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テーマ:読書の愉しみ(966)
カテゴリ:常用漢字
![]() ![]() ![]() ひとたび「虫が好かない」相手だと思ってしまうと、修正がきかず溝が深まる ばかり、ということがままあります。 『鳥辺野』の私も大学時代からの友人、由希子に対して劣等感を持っていて、 それは歳と共に深く刻まれていきました。 5月の鳥辺野で私は 瞳だけがよく磨かれた墓石のように輝いて印象的 な探偵の隣に座り、思わず由希子と私の間にあったことの謎解きを依頼してしまい ました。 大手出版社に採用された由希子に対して、中堅商社にしか内定をもらえなかった私。編集部でばりばり仕事をこなしながら結婚した由希子に対して、恋愛に失敗 して商社も辞めた私。 私はたまたま書いた小説が賞をもらい、そこそこ売れる小説家になりました。 由希子は私の担当編集者になり、私たちはさまざまな話をするうちに、友情のよう なものを感じ始めていました。 けれど、同じ男と恋愛関係になってしまい…。 ![]() ロシアンルーレットを言い出した由希子が絶対の自信を持っていたのは、何故 だったのか、私はそれが知りたかったのです。 探偵は、謎を解いただけでなく、由希子と私の心理まで深く読み取り、言い ます。 「目を開こうとしてください」 探偵は背中を向け、去って行きました。 鳥野辺は葬送の地だった。その入り口にあるのが六道の辻。そこは現世と来世を繋ぐ細い橋である。この探偵が、往年の金田一耕助だったのですが、どんでん返しがあり、最後まで 気が抜けない作品です。由希子と私の心理描写がさすがです。 オリジナルの金田一耕助は、最後の事件の後アメリカへ渡り、消息不明になり ますが、横溝正史曰く、後に日本に帰国して余生は日本で送ったそうです。 柴田よしきの描く金田一耕助のように、「もじゃもじゃ、がりがり」の頭かきは やめて、上品な紳士に納まったのでしょうか。 引用および参照元:『金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲』角川書店 から 柴田よしき『鳥辺野』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 30, 2019 12:00:20 AM
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