テーマ:Jazz(1977)
カテゴリ:ジャズ
ただ者でないジャズ奏者は、ただブルースを演奏する? ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)は1926年生まれの米国人アルト・サックス奏者。現在も85歳で存命中で、来月(2012年3月)には来日公演も予定されている。活動期間が長いことから、彼の特徴は時代とともにビ・バップ、ハード・バップ、ソウル・ジャズなどと移り変わっていったと言われる。50~60年代、ブルーノートに多くの吹き込みを残しているが、ソウルあるいはブルースよりのスタイルの起点となった1957~58年頃で、この『ブルース・ウォーク(Blues Walk)』はその時期の作品であるとともに、彼の代表作の一つとして知られる。 ルー・ドナルドソンのサックスが技巧派かどうかと言われるとよくわからない(本盤のライナーによれば、演奏のレベルはこの作品の発表時点でそれ以前よりも高度になっている)。いずれにせよ、技術云々とは関係なく、彼の演奏は個性が滅法強い。本盤に関して言えば、明らかに“粘っこい”と言っていいように思う。“何だっていい、ただブルースを演奏するだけ”というのが、彼のスタンスだったとのこと。それにしても、ただブルースをやってみましたというだけで、こういう粘っこさがアルバム作品としてそう簡単に出るもんだろうか。やはりそこには別の仕掛け人もいたように思う。ルー・ドナルドソンと長年ピアノ奏者としてコンビを組んだハーマン・フォスターである。 ハーマン・フォスターは1928年生まれと、ルー・ドナルドソンとほぼ同世代の盲目のピアニスト。現役続行中のル-とは異なり、1999年に死去している。このピアノ奏者の演奏が何とも個性的である。好きなピアニストにオスカー・ピーターソンとエロール・ガーナーを挙げていたそうだが、なるほどその影響が随所に窺われる。例えば2.「ムーヴ」や6.「コーリン・オール・キャッツ」なんかを聴いていると、好き放題に弾いているという感じのピアノが聞こえてくるが、この型からはみ出た感じが粘っこさの一つの源泉のように思う。 もう一つ、粘っこく個性的に仕上がっている理由として、ルー・ドナルドソンと他の楽器の関係も考えてよいだろう。オルガンとギターを入れた『アリゲーター・ブーガルー』なんかがわかりやすいのだが、本盤でもコンガ奏者レイ・バレットが結構重要な役割を果たしている。こうした“標準装備”ではない楽器が入った時の、ルー・ドナルドソンの、おそらくは考え込まれているのだろうが、ぱっと聴きにはきわめて自然な順応・適応性としか思えない演奏力が、結果的にいい演奏につながり、最終的には、彼のやりたいブルースのイメージが形になっていったのだろうと感じる。 正統的な演奏や編成のジャズを好む人には合わないかもしれない。いや、でも聴いて見たら案外よいと思うかもしれないので、これを機にという人はぜひお試しいただきたい。ついでながら、5.「オータム・ノクターン」はしっとり聴かせるバラードだが、ここでもサックスとピアノの個性の強さ、結果としてどこかしら粘っこい演奏に仕上がっているのが面白いし、ある種、本盤の特徴を映し出しているように思う。 [収録曲] 1. Blues Walk 2. Move 3. The Masquerade Is Over 4. Play Ray 5. Autumn Nocturne 6. Callin' All Cats [パーソネル・録音] Lou Donaldson (as) Herman Foster (p) Peck Morrison (b) Dave Bailey (ds) Ray Barretto (conga) 1958年7月28日録音 Blue Note 1593 ブルース・ウォーク/ルー・ドナルドソン[CD]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年07月11日 06時09分36秒
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