良くも悪くもイマの香港映画の力作「新少林寺」
★新少林寺(2011年・香港=中国 11月19日公開予定) 清王朝が倒れた後の戦乱の世を舞台に、少林寺と武将たちの戦いを描いた作品。少林寺というと、どうしてもジェット・リーの印象が強いので、アンディ・ラウの主演と聞いた時はまったくピンとこなかった。しかし、部下に裏切られ、少林寺に助けられる元将軍という役とわかって、徐々に少林寺とアンディの違和感が消えていった。また、将軍を裏切る腹心の役をニコラス・ツェーが演じるとなれば、2人のキャリアと役柄がピタリとはまり、なんともいえないリアリティがかもしだされる。しかも、そこに1歩引いた存在としてジャッキー・チェンが出演しているとなると、まさに新旧香港スターの競演である。とはいえ、今の香港映画は大陸への目配せなしには成り立たない。きれいどころや重要な脇役は大陸の俳優でかためられている。ジャッキー作品でも知られるベニー・チャン監督の演出も、スター映画でありながら重厚なイメージを重視している。かつては東南アジアを中心に世界を意識していた香港映画だが、イマは何よりも大陸を意識している。そんなイマの香港映画を象徴する力作である。ちなみに、ジャッキーは少林寺の厨房係を演じているが、おそらくジャッキー主演作「少林寺木人拳」で、ジャッキーが少林寺の厨房係に手ほどきを受けるというストーリーへのオマージュだろう。