建っています。二つの都庁舎は建築家丹下健三の設計によるものです。前者は二本の塔を繋ぐような構造で華麗に聳え立っており、後者は高さの違う三つの躯体を重ね合わせた堅牢な構えてす。両者ともビルの壁面はモザイク状に見える装飾的な窓で全面が覆われていて、豪華でありながら荘重な雰囲気を醸し出しています。たそがれ時の夕日の残照に光る窓の輝きは荘厳でさえあります。巷間、都庁舎はノートルダム大聖堂の形をモチーフにしたと言われるのも分かる気がします。（写真１１、１２、１３）次に方南通りに並ぶ超高層ビル群を眺めてみます。新宿住友ビルは、住友不動産が建てたビルで、通常のビルのように四角形ではなく三角形の柱状で、メタル調の外壁が光り輝く美しいビルです。新宿三井ビルは、三井不動産が建てたビルで、黒いガラス張りの外観はシックで、ビル側面に張り付けたX形の鉄骨は耐震補強の為の筋交で、内部構造を露出させてモダンに見えます。新宿センタービルは、大成建設が建てたビルで、外壁はすべて薄茶色の煉瓦調部材で覆われていて、クラシック調の落ち着いたビルです。（前回掲げた写真２、３、４）損保ジャパンビルは損保ジャパン日本興亜が所有していて、白と茶のツートーンカラーの建物は、その裾がスカートのように広がった優雅な形をしています。新宿野村ビルは野村不動産が所有しているビルで、ビル全体が青みがかった白を基調にした、地味な外観です。隣の損保ジャパンビルが斜面の裾を広げているのに対して、地面から垂直にすっくと立ち上がった、装飾の少ない容姿は端正で清々しいです。新宿アイランドタワービルは住宅・都市整備公団が建設したもので、オフィスだけでなく居住部を含む複合ビルで、屋上に蒲鉾形ドームを載せています。（前回掲げた写真５、６、７）この新宿アイランドタワービルの前に、三角形のアプローチ広場がありますが、そこには世界的なアーチスト達の手になるパブリックアートが詰め込まれて配置されています。また、青天井の地下広場（アイランドパティオ）がありテーブルと椅子が置かれています。ここは、機能重視の超高層ビル街を訪れる人々に安らぎと憩いを与える、新宿西口の超高層ビル街の中での自慢の場所です。（写真１４、１５、１６）東京都議会議事堂の東隣に聳え立つ京王プラザホテルは、ベージュ色の二棟建てのホテルです。二棟ともにビル本体の厚さは薄く、躯体は縦横に大きく広げた広い屏風のような建物で、客室の窓が縦横に生地の織り目のように整然と並んでいて、遠くから見ると布の織り目のように見えます。（写真１７と前回掲げた写真９）これらの超高層ビルは形態も色彩も夫々異なっていて、似た建物は一つもありません。華麗さと剛健さを以て高く聳える都庁庁舎、銀色に輝く三角形の住友ビル、シックな黒い三井ビル、煉瓦調の薄茶色の外壁がクラシックに見える新宿センタービル、ツートンカラーでスカート履いた損保ジャパンビル、頭上に蒲鉾型ドームを載せたアイランドタワービル、ベージュ色で屏風のような新宿京王プラザホテルなど、みんな個性的です。散策しながらこれらのビルを地上から眺めていると個性的なビルが色々に組み合わされて空中に現われてきて見飽きることはありません。また、超高層ビルの上層階に登って見渡すと、近くに迫る大きな超高層ビルが眼前に迫り、頭でっかちに見えます。新宿西口の都市空間は誠に多様であり興味尽きないものがあります。（写真１８、１９、２０）新宿西口の浄水場跡地の開発に当たって、関係事業者が都市の景観について意見交換して互いにビルの形態や色彩を調整したとは思いませんが、結果として街区全体の都市の美観は保たれています。また、都市の機能についても、新宿西口の超高層ビル街にはレストラン、ホテル、病院、大学など、種々の都市機能がバランスよく配置されていて、業務機能中心のオフィス街の大手町や丸の内とは違う超高層ビル街となっています。（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１１　東京都庁舎　左が第一本庁舎と右が第二本庁舎写真１２　第一本庁舎　正面玄関写真１３　東京都本庁舎の窓が夕日の残照に光りかがやく。写真１４　アイランドタワービルの前のアプローチ広場　パブリックアート写真１５　新宿アイランドタワービルの前のアプローチ広場　パブリックアート写真１６　アイランドパティオ（青天井の地下広場）写真１７　京王プラザホテル写真１８　新宿西口の超高層ビル群写真１９　新宿西口の超高層ビル群写真２０　新宿西口の超高層ビル群（超高層ビルの上層階から見たもの）

  2018.04.04

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  超高層ビル発祥の地は新宿西口　（東京の街並み観察　５３）

  新宿の街並観察（＝東京の街並観察２０～２４）では西新宿は取り上げませんでしたが、嘗て「 新宿　西口街区は超高層ビル街の先駆者 2013.07.12」で新宿西口の超高層ビル街の性格や特徴を紹介しましたので、今回は主に超高層ビル群の外観を観察してその特徴を述べてみます。今では東京で４０～５０階建ての超高層ビルを見ることは珍しくありませんが、１９７０年代に西新宿で続々と超高層ビルが建ち始めた時は、日本でもニューヨークのような立体的な街が誕生したとして注目を浴びました。（写真１）新宿西口の超高層ビル街の街区は、東側は山手線に、西側は新宿中央公園に挟まれ、北側は青梅街道に、南側は甲州街道に挟まれた区域の中にあります。ここは東京都水道局の淀橋浄水場（約56ヘクタール）の跡地でしたが、新宿西口駅に近く、地型も矩形の纏まった広い平坦な土地でした。新宿駅周辺は、山手線の内側（東側）が大いに発展したのに対して、外側（西側）の発展が遅れたのは、この淀橋浄水場の存在が邪魔になっていたためです。ですから、都市用地として開放されれば急速に発展したのは当然でした。これらの超高層ビルたちは、先ず方南通りに沿って建ちました。方南通りの南側には新宿住友ビル（昭和49年1974年竣工）、新宿三井ビル（昭和49年1974年竣工）、新宿センタービル（昭和54年1979年竣工）が建ちました。北側には損保ジャパンビル（昭和51年1976年竣工）、新宿野村ビル（昭和53年1978年竣工）、新宿アイランドタワービル（平成7年1995年竣工）が建ちました。低層階には飲食店、最高層階には高級レストランが入居し、その他の大部分の階層は企業の事務所が入居しました。（写真２、３、４、５、６、７）方南通りの両側の超高層ビル群が誕生する前に、実は京王プラザホテル（昭和46年1971年創業）が建っていました。開発予定地に先ずホテルが建ち、それも日本では超高層ビル営業の第一号ということは、西新宿の副都心が総合的な都市として発展すると期待されていたのです。（写真８）遅れて平成３年（1991年）に東京都庁が丸の内から西新宿に移転してくると、更に多くの企業が事務所を超高層ビルに移転してきて、それに伴い飲食店、レストランなども数多く集まってきて、淀橋浄水場の跡地は、東京の副都心と呼ばれる大都市に発展しました。（写真９）これらの超高層ビルで構成する都市は、ほかの高層ビルの都市と異なる二つの特色があります。一つは、新宿西口の超高層ビル街区では殆どのビルの高さは４０～５０階建てで高さが揃っており、容積もほぼ同じ大きさなので、街並みを見渡したとき凹凸が少なく全体としての纏まりが良いことです。もう一つの特色は、街区全体の地盤が二重構造になっていることです。これは浄水場の貯水池底に土盛りせずに、地表より低い地盤をそのまま地面として建設したビルが多いので、地表より一段下にも主要道路が敷かれていて、街区の主要道路は地上と地下の二層になっていることです。この立体交差する道路交通網は、自動車にとっては交差点が減るので効率的ですが、歩行者にとってはビルからビルへの移動に不便となり、新宿西口は超高層ビル街は水平的な街並みは成長しませんでした。（写真１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　西新宿で続々と建ち始めた超高層ビル群写真２　住友ビル（メタル色調で独特の三角柱状のビル）写真３　三井ビル（ダークな色調はシックで異色な存在）写真４　新宿センタービル（右に見えるのはモード学園コクーンンタワー）写真５　損保ジャパン興和ビル写真６　野村ビル（画面の左側のビル、右側は損保ジャパン）写真７　アイランドタワー（屋上に蒲鉾形ドームが載る。左側に野村ビルが見える））写真８　都庁第一庁舎（左）と第二庁舎（右）写真９　京王プラザホテル（ほっそりとしたスリムな超高層ビル）写真１０　新宿西口の中央通り（左手の煉瓦壁の高さは浄水場貯水池の深さに相当する）

  2018.03.27

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  東京駅の丸の内駅前広場を囲む超高層ビルたち（東京の街並み観察　５２）

  東京駅丸の内駅舎の保存・復元工事は、平成１９年（2007年）に起工し、平成２４年（2012年）に完成して、創業時の大正期の姿を再現しましたが、それに引き続いて実施されていた丸の内駅前広場の改修工事は、３年余りもの工期を終えて、ようやく平成２９年（2017年）末に完了しました。東京駅丸の内駅舎とその周辺の建築物に関しては、このブログで既に次の通り４回取り上げておりますので、今回は重複を避けて建築物の外観についてのみ、特徴的なことを述べてみます。「東京駅を取巻く超高層ビル群を概観する 2008.03.03」「東京駅丸の内駅舎よみがえる 2013.01.15」「丸の内の変貌　丸ビルと仲通り 2013.02.01」「丸の内の変貌　日本最大の超高層ビル群が誕生 2013.02.08」 この駅前の広場の名前は、当初仮称「都市の広場」でしたが、最終的に「丸の内中央広場」と名付けられました。ヨーロッパで都市の広場と言えば、ロンドンのトラファルガー広場、パリのコンコルド広場、ローマのスペイン広場などのように政治、軍事、宗教のため大衆が集まる広場ですが、日本にある都市の広場は、多くは小規模な駅前広場です。しかし、この「丸の内中央広場」は約２０００坪（6,500㎡）もある、日本の広場としては規模の大きな広場です。しかも周囲を超高層ビル群でぐるりと囲まれた立体感のある広場です。そして、その立体的な都市空間の中心に、丸の内駅舎という歴史的建造物が置かれている構成です。これを空から俯瞰すると、丸の内駅舎は巨大な屏風に囲まれた円形劇場のような舞台であり、丸の内中央広場はその観客席に当たります。（写真１、２、３）この広場で先ず目を惹くのは東京駅の丸の内駅舎です。この建物は、明治政府が日本の近代建築として大正３年（1914年）に建築家、辰野金吾の設計により建設したものです。屋根の左右にはドーム状の塔があり、三階建ての建物全体は赤レンガで覆われており、長い建物の単調さを避けるため壁面及び窓枠には縦に白い襞を取り付けています。西欧建築の模倣ではありますが、日本的工夫が細部の随所に凝らされており、建築当初の原型に復旧して歴史の記憶として残すに値するものです。（写真４）もう一つの東京中央郵便局ビルは、丸の内駅舎の南口前にありますが、その本体が道路に沿って緩やかな曲線を描いて優美に湾曲しています。丸の内駅舎が煉瓦色の剛直な感じなのに対して、東京中央郵便局ビルは白くて柔和な感じの建物です。建築家の吉田鉄郎の設計になるもので、ドイツ表現主義の建築家、ブルーノ・タウトは、このビルをモダニズム建築の傑作と讃えました。（写真５）東京中央郵便局の建物は、昭和８年（1933年）に建設されたものです。平成２４年（2012年）に同じ敷地内に超高層ビルのJPタワーが建設された際、その取り壊しが検討されましたが、歴史的建造物として保存することとなり、現在はJPタワー付属の低層棟として、郵貯関係の事務所に使われています。丸の内中央広場の周囲のビルとして、先ず目立つのは、丸の内駅舎の正面にある、丸ビルと新丸ビルの二棟の超高層ビルです。（写真６）嘗て同じ場所に初代の丸ビルと新丸ビルがありましたが、いずれも８階建ての中層階のビル（大正１２年1923年建設）でして、日本最初のモダンなオフィスビルでした。そのビルの四隅は丸く造形されたビルでしたが、斜め前にある東京中央郵便局ビルの外観も、更に優美な曲線で造形されています。旧丸ビル建設から１１年後に建てられた東京中央郵便局ビルは、既存の二棟の丸ビルと外観上の調和が図られていました。旧丸ビル二棟が取り壊された時も建物の保存運動が起きましたが、所有者の三菱地所はそれを受け容れませんでした。しかし、新しく建った現在の丸ビルと新丸ビルは、中層階まではビルの角を丸くした形態にしてあって、残された東京中央郵便局のビルの曲線美と呼応して、広場の都市空間に調和を与えています。（写真７、８）東京駅丸の内駅舎の北口前には、丸の内オアゾと称するオフィスビルと複合商業施設の超高層ビル群があります。オアゾの北側は永代通りに面しており、地下では新丸ビルと繋がっていますので、丸の内と大手町を繋ぐ地域という意味で丸の内オアゾ（OAZO）と命名されました。「丸の内中央広場」に面して建つオアゾの超高層ビル（日本生命ビル）は端正な白いビルですが、広場を挟んで向かい側に建つ超高層ビルのJPタワーは黒っぽいビルですし、その前には白い東京中央郵便局ビルがあります。また、丸ビルはベージュ色ですし、新丸ビルは鼠色です。「丸の内中央広場」を囲むビルには、同じ色彩のビルは一つも無く、変化に富んでいます。（写真９、１０）（以上）人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ写真１　丸の内駅舎の正面に広場がある。写真２　丸ビルと新丸ビルのツインタワー写真３　丸の内駅舎の背後にも超高層ビル写真４　東京駅の丸の内駅舎の構造美写真５　流麗な曲線美を誇る東京中央郵便局ビル　写真６　丸ビルと新丸ビルの遠景写真７　丸ビルの低層階は角が丸い。写真８　新丸ビルの低層階の角は丸い。写真９　オアゾの超高層ビル（日本生命ビル）写真１０　JPタワー

  2018.03.06

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  大名小路　明治の近代的街作りが始まった通り　（東京の街並み観察　５１）

  ​丸の内・大手町地区にある大きな街路として、丸の内仲通り、大手町仲通り、永代通り、日比谷通り、外堀通り（八重洲通り）の５本の街路を見てきましたが、最後に、東京で最も古いオフィス街、大名小路を観察します。明治時代になって真っ先に西洋風の街並みが誕生したのは大名小路でした。モダンの先端を行った街並みに、大名小路という江戸時代の名前を付けたのは歴史を忘れない知恵です。この場所は、江戸城の内濠と外濠の間にありましたから、江戸城に参上するのに便利なので、多くの大名たちが上屋敷屋を置いていました。大名小路は大名屋敷を繋ぐ通り道だったのでしょう。現在の大名小路は、有楽町駅近くから始まり、丸ビル、新丸ビルの前を通って永代通りの大手町駅前交差点に至るまでの街路です。この通りの西隣には並行して丸の内仲通りが走っていますが、道幅の広い丸の内仲通りが大名小路より先にオフィス街路としは発展しました。しかし、大名小路はJR鉄道に最も近い街路という立地上の利点があるので、大名小路にも早くから新旧多くの建造物が建っています。先ず、有楽町駅に隣接して東京国際フォーラムという総合文化施設があります。この施設は、東京都庁が新宿に移転した跡地に建設されたもので、舟形の硝子張りの屋根が目立つ大きな建物で、国際会議場、音楽会場、美術館などがあります。（写真１）東京国際フォーラムは大名小路と鍛冶橋通りが交差する地点にありますが、その対角線上に煉瓦造りの三菱一号館が建っています。明治２７（1894）年に丸の内に最初の洋風賃貸事務所として建築されたものを復元（平成２１年2009年）したものです。東京のオフィス街発祥の地のシンボルとして、内部も建設当時に戻して美術館になっています。（写真２）三菱一号館の隣には丸の内パークビルと言う超高層ビルが建っていますが、この超高層ビルの低層階はレストラン、ブティック店などが入居する商業施設となっていて、美術館となっている三菱一号館と一体となって、オフィス街の中で賑わう場所となっています。二つの建物の間には坪庭のような狭い中庭があり、昼時には近くのオフィス街からサラリーマン達が集まる憩いの場になっています。（写真３）なお、丸の内パークビルの大名小路に面する低層階のファサードは、旧三菱一号館の石材を再利用した煉瓦造りの外観を再現しています。大名小路のこの部分は、明治の煉瓦通りを連想させるものがありますので、この街区を丸の内ブリック・スクエアと称しています。（写真４）しかし、丸の内ブリック・スクエアの向かい側には、目が覚めるような現代風の白い超高層ビルが建っていますが、これは三菱UFJ銀行本店です。大手銀行の殆どが本店を永代通りの大手町地区に移していますが、三菱UFJ銀行は三菱系企業が集中する三菱村の中心地、大名小路に残っています。（写真５）丸ビルの南隣には、嘗て石造り４階建ての三菱本館（大正７年1918年）がありましたが、今は建て替えられて格子状の窓枠で覆われた風格のある高層の三菱ビルヂング（昭和４８年1973年竣工）となっています。大名小路を挟んだ向かい側には、これも風格のある東京中央郵便局ビルがあります。この二つのビルは、最近の建て替えでピカピカになる超高層ビル群の中で、やや古風な落ち着いた佇まいの、歴史を感じさせる建物です。（写真６、７）大名小路のハイライトは、新しい超高層の二つの丸ビルと、その前にある復元された「丸の内駅舎」および駅舎前の「丸の内中央広場」に挟まれた部分です。ここでは、大名小路は丸の内中央広場の一部になっています。同時に、ここは皇居から東京駅へ伸びる御幸通りが大名小路に突き当たる丁字路でもあります。江戸時代の名前を付けた大名小路のこの部分は、現代東京の中心になっているのです。（写真８、９、１０）（以上）写真１　東京国際フォーラムの硝子張りの屋根写真２　三菱一号館写真３　丸の内ブリック・スクエアの内庭写真４　丸の内パークビルの大名小路に面する低層階のファサード写真５　三菱UFJ銀行本店写真６　三菱ビルヂング写真７　東京中央郵便局ビル写真８　丸の内駅前広場に立って二つの丸ビルとその間の御幸通りを見る。写真９　丸の内ビル前から大名小路を見通す。写真１０　御幸通りから東京駅丸の内駅舎をみる。​ 人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2018.02.07

