869829 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

風とケーナ

風とケーナ

Free Space

温かい応援、いつも本当にありがとうございます♪
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村(1日1回有効)

Comments

紅子08@ Re:コンドルの系譜 第十話(149) 遥かなる虹の民(04/18) New! おはようございます! いつもありがとうご…
neko天使@ Re:コンドルの系譜 第十話(149) 遥かなる虹の民(04/18) New! こんばんは。 いつもお優しいコメントをあ…
kopanda06@ Re:コンドルの系譜 第十話(149) 遥かなる虹の民(04/18) New! こんばんは。 いつもありがとうございま…
ロゼff@ Re:コンドルの系譜 第十話(149) 遥かなる虹の民(04/18) New! こんにちは 今日も暑いくらいの一日です…

Favorite Blog

--< 駅が見えます >-… New! いわどん0193さん

カレー炒めを?‣… New! セミ・コンフィさん

虎子の誇顧 3552 : … New! 涯 如水さん

サツキの花:経営、… New! エム坊さん

5月21日 記事更… New! 紅子08さん

転生したらスライム… New! かつブー太さん

Category

Freepage List

これまでの主な登場人物


登場人物イメージイラスト


物 語 目 次


頂き物のイメージイラスト


これまでのストーリー


第一話 ビラコチャの神殿


第二話 邂逅(1)


第二話 邂逅(2)


第三話 反乱前夜(1)


第三話 反乱前夜(2)


第三話 反乱前夜(3)


第三話 反乱前夜(4)


第三話 反乱前夜(5)


第三話 反乱前夜(6)


第四話 皇帝光臨(1)


第四話 皇帝光臨(2)


第四話 皇帝光臨(3)


第四話 皇帝光臨(4)


第五話 サンガララの戦(1)


第五話 サンガララの戦(2)


第五話 サンガララの戦(3)


第五話 サンガララの戦(4)


第六話 牙城クスコ(1)


第六話 牙城クスコ(2)


第六話 牙城クスコ(3)


第六話 牙城クスコ(4)


第六話 牙城クスコ(5)


第六話 牙城クスコ(6)


第六話 牙城クスコ(7)


第六話 牙城クスコ(8)


第六話 牙城クスコ(9)


第六話 牙城クスコ(10)


第六話 牙城クスコ(11)


第六話 牙城クスコ(12)


第六話 牙城クスコ(13)


第七話 黄金の雷(1)


第七話 黄金の雷(2)


第七話 黄金の雷(3)


第七話 黄金の雷(4)


第七話 黄金の雷(5)


第七話 黄金の雷(6)


第七話 黄金の雷(7)


第七話 黄金の雷(8)


第七話 黄金の雷(9)


第七話 黄金の雷(10)


第七話 黄金の雷(11)


第七話 黄金の雷(12)


第七話 黄金の雷(13)


第七話 黄金の雷(14)


第八話 青年インカ(1)


第八話 青年インカ(2)


第八話 青年インカ(3)


第八話 青年インカ(4)


第八話 青年インカ(5)


第八話 青年インカ(6)


第八話 青年インカ(7)


第八話 青年インカ(8)


第八話 青年インカ(9)


第八話 青年インカ(10)


第八話 青年インカ(11)


第八話 青年インカ(12)


第八話 青年インカ(13)


第八話 青年インカ(14)


第八話 青年インカ(15)


第八話 青年インカ(16)


第八話 青年インカ(17)


第八話 青年インカ(18)


第八話 青年インカ(19)


第八話 青年インカ(20)


第八話 青年インカ(21)


第九話 碧海の彼方(1)


第九話 碧海の彼方(2)


第九話 碧海の彼方(3)


第九話 碧海の彼方(4)


第九話 碧海の彼方(5)


第九話 碧海の彼方(6)


第九話 碧海の彼方(7)


第九話 碧海の彼方(8)


第九話 碧海の彼方(9)


第九話 碧海の彼方(10)


第九話 碧海の彼方(11)


第九話 碧海の彼方(12)


Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

2006.12.20
XML

そんな!!…――という衝撃が、コイユールの表情にハッキリと浮かび上がる。

コイユールは、そのような己の反応を慌てて隠すように、さっと地面の方に視線を移した。

その彼女の様子に、アンドレスの胸は締め付けられるように苦しくなる。


月明かりが地に引く己の影を、暫しの間、じっと見つめていたコイユールだったが、やがて思い切ったように顔を上げる。

そして、意を決したように、アンドレスの苦しげな瞳を見つめた。

しかし、すぐに耐え兼ねるように、再び、さっと視線をそらした。

それから、小さな擦れた声で言う。


「アンドレス…どうか御武運を…!」

「え…」

「私…アンドレスが、最前線で、どんなに危険に晒されて戦っているか聞いているの…。

どうか…どうか、命だけは…ね…アンドレス……」

アンドレスの目の前で、今、声を詰まらせているコイユールは、まるで己の本心に固く蓋をして、相手の視線から逃がるかのように身を縮めたまま、小刻みに震えている。

(コイユール…!!)


