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カテゴリ:本のレビュー
『宮廷文化と民衆文化』二宮素子 山川出版社 タイトルに異議あり!(ぉ ちょっと、出だし批判的に書きます。(後半で褒めますから。) 世界史リブレット・シリーズの一冊な本書。 「BOOK」データベースの紹介によると、 「合理主義を追求してきた近代社会。私たちは、今それを息苦しいものにも感じている。中世末ヨーロッパ人の喜びや悲しみは今よりも激しかった。民衆の感性や習俗は近世にはいっても大きな変化をみせなかったが、宮廷びとは、激情を礼節と作法で馴化し、国王を頂点とする儀礼の支配する構図に組み込まれて生きるようになった。支配層と民衆との文化の裂け目は大きい。その二つの文化を検討し、それらがどのように近代社会へ流れ込んできたのか。」 と、あります。 私は民衆文化や、貴族文化との融合といった点に期待して読んでみたのですが・・・この本は、「フランス(とイタリア)の宮廷文化」に改題すべきだと思う。 タイトルに民衆と入れておきながら。こんな偏った本は初めて見た。^ ^; もう、各章へのページ数の割り当てで一目瞭然なんですが、 1.ブルゴーニュとウルビーノの宮廷 31ページ 2.フランスの宮廷 31ページ 3.民衆文化 17ページ 4.ブルジョワ文化による統合 4ページ(滝汗) 第4章とか、章にする必要があるのかも分からないし。 民衆文化については魔女や祭りの話など、どこかで聞きましたという話題が多く、あまり収穫は期待できません。 「ブルジョワ文化による統合」部分も、文字通りブルジョワ層が宮廷と民衆の文化を結びつけましたと書いてあるだけで、どういう風に、が欠如しています。これは・・・リブレットの制限あるページ数の中、こういう大きなテーマで出版しちゃった編集側の責任かも、とも思いますが。 しかし、しかし、けなしてばかりでも読んだ甲斐がありません。 ちょっと面白かった点を。 この本は主にフランスとイタリア(ウルビーノ:イタリア中部)について語っていますが、「書物」に注目して読むと楽しいかもしれません。 著者は『新百話』、『クレーブの奥方』など、中世~近世に読まれた物語を引用したり、役人の報告書などを載せています。全体の流れが分かる程度に引用してくれてるので、当時の感覚について生き生きとしたイメージを持つことができます。 また、各宮廷が図書室にどのくらい本を所蔵していたか。最初は雀の涙ほどの数が、個人の蒐集家に劣らないほど段々と充実されていくのが具体的な数字で分かります。そうして王立図書館が作り上げられる・・・といいますか、古くは国王より個人の方が知識を囲っていたというのが面白いですね。 それに加え、17~18世紀の民衆がどういった本を手にしていたかも、簡単ながら説明されています。 あとは、国王の一日のスケジュールだとか、巡幸の日程(移動経路や滞在期間など)いった資料が役に立った・・・かも。 あまりタイトルをマに受けず力を抜いて読めば、発見のある本かもしれません。 とにかく「民衆」部分に期待はできないし、宮廷の方も専門的に行きたいのか概説にしたいのか、ちょっと狙いが絞れてない気がします。 「興味の持てる部分を拾う」感覚で読むことをおススメします。 ■次回は、『中世への旅 騎士と城』という本をご紹介したいと思います。 これは私、大絶賛! ではでは。 *追記* 時々日記にアフェリ貼ってますけど、正直まったく期待はせず、成果チェックを数ヶ月怠っていました。 そうしたら、どなたか・・・3月と4月にポチって下さったんですね。 ありがとうございます♪(=人=) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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このタイプの本はすくないページ数でひとつのテーマについて書いてあるので、サクサクッと気楽に知識を得られる点が魅力的ですよね。
しかしテーマを広く設定しすぎると・・。 まあ、狙いから外れた収穫というのも書物の面白みだと思います。 中世図書館の蔵書について! とても興味を惹かれる話題ではありませんか。 (2007/06/08 10:21:48 PM)
金比羅系さん
やっぱりテーマが広すぎたんでしょうね。 筆者がウルビーノに思い入れがあるのは伝わってきました。 同じシリーズでも、一緒に買った別の本は内容が特化していて満足度高かったです。 >狙いから外れた収穫というのも書物の面白み そうですね。 なるべく視野を広く持って、面白さを探していきたいです。^ ^ (2007/06/09 08:45:49 PM) |