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  壮麗な超高層ビルと旧い中層階ビルが対面する八重洲通り　（東京の街並み観察　５０）

  ​​日比谷通りは江戸城の内濠に沿って走る道ですが、江戸城の外濠の上を走る道が八重洲通り（外通り）です。八重洲通りの交差点に呉服橋、鍛冶橋、数寄屋橋という名前が残っているのは、嘗てそこには江戸城と下町とを往来する橋が架かっていた所だからです。八重洲通りについては、その成り立ちと最近までの変化について、既に「 東京駅八重洲口は新しく生まれ変わる 2013.3.23」と「 東京駅八重洲口　その交通機能と商業機能 2013.4.7」で述べていますので、今回は八重洲通りでも、その後に大きく変化した西側の街並みの外観を観察します。前回取り上げた日比谷通りは、高層ビル群とお濠が対峙した新旧のコントラストが特徴でしたが、八重洲通りは、西側のビル街が大々的に高層化したのに対して、東側のビル街は殆ど中層階の旧い街並という、奇妙な対比が特徴です。八重洲通りが東西両側の街並みの違いを見せている場所は、東京駅八重洲口北口を出たところです。ここは、醜い広告看板を貼られた中層階のビルの壁面と、流麗な姿で高層化したビルの壁面が対面しているちょっと不思議な街並です。（写真１、２）八重洲通りの東側の地域は、日本橋から銀座へ通じる中央通りに挟まれた街区ですから立地条件に恵まれたところなので、早くから中小のビルが建ち並び、大小様々な企業、商店が入居していました。そのことが逆に、今回の都市の高層化の波に乗り遅れる原因になりました。銀座の中央通りは、明治の大火、関東大震災、東京大空襲で三度も崩壊の危機に遭遇しましたが、その都度、以前より立派な街並に復活しました。その秘密は、皮肉なことに既存の建物が壊されたお陰なのです。これを経済学ではサンクドコストがゼロだったからと言いますが、八重洲口側の商業地域はそのサンクドコストが高いのです。しかし、この八重洲の街区も東京オリンピックの開催後には再開発が予定されています。今回は、八重洲通りの西側の、東京駅駅舎の八重洲口に隣接する超高層ビル群を観察します。嘗て、東京駅八重洲口の正面には大丸デパートのビルが建っていました。東京駅の丸の内側は二つの丸ビルが建設されて、オフィス街として早くから発展していたのに対して、八重洲口側は、その大丸デパートに依存していて、あとは地下街の街でした。（写真３）しかし、東京駅という公共施設の出入れ口に、それを塞ぐような形で私企業の百貨店が陣取っているのは好ましくなく、かつ、そのビルは東京湾から皇居へ通じる風の道を妨げていました。そこで、今回の八重洲通り再開発に際して、大丸百貨店のビルを撤去して、東京駅八重洲北口寄りに建設した超高層ビルのグラントウキョウ・ノースタワーに大丸デパートを移転したのです。新しい超高層ビルに移転した大丸百貨店は、スーパーモダンな外観で復活しています。（写真４、５）そして東京駅八重洲口正面には広い空間を残して、恰も潮風を招き入れるかのように扇子のようなルーフバルコニー「グランルーフ」を設けました。その結果、東京湾の潮風が東京駅駅舎の上を吹き抜けて、皇居方向に流れるようになりました。（写真６、７）この地域の再開発により、丸の内地区内の八重洲通りの西側には、７つの超高層ビルが建ちました。鍛冶橋交差点から呉服橋交差点までの間に、パシフィック・センチュリー・プレイスビル、グラントウキョウ・サウスタワー、グラントウキョウ・ノースタワー、丸の内トラストタワー本館と丸の内トラストタワー北館、鉄鋼アヴェニュー、鉄鋼ビルの７つのビルです。パシフィック・センチュリー・プレイスビル及びグラントウキョウ・サウスタワーは、姉妹のように流麗な姿で並んで建っています。グラントウキョウ・ノースタワーと丸の内トラストタワー本館は兄弟のように力強く並んで建っています。そして、これら兄弟姉妹の二組のタワービルは、東京駅の東側に南と北に分かれて対となって聳えており、東京駅をガードしているようです。（写真８、９）（以上）写真１　醜い広告看板を貼られた中層階のビル写真２　八重洲通りを見通すと東西左右の街並みの違いが歴然とする。写真３　旧大丸百貨店写真４　旧大丸百貨店と移転先のグラントウキョウ・ノースタワー写真５　大丸百貨店が移転したグラントウキョウ・ノースタワー写真６　東京駅八重洲口グランルーフ　丸の内側からみる。写真７　東京駅八重洲口グランルーフ　八重洲口側からみる。写真８　グラントウキョウ・サウスタワーとパシフィックセンチュリービル写真９　グラントウキョウ・ノースタワーと丸の内トラストタワー本館​人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2018.01.22

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  江戸と東京が出会った日比谷通り　馬場先濠端と和田倉濠端　（東京の街並み観察　４９）

  ​日比谷濠端（ほりばた）の日比谷通りを北上して馬場先門交差点を過ぎると、馬場先濠に面して建ち並ぶ高層ビル街に入ります。先ず、馬場先門交差点の東北角に明治生命保険本社ビル（昭和９年、1934年竣工）が建っています。そのビルの前面には５階の高さまで達する長いコリント式列柱が１０本立ち並んでいて、人目を惹く古典主義様式の建物です。平成９年に昭和の建造物として初めて重要文化財の指定を受けました。（写真１）この街区も平成に入って大規模な再開発が行われたところですが、この明治生命保険本社ビルの後背地に、超高層の明治安田生命ビル（平成１６年、200４年竣工）が建ちました。その際、歴史的建造物の明治生命保険本社ビルは明治生命館として保存され、明治生命館の上空の空中権を活用して超高層ビルを建設したのです。これは第一生命館を残して超高層のDNタワー21を建設した場合と同じやり方です。（写真２）馬場先濠沿いの日比谷通りには、明治生命館の外、その北側に岸本ビルヂング、丸の内三井ビル､三菱商事本社ビル、日本郵船本社ビルと並んでいます。馬場先濠沿いの日比谷通りを通して眺めてみると、ビルの色彩に変化があって良いのですが、高層ビルの前面の凹凸と高さとが不揃いで、全体としてビル街の街並の美しさに欠けます。（写真３）岸本ビルヂングと丸の内三井ビルは所有者は違うのですが、改築の際に双方のビルの高さを合わせ、外観も同じ煉瓦貼りで統一して、建物として一体感を持たせました。これは皇居周りの美観地区に配慮してのことで望ましいことでした。その先の三菱商事本社ビルと日本郵船本社ビルは和田倉門交差点の東南角に並んで建っています。和田倉門交差点は、日比谷通りと行幸通りが交差するところであり、行幸通りは皇居と東京駅中央口をつなぐ壮大な通りです。外国大使が信任状を天皇陛下に捧呈するときに通る道でもあります。と言うことは、三菱商事本社ビル（平成１８年、2006年改築）と日本郵船本社ビル（昭和５３年、1978年改築）は日比谷通りの中でも最も華やかな場所にあるわけです。二つのビルは戦後に改築されたものですが、ビルの色彩は共に淡いベージュ色に揃えていますが、形態は三菱商事ビルは低層階を台形にした雛壇型であるのに対して、角地の日本郵船ビルは垂直な角を凹ませたビルで、縦と横の線でアクセントを付けています。全体として端正な外観なので周囲の景観に相応しいものです。（写真４、５）馬場先濠に続く和田倉濠に沿った日比谷通りには、東京海上日動ビル（本館、新館）､東京銀行協会ビルヂング、銀行会館ビルがあります。和田倉濠は途中で左折して内堀通りに向かうので、濠端の日比谷通りはそこで終わります。（写真６）東京海上日動ビルの本館（昭和４９年、1974年竣工）は、和田倉門交差点の東北角にあります。全館が赤煉瓦で覆われたビルで、同じレンガ造りの岸本ビルヂングよりも赤みが濃い洒落た色彩の高層ビルです。角地に立つ日本郵船ビルと同じく東京海上日動ビルも垂直の角を退いてアクセントを着けています。（写真７）東京海上日動ビルの本館と新館に続いて、高層ビルの東京銀行協会ビルヂング（平成５年、1993年竣工）がありますが、そのビルの東南の角にイタリア・ルネッサンス建築のような三階建てのビルが張り付いていました。この模型のようなビルは、嘗てここに東京銀行集会所（大正５年、1916年竣工）があり、東京銀行協会ビルヂング改築に際して、その一部を歴史的建造物として保存していたものです。（写真８）しかし、現在この場所で、東京銀行協会ビルヂングと北隣の銀行会館ビルと東隣のみずほ銀行前本店ビルを統合したビルの建設が始まっていて、模型のようなビルは解体されて見れませんが、再びここに復元されるものと思います。戦前には美観地区規制や建築基準法で皇居の周辺の建物に高さ制限がありましたので、昭和４１年（1966年）に東京海上火災保険が高層ビルを建設しようとしたとき、皇居を見下ろすようなビルを建てることの是非をめぐり対立が起こりました。そして最終的には現在の東京海上日動ビルの本館（２５階建ての高さ約１００メートル）の建設を認めることで落ち着きました。しかし、その後、都心部の建築容積率が緩和されて超高層ビルの建設ラッシュは起きて、それが日比谷通りにも押し寄せました。高層ビルの東京海上日動ビルの本館を超高層ビルの新丸ビルと比べると、高さの違いが大きいことが分かります。（写真９）最近、皇居前広場に立って丸の内方向を眺めると、恰も皇居の東側に大きな屏風が立てられたかのように、超高層化した都心部のスカイラインが競り上がっている姿が見えます。江戸時代と現代都市東京の巨大なコントラスト、即ち東京のシルエットをフランスの詩人ノエル・ヌエットに見せたら、「私の好む場所」はどこへ行ったかと嘆くでしょう。（写真１０）（以上）写真１　明治生命館写真２　明治安田生命ビル写真３　高層ビルの前面の凹凸と高さとが不揃い。写真４　三菱商事本社ビル写真５　日本郵船本社ビル写真６　和田倉濠写真７　東京海上日動ビル本館写真８　東京銀行集会所の模型写真９　東京海上日動ビル本館と超高層ビルの新丸ビルを比較写真１０　皇居前広場かあｒ見た景色​ 人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.12.31

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  江戸と東京が出会った日比谷通り　日比谷濠端　　（東京の街並み観察　４８）

  大手町地区の日比谷通り（大手門交差点から神田橋まで）は、最近の大規模再開発で新しい豪華な街路に生まれ変わりましたが、丸の内地区の日比谷通り（大手門交差点から日比谷交差点まで）はどうなっているでしょうか。このブログは東京今昔物語と称しているのに、現代ばかりで昔を語らないと批判されても、写真で語るとき昔の写真を持ち合わせないので仕方が無いのです。その代わりに、見事な文章で日比谷通りの昔の景色を描いたノエル・ヌエットの「東京のシルエット」から抜粋します。「このほかにも私の好む場所がある。日比谷交叉点付近である。そこには広い水面があり、丸ノ内の多くのビルディングの影をうつしている。皇居の方には、黒ずんだ石垣の中から生えて、濠の上に枝を伸ばしている著しく古い松の木がまだ何本か残っている。それは反対側の近代的な建物とコントラストをなしている。夜になると、別の美しい眺めがここに生れる。水面の光の尾、いくらか風のあるときに光りの錐揉みを描く光の尾がそれである。」昭和５年（1930）再来日したフランスの詩人ノエル・ヌエットは、その後３０年余り東京に住み、ペン画のスケッチを得意として戦前戦後の東京の面影を巧みに描きましたから、彼の文章も絵画的です。ノエル・ヌエットが指摘したように、日比谷通りのこの辺りは、江戸の遺跡と近代建築が向き合う東京でも唯一の場所です。幸いにも江戸城が皇居となったお陰で、濠端の風景は江戸時代の姿を今も留めており、濠を挟んだ向かい側に近代建築群が対峙しているのです。ノエル・ヌエットが立ち止まって眺めたであろう日比谷交差点から見た日比谷濠の風景は広々として美しく、街路樹の銀杏と柳が濠の水面に映え、その後ろには近代的なビルが建ち並んでいます。濠端の高層ビルから皇居方向を眺めると、濠に乗り出した松並木が青々と茂っています。（写真１、２、３）それでは最初に日比谷濠の前に連なる近代的なビルを観察してみましょう。日比谷交差点から馬場先門までの間にザ・ペニンシュラ東京、第一生命ビル、帝国劇場、東京會舘、東京商工会議所が並んでいます。先ず、日比谷交差点の角に、三角形の奇妙な形の細身の高層ビルが建っています。ザ・ペニシュラ東京という高級ホテルですが、丸の内警察署ビルを挟んだ隣には、皇居周辺の美観を考慮して建設された、１０本の長く太い方柱のある重厚な造りの第一生命ビル（昭和１３年、1938年竣工）と、その後ろに超高層ビルのDNタワー21があります。（写真４）このDNタワー21と第一生命ビルとザ・ペニンシュラ東京の三つの高層ビルは、丁度日比谷濠が直角に曲がる位置に立地しているので、祝田橋から日比谷濠を見通して眺めると、夕日を浴びて赤みを帯びた陰を、お濠の広い水面に映して、美しい都市空間を演出しています。（写真５）この第一生命ビルには、戦後に占領軍の総司令部が置かれてところで、ここに陣取ったマッカーサーは眼前の皇居におわす天皇陛下を監視するつもりだったのかも知れませんが、子供じみた趣向でした。この街区は平成に入って大規模な再開発が行われて、第一生命ビルは、超高層ビルのDNタワー21（平成７年、1995年竣工）に一部変身していますが、その際、第一生命ビルの濠端寄り部分は第一生命館として原型のまま残されました。そして、その上の空中権を活用して農林中金ビルと合併して建設したのが巨大な超高層ビルビルのDNタワー21です。Dは第一生命、Nは農林中央金庫の頭文字です。次に観察する帝国劇場は、明治末期に日本初の西洋式演劇劇場として装飾的な外観のモダンな建物として建設されましたが、関東大震災で焼け落ちました。帝国劇場が入っている現在の建物は、国際ビル（昭和４１年、1966年竣工）と言う複合ビルです。その外観は茶褐色のメタリックな縦縞模様で覆われていて、初代の帝国劇場のような装飾もなく、また皇居周辺の空間とは違和感があります。しかし近い将来この建物も建て替えられます。（写真６）帝国劇場の北隣りに東京會舘（昭和２年、1927年改築）と東京商工会議所がありましたが、現在、二つとも解体されて一つのビルに合体して建築中です。その構造は前方に高層ビルを置き、後方に超高層ビルを建てる、二段の雛壇様式になります。（写真７、８）この二段の雛壇様式は、既に第一生命館とその後ろに立つDNタワー21の関係と同じスタイルであり、次回観察する明治生命館と明治安田生命ビルの関係とも同じスタイルです。今後の高層ビルの改築にもよりますが、日比谷通りのスカイラインは二段の雛壇様式という独特のものになるかも知れません。（写真９）しかし現在のところは、日比谷通りの高層ビル群を南から北へと見通すと、ビルの高さも、色彩も、デザインも、かなり不揃いです。この街区には改築中もしくは改築予定のビルが多くあるので、今後の改善に期待します。（以上）写真１　高層ビル群の影が落ちて日比谷濠の水面は輝く。写真２　日比谷濠の水面に映える銀杏と柳の影写真３　石垣の上から日比谷濠の延びる木々写真４　第一生命館のファサードの方柱写真５　夕日に照らされたDNタワー21と第一生命館の反映が日比谷濠に写真６　帝国劇場写真７　取り壊された東京商工会議所と東京會舘写真８　明治安田生命ビルの隣に東京商工会議所・東京會舘の超高層ビルが建設中写真９　今は不揃いだが、やがて二段式雛壇になる日比谷通り街路人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.12.21

