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analog純文

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2024.06.16
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『土に贖う』河崎秋子(集英社)

 友人からの薦めのような形で、本書を読んでみました。
 人から薦められるとか読書会の課題図書だとかがないと、なかなか新しい作家の本に手が伸びないのは、なんとなくいかんなあと思いつつ。

 読んでから、ちょっとネットで調べてみたんですね。
 すると、直木賞受賞作家とありました。なるほど、それっぽい感じではありますね。さらにもう少し読んでみますと、2020年に『土に贖う』で新田次郎文学賞を受賞し、2024年に『ともぐい』で直木賞を受賞と。
 つまり今回の報告作品は、直木賞受賞以前の作品であります。

 何が言いたいのかといえば、私は今回の本書について、まー、なんといいますか、さほど感心しなかったわけですね。
 で、いわば、まだ「成長期」の作家だったころに書かれた短編集だったんだなと、そんなふうに納得をしたという事であります。

 (これは閑話ですが、芥川賞受賞者の最初の作品集なんかで、芥川賞受賞作と一緒に受賞以前の作品が収録されていて、それがとても受賞作と比較にならない「凡作」であったりしたことありませんか? もっとも、芥川賞は入門者の賞で、直木賞は初級者の上りの賞だみたいな話は聞いたことがありますが。)

 ということで、以下の文章は、私があまり納得がいかなかった個所の説明となり、それはどうしてもあまり褒める文脈にならないだろうわけで、少し困ったなと思ってもいます。

 例えばこんなところなんですがね。
 「南北海鳥異聞」という短編の冒頭近く、時代は「明治も二十年を越えた」年、鳥島でアホウドリを撲殺する仕事をしている弥平と泰介という二人の「三十男」のせりふ部分です。

 少し力が余ったのか、首の部分から骨が突き出して皮を貫き、血が白い胸の羽毛を汚している。それを見咎めたのか、弥平の背後から「おいこらぁ」と野太い声がかかった。
「弥平。お前、血ぃ出させるな。力入れて殴りすぎだ」
「何でだ。血が出ても出なくても、鳥殺すのは一緒だべ」
「あほが。鳥の羽とるのに殴ってるんだから、その羽がきれいでないと値が下がる。力加減、気ぃつけれ」
「悪かった。次は気をつける」

 このセリフのどこに私はおやっと思うかといえば、この描写の後にこんな説明があるんですね。

 ​弥平は今日はもうこうして二百五十羽ほども殴り殺した。​

 二百五十羽も殴り殺した後のせりふのやり取りとしては、少し変じゃないですかね。
 私はこんなところが気になるんですね。
 さらに二人は鳥を撲殺し続けていくのですが、泰介がこんなセリフを言います。

​「しっかし、弥平、お前はまったく躊躇しねえなあ」​

 そして少し先にこんな説明があります。

 ​弥平と泰介は東北の山奥にある寒村の生まれだ。いずれも家は小さな農家で、弥平は上に三人も兄がいる末っ子のせいか、親にも周囲からも温かく目をかけられることはほとんどなかった。​

 私は、泰介のせりふの中の「躊躇」という言葉に引っ掛かります。
 それはお前の勝手な感じ方だといえばそれまでですが、私はもっと別のこなれた言葉で説明できないのかしらと感じたりします。

 他の作品にも、この作者の描写に対して、細かい指摘ではありますが、その表現が最もふさわしいのかなと思ってしまう個所が、私としては、けっこうたくさんありました。

 例えば、別の短編小説で、昭和三十五年の「札幌近郊、江別市」の、父子家庭で父親が「装蹄所」を一人で営んでいる小学校五年生の男子が、父親と話をしている場面です。話題についての引用はしませんが、父親の会話に対して男の子はこう答えます。

​「なんか、割り切れない。納得できないよ」​

 どうなんでしょ。これもお前の変な思い込みだと言われたらそうなのかもしれませんが、私は小学五年生の男子が使う用語としては、「割り切れない」はかなり違和感を感じます。

 さて、そんな細かい指摘をしてしまいました。
 実は全体の物語の構造などについても、少し個人的に違和感のあるところはありました。しかし、短編集全体の「近代北海道開拓史の中で厳しい自然と共に生きる人々を描く」とでもいえる大きなテーマに、とりあえず真正面から取り組んだ作者の心意気は、いかにも壮とするべきで、その後この志が直木賞受賞に至ったについては、大いに納得できると思いました。
 私は、次はその直木賞受賞作を読んで、物語の構造などについても鑑賞させていただこうと思うものでありました。

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Last updated  2024.06.16 12:52:07
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