コイユールが、彼女自身の感情よりも、あくまで、新たな戦地に向かう己の身を案じる言葉のみを並べるその姿に、アンドレスの心はかえって掻き乱された。

悲しい、寂しい、不安だと言って泣いてもいいのに、健気(けなげ)にも気丈にこらえるコイユールの姿は、己が突き放してしまっていた数年間の帰結としての、埋め難い遠い距離の隔たりのごとくに…――甘えてはいけないと、己に受け留める度量無しと、暗黙に突き付けられているかのようにさえ感じさせる。


アンドレスも、無意識に視線をそらし、両拳を握り締めた。

じっと目を伏せるようにして、うつむいているコイユールの脇で、アンドレスの横顔も苦渋に歪む。

彼は、それから、頭を冷やすように上空を仰ぎ、深夜の森の冷気を吸い込んだ。

そして、懸命に心を落ち着かせて、コイユールの方に再び向き直る。

うつむくコイユールは唇をギュッと固く結び、やっと見開いた目元には険しささえも宿して、己の周りで次々と展開していく奔流に流されまいと、必死で足を踏み締め、耐え抜こうとしているかのように、アンドレスには見える。

その姿は非常に健気で気丈であるのだが、それ以上に、あまりにも儚げで、痛々しい。


コイユールをこれほどに追い詰めている張本人は誰かと、己に剣を向ける心境のアンドレスの心も、また、その心臓が潰(つぶ)れそうなほどに痛んでいた。

(だが…俺のことだけなのか…?

コイユールの、この苦しそうな様子は…)

深く打ちひしがれたようになっているコイユールを目前にして、その彼女の苦しみを除きたいと真剣に思えばこそ、今、アンドレスの頭は、ただ感情に流される状態を凌駕して、冷静さを手繰り寄せていく。


今度は、アンドレスの方が、じっと何かを読み取るようにコイユールを見た。

実際、自分の此度の遠征の件は別としても、コイユールが、何かとても重いものを背負っているように見えてならない…――という直観が、アンドレスにはあった。

(そういえば…あの時も…!)

先日、ロレンソと共に歩む治療場の路上で、コイユールに偶然に鉢合わせたあの時、彼女の目が懸命に何かを訴えようとしているように見えたことを、今、アンドレスは鮮明に想起する。


(コイユールにも、何かあったんだ…!)

そう確信して見入るアンドレスの目は、コイユールの瞳の奥に、何か、まるで叫ぶかのような色が潜んでいるのを鋭くとらえる。

「コイユール…君の方こそ、何かあったのでは?」

コイユールの目が、再び、大きく見開かれた。

「…!!」

「コイユール、何があったのか、話してごらん。

どんなことでも!」

アンドレスが、誠意溢れる声で言う。

コイユールは、トゥパク・アマルの治療中に見た不吉な予言的光景のことと、そして、トゥパク・アマルの『誰にも言ってはいけない』という言葉を噛み締めたまま、言葉を発せずに立ち尽くす。

 

◆◇◆◇◆Information◆◇◆◇◆

『インカの野生蘭』: トゥパク・アマルやアンドレスが活躍したアンデスの森に、今も人知れず咲いている神秘の花たち…――アンデスやアマゾンを30年以上彷徨する写真家、高野潤氏の最新作。お薦めです!!

著者/訳者名高野潤/著
出版社名新潮社 (ISBN:4-10-301571-3)
発行年月2006年08月
サイズ207P 22cm
価格 2,940円(税込)

 

◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆

現在のストーリーの流れ(概略)は、こちらをどうぞ。

ホームページ(本館)へは、下記のバナーよりどうぞ。

コンドルバナー 2(新)

ランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。

ネットランキング バナー(月1回有効)     WN(随時)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.12.20 19:57:13
コメント(4) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.