ドクターイワタの認知症ブログ2016年11月6日
長久手南クリニック 認知症/発達障害 新患予約サイトノリタケの森アメリカフウ@ノリタケの森煙突広場@ノリタケの森煙突広場@ノリタケの森煙突広場@ノリタケの森ビオトープ@ノリタケの森症例報告知り合いからの紹介である。物忘れ、被害妄想、易興奮、鬱状態、食欲低下、感情失禁、夜間不眠、語義失語、歩行不安定、振戦、小刻み歩行、歯車様固縮を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.左前頭葉萎縮軽度、3.左側頭葉萎縮軽度、4.左海馬萎縮軽度、5.両側基底核ラクナ脳梗塞多数、左尾状核ラクナ梗塞、境界領域梗塞、5.その他 両側淡蒼球石灰化。以上から、レビースコア:6、ピックスコア:5、レビー・ピック複合(LPC)を呈する石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(DTNC)類似疾患として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8/9、改訂長谷川式:13/30、近時記憶2/6と中等度低下していた。認知機能低下にリバスタッチパッチ2.25mgを開始、フェルガード100M粒2錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)にプレタール50mgを開始、プロルベインDR2Capを勧めた。易転倒にドパコール50mg/グルタチオン2000mg点滴、せん妄にシチコリン500mgを開始した。食欲低下にドグマチール25mg/プロマック75mg、夜間不眠にロゼレム8mg/ベンザリン2.5mgを開始した。1週間後、全身蕁麻疹のためリバスタッチパッチ中止を指示した。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:21/30(+8)、近時記憶6/6(+4)と著明改善、上記周辺症状はすべて消失した。歩行は安定して一本杖は不要になった。プロルベインDRは希望されなかった。7か月後、中核症状は改訂長谷川式:26/30(+5)、近時記憶5/6(-1)と更に著明改善した。ケアマネからの紹介である。既往歴:アリセプト3-5mg、神経内科 1.アリセプト5mg 2.ドパコール50mgなど。物忘れ、幻視、悪夢、夜間大声、易興奮、暴言、易転倒、振戦、小刻み歩行、歯車様固縮、REM睡眠行動障害を呈していた。頭部CT: 1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、3.側頭葉萎縮軽度、4.海馬萎縮なし、5.両側基底核ラクナ梗塞多数、境界領域梗塞。以上から、レビースコア:7.5、ピックスコア:3、レビー小体型認知症(DLB)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:6.5/9、改訂長谷川式:15/30、近時記憶1/6と中等度低下していた。前頭葉症状/易転倒にアリセプト中止、認知機能低下にリバスタッチパッチ4.5mgを開始、フェルガード100M粒4錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)にプレタール50mgを開始した。易転倒にドパコール50mg/グルタチオン2000mgを開始した。14日後、中核症状は改訂長谷川式:17/30(+2)、近時記憶1/6(+-)と軽度改善、上記周辺症状はすべて消失した。脳血管性認知症(VD)にプロルベインDR4Capを勧めた。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:20/30(+3)、近時記憶5/6(+4)と更に中等度改善した。インターネット検索で来院された。物忘れ、昼間傾眠、食欲低下、生真面目、甘い物好き、語義失語を呈していた。頭部CT: 1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、3.左側頭葉萎縮軽度、4.左海馬萎縮軽度、5.脳梗塞なし、6.その他 左ピック切痕。以上から、レビースコア:2、ピックスコア:5、前頭側頭葉変性症(意味性認知症,SD)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8.5/9、改訂長谷川式:19/30、近時記憶3/6と不変だった。認知機能低下にレミニール4mg/ナウゼリン10mgを開始、NewフェルガードLA粒4錠を勧めた。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:19/30(+-)、近時記憶3/6(+-)と不変、上記周辺症状はすべて消失した。認知機能低下にレミニール4mgから8mgへ増量、NewフェルガードLAを自己中止した。4か月後、中核症状は改訂長谷川式:19/30(+-)、近時記憶2/6(-1)と軽度低下、上記周辺症状はすべて消失した。7か月後、中核症状は改訂長谷川式:15.5/30(-3.5)、近時記憶2/6(+-)と更に中等度低下した。10か月後、認知機能低下にレミニール12mgから8mgへ減量、メマリー5mgを開始した。改訂長谷川式:22/30(+6.5)、近時記憶3/6(+1)と著明改善した。インターネット検索で来院された。物忘れのみで明かな周辺症状は見られなかった。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.