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  大手濠の前に誕生する未来型オフィスビル街　（東京の街並み観察　４７）

  皇居の大手濠に面して次々と高層のオフィスビルが建設されています。そこは、内堀通りと日比谷通りに挟まれた細長い街区で、永代通りから気象庁に至るまで南北に長く延びています。現在、この街区の北部で先ず目に留まるのは、東西一列に並ぶ三つの真新しい高層ビルです。これらは、前回観察したフィナンシャル・シティの街区から引っ越してきた経団連会館（2009年）、農協（JA）ビル（2009年）、日経新聞ビルの三つの建物です。（写真１）以前、この地域には政府の合同庁舎があり、各省の関東地方局が入居していましたが、首都機能の地方分散政政策で、これらの政府機関は埼玉県の大宮に移転しました。不要となった政府合同庁舎を撤去して、そこに最初の大手町連鎖型都市再生プロジェクト第一号の建物が建設されたのです。ほぼ同じ時期に、これらの三つ子の高層ビルが生まれました。他方、この細長い街区の南部には、既に大手センタービル、大手門タワーJXビル、大手町パークビルディングという三つの高層ビルが既に建っています。このうち大手町交差点の角に建つ大手センタービルは最も早く（1983年）竣工し、少し遅れてほぼ同じ頃、大手門タワーJXビル（2015年）と大手町パークビルディング（2017年）が、大手濠に沿って走る内堀通りに面して建設されました。（写真２、３）これら二つのの高層ビルからは、眼前に大手濠を越えて皇居外苑が広がり、都内では自然環境に恵まれた未来型のオフィスビル街で、この地域を大手町ホトリア街区と称しています。高層ビルの上層階には海外ビジネスマン用の滞在型ホテルが開業していて、大手町地区への海外企業の誘致を図っています。北部の三つ子の高層ビルと、南部のホトリア街区の三つの高層ビルとの間の街区では、現在、三井物産ビルなどの大規模改築工事が進行中です。そこには二棟の４０～５０階建ての超高層ビルが建設される予定です。（写真４）大手濠の前に誕生する未来型オフィス街は一部未完成ですが、この街区を挟んで東西両側を走る日比谷通と内堀通りは、ほぼその街路の外観は固まりつつあります。先ず日比谷通りについては、大手門交差点の角に向かい合って建つ大手町ファーストスクエアと大手センタービルは、双方とも外観の美を誇れるビルです。大手町ファーストスクエアは北米照明学会国際照明デザイン賞を受賞した明るいビルであり、大手センタービルは、建築業協会賞（BCS賞）を受賞した端正な容姿のビルです。（写真５、６）日比谷通りを神田橋に向かって北上すると街路の東側には、透き通った明るい読売新聞社ビル、煉瓦色のKDD大手町ビル、鼠色のシックな大手町フィナンシャルシティ・グランキューブが並んでいて、その街並は色彩と形態に富んでいて豪華です。（写真７）ただ、三井物産の街区は建設中であり、途中に古びた中層階の旧大手町ビルヂングが残っているのが欠点ですが、大手町交差点から神田橋までの日比谷通りは、東京でも最も優れたビルの街並になります。（写真８）次に、内堀通りは大手門の前から消防庁、気象庁まで大手濠沿いに延びる街路です。街路の東側には大手町ホトリア街区と言われる未来型の高層オフィスビルが並び、この二つの高層ビルの前には樹木が植栽され細長い水槽が設置され、ビル前面の歩道は恰も大手濠から続いているスペースかのようです。（写真９）内堀通りの西側は、お濠とその石垣が続いていて、現代と江戸が向かい合う、東京では珍しい街路です。（写真１０）（以上）写真１　右から経団連、JA、日経、消防庁のビル写真２　大手門タワーJXビル写真３　大手町パークビルディング写真４　スクラップビルドしている三井物産のビル写真５　大手町ファーストスクエア　　ウエストタワー・イーストタワーからなるツインタワー写真６中央が大手センタービル　写真７　右端が読売新聞東京本社ビル、続いてKDDビル、大手町フィナンシャルシティ・グランキューブ写真８　大手町交差点から神田橋方向を見た日比谷通り写真９　大手町ホトリアの内堀通り側の歩道写真１０　大手町ホトリアの前の大手濠人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.12.03

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  大手町仲通りは誕生間もない金融街通り　（東京の街並み観察　４６）

  いま東京の都市中心部で広範囲に大改造計画（ビル街のスクラップ・ビルド）が展開されていますが、永代通りの北側の、日本橋川に近い街区では、大手町連鎖型都市再生プロジェクトが進行しています。その第一号として平成２４（2012）年４月に大手町フィナンシャル・シティが誕生しました。嘗て、この街区には経団連会館、農協（JA）ビル、日経新聞ビル、公庫ビルなどがありましたが、これらを全て撤去して区画整理し、更地にした場所に新規に建設したのです。この大手町フィナンシャル・シティの中央に、短いですが立派な街路、大手町仲通りがあります。この大手町仲通りは、将来、丸の内仲通りに繋がるよう設計されています。読売新聞社とサンケイ新聞社のビルの間を抜けて、更に大手町ファーストスケアと大手町タワーの間を抜けて永代通りに出る道路です。現在、二つの仲通りの途中には古い大手町ビルがあって遮断されていますが、将来、丸の内仲通りと大手町仲通りは永代通りを突っ切って一本に繋がる予定です。ですから大手町仲通りは丸の内仲通りの造りと歩調を合わせるように、街路樹が植栽され、歩道も整備されています。（写真１、２）大手町フィナンシャル・シティには、四つの高層ビルがあります。即ち日比谷通りに面してフィナンシャルシティ・グランキューブとKDDI大手町ビルあり、大手町仲通りを挟んた対面にノースタワーとサウスタワーがあります。KDDI大手町ビルは煉瓦色で目立ちますが、その他のビルは、いずれも鼠色か黒い色で、金融街区に相応しい地味なビル街です。（写真３、４、５）しかし、幅広い大手町仲通りは、丸の内仲通りと同じく、ビルの前や歩道の所々にオープン・カフェや休息施設が設置されていて、木陰で昼食を食べたり休息する公園のようです。（写真６、７、８）ただ、フィナンシャル・シティが従来の事務所棟だけのオフィス街とは違うのは、宿泊施設棟に高級日本式旅館「星のや東京」が入居していたり、サウスタワーに英語対応が可能な聖路加国際病院分院が入居していたりする点です。海外からの金融ビジネスマンが東京の金融センター内に滞在して仕事がし易いような施設が用意されています。（写真９）なお、大手町仲通りは日本橋川に突き当たって終わりますが、その突き当たった日本橋川に沿って大手町川端緑道公園があります。大手町川端緑道公園は幅１２メートル、延長約８００メートルと細長い公園ですが、そこには江戸城外堀の石積みが保存されていたり、小綺麗な小紋広場があったり、大手町の金融街を歩いてきた人々に水と緑の憩いを与える空間です。（写真１０）（以上）写真１　大手町仲通りの植栽写真２　古い大手町ビルで行き止まりの大手町仲通り写真３　フィナンシャルシティ・グランキューブとKDDI大手町ビル写真４　フィナンシャルシティ・ノースタワー写真５　フィナンシャルシティ・サウスタワー写真６　ケヤキ並木の下にベンチが並ぶ。写真７　大手町仲通りのオープン・カフェ写真８　旅館「星のや東京」の前の広場写真９　旅館「星のや東京」写真１０　川端緑道公園人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.11.21

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  永代通りは日本の金融街センターに　（東京の街並み観察　４５）

  江戸城の大手門の前から出発して東に進み、日本橋を通り、永代橋を渡る道路を永代通りと言います。永代通りは、東京の市街地を東西に貫く数少ない基幹道路の一つです。この永代通りの北側が大手町であり、南側が丸の内です。大手門を出てから外堀通りと交差する呉服橋交差点に至るまでの間、道幅の広い永代通りの両側には高層ビルが隙間無く林立していますが、それらのビルには銀行などの大手金融機関が沢山入居しています。世界の金融街、ニューヨークの「ウォール街」の街路はやや細いですが、日本の「ウォール街」は道幅の広い立派な街路です。（写真１）この永代通りと交差して南北に延びる道路にも金融機関が入る高層ビルが建ち並んでいます。前回観察した丸の内仲通りも永代通りに近い部分は金融街となっていますが、永代通りと交差して南北に走る日比谷通りと大名小路（鎌倉橋～有楽町駅前）も永代通りに近い街路の両側には、大手金融機関の建物が建ち並んでいます。更に、永代通りに未だ接続していませんが、将来接続する予定の大手町仲通りの両側にもフィナンシャルセンターと称する高層ビルが建ち並んでいます。こうして、日本の「ウォール街」は、永代通りの両側だけでなく、左右に接続して延びる街路を含む、幅広い面で展開しています。それでは、日本の金融街の中央部の高層ビル群を観察してみましょう。永代通りの大手町交差点に立って呉服橋方向を遠く見通すと、両側に林立するビルの密集度が濃いのに驚かされます。ニューヨークの超高層ビル群では、高層ビルは相互に間隔を置いているので超高層ビルの裾が空いていますが、東京では広い道路に面した高層ビルは互いに密着して建っていますので、高層ビルの前面（つら）が合わされて、街路の輪郭線は一つの面のように美しく見えます。（写真２）個々の高層ビルを観察しますと、永代通りに林立する高層ビルがその存在感を示すのは、永代通りと南北に走る道路との交差点に建つビルたちです。永代通りが日比谷通りと交差する大手町交差点の四つ角のうち、二つの角には三井住友銀行のビルが二棟、残りの二つの角には大手町ファーストスクエアと大手センタービルが建っています。三井住友銀行のビルは高層階を濃い茶色、低層階をベージュ色のツートンカラーとし、ビルのファサードは高層階を垂直線柄で統一して単純化し、低層階は装飾的にしています。大手町ファーストスクエア（NTT本社、証券会社など入居）は東西二棟で構成されたビルですが、北米照明学会国際照明デザイン賞を受賞しただけあってスタイルが良く、角地のビルの角をカットして道路面より後退させていますが、対角線上から見ると、ビルのカット面が光輝いて目立ちます。（写真３、４）永代通りが大名小路（鎌倉橋～有楽町駅前）と交差する大手町駅前交差点の四つ角に建つのは、大手町タワービル（みずほ銀行入居）と、三菱東京UFJ銀行のビルと、丸の内センタービル（セブン銀行入居）と、大手町野村ビルです。大手町タワービルは、濃紺の巨体を格子状の柄模様で全館を包み、ビルの前面に柱状の重厚なファサードを取り付けたビルです。三菱東京UFJ銀行は周囲を街路樹で囲み、中層部分に仕切り層を設ける外観が特徴です。このスタイルは三菱の丸ビル、新丸ビルの中層部が帯状の仕切り構造になっているのと形状が共通しています。（写真５、６）丸の内センタービルは、高層棟と中層棟の二棟で構成されていますが、両棟ともベージュ色で統一し、ビル全面を正四角形の窓で飾る穏やかな外観です。大手町野村ビルは高層ビルとして小柄ですが、メタリックな外観の多いビル群の中では、本体の外観は全体を淡い色彩で纏めて細やかな窓枠の柄で覆い、低層部に旧建物のファサードを填め込んでいるので、それが高層ビルの台座のように見えます。（写真７、８、９）永代通りを大手門交差点からJRガード下まで歩いてくると、高層化していないビル、が一つだけありますが、それは古い中層階の新大手町ビルヂングです。古いビルなのに「新」が付くのは、これより古い大手町ビルがもう一つ比谷通りに面してあるからです。（写真１０）（以上） 写真１　大手町交差点から呉服橋方向を見る。写真２　高層ビルの面が揃って連なっている。写真３　三井住友銀行ビル写真４　大手町ファーストスクエア写真５　大手町タワー　みずほ写真６　三菱東京UFJ銀行写真７　丸の内センタービル写真８　大手町野村ビル写真９　大手町野村ビル写真１０　新大手町ビルヂング人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.10.29

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  丸の内仲通りはオフィス街から高級ブティック街へ変身　（東京の街並み観察　４４）

  日本のオフィス街は東京の丸の内から始まりました。その象徴が大正１２年（1923）東京駅前に建てられた「丸ノ内ビルヂング」と、行幸通りを挟んで隣に建てられた「新丸の内ビルヂング」の二つの丸の内ビルヂングでした。オフィスビルにはオフィスだけを入居させるのが普通の考えですが、二つのビルヂングの１階は全て商店を入居させて、道路から出入りするビルの地上階を商店街としました。今では低層階に商業機能を入れるのは当たり前ですが、大正時代という早い時期に、オフィスビルの１階を商店街として一般客に公開した発想は先駆的なものでした。この二つのビルヂングは、夫々、平成１４年（2002）に「新しい丸ビル」として、平成１９年（2007）に「新しい新丸ビル」として、超高層ビルディングとして生まれ変わりました。この超高層の二つのビルは６、７階まではショッピングとレストランのスペースとなっており、その上層階がオフィス階となっています。（写真１、２）初代の二つの丸ビルは商業機能と事務所機能を一つのビルに収めるという画期的な方法で成功しましたが、その伝統は超高層の二つの丸ビルにも引き継がれていて、しかも、今回は商業機能は地上階だけでなく中層階まで伸びています。デパートは商店街が立体化したものですが、二棟の超高層丸ビルは丸の内の商店街を一挙に６～７倍にに増やした形になりました。それと並行して丸の内仲通りにも大きな変化が起きました。嘗ては丸の内仲通りには大手企業の本社が軒を連ねて並んでいましたが、現在では大手企業の殆どは本社を丸の内仲通りから他所へ移転して、その跡に高級ブティック店が軒を連ねています。この変化には二つの原因があります。一つには近代的な超高層オフィスビルが品川駅周辺や新橋･汐留地域に多数建設されて、東京駅周辺が本社機能を設置するのに必ずしも唯一の有利な場所ではなくなったことです。特に丸の内仲通りにあった重厚長大産業の本社機能の多くが転出しました。もう一つは、二つの丸ビルの超高層化によって丸ビル内に集積した商業機能と、丸の内仲通りの商業機能とが呼応して、丸の内全地区への商業機能の集積を促進したことです。二つの丸ビルの中層階には主として飲食店が、丸の内仲通りには外資系ブランド店舗の進出しました。この地域の再開発を主導した三菱地所は、丸の内仲通りに広い石畳の歩道を設けて「東京のシャンゼリー通り」に仕立てようと街路の模様替えを試みました。丸の内仲通りは、もともとオフィス街であり、建ち並ぶ建物のファサードは平板で地味でしたから、それを補うため街路そのものの化粧直しを行ったのです。街路樹をマロニエからケヤキに植え替え、表参道を小型にしたようなショッピング・ストリートを誕生させました。冬にはケヤキにシャンパンゴールドの豆電球を灯してホワイト・イルミネーションの通りを演出します。（写真３、４、５）その結果、嘗て丸の内仲通りにはビジネスマンが闊歩していましたが、今は若い女性や家族連れが高級ファッションやブティックを求めてやってきます。更には内外の観光客も訪れる、観光スポットとして東京の新名所となっています。（写真６）こうして生まれ変わった丸の内仲通りの高級ブティック街は、銀座大通りより規模は小さいですが、街路樹の茂る落ち着きのある街並みとなり、表参道のような豪華なファサードの店舗は多くありませんが、路上には所々にオープンカフェを設けて憩いのある街並みとなりました。（写真７、８、９）しかし、丸の内仲通りで高級ブティック店が並ぶのは有楽町から二つの丸ビルのある地点までで、行幸通りとの交差点から永代通りに至る丸の内仲通りは、金融関係の超高層ビルだけが建ち並んでいます。永代通りをよぎったその先で丸の内仲通りは大手町仲通りに繋がる計画はありますが、現在は古いビルで遮られています。（写真１０）（以上）写真１　丸ビル写真２　新丸ビル写真３　嘗てあったプラマナスの街路樹写真４　鬱蒼と茂る丸の内仲通りのケヤキ並木写真５　ホワイト・イルミネーションの通り写真６　若い女性や家族連れが歩く丸の内中通り写真７　丸の内仲通りの高級ブティック街写真８　歩道にもベンチがある。写真９　路上のオープンカフェ写真１０　丸の内仲通りもこの辺りは金融関係の超高層ビルだけが建ち並ぶ。人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.10.12

