Born Free☆ミ

　日曜日の朝、
自然豊かで静かな郊外にある施設の見学会に、
家族で参加した。

母屋の広間で３０人あまりが
適度な間隔で並べられた椅子に座って、
職員たちの話を聴く。

　知的障害のある娘は２８歳。

一緒に外出すると、
周囲からけげんな目で見られたり笑われたりで神経を使う。

でも今回は保護者（介護者）の入院や
冠婚葬祭へ出席など緊急時やレスパイト（休息）のための
短期宿泊サービスの説明・見学会だ。

時折、奇声が聞こえる中、
穏やかで幸福な空気が流れていた。

１時間ほどで担当の女性が説明と質疑応答を終え、
施設の所長が「彼女の説明はいかがでした？」と、
聞いていた私たちに問いかけると、
周りから一斉に拍手が湧いた。

　「まずい」と思った。

娘は大きな音に敏感で、
いきなり叫び出すことがあるからだ。

案の定、拍手に乗じて娘は
「アンコール！」
の大声を発し、
私と妻は顔を見合わせた。

何はともあれ謝ろう。

そう思った矢先、
所長の
「いま最高の評価をいただきました～！」
との一言に安堵（あんど）した。

　障害福祉に携わる人の懐の深さと
機転に感謝すると同時に、
実は状況に即し、
周りをなごませる言葉を発した
娘の不思議な能力に驚いた。