こんな実験があるそうだ。2時間2,000円のアルバイト料で、穴を30センチ掘って、また埋め戻し、また30センチ掘って埋め戻すという作業を2時間繰り返し続けるというもの。
ここでまず中年バイトの春治君がこのバイトに挑戦。2時間のバイトが終わって、部屋から出ると、バイトの雇い主青田教授が外で待ち受けていて、「さらにバイト追加料300円あげるから、次に同じバイトをする予定の淑女バイト小田切さんが外の廊下に座っているから、彼女に向かって「面白いバイトだったよ」と言ってもらえますか?」という。
いいですよと春治君はいい、廊下に出て、小田切さんに向かって「面白いバイトでしたよ」と言った。
(実は小田切さんはバイトではなく、青田さんの助手であるがここでは秘密)
そして、バイト料2300円を貰い、家に帰ろうとするところを、青田教授は呼び止め、「ちょっと待ってください、穴を掘って埋め戻す単純なバイト、本当に面白かったですか?」と尋ねると、春治君は「ええまあ、まあまあ面白かったですよ」というという。これは、春治君でなくてもたいていの人がそう答えるそうであるそうだ。
次にまったく同じバイトを年齢不詳の渉君に2時間2,000円でやってもらい、終わったあと、また青田教授は、同じように、「次に同じバイトをするので、廊下で並んでいる小田切さんという人がいるから「面白いバイトだったよ」と言ってもらえますか?」と先ほどと同じこをいう。しかし、違うのは、「もし言ってくれたら別途5,000円を上乗せしてお支払いしますよ」という。
「いいですよ」と渉君はいう。
そして、バイト料7000円を貰い、家に帰ろうとするところを、青田教授は呼び止め、「ちょっと待ってください、穴を掘って埋め戻す単純なバイト、本当に面白かったですか?」と先ほど春治君に尋ねたことと同じことを尋ねると、渉君は「「とんでもない、あんなバイトのどこが面白いのですか?穴を掘って埋め戻すだけの繰り返しでしょ?何の意味があるのですか?馬鹿馬鹿しいバイトですね」というという。これは、渉君でなくてもたいていの人がそう答えるそうであるそうだ。
この辺りが、良心の値段だというのである。あるいは開き直りの値段か。
穴を掘って埋め戻す単純な作業は、いうまでもなく意味はなく、拷問で面白くもなんともない。しかし、たった300円貰って、次のバイトの人に「面白かったですよ」と嘘をつかされるのである。たった300円で面白くも無いのに面白かったと嘘をついてしまったことに、軽い罪悪感を感じるそうである。そうだ、きっとちょっとは本当に面白かったのかもしれない、掘る作業で無我の境地に入れたし、などと自己正当化してしまうかも知れない。
しかし一方、5,000円もらって、嘘をつく。だってもひとこと「面白かったですよ」という嘘をつくだけで5,000円ももらえるんだぜ、ちっとも面白くなくてもいいじゃん、という心理が働くようである。
その程度なのだから、事件になって報道されるような犯罪や政治家の嘘は、充分開き直れる値段なのかも知れない。例えば、今、家の近くで御影工業高校跡地の入札の土地の売却で、ある業者から車1台を支給してもらっただけで便宜を図ったとして、糾弾されている神戸市議がいる。たった車一台でその業者(商社)は何十億円も安く土地を仕入れた。
昨晩も、朝方、尿意が我慢できずに起きた。トイレに行く夢を見て、夢の中でトイレに行き、便器から尿が溢れてもずっと小便をしているのに、残尿感が止まらない。止まらない~、というときに目が醒める。醒めて本当にトイレに行く。トイレに行く前に、時計を確認する。あと15分以内に起きなければならない時間だとすれば、また我慢して寝る。しかし昨晩は、まだ朝の5時46分であった。ん・・・5時46分、阪神大震災の時刻だ・・・とも思ったが、まだ暫く眠れるのが何より嬉しくも感じた。本当にトイレに行き、ベッドに戻って、再度眠ろうとしたときに、「尿意をどこまで我慢したら目覚めてしまうのか」という疑問が出てきた。出てきたが眠い、しかし眠ってしまうとこの重要な疑問を忘れてしまう。必死で枕元に置いてあるノートに、「しっこをどこまでがまんしたらゆめはおわる?」と書いて寝た。朝起きて象形文字を見たら、何てつまらない命題なんだとしばし愕然とした。それにしても、私は大人になった、すぐにトイレで小便を夢をみるが、漏らしたことは一度も無い。寝小便は記憶が留まるようになってから一度も無い(つまり3歳までには寝小便はしなくなった)、いや、一度も無いというのは本当は嘘で、幼稚園の時、トイレに行く夢をみて、本当に一度漏らしてしまったことがある。そのときの気持ちよさは30年以上たった今でもまだ覚えている。