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2012年06月16日
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カテゴリ:社会問題
 原発に反対する市民が国や電力会社を裁判に訴えても、勝った試しがないが、一度だけ国が敗訴したことがあった。その国側敗訴の判決を書いた元裁判官が、5月22日の朝日新聞インタビューに応えて、次のように述べている;


 国や電力会社側が勝ち続けていた原発訴訟の歴史の中、2003年に初めて国敗訴の判決を出した元裁判官の川崎和夫さんが、長い沈黙を破った。高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる訴訟。どういう思考をし、国策とどう向き合ったのか。原発事故を経験したいま、川崎さんの経験から科学技術と司法、国策と司法のあり方を考えたい。

 ――これまではインタビューの依頼はすべて断っていたそうですが?

 「裁判官は自分が出した判決について弁明したり、コメントしたりすることを控えるべきだという伝統的な考えがあって、それに従ってきました。しかし、昨年の原発事故が起きて、司法の責任も問われている状況の中で沈黙を続けるのは社会的責任を果たしていないとの指摘を受けて、インタビューに応じることにしました」

 ――昨年の原発事故を見た時はどう思いましたか。

 「とにかくびっくりしました。裁判では、原子炉の地震に対する安全性は争われていましたが、津波のことは考えていませんでしたから」

 ――「もんじゅ訴訟」を担当することになった時はどう思いましたか。

 「名古屋高裁金沢支部への異動の発令直後に知らされ、『ついてないなあ』と思いました。原発訴訟を担当して喜ぶ裁判官はいないと思います。『控訴棄却』の結論がある程度予測されるのに、他の事件も通常通り処理しながら、膨大な記録を読まなければならないなど負担が大変だからです」

 ――控訴趣意書など事件の書類を見て感じたことは?

 「頭を抱えました。科学の専門書を読んでいるようで、理解できないことが多すぎました。約100ページの準備書面を読むのに1日かかりました。最後には集中力がなくなる状態でした」

 ――原発訴訟に関する代表的な判例である「伊方最高裁判決」(92年)は、国の裁量を大幅に認めた点など
が批判されており、その後の原発訴訟での国側勝訴の流れを作ったとも言われています。

 「この判決は、科学的知見のない裁判所が科学論争に引き込まれるのを避けるための判断基準を示したものだと思います。つまり、科学の専門家の意見に基づいてなされた行政処分は、見逃すことのできない過誤、欠落がない限り尊重しなさいと言っているわけです。しかし実際にやってみると、住民側は科学的根拠に基づいて違法性を主張してくる。結局激しい科学論争になってしまいました。原発訴訟は難しいと実感した次第です」

 ――原発訴訟では、川崎さんが書いた判決を含め2件の判決以外はことごとく、住民側敗訴、国・電力会社側勝訴の判決が出されました。なぜでしょうか。

 「原発のような先端的技術に関する訴訟では、専門家の意見が決定的に重要です。日本では専門家はほとんどが推進派で、慎重派の専門家も一部いましたが、彼らは主要なポストから排除されていました。立派な肩書を持つ権威ある専門家が『日本の原発は安全だ』と言えば、裁判所はそれに反する判決は出しにくかったのではないでしょうか」

 ――川崎さんは、口頭弁論とは別に、非公開の進行協議の場で双方の専門家に質問してレクチャーを受ける方式を採用しましたね。

 「当事者双方には専門家がついていますが、裁判所には専門家がいないので、双方から説明を聞いた方が理解が速いと判断しました。進行協議にしたのは、非公開なので自由に質問や議論ができるからです。公開の口頭弁論では、発言が慎重にならざるを得ないのです。月1回、朝から夕方まで丸1日専門家の話を聞くということを約1年続けたので、裁判所も大変でしたが、当事者にとっても大きな負担だったと思います」

 ――高度な科学技術をめぐる裁判では有効な方法だと思いますが、その方式はその後、他の原発訴訟では利用されませんでした。なぜでしょうか。

 「わかりません。ただ、国側はあれだけ苦労してわかりやすい資料を用意して説明したのに敗訴の結果になったので、こんな方法は二度とやりたくないと考えても不思議ではありません」

     *

 ――判決理由の冒頭で、世界の高速増殖炉の開発の現状について、詳しく説明しています。

 「高速増殖炉とはどういうものなのか、まず知ってほしかったからです。消費した燃料以上の燃料を生み出すことから『夢の原子炉』と言われ、日本を含め世界の主要先進国がこぞって研究開発に取り組みました。しかし今は他の先進国は開発を中止か断念しています」
 「理由は国によって違いますが、背景には危険性を克服して実用可能な原子炉として完成させるには、あまりにもハードルが高すぎたという事情があると思います」

 ――どこが危険なのでしょうか。

 「最大の原因は冷却材です。原子炉で発生した熱を奪い蒸気発生器に伝える冷却材は、軽水炉では水を使います。しかし、高速増殖炉では液体ナトリウムを使います。ナトリウムは酸素と化合すると高熱を発して燃焼するので、空気中に漏れ出すと火災を引き起こし、水と接触すると水素を発生させて爆発の危険性があります。ナトリウムをどう封じ込めるかが重要な課題なのです」

