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日本は須らく「日本」たるべくして「日没」であってはならない。だが、その薄暗さを見よ、何処に明朗にして快闊なるところがあるか。日本の現状は「ぶきみ」唯この一語で尽きている。私たちは、唯暗中に模索しているのみだ。
日本は須らく「日本」たるべくして、「日没」であってはならない。いうところの 「日本精神」を発揮して、外国の精神を排斥しなければならない。言いかえれば、創造して模倣してはならない。然るに、この「日本精神」を高調するものが、却って外国の精神にかぶれ、創造せんとして、却って模倣し、「日本」をして「日没」たらしめているのは皮肉である。 尤も日本ほど古来物まねに秀でた国はない。この物まねに秀でた国であったればこそ、今日の隆盛を見たのであるが、同じくまねをするならぽ、イギリスや、アメリカの、今世界に日の出の勢を示している国々のまねをしたらばどうか。ドイッや、イタリーの、日没的で、あせればあせるほど益々泥の中にはまり込む国々のまねをして、書を焚き儒を坑にして、国家の将来を慮る者の言を抑圧するのは不似合である。もう少し鷹揚なところがあってほしい。今日のようにこせこせしていては、「日の本」の国とはなれない。 「日本精神」とは、かくもこせこせした精神であるだろうか。かくも偏頗な精神であるだろうか。日は普遍的に万物を照らす、善をも悪をも照らす。但し、悪は日の光によっておのずから退散するものである。黴菌は人為的な消毒法を以てせずとも、日光でおのずから死滅する、日の本の精神だに、しっかと握っていれば、諸悪はおのずから退散し、死滅する。何ぞ汲々として、余計な言論抑圧に憂身を窶す必要があろう。 落着いていられないところに弱味がある。ムッソリニーは、ヒットラーは一朝にして権力を握ったいうところの僭奪者だから、ああも落着かず、こせこせしているのであるが、日本では全然事情を異にしている。もう少し鷹揚で、余裕があって欲しい。にもかかわらず、こうも落着いていないところを見ると、長い目で物を見ていられないところを見ると、そこに蔽うべからざる弱味があるからだろう。 「日本」よ「日没」たるなかれ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年05月05日 23時43分05秒
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