次期総理として有力視されている政治家は「たたきあげ」といわれているらしい。そういえば横浜に住む人から「秋田の貧しい農家の生まれで集団就職で上京し工場で働きならが苦学して…」という話を聞いたことがある。実際ではそうでもないようなのだが、そんなことが仮に本当だとしても、それは政治家の力量や信念にむすびつく話でもない。だいたい、貧しい農家に生まれるかどうかなんてのは本人の選択外のことであり、それって自慢するようなことでもないだろう。有権者からすれば「だからどうなの?」ではないか。
貧しい中から這い上がった人の中にも、自分と同じように貧しかった人々に共感をよせるタイプもいれば、かえって競争礼賛、弱肉強食の価値観を持つタイプもいる。いわゆる銀のスプーンをくわえて生まれてきた人も同様で、困窮者を別世界の人としか見ないタイプもいれば、恵まれた境遇に負い目を持つのか常人以上に福祉博愛の精神を持つ人もいる。要は人それぞれである。
だから別の政治家であるが、自分の学費を調達するために親が馬を売ったという話を演説の十八番にしている人がいる。以前、テレビで感極まって演説する政治家とそれを涙を流して聞き入る選挙民の映像をみたが、まったく信じられない光景であった。演芸の語りならわかるが、こんなもので政治が動くなんて…。
菅官房長官(おそらく次期総理)は自助共助公助ということを唱えている。これは福祉の世界でははるか前から言われていたことであり、近年では災害対策などでも言うようになっている。まず自分や家族で問題を解決し、それでもできないとこには地域社会などで、そして最後に公共の支援を頼れということで、それも一つの考えなのだが、政治家がこれを言うと最初から国は消極的だと言っているようにも聞こえる。総理候補と目される三人の中で、格差の問題や資本主義の限界に言及している候補は一人しかおらず、この人は総理になる可能性のないのが残念である。
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