 ――もんじゅでは95年にナトリウム漏れ事故が発生しました。それが原子炉の設置許可を無効と判断した理由ですか。

 「最大の要因はそれです。住民に『もんじゅでは起きない』と大見えを切っていたのに起こしてしまった。事故自体はそれほど大きなものではありません。ところが、事故後の調査や実験を通じて、国が設置を許可した当時には予想されていなかった様々な事実が明らかになりました。加えて、蒸気発生器で伝熱管が破損する事故の可能性について、国は4本程度と想定していましたが、許可処分後に英国の高速増殖炉で40本の伝熱管が破損・破断する事故が実際に発生しました」
 「無効とした理由はこれだけではありませんが、世界の主要先進国が開発を断念している中、どうしてもわが国が高速増殖炉の開発を続けるというのであれば、最初からもう一度、安全性を審査し直さなければいけないと考え、設置許可処分を無効としました。国は設置許可は有効だと言いますが、控訴審の口頭弁論終結後にナトリウム漏れ対策や蒸気発生器などについての変更を許可しました。これは国も当初の許可処分では不十分だったことを事実上認めたものだと受け止めています」

 ――安全審査は、どのような姿勢で臨むべきだと考えましたか。

 「特別に危険な施設でしかも技術や知見が確立されていないわけですから、審査の際には安全の余裕度を大きめに設定しなければならないと思います」

 ――具体的には?

 「米国で計画された高速増殖原型炉クリンチリバーの審査が一つの例です。炉心崩壊事故時に発生する機械的エネルギーの大きさについて、米原子力規制委員会(NRC)は独自の解析結果に基づき、申請者側が想定したエネルギーの約2倍の数値を使って評価のし直しを要求しました。その後、スリーマイル島事故の影響で審査がより厳しくなった結果、最終的に建設は中止となりました。このことからもNRCの審査の厳しさの一端が見られます

 ――日本ではどうでしたか。

 「日本の原子力安全委員会は、申請者の動力炉・核燃料開発事業団が解析した結果をそのまま承認しました。国に言わせれば、十分に厳しい条件を設定して解析をしているから、さらに解析をやり直させる必要はないということかもしれません。しかし、ナトリウム漏れ事故後の安全総点検や実験の結果を見ると動燃が同種の事故について申請時に行った解析は甘いものだったことがわかっています。このあたりが原子力安全委員会に不信感をもつ一因となりました」

 ――国敗訴の判決を書く際に、心理的な重圧は感じられましたか。

 「重圧は特にありませんでした。しかし、『変な判決を書いたヤツだと思われるだろうなあ』という思いはありました。それがプレッシャーといえばプレッシャーでした。それまで原発訴訟で国や電力会社側を負かした判決を出した裁判官はいなかったわけですから」

 ――その後、最高裁は川崎さんが書いた判決を破棄しました。

 「『やっぱりだめか』と思いました。最高裁が、国を負かした判決をそう簡単に維持してくれるとは思っていませんでした。もんじゅは国が推進している核燃料サイクルの柱です。その政策そのものを否定することになりますからね。しかし、ナトリウム漏れ事故の結果、いろいろな問題があることがわかってきたので、『もしかしたら』とわずかな期待もありました」

 ――川崎さんの判決の意義は?

 「国側を敗訴させた珍しい事例の一つとしての意味はあると思います。判決は最高裁に破棄されましたが、判決当時から、高速増殖炉の開発は司法が止めなくてもいずれ断念せざるを得なくなるだろうとは思っていました」             (聞き手・山口栄二、磯村健太郎)


2012年5月22日 朝日新聞朝刊 12版 15ページ「インタビュー-原発訴訟の沈黙を破る」から引用

 この記事によると、米国の原子力規制委員会は原子力に素人の裁判官がみても納得できるような、常識に沿った考え方で原発推進派に安全性に対する要求をつきつけている。国民の安全を確保するためには当然のことであるが、これが何故か日本では、こうはいかない。原因は、いろいろあるが、その一つに日本の原子力関係の学会や政府機関は、ことごとく業界のカネがまわっていて、何かにつけて原発推進派に都合の良い結果しか出さない、その結果、安全性はおろそかにされて、少し大きい地震が来ると数万人の市民が住む家を失うということになるのである。今回の大飯原発再稼働も、津波対策の堤防の完成やベント機能に放射線漏れを防ぐフィルターの取り付けなど基本的な安全策が出来上がるのは3年後なのに、とりあえず安全性は確認されたなどと、原子力のげの字も知らない政治家が、閣僚会議だの地元の理解だのと茶番を演じて再稼働を可としている。これでは原発の安全が確保されるわけがない。米国原子力規制委員会に相当する日本の機関も、本来の機能を発揮していれば、日本でも高速増殖炉などというものは、開発を断念させられたのであるが、それが出来ていない原因には、国民性をあげることができる。政治判断は政治家にお任せ、原発のことは原発の専門家にお任せ、その政治家も専門家も電力会社からカネをもらっていても、お上のすることには文句を言わない。こういう状態では、やはり原発運転の資格がないというものではないだろうか。






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最終更新日  2012年06月17日 11時05分39秒


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