みなかみ遠征記(その4)
<温泉大壁画>辰巳館の『はにわ風呂』には山下清の大壁画がありました。裸の大将と呼ばれた画伯が約60年前に絵を描き、彼の師であった式場隆三郎先生、美術工芸家の手塚昇先生らと共に作成した本邦唯一の作品とのこと。夕食前にお風呂に入って、私は女子風呂にあったこの壁画を見ていました。『どんな絵だった?』メロンチョコさんに聞かれたので、こう答えました。『女の子が寂しげにこっちを見てる絵。』前衛的な絵が描かれる予定だったのに三代目館長がもっと楽しい絵がいいと言って、山下清さんを招集する流れになったそうです。式場先生から『清、お前これからここの風景描くんだから川を見とけ』といわれて3時間以上ずっと川を見続けていたとのこと。私の大好きなクロード・ロランも、一日中雲を眺めていたと言いますから、やっぱり画家はまず見ること、じっくり観察することが仕事なんでしょうね。お風呂だけでなく、廊下のあちらこちらに飾られている『はにわ』の方も気になっていました。この近くに矢瀬遺跡や梨の木平遺跡があって、発掘された土器や埴輪などが月夜野郷土歴史資料館で見られるようです。 山下清の大壁画の他にも、じっくり楽しめる絵画や書が多く展示されていました。ビールサーバーとコーヒーマシンのあるロビーに飾られていたのがこの絵。何代目かのオーナーの趣味なんでしょうね。北原白秋の落葉松の詩、これ学校で暗記させられたっけなあ。もう忘れたけど。お庭も綺麗です。まだ桜が咲いていました。温泉の大壁画は昭和36年に完成したそうです。放浪の画家・山下清がここに逗留して風景を描いたころは、綺麗な秋だったんでしょうね。(つづく)アートのある生活