今は、家の近くであるが、隣の駅の少し南に「カウボーイ」というとてもカルトな喫茶店があった。今は、家もなくなりガレージになっているが、知る人ぞ知る、ではなく知る人しか知らない、やる気のない道楽の店であった。
私が、初めて、学生の時、訪れた時のインパクトもなかなかであった。
やっと探し当てた店は、雨戸が閉まっていた。
「あーあ、今日は休みですわなあ」と私が行った瞬間、急に雨戸が空き、浮浪者風体のじいさんが「開いてますよ!」と言った。
中に入ると、喫茶と居住が一緒で、「ちょっと布団しまうから待ってな」といい、イソイソと布団をたたみ、「もう夕方ですなあ」と暢気なことをいった。
注文は、聞かずとも、コーヒーしかない。それもナベに灯油で沸かすものだから、部屋は灯油臭く、もはや燃えそうな感じだ。壁も茶渋色になり、掃除もしている様子はない。コーヒーカップは、ちゃんと、山岳登山用のアルマイトのカップ。取っ手も、熱伝導でとっても熱い。底はちゃんと剥げており、恐らく通の人はマイカップを持参するに違いない。何時間居てもいいが、客はししっかり誰も来ない。
マスターは多分、昔、バンドをしており、その前は翻訳をしていたともいう。しかし、実際は芦屋のボンボンらしい。そういうわけで、「じゃあ、始めるよ」なんか言わず、いきなりギターを構え、カントリーを弾き始める。繰り返すが、前触れはない。
弾き終えると、缶ピーをドンと置き、美味そうに吸い、「この前のお客さんがプレゼントしてくれたんですわ」と言って、「あなたは何をくれるの?」と目で訴えかけられた。
我々は3人で行ってたのだが、1杯500円のコーヒーで1500円渡すと、「今日の売上はこれだけやなあ」と呟いていた。
一応、夜は、酒を置いていたようだが、本人が酒嫌いで、アルコール度数に応じて値段を決めていたようなので、大変高く「よし、これで誰も酒を頼まないだろう」と安心していたようだった。
今は、もうない。もしかしたら震災で亡くなったのかもしれない。
あったあった
話は代わり、最近みた、できた人間は、やはりアテネオリンピックマラソンのブラジルのデリマ選手であろう。あの1位走っていて途中抱き疲れて妨害された選手ね。
デリマ「気にしてない、メダルとれて幸せ。結果は気にしない。僕はメダルを取れて満足している。こうして今、この瞬間を味わうことができるのは、厳しいトレーニングの成果だ。トレーニングも順調だったし、メダルを取れると思っていたよ。目標を達成したんだ。何が起こっても、このメダル会見の壇上にいることをうれしく思うよ。」
デリマは3位で競技場に入ってくると両手を広げ、スタンドに向かって投げキッスをした。ゴール直前には飛行機のように手を広げて蛇行しながら走り、笑みを浮かべた。
レース後の感想。「私はレースに集中していたし、何もできなかったよ。警備の人々も予期できなかったようだ。レースの途中で止まってしまったことでリズムを失い、元のように走ることはできなかった。だれもが予想しなかったことだろう。重要なのは、私が自分だけではなく、母国のためにメダルを獲得したことだ。今回の五輪の運営は非常にうまくいっていた。今回のような事件は、どこでも起こり得ること。ただ、それがマラソンレースの最中に起こったというだけだ。」
この人、スーパーマーケットで働いているらしいね。実業団でなく、アマチュアやねんな。シブイ!おまけにこのスーパーの社長、いい宣伝になったと、デリマ選手に750万円を贈ったらしい。ヨ、太っ腹!