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  オフィス街発祥の地、東京駅周辺　（東京の街並み観察　４３）

  東京駅の周辺は、日本で初めてオフィス街という街並みが生まれたところです。時代を遡れば、三菱の岩崎彌之助が明治政府から江戸城内だった丸の内地区の払い下げを受け､赤煉瓦造りの「一丁ロンドン」というオフィス街を建設したことに始まります。（写真１）（2009年にレプリカとして再建された「三菱一号館」。現在は美術館）大正時代に入り東京駅が開設されて、東京海上ビル、日本郵船ビル、丸の内ビルとオフィスビルの建設が続き、日本橋界隈が三井系の金融･商業街に発展したのに対して、丸の内地区は三菱村と呼ばれるオフィス街に成長しました。現在、東京駅周辺のオフィス街の中心部は「丸の内・大手町地区」と言われていますが、その名前が示すように、この地域は江戸城の本丸や大手門のあったところです。その全域は、江戸城の外濠（八重洲通り）と内堀（日比谷通り）に挟まれたところです。「丸の内・大手町地区」には、丸の内仲通り、大名小路（鎌倉橋～有楽町駅前）、大手町仲通り、永代通り、八重洲通り（外堀通り）、日比谷通り（内堀通り）の６本の街路があり、街路に沿って様々なビルが建っています。それに、東京駅丸の内改札口の前の広場を囲むように様々なビルが建っています。それらが今回の観察の対象になります。（写真２、３、４、５、６、７、８、９、１０）このブログでは、ビルの中までは観察しませんが、個々のビルの外観（ファサード）を観察すると同時に、それらのビル群が造り出す街路、街頭の容貌を観察します。丸の内・大手町地区のビルには、大企業や中小企業の本社が入居しています。本社機能を人体に喩えれば頭脳や神経に相当します。その機能は企業情報の生産、処理、伝達という仕事ですから物を生産する工場のように広大なスペースを必要としません。しかし、本社機能の活動には第一に情報交換に便利な立地条件が求められますし、第二に情報交換機能の密度を高めるため同じ場所への集中が求められます。こうして丸の内・大手町地区のビルは時代と共に高層化していきました。丸の内・大手町地区のもう一つの特徴は、企業業務機能のオフィス街でありながら、消費者のための街の機能、即ち商店と飲食店が質量共に充実していることです。これが特に顕著な場所は丸の内仲通りと東京駅隣接地域です。なお、このブログでは丸の内・大手町地区について、既に下記のテーマで６回取り上げています。過去数年間（2006～2013年）思いくままに書いたものですので、統一されておらず、内容が古くなったものがあり、相互に重複するところもありますが、併せてご覧下さるようお願いします。2006.09.21 歴史的建造物の運命2008.03.03 東京駅を取巻く超高層ビル群を概観する2013.01.15 東京駅丸の内駅舎よみがえる2013.02.01 丸の内の変貌　丸ビルと仲通り2013.02.08 丸の内の変貌　日本最大の超高層ビル群が誕生2013.04.10 超高層ビルのスカイラインと街中の風通し従って、今回はテーマを街並の外観を観察するということにして、その他の説明は必要最小限に止めます。（以上）写真１　三菱一号館美術館写真２　丸の内仲通り写真３　丸ビル前通り（４０２号）写真４　大手町仲通り写真５　永代通り写真６　永代通り　交通量の多い通り写真７　八重洲通り（外堀通り）　日本橋側写真８　八重洲通り（外堀通り）　東京駅側写真９　日比谷通り写真１０　東京駅丸の内改札口の駅前広場人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.09.24

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  神南の丘の斜面に広がる高級ファッション街区　（東京の街並み観察　４２）

  斜面に形成されたもう一つの渋谷の街並は、公園通りの東側にある神南の個性的な高級ファッション店舗が集まる街区です。この街区の街並は、円山町に比べると道幅は広くて明るくモダンな街並です。渋谷神南郵便局方面から坂道を上っていくと、洒落たデザインのファサードを持つ店舗が次々と現れてきます。ファサードには横文字が多くて外国のようです。そこでは高級な大人のファッション衣装やブティックなどを売っています。（写真１、２）渋谷と言えば、戦後は中高生などの若者たちの情報の発信基地として知られていました。そこで最近、渋谷駅東口の東急文化会館跡地に、超高層ビル「渋谷ヒカリエ」が誕生したとき、これからの渋谷は、若者から大人の女性の情報発信基地にすると謳い上げました。それがヒカリエの商業施設「シンクス」でした。しかし、既に、渋谷神南町の丘の斜面の一郭には大人のための高級ファッション街が完成していました。それはデパートのような大きなビルの中ではなく、銀座大通りのような大規模な街並でもなく、メジャーなブランドものを扱っている店でもありません。一戸建ての小規模の店舗で個性的なファッション衣料、独創的なブティック製品を販売しています。（写真３、４）取り扱う商品も幅が広く、同じ店舗で洋服と着物の両方を売ったり、中古品の売買も手がける店もあります。このように多種多様な店舗が集まっていることも、街区としての集客力を高めているのです。（写真５、６）この神南の個性的なファッション街区は、渋谷のメインストリートから少し離れた位置にありますが、休日の夕方になると、中高生のような若者たちだけでなく、中高年の男女や都内在住の外国人などが、次から次へと訪れてきます。多分、誰でも知っているような大手ブランドものでは飽き足らず、他人の持ち物とは違う個性的な珍しいものはないかと探しに来る人々なのでしょう。知る人ぞ知る場所と思っていましたが、既に有名になていたのです。（写真７、８、９）パルコの進出（昭和４８年）を機に公園通りに高級ファッション店、ブティック店が続々と進出してきましたが、その一つに海外ブランド店のユナイテッドアローズのビルがあります。その横を入ると、この神南のファッション街区内の中心部に入れますから、公園通りから溢れた店が裏通りの神南ファッション街区に流れ込んだのでしょう。とすると、神南ファッション街区の誕生はそれ程新しいものではありません。なお、このファッション街区へは渋谷区役所通りからも入れて、街区内で道はループ状に繋がっているので一回りしてショッピングできます。（写真９、１０）渋谷は、谷と丘で街区が細分化されているため、都心部の下町や山の手の新宿に比べると発展が遅れました。しかしスペイン坂、円山町、神南町のように街区が細分化されたことで多様で個性的な街が産まれ育ちました。また、遅れて発展したことは、多くの若者たちに近づき易い街となり、その若者たちのエネルギーを貯めて、他の街にはない活気のある街になりました。公園通り奥には巨大情報産業のNHKがあるため、既に渋谷界隈にはデジタル・コンテンツ産業の集積は進んでいます。数年後には渋谷駅周辺の街が超高層化されて、街としてのキャパシティが一段と大きくなりますが、そこには都市固有の先端的な産業が更に蓄積するでしょう。将来の渋谷は、消費面だけでなく産業面でも発展のポテンシャルは高いのです。（以上）写真１　渋谷神南郵便局方面から入る坂道写真２　坂を上って階段を上る立体的な街並写真３　外階段の開放的なファッションビル写真４　個人商店が並ぶ小道写真５　洋服も和服も売る店写真６　古着を売買する洒落た店写真７　在住の外国人女性たちも繰り出してくる写真８　休日の夕方は人の往来が多い中心部写真９　集団で買い物に写真１０　公園通りに面して建つユナイテッドアローズ・ビルこの横道から高級ファッション街区の中央部に入れる。人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.08.27

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  丘の斜面に広がる静かな円山町　（東京の街並み観察　４１）

  東京の山の手は、台地と谷地が交錯する複雑な地形ですから、坂の斜面と谷地が繋がって形成されたスペイン坂界隈のような街が渋谷以外にも沢山あってもよいのですが、広い斜面に展開する街並みは何故か渋谷に集中しています。渋谷にはスペイン坂界隈の外には、道玄坂上の円山町（まるやまちょう）と神南町（じんなんちょう）の個性的なファッション街区がそれです。円山町へは、道玄坂を上って百軒店の商店街に入って奥からも行けますし、百軒店入口を通り過ぎて少し進むと右に滝坂道の入口がありますが、滝坂道の右側は円山町です。また文化村通りから坂を上っても円山町へ行けますし、道玄坂小路から階段道を上っても行けます。更に井の頭線の神泉駅からも直ぐに円山町に入っていけます。幾つもの出入口のある円山町は、四方八方から出入りできる街であり、かつ、夫々の道は互いに繋がりあっているので、歩いていると複雑な迷路に入った気持ちになります。（写真１、２、３）永井荷風は「日和下駄」というエッセイで、東京の街の魅力が「路地」にあると書いていますが、その魅力とは「どこから這入って何処へ抜けられるか、或は何処へも抜けられず行止りになつてゐるものか否か、それは蓋し其の露地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けた位では容易に判明すべきものではない。」と述べていますが、斜面の街の円山町は迷路のような路地の街です。同じくループ状の小道のあるスペイン坂界隈は多くの若者たちを集めてい賑いましたが、この円山町はアベックの大人達が静かに行き交う街です。と言いますのは、この円山町はラブホテルの街だからです。（写真４、５、６）円山町は、江戸時代大山街道の宿場街であり、明治時代に花街として栄え、大正・昭和の時代には三業地（料理屋、待合茶屋、芸者屋）だったところです。戦後にラブホテルの街となりましたが、伝統のある昔からの料理屋が何軒か残っていますし、庶民的な小料理屋もあります。他方、普通の商店やマンションなども混在している、平凡な生活感のある裏通りのある街です。（写真７、８、９、10）ですから、円山町の雰囲気には、新宿歌舞伎町のような猥雑さはなく、さりとて隠微という静かさでもなく、都会の喧騒から逃れたい人が気軽に入り込める隠れ場所のようなところです。総じて大都会には賑わいと静けさの陰陽の組み合わせがあるものですが、円山町は渋谷の陰を代表するところでしょう。（以上）写真１　百軒店の商店街を進むと百軒店の出口、即ち円山町の入り口になる。写真２　文化村通りから円山町へ上る坂写真３　道玄坂小路から円山町へ行く階段道写真４　料亭に挟まれた小道は更に奥の小道に迷路のように繋がる。写真５　モダンで清潔感のあるファサードのラブホテル　写真６　豪華なファサードのラブホテル写真７　和風造りの老舗料亭写真８　洋風建築の老舗料亭写真９　庶民的な料理屋、飲み屋が並ぶ小道写真１０　マンションの一階にある着物ショップ人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.08.14

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  渋谷センター街の賑わいは丘へ上る　スペイン坂　（東京の街並み観察　４０）

  文化村通りの左側（南側）と井の頭通りの右側（北側）は小高い丘になっています。渋谷センター街区から溢れ出た賑わいのエネルギーは、この二つの丘へ上ります。そうして賑わうことになった街路には、文化村通りから道玄坂へ通じる道玄坂小路と、井の頭通りから枝分かれしたスペイン坂の小道があります。道玄坂小路は狭く短い道でして、文化村通りから道玄坂へ抜ける通路なので、常に人通りは絶えませんが、目立つ建物としては煉瓦造りの独特の姿の建造物（台湾料店）があるくらいで、あとは小さな飲食店と風俗系の看板が出ている、猥雑な雰囲気の小道です。（写真１、２）他方、スペイン坂の小道には、小綺麗な南欧風の店舗が並んでおり、小道の最奥には階段のあり、しゃれた路地裏ショッピング街です。階段を上りつめた丘の上には東京ＦＭのスタジオ、ミニシアター（共に今は無い）、ライブ演奏会場などがあるので、人通りの多い小道です。（写真３、４、５）スペイン坂通りの階段を上がった突き当たりは、現在取り壊して改築中のパルコ跡地ですが、そこを右に行けば公園通りに出ます。また左に行けば坂道を下りて井の頭通りに出ます。その坂を下りる前に左手に三階建てのスペイン風のビルがありますが、その前を右に曲がれば東急ハンズの裏を通ってオルガン坂の途中に出ます。（写真６、７）そのオルガン坂を下りたところは井の頭通りで、その角に東急ハンズがあります。逆にオルガン坂通りを上ると二つのパルコ・ビル（いずれも解体改築中）の間を抜けて公園通りをよぎり、ファイア通りに達します。（写真８）このように、スペイン坂の丘の上の街並は、周囲の街路とループ状に繋がっているので、四方から入ったり出たりするのに便利な街並です。しかも、丘の斜面にある街並みなので立体的な景色が楽しめます。（写真９）２年後（2019年）にパルコの改築が完成すると、このスペイン坂の丘の上は、渋谷で最も賑やかで洗練された街並みに進化しているでしょう。（写真１０）（以上）写真１　道玄坂小路写真２　道玄坂小路にある煉瓦造り台湾料店写真３　いつも賑わうスペイン坂小道写真４　スペイン坂最奥の階段を上る人々写真５　スペイン坂階段を上り詰めたところにあるライブハウス写真６　ライブハウスの前を通り過ぎて坂道を下りた井ノ頭通り写真７　三階建てのスペイン風のビル写真８　オルガン坂を井の頭通りに下りた角にある東急ハンズ写真９　スペイン坂小道を俯瞰する。写真１０　ライブハウスの前はパルコの改築工事現場人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.07.30

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  丘の狭間の低地に生まれた繁華街　渋谷センター街区　（東京の街並み観察　３８）

  ハチ公前のスクランブル交差点を眺めていると、人波の大半は渋谷駅から対角線上にある街区に向かって流れています。人波が向かう街区の角に渋谷センター街の中央通りの出入口があります。出入口の左手には老舗の大盛堂書店があり、右手のQ FRONTビルにはTSUTAYAが入居しています。（写真１、２）音楽や映像のソフトのTSUTAYAは、創業が蔦屋書店という本屋さんでした。渋谷で人通りが最も多いセンター街の出入口の両側に手堅い商売の本屋さんが並んで店を構えていることは意外ですが、渋谷が都内でも名だたる情報発信の街ということですから不思議ではありません。渋谷で最も多くの人々が歩き回る街路は、この渋谷センター街区の中央通りと、その左右を並行して走る文化村通りと、井の頭通りです。この三本の街路は、嘗て渋谷川に注いでいた宇田川が流れていた低地帯にあります。山の手地区の繁華街の多くは丘の狭間の低地にありますが、渋谷センター街区もそのタイプで、その中でも最も広くて大きな繁華街です。それでは渋谷センター街区の中の三本の街路の街並みを観察していきましょう。渋谷センター街区の中央通りは、その名の通り低地帯街区の真ん中を通る街路で、宇田川を暗渠にして造成された通りですが、夢二通りに突き当たって終わる短い街路です。街並みの目立つ店舗としてはブランド店FOREVE21があるだけで、その他の店はファストフードの飲食店、ゲームセンター、カラオケなどがあり、中学生、高校生などの若者が集まる通りです。この道の人波の動きを観察していますと、多くの人は左右の枝道に消えていきます。渋谷センター街の中央通りは、奥行きの深い渋谷繁華街への通り道でもあります。（写真３）文化村通りは、道玄坂下の総合商業ビル１０９前の交差点から東横百貨店本店の前までの道幅の広い街路です。この街路は戦後に東横百貨店本店が立地（昭和４２年1967）してから発展した比較的若い街並みですが、今では両側に中層ビルがぎっしり建ち並び、衰退する道玄坂より立派な街並みに成長して、渋谷を代表する高層ビル街となっています。（写真４、５）この街並み発展のきっかけを作ったのはデパートの進出でしたが、今では流行らないデパートに代わって、美術、音楽、映画などの立派な文化施設が文化村通りの街並みの賑わいに貢献しています。Bunkamuraザ・ミュージアム、コンサート、オペラ、バレーのBunkamuraオーチャードホール、Bunkamuraル・シネマ等が絶えず芸術性豊かなエヴェントを開催して、渋谷の街が文化も発信する機能を備えていることを示しています。（写真６、７）井ノ頭通りはスクランブル交差点からファイヤー通りを少し進み、西武デパートのA館とB館の間を左折してNHKセンター下交差点へ通じる、やや狭い道路です。この井の頭通りは、入り口には西武デパートがあり、それに続いて有名なファッション･ブランドの店舗が並び、最奥には東急ハンズがあります。街路の中程には、大型のアミューズメントパークのアドアーズ・ゲームセンター、グルメサイトのちとせ会館ありで、賑わいでは渋谷センター街の中央通りに負けない街路です。（写真８、９、１０）渋谷センター街区は、丘の狭間の狭い地域に、情報、ファッション、文化を発信する機能をコンパクトに詰め込んだところなので、人々を吸引する力は大きいものがあります。渋谷駅と渋谷センター街区を繋ぐスクランブル交差点が常に人の流れで泡立つのは当然です。（以上）写真１　渋谷スクランブル交差点　TSUTAYA３階から見る。写真２　渋谷センター街の出入口写真３　渋谷センター街中央通りの雑踏振り写真４　文化村通り　東急百貨店本店から見る。写真５　文化村通り　道元坂下の交差点から東急百貨店本店方向を見る。写真６　Bunkamuraザ・ミュージアム入口および東急百貨店本店写真７　文化村のオーチャードホール前で開演を待つ人々写真８　井ノ頭通り　西武デパートのA館とB館の間の入り口付近写真９　井ノ頭通り　東急ハンズ前から見る。写真１０　井ノ頭通り　アミューズメントパーク・アドアーズの前の賑わい人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.07.15

