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カテゴリ:第8話 青年インカ
リノは固唾を呑みながらも、マスターの丁寧で穏やかな態度に、ホッと小さく息をつく。 彼は、一瞬、大きく躊躇(ためら)ったが、ついに、強い緊張と興奮に震える指で、トゥパク・アマルから預かった書状を差し出した。 「こ…これを、渡せば分かると……」 上擦ったリノの声に、マスターは鋭く目を細めつつも、差し出された書状を物腰柔らかに受け取った。 が、それを手にした瞬間、ハッと完全に息が止まる。 そのままチラリと中を覗くと、張り裂けぬばかりに大きく目を見開き、それから、喰い入るようにリノの顔を見据えた。 「まさか…――!!」 マスターは、それ以上は言葉にはしなかったが、その目は、ありありと訴えている。 (これは…トゥパク・アマル様から……?!! いや…間違いない、この筆跡は――!!)
その顔は、もう殆ど泣きそうなほどである。 マスターはそんなリノを抱きかかえるようにして支えながら、奥まった静かな位置にあるテーブルの前まで連れていった。
「何もご心配なされるな。 もはや、あなた様は、あのお方の御身にも等しき、かけがえのなきお方。 この後、あなた様の身に何が起ころうとも、我々が常にお守りいたします。 さあ、まずは、落ち着かれて」
そして、その恰幅の良い身を屈めるようにして、再び、深々と礼を払う。 「本当に、よくぞお越しくだされました。 暫し、お待ちください」
店の奥から、瞬間、驚愕とも歓声とも取れる大きなどよめきが聞こえ、だが、それも、すぐに水を打ったように静かになった。
≪トゥパク・アマル≫ ≪リノ≫
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