左>右前頭葉萎縮軽度、3.左>右側頭葉萎縮先端部軽度、4.右海馬萎縮軽度、5.両側基底核および深部白質ラクナ脳梗塞数カ所、境界領域梗塞。以上から、レビースコア:2、ピックコア:1、アルツハイマー型認知症(ATD)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8/9、改訂長谷川式: 26/30、近時記憶5/6と認知機能低下していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮なし、3.側頭葉萎縮なし、4.海馬萎縮なし、5.両側基底核および深部白質ラクナ脳梗塞数カ所、境界領域梗塞。以上から脳血管性認知症と診断した。認知機能低下にドネペジル1.5mgを開始、NewフェルガードLA2包を勧めた。1か月後、中核症状は時計描写テスト:9/9(+1)、27.5/30(+1.5)、近時記憶6/6(+1)と更に改善した。脳血管性認知症にプロルベインDR4Capを勧めた。2.5か月後、中核症状は改訂長谷川式:29/30(+3)、近時記憶6/6(+3)と更に改善した。4年後、中核症状は改訂長谷川式:28.5/30(-0.5)、近時記憶6/6(+-)とほぼ維持されていた。6年後、中核症状は改訂長谷川式:30/30(+1.5)、近時記憶6/6(+-)と治癒状態となった。ケアマネからの紹介である。物忘れ、易転倒、鬱状態、甘い物好き、語義失語を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.左>右前頭葉萎縮軽度、3.左>右側頭葉萎縮中等度、4.海馬萎縮なし、5.両側基底核ラクナ脳梗塞多数、境界領域梗塞、6.その他 左ピック切痕。以上から、レビースコア:2、ピックスコア:5、前頭側頭葉変性症(FTLD)を呈するDTNC類似疾患/脳血管性認知症として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト: 7.5、改訂長谷川式:22/30、近時記憶2/6。と軽度低下していた。認知機能低下にレミニール4mg/ナウゼリン10mgを開始、NewフェルガードLA粒4錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)にプレタール100mgとサアミオン10mgを開始、プロルベインDR4Capを勧めた。1か月後、中核症状は28/30(+6)、近時記憶6/6(+4)と著明改善、上記周辺症状はすべて消失した。プロルベインDRは希望されなかった。7か月後、中核症状は改訂長谷川式:26/30(-2)、近時記憶4/6(-2)と軽度悪化した。18か月後、中核症状は改訂長谷川式:30/30(+4)、近時記憶6/6(+2) と中等度改善して治癒状態となった。認知症に対する高濃度ビタミンC療法筆者は2年前に高濃度ビタミンC点滴療法認定医(高濃度ビタミンC点滴療法を用いたがん治療を効果的かつ安全に実施するための規定の講座(2日間以上)を受講し、 認定試験に合格したマスターズクラブ会員会員の医師・歯科医師・獣医師)を取得しました。がん治療に高濃度ビタミンC点滴療法が有効であるという論文は数多く発表されています。従って、高濃度ビタミンC点滴療法はがん治療における補助療法の地位を確立していると言えます。一方で、認知症に対する高濃度ビタミンC療法については、確立されているとは言い難い状況にあります。2014年の論文で「ビタミンC点滴療法が短期記憶を改善させる」という論文を見つけました。Intravenous ascorbate improves spatial memory in middle-aged APP/PSEN1 and wild type mice. Behav Brain Res. 2014 May 1;264:34-42.以下、要約の日本語訳。この研究ではアルツハイマー型認知症(AD)マウス (APP/PSEN1)におけるビタミンCの1回静注法の空間記憶に対する効果について検討した。中略ADマウスと野生型(wild type)マウス(生後3か月、9か月、20か月)をビタミンC(125mg/kg)または生理食塩水を静注して、45分後に空間記憶テストを2回行った。空間記憶は年齢と共に減衰して、ビタミンC静注療法は生後9か月のADマウスモデルと野生型マウスの空間記憶を改善した。中略この実験ではビタミンC静注療法による空間記憶の改善が見られたものの、ADの病理学的変化や神経伝達物質の変化は見られなかった。以上、要約日本語訳。他にも、2015年の論文で「ビタミンC欠乏が認知機能低下、アミロイド沈着、酸化ストレスを増す」と言う論文を見つけました。Vitamin C deficiency in the brain impairs cognition, increases amyloid accumulation and deposition, and oxidative stress in APP/PSEN1 and normally-aging mice. ACS Chem Neurosci. 2015 April 15; 6(4): 570–581.点滴治療研究会の諸先生の経験から、がん治療のための超高濃度ビタミンC療法(12.5gから開始して62.5-75g維持)の安全性は確立されています。高濃度ビタミンC療法(25g)はアンチエイジングを目的に全国で行われていますから安全性は問題ありません。以上のことから鑑みて、筆者は高濃度ビタミンC療法(25g)を認知症治療の選択枝として考えています。