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  戦後のモダンな渋谷をリードした公園通り　（東京の街並み観察　３８）

  伝統的な渋谷のメインストリートである道玄坂と宮益坂が翳りを見せるなか、戦後の渋谷の街にモダンさを注入したのが公園通りでした。公園通りは、ハチ公前のスクランブル交差点からファイヤー通り（渋谷消防署がある通り）を少し原宿方向に進み、渋谷モディ（旧マルイ）とデズニーストアの間を左斜めに入る坂通です。公園通りの入り口には、新感覚のファッションを売るモディの円筒形のファサードと、遊びを売るデズニーストアのキャラクター・ファサードが、公園通りの門柱のように建っています。（写真１、２）公園通りの行き着く先は、戦争直後にアメリカ軍の軍属が住んだワシントンハイツがあったところです。戦後の舶来モノは米国から来ましたから、米国軍属の家族達が持ち込んだモダンさは、近くの原宿へ流れ込むと同時に、公園通りにも流れ込みました。ワシントンハイツの敷地が日本に返還（昭和３９年1964）されると、その跡地に日本放送協会（NHK）がやってきます。スタジオパークを設けてイヴェントを頻繁に開催します。公園通りの突き当たり左手には渋谷区役所の公会堂があり、公会堂（命名権売却で一時レモンホールと言った）では時々音楽会などが催されました。ワシントンハイツの跡地には広大な代々木公園もできました。その後、NHK放送センター正門の東側にアイア・シアター・トーキョーというミュージカル劇場（平成２３年2011）が横浜からやってきました。（写真３、４、５）イヴェントに参加する人々は公園通りを往来します。休日には代々木公園に多くの人が訪れますが、往復には公園通りを歩きます。嘗て道玄坂上の百軒店が賑わいを見せた時代、そこへ通う人々が道玄坂を上り下りしたように、NHKと渋谷公会堂と代々木公園などの存在が、公園通りの坂を渋谷の新しいメインストリートに育てる働きをしました。この公園通りのモダンさに新風を吹き込んだのは西武系のデパートの渋谷パルコ（昭和４８年1973）で、渋谷に新しいファッションや生活カルチャーをもたらして、戦後の公園通り発展の原動力になりました。しかし、いま渋谷パルコは、平成２８年（2016）から休業して高層ビルに建て替え中です。（写真６、７）渋谷パルコの進出を機に、公園通りには、次々と高級ブティック店が開店しました。国際的なブランド品の店もあれば、マイナーだが個性的なブティック点もあります。道元坂下にある渋谷109ビルが若者ファッションを売り物としたのに対して、公園通りにはハイソ相手のファッションを扱う店が多く進出し、ワシントンハイツのあった時代には寂しかったこの坂道は、渋谷の街路の中では、最も垢抜けしたファサードの店舗が建ち並ぶ街路になりました。（写真８、９、１０）現在、渋谷駅周辺は大改造中であることは既に述べましたが、この公園通りにも改造・改築の波が押し寄せています。渋谷区役所と公会堂は建て替えのため解体されました。未だ着手していませんがNHK放送センターも超高層ビルに建て替えられるそうです。ここに掲げた写真の建物の幾つかは、今は見る事が出来ません。（以上）写真１　渋谷モディ（旧マルイ）写真２　デズニー・ストア写真３　．NHK放送センタービル写真４　渋谷公会堂（CCレモン・ホールと言われた時がある）写真５　アイア・シアター・トウキョウ写真６　ありし日のパルコ写真７　解体して改築中のパルコ写真８　BEAUTY&YOUTH　UNITED ARROWS社製品を販売写真９　CHACOTT渋谷本店　バレー衣装を販売写真１０　渋谷公園通りの夜景p>人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.06.29

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  道玄坂と宮益坂は最盛期を過ぎたメインストリート　（東京の街並み観察　３７）

  江戸時代、赤坂御門を起点とする大山街道は、山岳信仰の大山詣りで賑わいましたが、道玄坂付近に大山街道の最初の茶屋があったと言いますから、道玄坂は街道でも昔から賑やかなところだったのでしょう。明治以降も道玄坂と宮益坂は、都心部の赤坂見附から厚木街道へ抜ける幹線道路の一部でしたから、交通量の多い坂道でした。昭和に入ると、関東大震災の被害を逃れて下町から有名店が道玄坂の百軒店（ひゃっけんだな）に集まってきて、劇場、映画館なども進出しましたので、渋谷の低地から坂上に至る道玄坂は人々の往来で賑わい、都内でも有数の繁華街になりました。戦前までは、道玄坂には玉川線が、宮益坂には市電が走っていましたから、二つの坂道は、早い時期から路面電車の沿線の商店街として街並み形成していました。しかし、高度成長期期を終える頃なると、地下を走る東急田園都市線が開通して（昭和４１年1966）路面電車の玉川線は廃止（昭和４４年1969）され、首都高速３号渋谷線が開通し（昭和４６年1971）、混雑を緩和するため道玄坂と宮益坂をバイパスする国道２４６が建設されて、青山通りと玉川通り（厚木街道）を繋ぐ二つの坂道の交通量は減少していきました。（写真１、２）女性は見られることによって美しくなると言われますが、街並みも同じで、多くの歩行者や自動車によって見られることによって美しくなるものです。以前に比べて道玄坂と宮益坂の街並みに寂しさを感じるのはその所為でしょうか、二つの坂道の賑わいも最盛期を過ぎたのかも知れません。具体的には、嘗ては道玄坂の坂道には個性的な一戸建ての商店や、凝った連棟式の建物があって、道玄坂の街並みのファサードには魅力がありましたが、今は多くの建物が規格化した高層ビルに変わり、街並みとしての魅力を失っています。（写真３、４）逆に、メインストリートには相応しくない派手な原色の看板が増えたり、歩道に立て看板が並んでいたり、更には風俗店まで出店しています。このような品格を問われる街路の劣化は、若者のファッションをリードする渋谷の街に相応しくない現象です。（写真５、６、７）しかし、道玄坂と宮益坂が依然として渋谷のメインストリートである証（あかし）は、大木となったケヤキ並木です。大きく育って高層化するビルに負けない高さを誇り、歩道から車道にまで張り出した枝振りも厚みを増し、歴史のある街並みに風格を与えています。夏には歩道に涼しい木陰を作り、秋になると落葉樹のケヤキは黄葉して、坂道の街並みを明るい彩りを与えます。（写真８、９、１０）（以上）写真１　首都高速３号線とその下を走る宮益坂バイパス道路（六本木通り）写真２　首都高速３号線とその下を走る道玄坂バイパス道路（玉川通り）写真３　道玄坂にあった連棟式三階建ての商店のファサード（解体作業前）　三階の屋根は夫々個性的なデザイン写真４　高層のペンシルビルで店舗は画一化している。写真５　ファサードの色彩に赤などの原色の多い街並みになった写真６　歩道まで立て看板を並べる大衆化した道玄坂の飲食店写真７　新宿歌舞伎町の裏通りの風俗店のファサードが道玄坂表通りに写真８　宮益坂上から見た宮益坂のケヤキ並木写真９　道玄坂下から見た道玄坂のケヤキ並木写真１０　ケヤキ並木の黄葉は夕日を浴びて街並みを明るくする人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.06.16

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  遅れて超高層化が進む渋谷駅周辺　（東京の街並み観察　３６）

  街並み観察のシリーズでは、店舗正面のファサードに着目して、街並みの相貌を観察するという方法をとっています。これまでは、銀座や表参道のように、街の基本的な道路（メインストリート）がある場合は、その街路に並ぶ店舗正面を主に観察しましたし、浅草のように街区の中に幾筋もの特色のある街路がある場合は、夫々の街並みを観察しました。今回取り上げる渋谷の街のメインストリートは、宮益坂通りと道玄坂通りですが、この二つの坂道は青山通りから玉川通りへ通じる、江戸時代から大山街道の一部でした。当時、道玄坂上に宿場がありましたから、歴史的には渋谷の街の発達は、低地の谷間からではなく、道玄坂の丘の上から始まったのです。渋谷の街は、道玄坂通りと宮益坂通りの二つの坂道を中心として、その両側に発展しているので道玄坂と宮益坂を境にして南北に分かれますが、他方、渋谷川沿いに走る明治通りで東西に仕切られていますから、渋谷の全街区は大通りで丁度四分割された形です。四分割された渋谷の街の中で、最も賑わっているのは、道玄坂通りの北側であり、明治通りの西側です。渋谷駅から西北に位置するこの街区（道玄坂、神南地区）に向かって人々は集まります。今や外国人観光客にも知れ渡っている有名な渋谷スクランブル交差点の混雑は、渋谷駅で下車した人達が、一斉に渋谷の西北部の街区に向かうために生じているのです。（写真１）渋谷の街並み観察では、メインストリートと共に、この西北部の四分の一の街区も詳しく観察しますが、その前に、その他の四分の三の街区を概観してみます。これらの街区は、今はオフィスビルが増加中ですが、山手線が開通してから住宅地として開発されたところです。そして大学、高校などが多い文教地区です。更に、その外縁部には南平台のような高級住宅もあります。（西北地区の外縁にも松濤のような高級住宅地があります）（写真２、３）もう一つ、現在の渋谷で注目すべき点は、渋谷駅の東南部および西南部で大規模な再開発事業が進行中であることです。渋谷駅周辺は、山手線のターミナル駅のなかで最も超高層化が遅れていた地域でしたから、これは当然の成り行きです。東急東横線と地下鉄副都心線の相互乗り入れ工事が完了（平成２５年 2013年）すると、引き続きJR山手線と埼京線の渋谷駅を接続させる工事（東横線の渋谷駅の跡地利用）が行われており、同時に地下鉄銀座線の渋谷駅を東側（山手線の内側）に移転する工事も進行しています。（写真４、５、６、７）渋谷の鉄道駅の大改造に伴って、渋谷駅を跨いでいた東急百貨店は撤去されて、新たに超高層の東急百貨店（本館は４６階）が計画されています。更に、新しい渋谷駅に隣接する南側には、超高層ビルが数棟建設される計画があり、既にその一部が着工されています。（写真８、９）この地域の超高層ビルとしては、セルリアンタワー東急ホテルと渋谷マークシティの二棟だけでしたが、数年後には渋谷駅の南側には数棟の超高層ビルが聳え立ち、街の様相は一変するでしょう。新しい超高層ビル群の誕生は、これまでの商業機能の充実の外に、新しい業務機能、娯楽・レジャー機能が集中することになります。若者の街であった渋谷が、IT企業、デジタル・コンテンツ創作企業、ネット関連企業が集積する街に変身することでしょう。渋谷駅東側にあった東急文化会館が超高層ビルの渋谷ヒカリエに建て替えられ（平成２４年 2012）て起きている現象です。なお、渋谷の街については、この「東京今昔物語」で既に次のとおり取り上げております。今回の街並み観察が、過去の記述と若干重複する点もありますがご了承下さい。2008.02.02 渋谷松涛　高級住宅地の先陣2013.08.12 渋谷　戦前の発展、戦後の発展2013.08.22 渋谷　谷間は繁華街　台地は高級住宅地2013.08.28 渋谷 凝縮した密度の濃い街2013.09.06 渋谷　最後に超高層化が進む駅周辺（以上）写真１　ハチ公広場前かた見たスクランブル交差点写真２　桜ヶ丘町にある日本経済大学キャンパス写真３　南平台の高級住宅写真４　撤去前の東急東横線の渋谷駅写真５　JR埼京線の渋谷駅予定の東横線駅跡地写真６　渋谷駅東口の建設工事　撤去される東横百貨店本店は正面に見える。写真７　地下鉄銀座線渋谷駅移設工事　渋谷ヒカリエの前辺りが銀座線の終点駅になる予定。写真８　渋谷駅西口にあった東急プラザ渋谷の跡地に建つ超高層ビル工事現場写真９　宮益坂下交差点からみた渋谷駅改造工事　既存の超高層ビル（セルリアンとマークシティ）は二棟だけ。人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.06.03

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  その他の浅草ならではの街並み　（東京の街並み観察　３５）

  興業と観光の街として歴史の古い浅草には、このほかにも浅草らしい特色のある街並みがいくつかあります。広い浅草街区の中で浅草らしい街並みは、やはり浅草公園六区の域内にあります。それは西参道商店街、五重塔通り、浅草ロック通りの三つです。西参道商店街は、文字通り浅草寺境内へ西側から入る参道口です。西参道商店街の位置は、五重塔通りの北側を並行して延びていて、その先はロックブロードウェイに繋がります。この西参道は仲見世通りと同じみやげもの商店街ですがアーケード街に模様替えしてあり、仲見世通りより整然としいて作り物の模型の店舗を見る感じになります。（写真１、２）浅草寺の表参道も西参道も長屋スタイルの商店街の裏側は朱色に染められています。寺院では朱色は高貴な色ですが、着物の下着の長襦袢にも緋色が用いられますから、朱色は商店街の裏地という意味もあるかも知れません。（写真３）五重塔通りは西参道通りと並行しており、浅草寺の五重塔の脇を通り抜けてロックブロードウェイに達する街路ですが、その途中に大衆劇場の木馬館と木馬亭があり、浅草らしい雰囲気がある街路です。木馬館では時代物の大衆演劇が上演されており、木馬亭では伝統芸能の浪曲と講談が上演されています。大衆劇場の古風なファサードは、昔ながらの浅草を感じさせるものがありますが、嘗てこの道で大道芸人が活躍し、見世物小屋が沢山あった名残りだからでしょう。嘗て五重塔通りの六区側入口には「奥山大木戸」があり、今は門柱が建っています。（写真４、５）浅草ロック通りは、つくばエクスプレスの浅草駅から伝法院通りへと通じる約１００メートルの短い道ですが、嘗ては映画・演劇のあった場所と浅草寺参道を結びつける通路でしたので、その思い出を留めるために、道の両脇の街燈には、浅草を代表する嘗ての芸能人を紹介する写真が飾られています。（写真６）しかしながら、浅草公園六区内にある、これら三つの浅草らしい通りも、その位置が浅草寺の西側にあって交通の便が悪いためか、浅草寺の東南に位置する街路の賑わいには敵いません。浅草寺の東南には、地下鉄の銀座線、都営浅草線、郊外電車の東武伊勢崎線の三線が接続する浅草駅があり、しかもその浅草駅の傍に隅田川の遊覧船の発着桟橋があります。浅草を目指す人の多くは、これらの乗り物を利用して浅草街区の東南の角から入ってきます。その東南の角にある街路が観音通りです。観音通りは雷門通りから伝法院通りまで南北に走る短い道で、観光客相手の食堂が多い道ですが、浅草らしい街並みというわけではありません。（写真７）むしろディープな浅草らしさを求めるなら、浅草寺の北側の小型遊園地のある花屋敷通り、又は江戸下町伝統工芸館のある、ひさご通りに入ってみるとよいでしょう。もっと浅草の猥雑さに親しみたいなら、浅草六区の公園本通り商店街の和風テラス酒場を覗いてみて下さい。昼夜を問わず道路に面した酒場が賑わっています。（写真８、９、１０）（以上）写真１　浅草西参道商店街写真２　浅草西参道商店街写真３　西参道商店街の裏通り写真４　大衆劇場の木馬館と木馬亭写真５　五重塔通りのの「奥山大木戸」写真６　浅草ロック通り写真７　浅草かんのん通り入り口写真８　花屋敷通りの大江戸ステージ写真９　江戸下町伝統工芸館写真１０　浅草六区の公園本通り商店街人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.05.12

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  浅草公園六区　娯楽の街の戦前と戦後　（東京の街並み観察　３４）

