「思考と直覚」人間の霊魂を思考/スピノザ118
スピノザの存在としてあるものの根拠を其の儘に論理的に或いは数学的帰納法や演繹法、将又(はたまた)、幾何学の論理を駆使して、世界自然を究明する思考法は、日本の思想家にして西洋に初めて認められたとも云える、哲学の道で知られる西田幾太郎の「善の研究」にも影響を与えたことでも知られています。スピノザは「神」を人間が見得ざる不可視のものであろうとも、スピノザの培った理性の深層に眠る倫理的霊魂がスピノザに世界の真相を語りかけます。「神」は人間存在が捉える世界、将又、大宇宙や自然には存在が無いのではなく、全てが「神」の発現であり表現だとしています。姿無きものは人間が霊魂で理解することしか把握することは困難であるところを、「神」の発現の顕著であるところの数学的論理や幾何学的論理により、「神」の特性として「絶対存在」「絶対真理」「絶対精神」「絶対意識」「絶対意思」に言及します。此処で注意すべきはスピノザの言う「神」とは己(おのれ)を他者と区別する欠損から生じる自己意識、即ち「自我」はあり得ず、世界を自らとしています。其のこと故に「絶対存在・絶対真理・絶対精神・絶対意識・絶対意思」である「スピノザの神」はハイデガーの「見えざる手」ではなく、神との精神の共有は可能であり、「神」から人間に働きがけがなくとも、人間が自己の精神の深奥に神との共鳴を感じ生じたときには、其の人間は人間最高にして無限の喜びと永遠の幸せを手に入れます或いは永遠の霊魂です。神格性のみならず人格性を与えた「象徴神」に頼らずとも神に共鳴する道を教授しているのがスピノザの著書「エチカ」なのです。
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