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テーマ:読書の愉しみ(959)
カテゴリ:ミステリー三昧
大学病院の救命救急センターに運び込まれた頭部外傷を負った少年は、何らかの事件に巻き込まれたようですが、記憶がありませんでした。居合わせた幼馴染みの少女と祖母の目撃談は全く違っていました。認知症による幻覚と思われるのですが…。 センターの医師たちがこぞって推理する中、少年を担当した西丸が現れ、少女の母親に確認して謎を解いてしまいます。(『幻覚パズル』) 救急科医長、診断の天才と言われる西丸豊の通称は「臨床探偵」。彼は、他の医師が見抜けなかった病を解き明かす特異な才能に恵まれていました。『臨床探偵と消えた脳病変』は西丸が、病気とそれに伴う謎を解く連作短編集です。 『幻覚パズル』では、少年の容態は安定していて、それより目撃者たちの証言が食い違っていることが大きな謎になります。 少女の母の証言から、祖母は認知症による幻覚を見たのではないかとされたのですが、そんなにはっきり幻覚が見えるものなのか?が医師たちの関心を引きます。さらに、犯人がどこからどう逃げたのかという謎が残ってしまいました。 レビー小体型認知症がテーマになっていて、きちんと説明が書かれています。ミステリーの伏線もこの中に張られています。 レビー小体型認知症は認知症の二割を占める進行の速い認知症です。 初期から非常にはっきりした幻覚が現れ、人や動物が家に入ってくる様子をはっきり見るそうです。 睡眠中の異常な行動(レム睡眠中に骨格筋緊張が抑制されないことから、夢内容の精神活動がそのまま行動に出てしまい、寝言、大声で叫ぶ、体を大きく動かす行為がある)も起こります。 著者は現役の医師なので、作り物ではない症状を忠実に伝えてくれます。知識のない読者にも必要な知識を丁寧に説明してくれ、ミステリーとしてもフェアです。 病気の診断に留まらず、病気を巡る、母の思い、夫婦の思い、患者と関わった医師の思いが描かれ、無味乾燥な話に終わりません。 『幻覚パズル』も少年の曇りのない心があって読後爽やかです。 参照元:浅の宮遼『臨床探偵と消えた脳病変』創元推理文庫から『幻覚パズル』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 16, 2024 12:00:23 AM
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