  戦前の東京で映画、演劇を観に行くと言えば、浅草の公園六区でした。公園六区の名前の由来は、明治時代に浅草公園を六つの区画で整備したときの六番目の区画だったからで、場所は浅草寺観音堂の西南方で伝法院と国際通りの間の区画です。明治２０年（１８８７）に公園六区に常盤座が開業し、歌舞伎や新派劇を上演し、その後は映画の上映も行われ、浅草興行界がスタートします。大正時代には西洋映画や西洋オペラを取り入れて、公園六区は東京の興行界の先端を行きます。エノケンなどの浅草オペラが生まれたところです。大正時代の写真を見ると、両側に映画館や演芸場が並ぶ通路は人の波で溢れており、戦前までの浅草公園六区が東京で娯楽の中心地だったことが分かります。関東大震災で浅草１２階と言われた凌雲閣は倒壊し、浅草の娯楽街も大打撃を受けましたが、間もなく復活を遂げます。その後の東京大空襲では木造建物の殆どは消失し、浅草娯楽街は壊滅しますが、戦後、再び映画、演芸の街として復活します。町民の街の浅草は強い底力を持っていました。しかし、東京オリンピック（昭和３９年）が開催された頃になると、テレビが普及して映画館の客足が減り始めて、流石の娯楽街としての浅草人気に翳りが出ます。その後、再び映画に人気が戻ったときには、映画館は銀座や山手線のターミナル駅周辺に移動し、大型の映画館よりは、小規模映画館が複数集まったシネマコンプレックスに人気が移りました。日本の映画の歴史は、明治３６年（1903）浅草の電気館での上映で始まりましたが、その後も昭和３０年（１９５５)頃までには浅草には未だ３０館余りの映画館がありました。しかし平成２４年（２０１２）、最後まで残っていた浅草中央劇場、浅草名画座、浅草新劇場の三映画館が閉鎖されて、浅草の映画は１１０年の歴史を閉じました。嘗て何軒もの演劇場と映画館が並んでいた大通りは、今はロックブロードウェイ商店街という名前になり、綺麗に整備された広い街路となりましたが、昔の人混みの熱気はありません。（写真１、２）昔からの業種としてロックブロードウェイに残っているのは、ストリップ劇場の浅草ロック座、嘗て渥美清、萩本欽一、ビートたけし等が出演していた浅草フランス座演芸場東洋館、落語や漫談の浅草演芸ホールくらいしかありません。（写真３、４、５）映画館だった電気館は、商住複合施設「電気館ビル」となり、食品売り場とマンションになりました。映画、演劇の老舗だった大勝館は今は雑貨店ドンキホーテの浅草地区核店舗となりました。日本競馬の馬券売り場もビルを構えましたが人が集まるのは競馬開催日だけです。（写真６、７、８）つくばエキスプレスの浅草駅が浅草六区の近くに新設されて交通は便利になりましたので、ロックブロードウェイには大型の総合商業施設のビルが数棟建ちました。浅草パークホールビル、東京楽天地浅草ビル（まるごとにぽん入居）、ROX３、ユニクロROXなどです。娯楽興業の街、浅草六区は大型商業施設街になりましたが、浅草を観光で訪れる人が、ここでショッピングするか疑問です。（写真９、１０）（以上）写真１　広々としたロックブロードウェイ　写真２　ロックブロードウェイの中心部写真３　浅草ロック座写真４　浅草フランス座演芸場東洋館写真５　浅草演芸ホール　人力車が見物人を連れてくる。　写真６　電気館ビル写真７　ドンキホーテ写真８　在りし日の浅草大勝館写真９　まるごと日本　地方産品を販売している。写真１０　総合商業施設　ROX３人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.04.24

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  浅草公会堂オレンジ通り　伝統工芸品店の街並み　（東京の街並み観察　３３）

  浅草は江戸町民が育てた町と言いましたが、その町民の文化を今日に伝える具体的なものと言えば色々な工芸品があります。例えば、東京染小紋、本場黄八丈、江戸木目込人形、東京銀器、東京組紐、江戸鼈甲、江戸象牙、江戸指物、江戸簾、江戸更紗、江戸和竿、江戸切子などです。これらの江戸時代に誕生した工芸品を今でも製造販売する店は、東京の下町の台東区と墨田区に多く散在していますが、浅草街区内では、公会堂オレンジ通りに集中しています。明治以降、この通りに手工芸品を製造販売する店が集まり出すと、他の地域にあった工芸品関係のお店が更に集まるようになり、今ではかなりの工芸品の店舗が並ぶようになりました。公会堂オレンジ通りは、伝法院裏門から雷門通り至る道でして、浅草街区内では歩車道が分離した唯一の道で、ゆっくりとショッピングができます。雷門通りの入口から浅草公会堂オレンジ通りに入ると、先ず目に付くのが桐木目込みという独特の技法を用いた桐工芸品を製作販売している「箱長」という店です。続いて秋田杉を素材に大館曲げわっぱという和製食器を製造販売する「柴田商店」です。（写真１、２、３）更に進むと、モダンな鼈甲装飾品を製造販売する「ベッ甲イソガイ商店」があります。向かい側には、鹿のなめし皮に漆染色を施してパッチワークの小物を製造販売している「前川印伝」という老舗の商店があります。その他にも明治時代からの創業の老舗、創作ジュエリーの「吉田貴金属店」、ハンドバッグの「孔雀堂」などがあります。浅草公会堂の隣には銀器、銀装飾品の銀細工を製造販売する「もり銀商店」があります。（写真４、５、６、７、８）古書街や繊維問屋街のように同業者が集まって街並みをつくる例は幾つかありますが、個性を売り物の手工芸品の専門店が集積する公会堂オレンジ通りは珍しい例です。柳宗悦と共に民芸運動を推進した河井寛次郎は「暮らしの中の実用の美に魅せられた」と言いましたが、いつも身近な生活の中に実用の美を置くという日本人好みの習性が、このような手工芸品街を誕生させたのでしょう。雷門通り入り口から公会堂オレンジ通りを歩いてくると伝法院裏門に突き当たりますが、伝法院通りとオレンジ通りとが出会う角地に台東区立浅草公会堂があります。昔ここには区役所庁舎があったので、公会堂誕生までは区役所通りと言われていました。（写真９）その公会堂の前の歩道沿いの地面に、映画の街のロスアンジェルスにあるハリウッド映画俳優の手形版のような、日本の芸能人の手形版が飾ってあります。浅草が映画演劇で盛んだった街の思い出に、道行く人々が手形版に手を重ねています。（写真１０）浅草と言えば戦前も戦後も繁華街の猥雑さを求めて人々が集まるところでしたが、浅草公会堂オレンジ通りは、浅草には珍しく藝術的高級感のある老舗と名店のある街路です。（以上）写真１　伝法院裏門から見通した浅草公会堂オレンジ通り写真２　箱長　桐工芸品を製作販売する店　隣りは陶芸品の「やま吉」写真３　柴田商店　わっぱという和製食器を製造販売する店写真４　ベッ甲イソガイ商店　モダンな鼈甲装飾品を製造販売する店写真５　前川印伝　鹿のなめし皮のパッチワーク小物を製造販売する店写真６　吉田貴金属店　写真７　ハンドバッグの孔雀堂　写真８　もり銀商店　店の横には江戸金銀工芸との大きな看板があります。写真９　浅草公会堂写真１０　日本の芸能人の手形版人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.04.12

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  淺草伝法院通り　江戸情緒の演出　（東京の街並み観察　３２）

  浅草街区の中で仲見世通りに次いで賑わうのは伝法院通りです。伝法院通りは仲見世通りとオレンジ通りを繋ぐ東西に走る短い街路ですが、この街路の街並みはほかの街並みとかなり様相が異なります。伝法院通りの北側は小屋建ての古ぼけた店舗が続くのに対して、南側の店舗は江戸時代の街並みを再現した、真新しい店舗が並んでいます。（写真１、２）この伝法院通りは、元々は仲見世通りから公園六区の興行街を通り抜けて、合羽橋本通りを通って北上野に達する、浅草と上野を繋ぐ長い道路の一部でして、駒形橋袂（たもと）から上野駅に至る現在の浅草通りが表通りだとすると、その裏通りに当たります。裏通りだった伝法院通りが現在のような姿になったのは、平成１７年(2005)に筑波エクスプレスの浅草駅が浅草六区近くに開設された際、伝法院通りの景観を江戸風の商店街に改造しようということになり、今日の街並みになったのです。しかし、景観を江戸風に整備したのは伝法院通りの南側だけでした。その結果、街路の北側と南側では店舗の全てのファサードが対照的に異なっています。北側の店舗は、軒先に同じような日除けテントが横並びに懸かり、建物は小屋掛けの粗末なものです。恐らく仲見世通りが横に延びてきて、そのままの姿で残されたものなのでしょう。他方、南側の店舗はすべて二階建てとなり、一階は店舗、二階は住居という構造で、間口は北側よりやや広くなり、店舗のファサードの様式は江戸風です。正面外観に瓦葺き屋根を取り付けたり、窓格子や白壁塗りを施し、江戸風の木製看板を取り付けています。（写真３、４、５、６）江戸風に改築された南側の商店には上等な商品を並べてありますが、北側の商店には履き物や古着など日常的な商品が並んでいて、普通の商店街のような気安さがあります。伝法院通りは片側だけを江戸風に改造した奇妙な造りの街並みなので、この道を歩いているとフィクションと現実の間を彷徨っているような不思議な感覚に陥ります。伝法院通りの賑わいは仲見世通りより見劣りしますが、仲見世通りから浅草公園六区の歓楽地に行く人々の通り道として人通りは多い方です。浅草でも江戸趣味を演出している数少ない通りなので、外国人観光客も数多く足を運んできます。（写真７、８）伝法院通りの名前の由来である伝法院は浅草寺本坊、即ち住職の住む僧坊です。その正門は仲見世通りに面していますが、裏門は伝法院通りに面しています。裏門と言いましても正門に負けない堂々とした黒塗りの門です。正門、裏門ともに浅草が寺町であることを示す寺のファサードです。（写真９、１０）（以上）写真１　伝法院通り　北側の街並み写真２　伝法院通り　南側の街並み写真３　伝法院通り　北側の街並み写真４　伝法院通り　北側の街並み写真５　伝法院通り　南側の街並み写真６　伝法院通り　南側の街並み写真７　伝法院通り　南側の街並み写真８　伝法院通り　南側の街並み写真９　伝法院表門写真１０　伝法院裏門人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.04.01

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  仲見世通りと雷門通り　浅草のメインストリート　（東京の街並み観察　３１）

  先ず、浅草寺の表参道から観察していきましょう。浅草寺の表参道は、浅草街区の真ん中を南北に通る基幹街路です。街路の両側は連棟式の商店が軒を連ねていて、通称、仲見世通りとして知られています。この表参道にはかなり早い時期から参詣者相手のお店が並んでいたと言われますから、浅草では最も歴史の古い街路です。江戸っ子は信心深いと言われますが、浅草寺では毎月富くじ興業が開催されていましたから、寺社参りには富くじの当たりに願掛けする者も多く、観音崇拝と共に、幸運目当てに表参道の盛り場の雰囲気を楽しむ参拝者も多かったのです。現在、表参道と言われる仲見世通りは、雷門から宝蔵門までの間だけですが、元々の表参道は、駒形橋の袂（たもと）から現在の並木通りに入って、雷門をくぐって宝蔵門まで続く長い道でした。江戸時代には隅田川を舟に乗って浅草寺参りに来る人が多かったそうですが、彼等は駒形橋で陸に上がり、先ず橋の袂にある駒形堂にお参りしてから、浅草寺に参拝したのです。駒形堂は観世音菩薩が隅田川から引き上げられたとき安置された場所です。（写真１）現在は並木通りには高層マンションなどが建並び、嘗て表参道だったことを想記させるお店は少なくなりましたが、それでも江戸工芸の扇子を製造販売する東扇堂と櫛田扇子店が古風な店構えで並んでいます。（写真２、３）　雷門をくぐると浅草寺参りをする人が必ず通る仲見世通りです。両側の店先に並ぶ商品の種類は参拝者相手の土産物屋から外国人観光客相手の日本調の小物商品まで多種多様です。仲見世通りの店舗は、同じ規模の間口の狭い店構えで、雷門通りから宝蔵門までの間に隙間無く並んでいます。（写真４、５）上空から見ますと、仲見世通りは両側に青い二本の長い屋根がある街路です。一見アーケイド街かと見間違えますが、仲見世通りの店舗は仕切りが簡便な長屋スタイルなので、個々の店舗の屋根を繋げた珍しい形の街路となっています。これは仲見世通りが小屋がけ式の店が並んで生まれてきた街路だという証拠です。（写真）６）この仲見世通りが何時も人の波で埋まっている様子は、前々回紹介した原宿の竹下通りと同じく非日常的な賑わいの場であるためですが、両者が大きく違うのは、ここは若者の遊びの場ではなく仏教の祀りの場であることであり、竹下通りが現代ファッションの流行なのに仲見世通りは江戸情緒が漂う場であることです。（写真７）仲見世通りを訪れる人々は、国内の地方から上京する人も多いですが、近年は海外からの観光客も増えています。現代都市の街並みは何処にでもあって人々は見飽きていますから、江戸が現代に息づくユニークな浅草の仲見世通りに人気があるのは当然でしょう。（写真８）浅草のもう一つのメインストリートは雷門通りですが、この通りは吾妻橋の袂から浅草国際通りに至るまでの短い道ですけれど、その名前から分かるように、浅草寺の雷門に面していて、参道に入る前の門前通りとして発展した道です。（写真９）従って、浅草寺の参拝者や観光客相手の店舗は、雷門通りの北側（浅草寺側）に多く並んでいます。雷門隣にある常磐堂は雷おこし本舗本店です。雷門の周辺には観光客目当ての人力車が盛んに乗客を勧誘しています。明治時代に考案された人力車も歴史の街、浅草の異国情緒を演出しています。（写真１０）写真１　駒形堂写真２　並木通り　高層のビルが並ぶ。写真３　並木通りで江戸工芸の扇子を製造販売する店写真４　浅草寺雷門写真５　仲見世通り　日本調の小物商品を売る店。写真６　雷門から宝蔵門まで続く仲見世通り写真７　宝蔵門近くの仲見世通り　和服姿の参拝者も多い。写真８　仲見世通り見物する外国人写真９　雷門通り　国際通りとの交差点からから吾妻橋方面を見る。左手の商店街にだけにアーケイドが設けられていて観光客相手の店舗が多い。写真１０　常磐堂　江戸時代からの和菓子「雷おこし」の本舗本店です。人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.03.21

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  浅草は寺社が産んで町民が育てた街　（東京の街並み観察　３０）

  前回までは、明治神宮の表参道の街並みとその周辺の街並みを観察しましたが、今回からは、浅草寺と浅草神社が産んで町民が育てた淺草の街並みを観察します。明治神宮は大正時代に建立された新しい神社でしたが、浅草寺は関東でも最古の寺でして、平安時代の初期に創建し、江戸時代には徳川幕府の庇護をうけて、関東の観音霊場として多くの参詣者を集めました。また、浅草寺の境内には浅草観音像を隅田川底から拾い上げた漁師たちを祀った浅草神社があり、これは江戸町民と東京市民を熱中させる三社祭りの神社です。（写真１、２、３）深川に住んでいた芭蕉は花曇りの空を見て、「花の雲　鐘は上野か　浅草か」と詠みましたが、この句で芭蕉は上野寛永寺と浅草寺の鐘の音（ね）を対比させながら上野の山で花見をする武士たちと、隅田川の川縁で花見をする町民たちを思い描いていたのでしょう。江戸時代、武士は７０％の土地を占拠し、残り３０％の土地を寺社と町民で折半して使うという状況でしたから、城下町の住宅の密集度はかなり高いものでした。それは一旦火災が起きると城下町は延焼して大火事になっていたことで分かります。浅草は、神田、日本橋という江戸中心部の下町とは違って、当時は江戸市街地の郊外に当たりましたが、少し北には吉原という花街もありましたから、浅草界隈は早くから開けた賑やかなところでした。多くの町民たちが参拝と行楽を兼ねて集まった浅草寺と浅草神社の周辺は、時代が江戸から明治に変わっても、東京市民を惹きつけました。昭和も戦前までは、ここは浅草街区として東京の娯楽の中心地として賑わいました。今回取り上げる浅草街区の範囲は、東は江戸通り、西は浅草国際通り、南は浅草通り、北は言問通りの４本の大通りに囲まれた地域です。浅草街区の中の街並みを観察する前に、この浅草街区を仕切る４本の大通りを概観しましょう。江戸通りは、江戸時代には江戸城を常盤橋門から出て、奥州街道と日光街道につながる幹線道路でした。そして又、江戸市中から浅草寺参りに行く道でもありました。現在の江戸通りは、東京駅北口近くの永代通りから分かれて北上し、言問橋西で右折して水戸街道に通じる道となっています。江戸通りは、昔も今も江戸と東北地方を繋ぐ幹線道路です。なお浅草街区の東側を走る江戸通りは履き物商店街となっています。（写真４）浅草国際通りは、江戸通りが蔵前通りと交わる交差点で江戸通りから分岐して北上し、浅草通りと田原町で交差し、更に北上して日光街道と明治通りが交わる三ノ輪交差点までの道路です。武蔵野段丘の東端になる上野の山と隅田川に挟まれた江戸市中の広い平坦地の中央部を南北に通じる幹線道路です。（写真５）国際関係とは縁の無いこの通りに、「国際」という名前がついているのは、浅草という行楽の街に由来します。いま浅草ビューホテルのある場所には嘗て女剣劇や喜劇が上演された浅草国際劇場があったから、その名前を残したのです。（写真６）浅草通りは、駒形橋の袂から西に向かって田原町で浅草国際通りと交差し、更に西へ進み、上野駅前で中央通りと昭和通りの交差点に合流する道路です。芭蕉の俳句にあるように、江戸時代の行楽の二大拠点、上野と浅草を結ぶ基幹道路でした。（写真７）言問通りは、上野入谷から言問橋へ至る通りですが、東京湾の湿地帯が内陸部深く広がっていた江戸時代には、江戸から下総（千葉）へ行く重要な道でした。言問通りは浅草寺のすぐ裏を通っているので浅草観音堂裏通りとも言われていて、この道路の北側奥には江戸時代には芝居小屋がありましたが、今も料亭や観光施設があります。（写真８、９）これら４本の大通りで四方を囲まれた浅草街区のほぼ中心部に、浅草寺と浅草神社が鎮座するのですから、浅草街区は典型的な寺社街区です。次回以降、この浅草街区の中にある主な街路を観察していきます。なお、このブログでは既に浅草について次の通り４回取り上げています。浅草　江戸町民が築いた下町（2012.09.20）浅草　娯楽の街の伝統は続く（2012.09.30） 浅草寺は大きな人寄せセンター（2012.10.09）浅草にしかない個性的街並み（2012.10.16） これらは夫々題名にある視点から浅草をご紹介したものですが、今回は街並みの外観を観察する視点からご紹介するものです。（以上）写真１　浅草寺本堂写真２　浅草神社（三社様）写真３　三社祭の神輿写真４　吾妻橋交差点から正面の江戸通りを見る。正面左手のビルは浅草松屋写真５　浅草国際通り　浅草街区側のビルの列写真６　浅草ビューホテル写真７　浅草通り　中層ビルが並ぶ浅草･上野を結ぶ大通り写真８　浅草観光の拠点として浅草観音堂裏に位置する雷5656会館写真９　料亭「婦志多」　その前に芝居小屋「宮戸座」跡の碑石がある。人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.03.11

