道ばた、空き地、花壇の隅・・・
気づけばそこにいる植物の生態
身 近 な 雑 草 た ち の 奇 跡
は じ め に
そこにひとつ、植物が芽吹けばその数がわらわらと増え、
ほかの生き物も集まってくる。
庭仕事をしていると、その様子は手に取るように分かるが、
連中がなにをしているのかについて、知るほどに不思議が
広がってゆく。
世界に棲む、花を咲かせて種子をつける植物の総数は、
最新の推定でおよそ22万種から42万種とされる。
日本で見ることができる種族は、このうち4千数百種
から7千種ほど。正確にいおうとするほど、この幅が
広がってゆくのだから、おかしな話である。
さらに、ヒトとモノが目まぐるしく行き来すれば、
それに便乗してやってくる植物の数も増えるのだ。
突然その姿を現したかと思えば、音もなくかき消える。
姿そのものをも刻々と変えてゆくため、動かないはずの
生き物なのに、全体像はもちろん、どこに向かっている
のかをつかむのも容易ではない。
つまり、よく分からないのである。
わたしたちが、なにげない散歩の途中で出逢う植物の数は、
もはや計りしれない領域に突入しているわけで、つまるところ、
生き物好きにとっては奇跡の時代が到来している。
有史以来、世界中の生き物たちをこれほど身近で気軽に堪能
できる時代はかってない。
いい意味でも、あまり芳しくない文脈であっても。
重ねて申し上げるが、わたしたちは幸運である。
つい50年前までは夢のまた夢と思われていた植物たちと
ごく気軽に挨拶を交わせるのだから。
200年前に生きていた祖先たちが現在の畑や道ばたを
見たら、とても日の本の国とは思わないだろう。
以 下 省 略
著者: 森 昭彦( もり あきひこ )
1969年生まれ。
サイエンス・ジャーナリスト、ガーデナー、
自然写真家。おもに関東圏を活動拠点に、
植物と動物のユニークな相関性について
実地調査・研究・執筆を手がける。
2021年3月28日 初版第1刷発行
発行所: SBクリエイティブ株式会社
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最終更新日
2021年11月03日 17時31分15秒
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