山の上ホテル<東京都>
東京・神田駿河台といえば都内有数の学生街で,1960年代には「日本のカルチェラタン」と呼ばれもしました。このエリアは,神田神保町に隣接し,古本屋や出版社が集まり,ハイカラで知的な雰囲気が漂う街です。
山の上ホテル<東京都>は,この一帯を見下ろす丘の上に建ちます。創業は1954年。現在まで約60余年の間,川端康成,檀一雄,吉田健一,田村隆一,吉行淳之介,三島由紀夫,山口瞳,常盤新平……と,多くの文豪が定宿として利用してきた名物ホテルでもあります。
文豪たちは,「幾分古びた,くすんだ,客室数70あまりのこぢんまりした
山の上ホテル<東京都>の,謙虚で質実,どこか品のある都会的な風情に魅力を感じたようです。
山の上ホテルを定宿とした作家のひとり池波正太郎(1923~90)さん。『剣客商売』や『鬼平犯科帳』で知られる時代小説の大家は,美食家としても有名でした。その池波さんは,このホテルの麻色がお気に入りだったということです。ちなみに和朝食を提供しているのは『てんぷらと和食 山の上』で,天ぷらの名店でもあります。2種類の胡麻油を混ぜた油で揚げて素材を軽めの衣で包むのが特徴。どうぞ,江戸前天ぷらの真髄をお確かめください。