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  表参道の裏道　竹下通り　（東京の街並み観察　２９）

  原宿の竹下通りと言えば、若者たちの間で全国的に有名です。国内だけでなく、今や海外の観光客からも熱い視線を浴びています。竹下通りは、JR原宿駅の竹下改札口を出て、そのまま真っ直ぐに進み、明治通りに達するまでの商店街です。この通りに建ち並ぶ商店は、表参道に建ち並ぶ高級ブティック店とは全く違う商品を扱っていて、青山みゆき通りや渋谷キャットストリートのように、表参道のファッションストリートから派生した街並みとも違っています。（写真１、２）にも拘わらず、竹下通りが表参道の裏通りと言われる理由は、単に表参道と並行して走っているという地理的関係だけでなく、嘗て表参道で歩行者天国が盛んだった時代に、そこで活躍した竹の子族という若者たちが竹下通りを盛り立てた経緯があるからです。もともと竹下通りは原宿竹下町という静かな住宅地内を通る細い通路でしたが、昭和５０（1975）年頃から商店街化が始まります。その商店街化が急速に進むのは、首都圏の中高生が表参道に集合して、歩行者天国の時間帯に竹の子族の衣装を着て、踊のパフォーマンスを演じ始めた頃からです。竹の子族のブームの最盛期は昭和５５（1980）年頃と言われますが、彼等は表参道で踊る際に身に纏う派手なコスチューウムは、竹下通りで手に入れて繰り出しました。今でもその衣装を販売している店が残っており、竹の子族のネーミングも竹下通りに由来するとのことです。（写真３）やがて竹の子族相手の商店は、その数と商品の種類を増やしていき、今や衣装だけでなく、若者向けの身の回り品、ヴァライティ雑貨、靴類、玩具などを商う商店が軒を連ねています。その多くは、通常の生活に使う日用品ではなく、お祭りなどハレの日に使う商品類ですから、店の外観も装飾が派手であり、街路は恰もイベント会場のような派手な雰囲気です。竹下通りにショッピングで集まる若者達も、外国人観光客も普段着ではなく晴着の衣装を身に纏い闊歩しています。（写真４、５、６、７，８）ハレの日の商品類と言っても伝統的な日本の祭りのそれではなく、アニメや漫画の日本的ポップカルチャーを反映させた商品類ですから、若者達だけでなく、海外からの観光客も惹きつけます。街並みのコーナーに出店している飲食店も、普通の近隣型商店街にあるラーメン屋、蕎麦屋などは見当たらず、その代わりにフランス生まれのクレープ屋が多く目に付きます。（写真９）繊維問屋街や神田古書店街のように、同じ種類の商品に照準を合わせた商店街は東京のあちこちにありますが、コスプレ趣味の若者に照準を合わせた商店街は珍しく、それも３００メートル余りの長さで隙間無く続く竹下通りは、東京でも風変わりな名所です。（写真１０）（以上）写真１　原宿駅前の竹下通り入り口は常に若者で混雑する。写真２　竹下通りの明治通りへの出口写真３　元祖　竹の子コスチュームの販売店写真４　晴着コスチューム売店の前を行く晴着姿の親子写真５　コーナー店舗には派手なファサード・デコレーション写真６　外付け階段のある晴着コスチューム売店写真７　スマホでお目当ての店を探す外国人観光客写真８　竹下通りを闊歩する晴着姿の外国人観光客写真９　クレープを買い求める外国観光客写真１０　竹下通りの街路は人波で埋まる人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.02.28

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  表参道の裏通り　渋谷キャットストリート　（東京の街並み観察　２８）

  表参道のファッションストリートは都内からだけでなく全国からの買い物客が訪れる広域型商店街です。来訪した大勢の買い物客は、表参道に繋がる周辺の裏道と横道に流れ込みますので、表参道の背後地には幾筋もの細い裏通りがあり、大勢の人で賑わいを見せています。表参道のファッションストリートが真っ直ぐ延びて誕生したのが南青山みゆき通りですが、表参道のファッションストリートから左右に横に延びた枝道が渋谷キャットストリートです。（写真１、２）この枝道は、渋谷川を暗渠にした蓋の上に造られた遊歩道ですので、川の流れの様にくねりながら明治通りの宮下公園付近まで延びています。キャットストリートが表参道から北に延びる箇所に「表参道橋」という石標が建っていて、ここに渋谷川に架けた表参道の橋があったことを示しています。（写真３、４）ファッション商品を求めて表参道に集まってきた人々の中で、キャットストリートへ足を伸ばすのは、高級なブティックなどを買う人々ではなく、カジュアルな衣装、身の回りグッズ、スポーツ用品、子供向け雑貨などを求める人々です。古着、ヴィンテージ衣装、レアモノを扱う店も多く、掘り出し物を求めて、人々は普段着姿のラフなスタイルで歩いています。（写真５、６、７）キャットストリートの街並みには、表参道やみゆき通りのような豪華なファサードで美を競う建物はありません。しかし、キャットストリートは表参道というファッションストリートから派生した街路だけあって、店舗のファサードには、垢抜けした気の利いたもの、ポストモダンの構造材造りなどがあります。表参道が高級志向でハイソの人々を惹きつけているのに対して、キャットストリートは庶民派志向で若者を惹きつけています。（写真８、９）山手線の原宿駅から明治通りまでを「表原宿」と言い、明治通りを越えた東側一帯を「裏原宿」と言いますが、キャットストリートは裏原宿のメインストリートです。暗渠の蓋の上に生まれた小道という出自にも拘わらず、洒落っ気では表参道とはひと味違う小粋さがあります。（写真１０）（以上）写真１　キャットストリートの南側入り口　写真２　キャットストリート北ウイングの入り口写真３　渋谷川の上の道路は川の流れのようにくねる写真４　キャットストリート北ウイング入り口にある「参道橋」の石碑写真５　レンガ造りのクラシックな建物もある　写真６　古着屋まですっきりしたファサード　写真７　ラフな普段着姿で歩く人々写真８　垢抜けした気の利いたファサードの店もある写真９　構造材でメカニックなファサードの建物写真１０　洒落っ気あふれるキャットストリート人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.02.14

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  表参道が延長した南青山みゆき通り　（東京の街並み観察　２７）

  原宿から表参道を上ってきて青山通りとの交差点を渡って、そのまま直進すると青山みゆき通りに入ります。この通りは、戦前に昭和天皇が明治神宮へ参拝されるときの行幸通りとして造られたので、御幸（みゆき）通りと呼ばれます。青山みゆき通りは、表参道と比べると道幅はずっと狭くなりますが、少し進みますと、通りの両側は表参道にも負けない立派なファッションストリートになっています。産業一般について言われることですが、集積は集積を呼びます。ファッションストリートとして有名になった表参道には高級ブティック店が数多く集まってきましたが、その集積が更に多くの高級ブティック店をこの地域に引きつけました。その結果、表参道からあふれた高級ブティック店は、その延長線上にある南青山みゆき通りに進出してきたのです。（写真１、２）南青山みゆき通りに早い時期に進出したのは三宅一生の個性的なブランド路面店でしたが、その後、イッセイ・ミヤケグループ傘下のファッション店の進出が続きました。最近では、室内空間を斬新に改装した二つのビルに、イッセイ・ミヤケのブランド店が移転しています。内外の有名なラグジュアリー・ブランドのブティック店も、かなり早き時期から南青山みゆき通りに出店してきました。それらのブティック店が集中している場所は、イッセイ・ミヤケ店より少し進んだ青山みゆき通りの中程です。具体的な名前を挙げれば、イタリアファッションのプラダ青山店、その隣にランジェリーのラペルラ青山店、それを囲むように建つヴィアバスストップ青山店、その向かい側にはミュウミュウの旗艦店（プラダのカジュアルブランド）、イギリスのステラ・マッカートニーの旗艦店などがあります。これらブティック店の建物は、いずれも外観が極めて個性的で、互いに美しさを競い合っているようです。中でもプラダ青山店の外観は、半透明の菱形のガラスを組み合わせた外壁は、水晶の塊を連想させますし、また現在はラペルラ青山店が入居していますが、その前に高級宝石で有名なカルティエ南青山店が入っていた時の外観は、青光りする斜めの壁を重ね合わせた造りで、ダイヤモンドを連想させました。当時の街並みを見た人々は、水晶とダイヤモンドが美を競っている評しました。（写真２、４、５、６、７）青山みゆき通りを更に進んだところにもネックレスのフォリフォリ、ダウンコートのモンクレール、パーティー用ドレスのレナート・ルッチなどの海外有名ブランド店が出店していますが、夫々建物の外観に色々工夫が凝らされていていて、レナート・ルッチのファサードには立体的な美しさがあります。（写真８）ファッションストリートに出店する店舗は、ファッション以外の業種でも見事な外観です。洋菓子のヨックモック青山本店は、濃いブルーのファサードで見事な美しさを誇っています。（写真９）南青山みゆき通りの発展は更に続いていまして、最近は、みゆき通りに収まれきれないブティック店が、みゆき通りに隣接して集団でファッション街区を造りました。ドルチェ・ガッバーナ、ケイト・スペード、セオリー、ヴェルサス・ヴェルサーチ、リングヂャケットなど内外の大小のブランド店で構成する、ファッションストリートならぬファッション団地が生まれています。（写真１０）（以上）写真１　南青山みゆき通り　写真２　みゆき通りのブティック店密集地左からヴィアバスストップ、ラペルラ、プラダ写真３　イッセイ・ミヤケが入居しているVINGTSEPビル写真４　プラダ青山店写真５　ミュウミュウの旗艦店写真６　ステラ・マッカートニーの旗艦店写真７　嘗てのカルティエ南青山店の外観（現在は写真２のラペルラ青山店が入居）写真８　レナート・ルッチのファサードは立体的写真９　ヨックモック青山本店写真１０　みゆき通りに隣接するファッション団地人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.02.01

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  表参道　思いがけない発展の要因　（東京の街並み観察　２6）

  表参道が東京有数のファッション・ストリートに発展するとは、戦前には勿論のこと､戦後もしばらくの間は、誰も想像しなかったでしょう。と言いますのは、戦後の街並みの発展は、ほとんどが戦災からの復興として発展したから、その姿は予想できましたが、表参道の街並みの発展は、新規造成型の発展でしたから事前に想像出来なかったのです。では、今日のように高級服飾関係の店舗が表参道に数多く出店するようになった要因は何でしょうか？　それには表参道のケヤキ並木の存在が大きく貢献しています。他にも都内の街路にはケヤキやイチョウの並木がありますが、視界が狭くなるとか、落ち葉が道路環境を悪くするとか言って、折角伸びた枝は切り刻まれています。しかし表参道ではケヤキの大木は自由に枝葉を伸ばして、公園のような雰囲気をかもしだしています。これが数多くのラグジュアリー・ブランドの代表的な店舗の進出を促しました。発展のもう一つの要因は、昭和の末期に表参道の始点（神宮前交差点）と終点（表参道交差点）に複数の地下鉄駅が出現して、表参道へアクセスする地域が郊外まで大幅に拡大したことです。JR 原宿駅の近くの神宮前交差点には、地下鉄の千代田線（昭和４４年）と副都心線（平成２０年）の明治神宮駅が新設され、表参道交差点には既存の銀座線の表参道駅に加えて、千代田線（昭和４４年）と半蔵門線（昭和５３年）の表参道駅が追加されたことです。しかしなんと言っても、銀座、日本橋、大手町の街並みと比べて、ファッション・ストリートとしての表参道の強みは、両側の歩道に植えられた大木のケヤキ並木にあります。それに加えて表参道の街路スペースにゆとりがあることです。ビルの三階を超える程高く伸びたケヤキ並木の枝葉は、ビルの前の広い空間を包むように覆い被さり、ショッピングで街歩きする人々を優しく包みます。一戸建ての店舗ビルも夫々規模が大きく、セットバックして店舗前に広い空間を設けてケヤキ並木の効用を高めています。（写真１、２、３）街並みを構成する個々の店舗を眺めて見ると、夏にケヤキの葉が茂ったときも、夕方にケヤキのイルミネーションが灯ったときも、冬に葉が落ちたときも、各店舗のファサードはケヤキ並木と向かい合って美しい空間を広げます。（写真４、５、６）中には藝術作品を見るような美しさを誇示する建物もあります。その一つはディオール表参道のビルです。言わずと知れたクリスチャン・ディオールの直営店で、外壁全面をファイバーグラスで覆い、内面に張ったスクリーンが発光する仕組みとなっていて、夜間に照明すると巨大な水晶塔を立てたように夜空に輝きます。（写真７）もう一つは TOD'S 表参道のビルです。イタリアの皮革メーカー TOD'S 社の旗艦店で、建物のファサードは、大木が斜めに交差して茂っているような不思議な形になっています。明らかにケヤキ並木に照応するデザインで、造形的に極めて個性的な建造物です。建築家は国際的に有名な伊東豊雄氏の設計によるものです。（写真８）面白いのは表参道では IT 機器を売る店舗までデザインに懲ります。アップル社の店舗の内装は外の場所では見られないほどお洒落です。（写真）９））賑やかで広い歩道を歩いていると見逃しがちですが、表参道の大部分は緩やかな坂になっています。それを気付かせてくれるのがポール・スチュアート青山店です。店舗の一階は切込み接（は）ぎの石積みで囲われていますが、これは表参道を造成したとき、ここが切通しだったことの痕跡です。（写真１０）（以上）写真１　緑陰の表参道写真２　歩道から退いて店前に広場を設けたラルフローレン 表参道店写真３　店前に広いテラスを設けたグッチ青山店写真４　ケヤキ林に囲まれたバーバリー表参道店写真５　ケヤキにイルミネーションが灯る頃のバーバリー表参道店　写真６　冬の明るくなるアニヴェルセル 表参道写真７　夜には水晶塔のように光るディオール表参道ビル写真８　森林に囲まれたように見えるTOD'S 表参道ビル写真９　洒落た造りのアップルストア 表参道写真１０　石垣の中にあるポール・スチュアート青山店人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.01.22

