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豚を飼ったら税金がかかった。その豚が肥ったら肥った分に税金がかかった。季節が来たので交尾させたら、それに税金がかかった。月満ちて仔豚が生れたらそれに税金がかかった。仔豚を売ったらもちろん税金で、親豚を殺しても税金、その肉を食ったらそれでまた税金をとられねばならなかったという話。先頃の中国の話だと聞いてむしろ可笑しがって手を叩いたものだが、さて現在のわが国、拍手などしたらそれも税金になりはしないか。
口に税金はかからぬから、とよくいったものだが、ラジオの録音ニュースで議会の騒ぎを聴いていると、弥次の一声一音に税金をかけられたらどんなものだろうという気がした。あまり騒々しい時分、池田大蔵大臣などから、税金をかけるぞと一喝してもらったら、きっと水を打ったように静粛になるにちがいない。折角の文化功労年金に税をかけるよりもこの方がずっと知恵である。 三十万円の年金を出すためには五十万円の年金を出さねばなりません、ということはあまりに非文化的で誰にもすぐには呑込めない。しかし高利貸から金を借りた人間ならすぐわかる。ずっとの以前だが私も、一割の手数料と一割の利子と二割を引かれるので、千円入用のために千三百円の証文を入れねばならなかったことがある。いやこれは、まことにどうも無礼な連想をしてしまった。 取られるのは仕方ないと諦めるとして、取られた方に上手下手があるといわれると考えたくなる。所得額を申告しろというが、私のようなだらしない生活者には収支の数字などまるっきりわかっていない。そこで国税庁から決定して来たのに従って文句なく払っているのだが、聞いてみるとそれが吉田さんとほぼ同額なのだそうだ。総理大臣と同じ暮らしをしているとおもうと一寸得意にもなるが、しかし総理ともなる人が、しがない私と同じ暮らししかできずにいるのが日本か、ともおもうと情なくならずにはいられない。 ルーズヴェルトの伝記を読んでいたら、彼は所得申告のため専門家を雇ったと書いてあった。やっぱりウマクやるためかなどと申すなかれ。大統領とあるからには一仙の脱税もあってはならぬからと、全くの正確を期するためだったのだそうである。 しかし誰だって、ウマクやれるものならウマクと、こう考えるのが人情かもしれぬ。あの男はとても所得申告書の書入れがうまいよという評判が立ったら、その人を紹介してくれぬかで、たちまち彼は引っぱり凧になるにきまっている。現にそんな例があった。といってもそれはわが日本のことではない。サマセット・モームの小説の中に出てくるので、ロンドンの社交界での話である。これを聞いて、ああアチラでも、と妙に感心する人は多かろうとおもわれる。 (二・二三) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年08月10日 16時47分30秒
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