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近代日本文学史メジャーのマイナー

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2024.02.10
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『出世と恋愛』斎藤美奈子(講談社新書)

 筆者は、筆者紹介によると文芸評論家となっています。
 まー、そうでしょうねー。私としても、デビュー作の『妊娠小説』を面白く読んで以来、なかなかフェイヴァレットな文芸評論家だと思って何冊か読んできました。

 しかし、文芸評論だけでは今の時代やっていけませんようで、社会学っぽい本や、先日読んだのは政治の本でしたが、そんなのも執筆なさっています。
 でも、そんな意味でも頑張っていらっしゃるという感じではあります。

 しかし、今回の本はちょっとつらそうな感じです。
 というのは、サブタイトルがついてまして、それには「近代文学で読む男と女」とあります。
 そして、漱石の『三四郎』、鴎外『青年』、花袋『田舎教師』で第一章が始まり、第二章は続く大正期、武者小路『友情』、藤村『桜の実の熟する時』、細井和喜蔵『奴隷』、第三章はなぜか時代が戻って、蘆花『不如帰』、紅葉『金色夜叉』、伊藤左千夫『野菊の墓』と、まだもう少し先はあるのですが、そんな風に描かれていきます。

 で、タイトルとサブタイトルを見て、取り上げられてある作品を考えあわせれば、なんとなーく、どんな恋愛になるか、見えてきちゃうんですよね。
 で、んー、まー、やはりその通りに進んでいきます。
 「序章」の小題に筆者が書いた表現でいえば、こうなります。

​ 青春小説の王道は「告白できない男たち」​

 まー、そうでしょうねー。
 特に「出世」と絡めますと、男の側はそうならざるを得ないような気がします。

 序章の小題にもう一つ、上記の表現とペアで、こういう風にあります。

 ​恋愛小説の王道は「死に急ぐ女たち」​

 これもその通りでしょうねー。(このテーマは以前わたくし、確か「女の子を殺さない…」云々という文芸評論を読みましたよ。よく似た主旨じゃなかったでしょうかね。)

 さて実は、上記第三章の後にはまだ続きがありまして、有島武郎『或る女』、菊池寛『真珠夫人』と続いて、そしてやっと女性作家による作品、宮本百合子『伸子』、野上弥生子『真知子』が出てきます。
 ここに至って筆者の分析トーンも変わって、「伸子」「真知子」頑張っている、となるのですが、やはり当時の日本国の社会情勢の中では、なかなか苦戦防戦となります。

 以上のように、本書全体の展開は、まー、言ってみれば、ほぼ読む前から予想されていた流れではあります。
 いえ、だから、本書がつまんないと言っているわけではありません。
 読み終えた後本書のテーマをざっくりまとめるとこうなってしまうといっているだけで、それぞれの部分の分析はなかなか興味深いことが書かれています。

(私が最も面白かったのは島崎藤村のくだりで、藤村作品はまず「暗い、まどろっこしい、サービスが悪い」と一刀両断されて、そしてなぜ「サービスが悪い」のかに焦点を当てて分析されています。興味深い。)

 というわけで、もちろん私が個人的なものとして小説が好きだからということはありつつ、興味深く読むことができました。
 筆者について私は以前から、「分析の運動神経の良さ」という言い回しで評価しているのですが、本書にもそんな展開が随所で読めました。

 最後にそんな一つですが、そもそもなぜ日本近代文学が「告白できない男」と「死に急ぐ女」になってしまったのか、最終盤にこのように書かれています。

 (略)死んだ歴代ヒロインは、草葉の陰で合唱していたのではないか。
 私だって、べつに死にたくて死んだわけじゃないのよ。持続可能な恋愛が描けない無能な作家と、消えてくれたほうがありがたい自己チューな男と、悲恋好きの読者のおかげで殺されたのよ。

 私は「持続可能な恋愛が描けない無能な作家」というところにもっとも共感します。(しかし、作品はその時代の上に現れるものですから、作家一人のせいではもちろんありませんが。)
 そしてふと、いや、あれはそうじゃない作品だぞ、と、私が知りうる限りではほぼ唯一の「例外」作品を、思い浮かべました。

 多分「持続可能な恋愛」を描き切った作品だと思います。
 (そういえば、この小説家の作品が本書には取り上げられていないということも、それを裏付けているように思います。)
 この作家のこの作品。

 谷崎潤一郎『春琴抄』

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Last updated  2024.02.10 08:15:04
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