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  表参道　誕生の歴史　（東京の街並み観察　２５）

  表参道くらい建設した当初の目的から掛け離れた、思いがけない発展を遂げた街路はないでしょう。表参道はその名前の通り、明治神宮へ参拝する通路として造られましたが、今では国内外の有名ブランド店が建ち並ぶ、東京でも有数のファッション・ストリートになっています。京都の伏見桃山陵に葬られた明治天皇の遺徳を慕った東京市民が、東京にも明治天皇を祀る神社が欲しいと願い出て、大正時代に明治神宮が誕生しました。そのとき青山通りから神社正面の鳥居に通じる道として表参道が造られました。。明治神宮が造営された頃は、今の代々木や原宿あたりは荒れ地であり、人々が訪ねる場所でもなければ、当然のことながら大きな道もありませんでした。明治神宮が創建されたので、そこへ行く道路として大正８(1919)年に若木のケヤキの街路樹を植えた広い表参道が生またのです。今まで見た来た日本橋、銀座、新宿の街路には、今日の繁栄をもたらす過去の遺産がありましたが、荒野に誕生した表参道にあるのは、明治神宮の大鳥居とケヤキ並木だけでした。戦後の昭和３０年代に撮られた表参道の写真を見ますと、戦災で焼かれて植え直された背の低いケヤキ並木が続く沿道には、同潤会アパートメントと、その向かい側に中層のビルがあるだけです。同潤会青山アパートメントは、関東大震災後の昭和２（1927）年に閑静な参道沿いに建設された、当時としては鉄筋コンクリート造りの高級集合住宅として目立つ存在でした。表参道周辺に大きな建造物が建ち始めるのは、昭和３９(1964)年に東京オリンピックが開催された前後からです。表参道と明治通りが交差する神宮前交差点の角にセントラルアパートが建ち（昭和３３年）神宮橋近くに米国スタイルの高級マンションのコープオリンピアが建ち（昭和４０年）、その後、ヴィラ・ビアンカなど、パレフランス（昭和４８年）など高級マンションが次々と建ちます。そして、そこにデザイナー達や文化的な仕事をする人達が好んで住むようになります。（写真１）表参道の始点は JR 原宿駅の近くの神宮橋です。神宮橋から少し進んだところに明治通りと交わる神宮前交差点があり、表参道の賑わいはこの交差点を起点にして始まります。新宿と渋谷からの交通の便が良く、また現在の代々木公園一帯に戦後暫くワシントンハイツという米軍の将校用住宅地があったことで、ハイセンスな人々の集まる街と見られました。神宮前交差点から表参道交差点までの表参道は、片道二車線の車道の両側に駐車レーンのある広い道路です。中央には分離帯もあるので、両側の歩道にあるケヤキ並木の大木が枝を伸ばしても、街路への圧迫感がありません。（写真２、３）表参道がファッション・ストリートへの変化を見せ始めたのは、昭和４０年代（1960年代中頃）と言われています。もはや戦後ではないと言われたのは昭和３１年ですが、冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビの三種の神器も行き亘る昭和４０年代には、人々はファッションへの関心を持ち始めた頃です。神宮前交差点の角に昭和５３(1978)年ラフォーレ原宿が開店し、アパレルを中心としたファッションの街として広く知られるようになります。更に洒落れたレストラン、カフェも増えて、大人の街としてスタートした表参道に多くの若者や女性が先端的で洗練された表参道に集まるようになります。（写真４）来訪する客筋の変化に応じて、表参道の既存の商店も販売商品を変えたり充実させます。例えば玩具屋として外人観光客にも人気のある KIDDY LAND は、昔は地元の文房具屋でしたし、同じく外国人観光客専用のオリエンタルバザーは日本橋の古道具屋がワシントンハイツの米国人向け土産物店として出店（昭和２６年）して東洋的ファサードの店舗を構えています。（写真５、６）更地同然でスタートした表参道は、その後、内外の有名ブランド店が次々と出店してきて、隙間のない街並みに成長します。ケヤキ並木にはイルミネーションが取り付けられて夜も賑わいます。（写真７、８）昭和初期の同潤会青山アパートメントは変化する街並みに合わなくなり、建築家安藤忠雄の手で平成１５年モダンな表参道ヒルズに生まれ変わります。上層階を住宅とした複合商業施設ですが、同潤会青山アパートメントの外観を一部残して歴史の記憶に配慮しています。（写真）９、１０）（以上）写真１　高級マンション　コープオリンピア写真２　表参道の車道写真３　太いケヤキ並木写真４　神宮前交差点にあるラフォーレ原宿写真５　KIDDY LAND写真６　オリエンタルバザー写真７　中層ビルの表参道街並み写真８　中層ビルの表参道街並み写真９　表参道ヒルズ写真１０　残された同潤会青山アパートメントの一部人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2017.01.18

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  新宿歌舞伎町　猥雑にも陰陽あり　（東京の街並み観察　２4）

  区役所通りを挟んで「歌舞伎町」の東側にあるのが「ゴールデン街」です。「ゴールデン街」は木造二階建ての長屋の塊のような街でして、その通路は殆どが私道で道幅は狭く、マッチ箱のような小さな間口の飲み屋が軒を連ねる街並みです。最初の「ゴールデン街」は二筋の小道だけでしたが、その後、地続きに花園一番街、三番街、五番街などと小道が何本も増えて、今では２００軒以上の飲み屋が集中する巨大な街に発展しています。西側の「歌舞伎町」がケバケバしくも大きな看板を掲げて明るい街を演出しているのに対して、東側の「ゴールデン街」はどこも狭くて薄暗い地味な街です。（写真１、２、３、４）歌舞伎町は、戦後にこの周辺を追われた種々の業者の溜まり場として生まれた街ですが、生成発展する過程で、西側の歌舞伎町は明るく東側のゴールデン街は暗く、陰陽二つの顔に仕上がりました。そして「ゴールデン街」が日陰の歓楽街の姿になったには発生の歴史もあります。この場所は、戦後には非合法で売春を行っていた青線地域でしたから、今もその暗さを引きずっているのでしょう。しかし、この「ゴールデン街」の酒場に、戦後のある時期から作家、映画関係者、芸能人、編集者など文化人が集まってきて、「ゴールデン街」はサブカルチュア文化やアングラ芸術の発信地ともて囃されました。土地ブームの１９９０年代には地上げ屋に狙われて廃業する業者が出て一時衰退しましたが、今は「ゴールデン街」は昔ながらの粗末で侘しい姿のままですが復活しています。いま「ゴールデン街」の西端を囲うように、樹木に囲われた静寂な小道「四季の路」が通っていますが、昭和４５年までこの「四季の路」の上を新宿駅から水天宮に行く都電が走っていたと言います。今では新宿で最もディープな場所となった「ゴールデン街」は昔は傍らを都電の走る賑やかなところだったのです。（写真５）「ゴールデン街」の〔静〕に対して〔動〕の「歌舞伎町」は派手で陽気で来訪者の情念をかきたてます。街並みは無秩序であり、店舗のファサードは無造作であり、その色彩はサイケデリックであり、街全体がわざと混沌を演出しているかのようです。（写真６、７）歌舞伎町は不健全な街、危険な街というイメージを変えようと、地元商店街では警察の協力を得て、しばしば浄化運動を企ています。最近では２００５年に「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」を発足させ、違法な性風俗店の取締り、強引な客引き行為の禁止など条例を改正して努力しています。今回、歌舞伎町の中心部、コマ劇場跡地の事業者達が大規模の再開発に着手したことで、一旦頓挫していた再開発が始動していますが、これをバネとして今度こそは周辺のカオスのような街並みを健全な街並みに改造出来るか期待されています。（写真８）しかし、歌舞伎町への入り口のセントラルロードを歩いていますと、今でも客引きに応じないよう通行人に注意を呼びかける放送がされていますし、至る所に性風俗店の無料案内所の大きな看板を掲げた店があります。歌舞伎町の抜本的なイメージチェンジには、土地とビルの所有者の交代まで踏み込まないと、街ぐるみの変身は難しいのかも知れません。（写真９、１０）しかし官能の魅力には危険が伴うもので、その危険を乗り越えてこそ官能の魅力は増すという人もいます。そう言えば、ギリシャ神話「オデュッセイア」にある話ですが、魔女の歌声の聞こえる海峡があり、その歌声に魅せられて船を操ると難破させられるのですが、英雄オデュッセウスは魔女の歌声を堪能しながら見事海峡を渡りきる知恵を持っていたという話です。多くの英雄オデュッセウスの出現で歌舞伎町は益々繁栄するのでしょうか。（以上）写真１　新宿ゴールデン街の入り口写真２　新宿ゴールデン街（公道より撮影）写真３　新宿ゴールデン街（公道より撮影）写真４　花園一番街（公道より撮影）写真５　新宿遊歩道公園の四季の路写真６　横道にある色彩豊かな店写真７　さくら通りの色彩豊かな店写真８　ホテルグレイスリー新宿（コマ劇場跡地に建設）写真９　横道の仲見世通り（外国人観光客も入ってくる）写真１０　風俗無料案内所が軒を連ねる花道通り人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2016.12.26

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  新宿歌舞伎町　猥雑の溜まり場　（東京の街並み観察　２１）

  東京中の街のなかで新宿という街が賑わいに最も活力あると感じるのは、歌舞伎町という繁華街を抱えているからでしょうか。新宿の街の中でも、これから探訪する靖国通りの北側の歌舞伎町は、今まで見てきた靖国通りの南側の街とは様相を全く異にしています。靖国通りという一本の道路を境にして、街の文化が截然と分かれるのは、新宿の不思議なところでもあります。歌舞伎町は、南側の靖国通りと北側の職安通りに挟まれ、東側の明治通りと西側の西武新宿駅に区切られた、それ程広くはない長方形の街区ですが、街区全体は猥雑さを凝縮して詰め込んだ様相を呈していて、大都会の一部に散在する猥雑な街とは構造が違うのです。東京の殆どの街は、東京大空襲で焼き払われた廃墟から起ち上がったのですが、戦後の歌舞伎町の場合は、周辺から追い出されたものが流れ込んで溜まって発展した街です。最初は新宿駅東口の闇市解散で追われてきた業者が、その後には新宿二丁目から赤線禁止で廃業した業者が流れ込んだのです。戦後間もなく、流れ者の街、歌舞伎町を大娯楽センターにしようと民間主導の計画が立ち上がり、大劇場、映画館、娯楽館、ダンスホール、ホテルなどを含む興業街の建設が計画され、その目玉に歌舞伎座を誘致しようとの話までありましたが、その計画は中止となり、歌舞伎町の名前だけが町名として残りました。その後、中心部に演歌の殿堂と言われたコマ劇場（1956～2008）が建設され、その西側の広場を囲むように複数の映画館が建ち、当初の計画より規模は小さくなりましたが、新宿の娯楽センターとして賑わいました。しかし、この娯楽センターが起爆剤となって歌舞伎町周辺の再開発が広がることはありませんでした。（写真１、２）しかし２０１５年春、歌舞伎町の中心部のコマ劇場跡地に、地上３１階の新宿東宝ビルが建設され、シネマコンプレックス「TOHOシネマ新宿」と「ホテルグレイスリー新宿」が入居しました。またその西隣りは、嘗て噴水のある広場で歌舞伎町ヤングスポットとして若者の集う場所でしたが、ここが今は整備されて、シネ・シティ広場となり、その周囲はカラオケ、遊技場などの入居した中層ビルで囲まれています。（写真３、４）歌舞伎町の町内でも風俗業、飲食業などが集中しているのは、歌舞伎町一丁目と二丁目の境界となる「花道通り」の南側、即ち歌舞伎町一丁目です。歌舞伎町一丁目は区役所通りで東西二つの街区に分かれます。西側が所謂「歌舞伎町」であり、東側が「ゴールデン街」と言いますが、両者を併せて歌舞伎町と言ってもよいでしょう。歌舞伎町一丁目内を南北に走る街路としては、先ず靖国通りから入って新宿東宝ビル（コマ劇場跡）へ突き当たるセントラルロードがあります。広い道路でメインロードですが、その西側には歌舞伎町一番街があり、東側にさくら通りと東通りと区役所通りがあります。更に、これらの街路を横に繋ぐ裏道が何本もあります。（写真５、６、７、８、９）「歌舞伎町」内を東西南北に網の目のように広がる街路には、通常の商店は少なく、殆どが風俗業、飲食業です。建ち並ぶ店舗の正面には風俗店紹介の装飾看板が続き、来訪者達の情念を誘います。（写真１０）このような歌舞伎町の街をひとランク上の大娯楽センターに引き上げようとの努力は過去に何度もありましたが、なかなか実現しない原因の一つは、歌舞伎町の土地や建造物の多くが第三国人の所有となっていることが障碍だと言います。と言いますのは、彼等不動産の所有者の多くは自らは営業せず、風俗業者や飲食業者に賃貸して稼ぎ、高い賃借料を払うテナント業者はそれに見合う利益が上がる風俗業などに励むという構造が変わらないからだそうです。（以上）写真１　在りし日のコマ劇場写真２　歌舞伎町ヤングスポットとして若者の集った嘗ての場所写真３　新宿東方ビル　TOHOシネマ新宿とホテルグレイスリー新宿が入居写真４　TOHOシネマ新宿の西隣りのシネシティ広場写真５　セントラルロード　TOHOシネマ新宿から靖国通り方向を見る写真６　セントラルロード入り口写真７　歌舞伎町一番街写真８　さくら通り写真９　新宿区役所通り写真１０　歌舞伎町内の風俗店案内所人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2016.12.22

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  新宿通り　両側には家族で楽しめる裏通りがる　（東京の街並み観察　２１）

  先に、銀座中央通りは奥行きのある裏通りに支えられた街と紹介（東京の街並み観察　１４）しましたが、同じことは新宿通りにも言えます。新宿通りを行き交う人々は、その裏通りへと消えていき、又その裏通りから現れてきます。新宿通りの両側には随所に回転ドアがあり、その行き先には家族や恋人と楽しめる裏通りがあるからです。新宿の裏通りは銀座のように縦横整然と通ってはおりませんで、不規則に入り組んでいますが、それだけ歩いていｔると発見の楽しみもあるというものです。新宿通りの裏通りは、三つのブロックに分かれます。第一は新宿通りの北側の靖国通りに挟まれた街区のうち明治通りの西側のブロックです。第二は明治通りの東側のブロックです。第三は新宿通りの南側で甲州街道に挟まれたブロックです。新宿の裏通りの第一ブロックの中には三越伊勢丹、アルタシアター、新宿ピカデリーなど多くの人々を引き寄せる装置があるので、この裏通りは何時も賑わっています。このブロックを南北に通じるモア２番街は、歌舞伎町へ行く人々の通路であり、往来する人波が絶えません。もう一つの南北に通じるモア４番街は、全国で始めた道路を活用したオープンカフェを開くことが認可された街路なので、洒落た屋台小屋やパラソル付きテーブルが置かれていて、若者達で賑わいます。（写真１、２、３）第一のブロック内には高級ブティック店もありますが、八百屋、靴屋、雑貨屋もあれば、寿司屋、うなぎ屋、ラーメン屋もあり、更に一杯飲み屋、焼き鳥屋もあります。恰も下町商店街のような雰囲気のある裏通りです。（写真４）第二のブロックのメインの裏通りは、落語寄席の末廣亭がある末広通りです。その通りの一筋裏の要通りには個性的な飲み屋通りがあり、「どん底」という古風な店構えの居酒屋がありますが、ここは黒澤明や三島由紀夫が愛した酒場で有名です。この付近は新宿繁華街でも場末に当たる最もディープな裏通りです。（写真５、６）第三のブロックは、新宿通りと甲州街道と JR 新宿駅東口に囲まれた三角形の街区です。このブロックの中にはビックロ（三越跡）と新宿マルイ本館がありますが、更に新宿駅に隣接した商業施設ルミネエストがあります。これら三つの大きな商業施設に取り囲まれた裏通りは、常に大勢の人波であふれています。第三のブロック内のメインの裏通りは、中央通りとムサシノ通りです。中央通りは新宿駅の中央東口と明治通りを東西に結ぶ道でして、ブティック店、貴金属装飾店、大塚家具新宿ショールームなど高級感のある店舗が並びます。（写真７）ムサシノ通りは新宿駅の東南口と新宿通りとを南北に結ぶ道でして、大衆的な飲食店の多い道です。二つのメインの裏通りには更に細い脇道が延びていて、小型の映画館、天麩羅屋、喫茶店などの飲食店があり、静かな雰囲気の街並みです。裏通りとしては三つのブロックの中で最も落ち着いて楽しめるところでしょう。（写真８、９、１０）三つのブロックの裏通りを通じて言えることは、新宿通りの裏通りには、下町の商店街のような気さくさがある一方で、映画館、劇場、カラオケ、寄席などのエンターテイメントの仕掛けが随所に配置されていて、さりとて歌舞伎町のような過激な遊び場はなくて、家族や恋人で安心して楽しめる所です。（以上）写真１　モア２番街の人通り写真２　モア４番街の洒落た屋台小屋写真３　モア４番街のオープンカフェ写真４　モア２番街と４番街を繋ぐ横道写真５　末広亭写真６　新宿三丁目　要通り写真７　新宿三丁目　中央通り写真８　新宿三丁目　ムサシノ通り写真９　新宿武蔵野館写真１０　新宿三丁目　ふたば通り人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。人気ブログランキングへ

  2016.11.29

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