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カテゴリ:映画
ジョージ・A・ロメロの訃報が飛び込んできた。肺がんを患っていたのだそうだ。享年77歳。そうか、さしものゾンビ映画の巨匠も蘇るってわけにはいかなかったか。まだ、わからないけど・・・
ゾンビ映画の原型を築いた人として誰もが認める人だろう。僕は一時期、仕事でゾンビだのホラーだのに関わったことがあるのだけど、その手のジャンルの映画が好きかといえばそうでもない。グチャグチャのスプラッターなんかが好きな悪趣味さはないつもりだし、近年はすっかりポピュラーになったゾンビに関しても、いちいち追ってはいない。でも、ロメロの作品はちょっと別格だ。 渋谷東急系の映画館を中心に、一時期数年間開催されていた東京国際ファンタスティック映画祭。確か、ロメロのゾンビ作品を観たのは、そのオールナイト上映でだったと思う。或いは、ビデオでは以前からも見ていたかも知れない。まず何と言ってもカルト映画「ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド」。この異様な緊張感。勿論、ホラー映画としての恐怖はあるのだけど、それとはまた別種の怖さがこの映画にはあった。ホラーとしては、ヒッチコックの「サイコ」と並ぶ最高峰ではないか。 ロメロの映画は興行的に成功したものというのがほとんどない。それでも、カルトで評判を呼んで続編等を製作する機会を得る。それで作られたのが、夜篇に続くゾンビ3部作の夜明篇「ゾンビ」であった。これも紛う方なき傑作だった。ゾンビだのホラー映画だのの、僕自身の概念を変える1作だった。例えば、ルチオ・フルチだのダリオ・アルジェントだのといった、スタイリッシュに見せるホラー映画作家は色々いるけれど、ロメロは実はもっと社会派。単に見てくれだけではない、もっと深いところでの恐怖、そして、社会の疎外感のようなものを表現していたと思う。この恐るべき、危険で強烈な映画体験は、ロメロという人への畏敬の念さえ抱かせた。 ゾンビ映画以前の「クレイジーズ」や「マーテイン」も興味深く見た。メジャーで撮った「モンキー・シャイン」も秀作だったと思う。でも、期待のゾンビ三部作最終編「死霊のえじき」は、正直、失望させられた。僕自身のロメロへの興味はその時点でピリオドだった。以後も、ロメロは”デッド”と名のつくゾンビ映画を数作撮ったが、観ようという気にはなれなかった。 とはいえ、凡百のこけおどしホラー映画監督とは異なる、確かな作家的スタンスを持った人だったと思う。そもそも、「バイオハザード」だって、ロメロ作品のゲーム化のようなものであって、同映画を中心に、すっかりお茶の間レベルに定着したゾンビを、生みの親としてはどう思っていたのだろう。伝え聞く限りでは、さほど金に執着するような人ではなかったような。何よりも元祖でファウンダーであった人であることは間違いない。その”名声”が高まるのは、むしろ死後のこれからなのではないか。 暑い夏でも或いは秋の夜長でもいいけど、何年ぶりかで「ナイト・・」及び「ゾンビ」、一応「えじき」あたりも加えてのゾンビ・オールナイトを部屋で開催したいな。いや、どこかのCSチャンネルで放送してくれることを期待したい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年07月19日 23時36分23秒
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