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2023.12.31
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カテゴリ:昭和期・後半
  『名もなき「声」の物語』高橋源一郎(NHK出版)

 本書の奥付の前のページにこう書かれています。

​ 本書は、「NHK100分de名著」において、二〇一五年九月に放送された「太宰治『斜陽』」のテキストを底本として加筆・修正し、新たにブックス特別章「太宰治の十五年戦争」「おわりに」を収載したものです。​

 こうあって、次ページ奥付に、2022年7月25日に第1刷とあります。
 そして上記引用文で触れられた「太宰治の十五年戦争」特別章の冒頭には「数日前に、戦争が始まった。ロシアがウクライナに侵攻したのだ。」とあって、かなり緊張感のある展開の章となっています。それは、例えばこんな部分からも、ひりひりする感じで伝わってきます。
 筆者が、今こそ「あの戦争」のことを考えねばならないとして、その理由を挙げようとしている部分です。

​ 一つは、なんだか「戦争」が近づいているような気がするからだ。そして、もし「戦争」が間近なものになったとき、どう考えればいいのか、太宰治は、それを教えてくれるような気がするからだ。​

 この後、もう一つの理由も書かれているのですが、それはこの一つ目の理由をさらに詳しく説明したものになっています。
 そして、続いて筆者は二つのことを指摘します。
 ひとつは、太宰治はその作家活動のほとんど全期間が戦時下であった、ということ。
 もうひとつは、自由にものが言えない時代を「戦時」というなら、ひょっとしたらもう今だって「戦時下」なのかもしれない、ということです。

 と、いう風にとても興味深く話は拡がっていくのですが、でもそれは、本書の最後三十ページほどの部分で、(もちろん有機的につながってはいますが、)本書の中心は、そこに至る『斜陽』を語る部分であります。
 そしてここでも、筆者は優れた指摘をおこなっており、今回はその部分について報告をしようと思っています。

 実は、私は拙ブログにすでに何度か書いていますが、漱石・谷崎・太宰が私のフェイバレット作家であります。
 そしてある時、なぜ自分はこの三作家の小説が好きなのかと改めて理由を考えました。いえ、別に独創的なことを考えたわけではありません。
 それぞれ一言で描けば、漱石は誠実さと倫理性、谷崎は物語並びらび文章の圧倒的才能、そして、太宰は……。

 と、思って、自分なりに考えたことはあります。
 しかし、どうもうまく言い切れないんですね。明らかに私は太宰の小説が好きなのに、その理由がきれいに言葉にしきれません。
 でも、「好き」という感覚は、元々そんなところがありそうだしということで、まー、今までペンディングしていたわけですね。

 それを、私はこの度本書で読んだ気がしました。
 いえ、細かく考えれば、私の思いと全く相似形をなしているわけではないのですが、かなりすとんと心に落ちる説明がなされていました。
 本書の中に、長短点在しているのですが、その一つを引用してみますね。

​ それは、太宰治が超能力の持ち主だったからでもなく、超天才だったからでもなく、預言者の才能を持っていたからでもない。彼には、聴くことのできる耳があった。世界でなにが起こっているのかを静かに聴くことのできる耳があった。彼は、そうやって彼が聴きとったことを、ことばに記した。まるで無垢な子どもみたいに、熱心に、目を閉じて、いつまでも、ずっと世界でなにが起こっているのかを聴きとろうとしていた。​

 筆者はこれこそが、今に至るまで太宰の作品が人々に読まれ続けることの理由であるとまとめています。(そしてそれは、上記の「太宰治の十五年戦争」の章の論旨につながっていくわけですね。)

 ……思い出しました。
 私の好きな太宰作品に、「鴎」という短いお話があります。
 何というか、いかにも太宰らしい、繊細さや弱さに混じって彼自身の作家的矜持も描かれている作品だと、私がほぼ偏愛する小説です。

 で、その作品の冒頭、エピグラフとでも言うのでしょうか、タイトル「鴎」の次行に、こうあります。

 ​――ひそひそ聞える。なんだか聞える。


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Last updated  2024.01.03 19:42:20
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